2006年10月11日

北朝鮮情勢 誰も書かないシナリオ

 珈琲様トラックバックや木星人様のコメントを拝見しながら、いろいろ考えてしまいました。木星人様のコメントへのリプライにはなっていないかもしれませんが、起きうる事態のうち、最悪のことを考えてみました。以下で書くことは、頭のいかれた「外道」の書くことなので、まじめに読まないで下さいね。起きうる確率は、1万分の1程度でしょう。「識者」のほとんどが、自らが蓋然性が高いと考えている事態ばかりメディアなどで披露されるので、性格がひねくれた私はもっともありえそうにないシナリオを考えたくなります。簡単に言えば、金正日の言い分がほぼ100%通ってしまうシナリオです。

(1)国連安保理で憲章第7章にもとづく決議が採択され、経済制裁が実施される。

(2)アメリカは、経済制裁の実効性を高めることに全力を集中する。軍事的オプションは控えるものの、海上封鎖に近い水準まで北朝鮮を締め上げる。日韓も同盟関係の強化とともに、対北朝鮮でアメリカとぴったりと歩調をあわせる。

(3)中露も少なくとも表面的には日米にしたがうように振舞う。他方で、水面下で両国の利害が両国の強い影響下での半島の現状維持で一致する。

(4)経済制裁の強化にもかかわらず、北朝鮮の核開発は着実に進行し、韓国はもとより日本全土を標的としたミサイルの生産をさらに進める。

(5)北朝鮮が核を事実上、保有したまま、10年の歳月が流れ、新しい指導者が同じ路線を引き継ぐ。「統一」という目標は堅持したまま、体制の維持に腐心する。日米韓中露の包囲に対抗するという「目標」が、北の体制を維持する。

(6)日米韓は、安保理決議が採択された当初は堅く結束する。しかし、歳月とともに北朝鮮の核武装が着実に進み、日韓の世論でアメリカの「抑止力」に対する疑念が強まる。なぜなら、アメリカと共同歩調を歩んだもののえた成果が、北朝鮮の核武装に終わったからである。北朝鮮は既成事実を重ねながら、アメリカの「核の傘」への日韓の信頼を失わせるよう、挑発しながら、足並みを崩す。

(7)10年後、アメリカが北朝鮮の核武装に有効な手段がなかったことで、日米同盟への日本の国内世論の失望が多数とまではゆかないにしても、広がる。日米同盟は、目先の北朝鮮の核武装という日本人からすれば、アメリカならば解決が可能であると期待できる問題で成果を挙げられないからである。日本国内で独自の核武装を求める声が強まり、アメリカの猜疑とアジアの不安定要因であるかのようなイメージが欧米で広がる。日米同盟は空洞化する。10年の歳月とともに、韓国では再び、アメリカの不信、日本への反発などナショナリズムが高まり、北朝鮮との統一を求める機運が高まり、事実上、北朝鮮に屈服する。

(8)北の核武装が成功すれば、NPT体制は崩壊する。核武装を望む国が増加すれば、北の核武装は"one of them"になる。アメリカの朝鮮半島への影響力の排除だけでなく、国際秩序の最終的な担保であるアメリカの抑止力は決定的に低下する。

 これは、朝鮮半島からアメリカの影響力を排除し、北主導の半島統一という北朝鮮の意図がほぼ彼らの言い分が通ってしまった場合を想定しています。現状の北朝鮮の国力、外交・安保環境から考えると、ネグリジブルな話だと思います。ただし、メディアでも、ネットでも、「蓋然性が高い」とされる予測や「望ましい」解決が盛んに議論されているのを見ると、一抹の不安があります。「望ましい」解決は、しばしば、主張する方の願望を反映します。この記事で述べたことは、米中関係や中露関係、中朝関係や北とロシアの関係など、正確な情報にもとづいたものではありません。あくまで、自分の願望や「あるべき」政策論を排して、金正日の言い分が通ってしまった場合のプロセスと状況を述べたものにすぎません。おそらく、今後の事態の推移で金正日の言い分が通ってしまうことは、ほとんど生じないでしょう。私自身も、このような事態が生じる確率は多めに見積もって1万分の1でしかないと思います。事態の進展とともにこのようなシナリオが忘れられてしまう確率は、ほぼ1に近いでしょう。しかし、メディアやネットでは、金正日の言い分が通らないことが暗黙の前提となっているように思います。もちろん、この前提の蓋然性はきわめて高いと思います。ただ、金正日の主張が通ってしまう事態を想定しないことは、それが現状では蓋然性の極めて低い前提に基づかない点があるにしても、危ういものを感じざるをえません。願望と現実を区別しないことは、非常に危険だと感じます。

 この記事では、北朝鮮以外の立場からの願望や北の行動に関する善悪是非、北に対する適切な外交オプションの検討、北の「真意」などは極力排除しました。「タカ」、「ハト」、「フクロウ」というのは、外交官が上司に進言する際に自分が最も適切だと考える案を通すためのレトリックにすぎません。これも、一切、排除しました。ただ単に、北朝鮮の国益が一方的に実現した場合(くどいようですが、確率はきわめて低いと私自身が考えております)、どんな事態が生じうるのかを、描いたにすぎません。繰り返しますが、特定の政策を正当化することが目的ではありません。この点は、決して誤解していただかないよう、お願い申し上げます。