2006年10月22日

究極の隠居

(@時の最果て)

ハッシュ:zzz
ボッシュ:この光景を何度見たことか…。
ハッシュ:ふわあ、おぬしか。今日は何の用じゃ。
ボッシュ:…。究極の隠居じゃな。
ハッシュ:おぬしも、ジパングで幸せそうじゃないか。
ボッシュ:しかし、ここまで平和ではないぞ。例のアフロの将軍様とやらが油断ならぬし、客人も来る。おぬしと違ってうまいものを食わせなくてはならない。
ハッシュ:そういえば、最近は光の柱が増えたな。
ボッシュ:ほお…。言われてみれば、そんな気がするなあ。
ハッシュ:あまりよいことではないが。
ボッシュ:おぬしでも憂いがあるのかあ…。単なる御隠居にしか見えぬが。
ハッシュ:前にも言ったが、記憶がとんでいるものが来ると、ワシもお手上げなんじゃ。
ボッシュ:うーむ。おぬしがお手上げとはのお。
ハッシュ:まあ、考えても埒があかぬ。ところで、おぬしとあのデブは全く同じ時期のジパングにいるのじゃが、こうも違うのかと驚くな。
ボッシュ:あのデブは、どうせ暇じゃろ?ワシより気楽なんじゃないかな?
ハッシュ:そうでもないぞ。まあ、あのデブを見ていても、おぬしほど楽しくはないんじゃが。
ボッシュ:まあ、そうだろうな。
ハッシュ:ふだんは、ディスプレイとかいうものを見てしきりに文章を作っておる。頭が悪いゆえ、ぶつぶつ言いながら2時間かかって、本1頁程度だな。今日は、朝からネクタイとかいうもので首をくくってでかけっていったわい。
ボッシュ:…。まるで自殺したように聞こえるじゃないか。まあ、あのデブなりに忙しいというわけか。
ハッシュ:そういえば、あれはなんじゃ。トイレとかいうところで「覚悟して猛虎落地勢を使うとき」とかぶつぶつ言いながら、別の部屋に入って、まずは、膝を床につけて上体を何度も倒して「申し訳ありません」とか叫んでおった。
ボッシュ:…。それは察するに土下座じゃな。「猛虎落地勢」などと大袈裟な名前をつけおって。情けない姿じゃ。
ハッシュ:不思議なもんでのお。最初は、頭から湯気が昇りそうになっていた相手が、気が抜けたようにほうけた表情になってしまうんじゃ。あのデブの日常で一番、不思議な光景じゃな。あるいは、あのデブの唯一の芸じゃな。
ボッシュ:土下座が得意技とはのお。まあ、どうせ散々、他人様に迷惑ばかりをかけておるんじゃろ。それにしても、ここでおぬしと話をしていると、不思議と安心するのお。うっとおしい国がミサイルだの、核だの騒ぐし、店長もシェフもてんてこ舞いで、最近は昔のようにゆっくり話もできぬ。まあ、喜ばなくてはいかんのじゃが、ちと寂しいのお。
ハッシュ:しかし、おぬしは世界中を旅したり、訪ねてくる者も多いではないか。退屈ではないだろう?
ボッシュ:まあ、そうなんじゃが。ココへふらりとやってくると、不思議な安心感があってのお。なんじゃか、落ち着くんじゃ。
ハッシュ:まあ、ワシは仕事をしてカネをえる必要もないし、自分の好きなことだけを考えておればよいからなあ。おまけに、それを誰かに聞いてほしいという欲もないゆえ、騒ぎに巻き込まれることもない。ワシのことなど知っているものは、それほどおらぬが、それも平気だからなあ。
ボッシュ:だから、究極の隠居じゃ。ときどき、おぬしに憧れるときもある。言いにくいが、ワシには無理だとは思うんじゃがな。なんというのか、孤独感に耐えられそうにない。
ハッシュ:まあ、慣れなんじゃないかな。時の最果てに飛ばされたときは、ワシもしばらく茫然としていたものじゃ。今では、時の迷子の世話ぐらいで、あとは時についてばかり考えておる。
ボッシュ:…。ふと思ったんじゃが、おぬしとワシとどちらが幸せなんじゃろ?
ハッシュ:…。好みの問題といえばそうだし、他方でなるようにしかならぬからなあ…。ワシも、好きでココに来たわけではないからのお。
ボッシュ:ジールの頃が懐かしく思えたり、いろいろ思い出してしまう。ワシも、ジパングで余生を送るとは思いもしなかった。
ハッシュ:幼いとき、若いとき、仕事盛りのとき、老いたとき、それぞれ楽しみがあるものじゃ。人は、胎内から生まれ、土に帰る。そのわずかな期間になにをえたのかなど、儚いものじゃ。たいていは、生きていることに価値を見出せる者など数少ない。凡庸であろうと、そうでなかろうと、淡々と真剣に今を生きることが肝心じゃな。生きることが価値なのではない。価値は、生きてからついてくる。
ボッシュ:あのデブは、「猛虎落地勢」とやらを必死にやる時期というわけか。あんなつまらない者でも、やっていることは下らないが、それなりに必死に生きておるのお。あのデブが、なにかとてつもないことをやらかすようには見えないが、まあ、大した人物ではないことぐらいはわかっておるようじゃから、努力をすれば、報いもあるんじゃろう。
ハッシュ:ワシもおぬしも、似たようなものじゃ。「時の賢者ハッシュ」とか「命の賢者ボッシュ」とか呼ばれても、たいしたことはできなかった。あのデブとたいして変わらんよ。
ボッシュ:あのデブよりは、マシだとは思うが…。なんだか話し込んでしまったなあ。そろそろ、お暇しようかのお。
ハッシュ:また、おいで。

 …。時の賢者様には参りますね。猛虎落地勢を見切られていたとは…。「ワーキング・プア」ではありませんが、私どもの業界でも、業績は悪化する一方なのに仕事は増えるばかり。体調のせいもあるのですが、なんとなく徒労感を抱くことがあります。今日も、還暦を迎えた方に教えを御指導を賜りましたが、このような方まで私のような一兵卒がやるような仕事に召集される異常な事態です。修行時代が一番、楽しくて、現職となると、修行時代に蓄えたものをどれだけ具体化する時間をつくるかが勝負ですよと言われたこともありますが、今になって、身に沁みます。

 「究極の隠居」に私も憧れます。日常の瑣末なことに煩わせられることなく、老後は煩わされずに、古今東西の「考え」に触れながら、誰の目にも留まらなくもいいから、「寝言」を綴ってゆきたいと思うことがあります。こればっかりはどうなりますことやら。