イラクからの米軍撤退によって、イラク国内の治安情勢が日に日に悪化しているのはなぜかNew York Timesが頑張って報道しているのですが、日本のメディアでは「イラク戦争オワタ」みたいな扱いで笑えますね。乱暴に単純化をすれば、シーア派の過激派の動向が問題ですが、イラン抜きでは描けないだろうと。他方、イランはイランで核開発からイギリス大使館へのデモという名の暴動まで、いろいろお騒がせ国家という風情で、こちらはさすがに検索すると報道はあるようです。最近の話題は、イランによるホルムズ海峡閉鎖のリスクですが、割と日本の報道では大したことないよと横並びのご様子で、アメリカのメディアでは見方が割れているのと対照的な印象をもちます。
また、議会による国防予算削減にともなう米軍の戦略見直しも背景にあることを無視できないでしょう。いまだに、全体像がつかめていないので、こちらへの言及は「寝言」といえでも控えますが、イラクとアフガニスタンの引き換えにイランの核開発への制裁をオバマ政権とEU諸国が強めています。このあたりも今の段階では評価に苦しみますが、率直なところ、オバマ政権の中東政策は、アフガニスタン増派ですったもんだした頃よりはマシになっている感じがしますが、なんとも微妙な感じです。もっとも、積極的に関与するとなると、本当に難しい地域なんだなあとブッシュ政権でライスが切り盛りしていた頃を思い起こすと、しみじみ感じ入ります。表面的に見ていても本当に面倒なので。
なお、「寝言」のお題に(1)といれましたが、続きを書くかどうかは私の気分しだいなので、あしからず。引っ越しの準備に多くをとられて、漸く年賀状を出し終えるのがやっとの状態ですので、ボケない程度にとどめたいということがあります。まあ、そんなわけで前置きが長くなっていますので、さっさと「寝言」本体に移りましょうか。
まずはイランからです。ソースは英語ですと無暗にあるのですが、タイトルの変更があるのが気になるのを除けば、事実関係をざっくり抑えるのには、New York Timesが2011年12月27日付で配信したDavid E. Sanger and Annie Lowreyの"Iran Threatens to Block Oil Shipments, as U.S. Prepares Sanctions"という
記事が良いだろうと。読み返していて、この時点で事実関係のみならず、論点がかなり整理されている印象もあります。遡ればきりがないので、この記事の冒頭にあるイランの副大統領Mohammad-Reza Rahimi(後で引用するZakariaのコラムでは実権はないとされている)がアメリカの制裁措置にホルムズ海峡を封鎖すると脅迫したことから話じゃなかった、「寝言」を始めましょう。当初と記事の内容が変わっていてちょっと残念ですが、オバマ米大統領がイランへの制裁強化に関する法律に署名したことへの反応でした。当初は法律の内容が詳しく書いてあったと思うのですが、そちらの記事が見当たらなくなっています。記事ではさらりと、"The new punitive measures, part of a bill financing the military, would significantly escalate American sanctions against Iran."と触れていますが、まずは、アメリカのイランへの制裁強化は、法律上では国防費削減に関連する一部であったという点を確認しておいた方がよいでしょう(と書いておりますが、自分用のメモです)。以下は、イラン制裁強化の内容です。
For five years, the United States has implemented increasingly severe sanctions in an attempt to force Iran’s leaders to reconsider the suspected nuclear weapons program, and answer a growing list of questions from the I.A.E.A. But it has deliberately stopped short of targeting oil exports, which finance as much as half of Iran’s budget.
Now, with its hand forced by Congress, the administration is preparing to take that final step, penalizing foreign corporations that do business with Iran’s central bank, which collects payment for most of the country’s energy exports.
The sanction would effectively make it difficult for those who do business with Iran’s central bank to also conduct financial transactions with the United States. The step was so severe that one of President Obama’s top national security aides said two months ago that it was “a last resort.” The administration raced to put some loopholes in the final legislation so that it could reduce the impact on close allies who have signed on to pressuring Iran.
The legislation allows President Obama to waive sanctions if they cause the price of oil to rise or threaten national security.
5年にわたって、アメリカはイランの指導者に対して核兵器計画を疑われていることに再考させるとともに、IAEAからの質問に答えることを強制するよう、厳しい制裁を実行してきた。しかし、これまでの制裁は慎重にもイランの予算の二分の一にあたる石油輸出を目標とするには至らなかった。
今や、議会による強制とともに、政権はイランの中央銀行(イランのエネルギー輸出の支払いのほとんどを集める)と取引をする海外企業を罰する、最終段階を準備している。
制裁によって、イランの中央銀行と取引を行う経済主体はアメリカとの金融取引を行うことが事実上、困難になるだろう。オバマ大統領の安全保障補佐官の高官の一人が「最後の手段」と読んでいたほど、この段階は厳しい。オバマ政権は、イランへ圧力をかけることに合意した関係の深い同盟国への影響を減らすよう、抜け穴をつくる法案の成立を急いでいた。
今回の法律は、オバマ大統領に、石油価格の上昇もしくは安全保障を脅かす原因となる場合、制裁を止めることを認めている。
外務省のサイトで、「イランに対する国連安保理決議の履行に付随する措置について」(
参考)を見ると、日本の場合、核開発関連を中心にイランとの貿易と金融取引が制限されていることがわかります。今回、オバマ政権が「最後の手段」として採用したのは事実上、イランを経済制裁によって破綻させることも排除しない効果をもつ可能性もあるオプションでした。「最後の手段」という表現は、直接的な武力行使を除けば、大袈裟ではないのでしょう。
記事では、論点整理から政治的思惑を排除するために、今回の措置によって、エネルギー価格全般が上昇することによってアメリカ経済が打撃をこうむる可能性があることやオバマ氏の再選には影響がないことを政権側が認識していると指摘しています。NHKの夜7時のニュースで、共和党の予備選の段階でしかないのに(しかも候補者は小粒な印象がぬぐえないのですが)、あれほど時間を割くとは驚きです。まあ、アメリカは今年一年選挙の年であり、政治の季節になるので、党派性を抑えるために言わずもがなのことが入っているのかなと。以下、オバマ政権側の言い分です。
“I don’t think anybody thinks we can contravene the laws of supply and demand any more than we can contravene the laws of gravity,” said David S. Cohen, who, as treasury under secretary for terrorism and financial intelligence, oversees the administration of the sanctions. But, he said, “We have flexibility here, and I think we have a pretty good opportunity to dial this in just the right way that it does end up putting significant pressure on Iran.”
The American effort, as described by Mr. Cohen and others, is more subtle than simply cutting off Iran’s ability to export oil, a step that would immediately send the price of gasoline, heating fuel, and other petroleum products skyward. That would “mean that Iran would, in fact, have more money to fuel its nuclear ambitions, not less,” Wendy R. Sherman, the newly installed under secretary of state for political affairs, warned the Senate Foreign Relations Committee earlier this month.
Instead, the administration’s aim is to reduce Iran’s oil revenue by diminishing the volume of sales and forcing Iran to give its customers a discount on the price of crude.
「重力の法則に逆らえないのと同様に需要と供給の法則に反することができると考えている者はいない」と制裁の管理を監督するテロリズム・金融情報分析担当次官のDavid S. Cohenは述べた。しかし、コーエンは、「われわれは柔軟さをえるとともに、イランに顕著な圧力となる適切な手段を選択する非常に良い機会をえた」と述べた。
コーエンやその他の人々が表現するアメリカの努力は、イランの石油を輸出する能力を削ることよりももっと微妙で、直接的にガソリンや暖房用燃料、他の石油製品を高騰させうる一歩である。それ(制裁の強化)は、実際にはイランが核への野心を強めることを意味するだけで、弱めることはないだろうと政治担当国務次官のWendy R. Shermanは、今月の初めに上院の外交委員会で警告した。
それどころか、オバマ政権の狙いは売上高を減少させることによってイランの石油収入を減少させ、イランに原油の価格を割り引いて顧客に引き渡せるよう強制することである。
最後の一文は完全に誤訳ではないかと思うぐらい、「そんなことが本当にできるんですか?」と真顔でツッコミを入れたくなる話です。というわけで、制裁強化に対してeconomist(通常は経済学者で問題ないと思いますが、以下で上がっているのはカタカナのエコノミストの方に使い)からの批判が挙げられています。論点はいくつもあるのですが、大きなことだけ取り出すと以下の通りです。
(1)価格の変動をともなわずにイランの石油輸出を減らすことが可能であるのか。
ご苦労なことに、オバマ大統領は任期のはじめからサウジアラビアやその他の産油国に供給量を増やすよう要請してきたそうですが、イランの最大の顧客である中国への代替的な供給を確保するために、サウジが増産してリビアが助けたとしても足りないであろう量をイラクやアンゴラの増産でなんとかならないかとしているようです。余計ですが、だったら撤退前にイラクの治安確保をなぜ徹底しなかったのかといろいろ問い詰めたいところですが。オバマ政権は、中国にずいぶん借りをつくっているご様子です。さらに、記事は致命的な問題を指摘しています。
(2)制裁が成功を収めてイランの石油収入が減少したとしても、イランは核開発の野望を捨てるのか。
根本的な問題ですが、記事ではスタンフォード大学イラン研究の専門家Abbas Milaniへのインタビューによって、イラン経済が沈みつつある現状を概括するとともに、婉曲的な形で2番目の問いに否定的な展望を語らせています。本当はZakariaが核開発したイランでも怖くないよと書いていて、いいのかなという話じゃなかった「寝言」を続けるつもりでしたが、つかみの記事で疲れてしまったので、とりあえず、今日はここまでです。
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