久しぶりに、ニコニコ生放送で将棋名人戦の中継をやっていたので、見ていたら、最終盤でやたらとコンピュータ将棋の評価値を書き込んだり、教えろというコメントが多くて、驚きました。詰将棋をまったく解かなくなって5年以上は経っているので、段には手が届かない程度の棋力ですが、羽生名人の指し手が自らの側に勝手順があるという確信がないのは明らかなので、コンピュータの「正解手順」と違うと大騒ぎしている人たちを見ていると、コンピュータの読みに頼らずに、ないなりに自分の頭を使った方がよいのではという、気の利かない「寝言」が浮かんでしまいます。終局後のインタビューでは、挑戦者の佐藤天彦八段も指している最中には気が付かなかったようなので、両者の読み筋は概ね一致していたのかもしれません。感想戦で、羽生名人が佐藤八段に、丁寧に手順を尋ねていたので、本当に難解だったんだろうなあと。見ている方は難しすぎるので、途中からお気楽モードでしたが。
囲碁の方に関心が移りつつあって、やはりイ・セドルとアルファ碁との対戦が大きいです。囲碁に関して言えば、なんとかシチョウがわかる程度で、将棋よりもお粗末ですが、第4局でコンピュータがシチョウを無視して進めるのは少し驚きました。第3局でニコ生で見ていたら、コンピュータ将棋の解説の方がシチョウのような直線的な問題では案外、人間が強いので、細かい専門的なことは人間向きで全体を統合するのはコンピュータが向いていると解説していて、まるで納得できなかったのですが。当然ながら、「局所戦」で人間のプロ相手に30目も差をつけられては、さすがにコンピュータでも無理でしょう。ど素人が見ても、これはまずいでしょというのがわからないというのは決定的で、だからコンピュータがダメというより、進歩の余地はまだまだ大きいのでしょう。率直に言って、囲碁で人間相手に勝つこと自体が目的ではないから、約半年でここまで到達した面も大きいでしょうし。相手の打つ手を予想したり、正しい解を常に導くようなことを断念して、あえて近似に徹するということは、今の段階では不完全なことが目立ってしまうかもしれないけれども、改善していくうちに、ブレイクスルーが起きる可能性が高いのかもしれないと思いました。
本当は、今後の「不透明さ」の最大の要因である、アメリカ大統領選挙について書く予定でしたら、前置きが長くなりすぎました。とてつもなくアバウトな感覚ですが、オバマ大統領誕生のあたりから、なんとも言えない、嫌な流れかなあと。端的に言えば、政治的キャリアが浅い候補が歓迎されるという傾向でしょうか。トランプ現象はオバマが大統領に選ばれた傾向が別の形で表れていると思えば、それほど理解不能ではないのではと思ったりします。個々の発言を追っていると、不安になるのはわかるのですが、問題はそこではなくて、政治的経験が浅いことが、むしろ歓迎されてしまうという、おそらく、アメリカ人自身がそのような好みを明確に持っているわけではないと思うのですが、結果的にそのような傾向が生じていることが、不安定要因になるのではと。ヒラリー・クリントンがサンダースに手こずるあたりが象徴的な気もします。8年前に、政治的には、実際にはそれなりに経験を積んでいたとはいえ、手垢のついたワシントン政治から距離があるように見えたオバマが選出された傾向は、オバマへの希望が失望に変わっても、あまり変わっていないのではないかと。頭のおかしい「外道」の嫌な予感は(参考)は、「寝言」としてはそれなりの出来だろうと。
日本への影響などがちらほら報道されているようですが、気が早いのではないかと。誰が選ばれるのかという点では、外交・安全保障はおそらくほとんど無視できる要因で、アメリカ人にとって優先順位が高い問題で、より共感を集めた候補者が勝つ確率が高いのでしょう。よほど、近所づきあいでもめているという実感がなければ、アメリカ人にとって外交・安全保障政策の優先順位が極めて低いのは自明ではないかと。結果として選ばれるリーダーがそのままでは困るのですが、こればかりは願望ではどうにもなりますまい。
衆愚政治だといいたいのですかと自分に尋ねたら、それは違うと答えます。これも、いい加減で感覚的な話、もとい「寝言」で申し訳ないのですが、民主制というのは、この種の不確実性がなくなる方が持続できないのではないかと。アメリカ社会に限らないのでしょうが、民衆というのは時代にあった指導者を求め、民主制は、相対的にダイレクトにそれが反映してしまう。ところが、「当たり」を引くまでに時間がかかるし、当たり外れを見誤ることも多い。お世辞にも、効率はよろしいとは言えないわけでして、この面倒さに嫌気がさすのが一番危うい。日本人としては、ある種の諦念をもちながら、お付き合いするしかないと思いますが。
続きを読む