2007年01月05日

小泉政権と安倍政権 安全と食

 新年早々へたばってしまいました。冷静に考えると、年末からかなり自分を酷使してきたので、疲れがどっとでてしまった感覚です。「なまもの」には深入りする気はないのですが、少しだけ思うところを述べてみます。ブログでは外交や安全保障が中心になっていますが、珍しく経済政策を中心に論じます。

 つまらない記事にありがちですが、まずは言い訳から申し上げておきます。ネットでは盛んな構造改革対リフレ政策のような議論は大切だとは思いますが、個人的に興味がわかないので無視して議論を進めます。一国の産出量やその増加率(成長率)、物価、利子率、失業率などを代表的指標とする財政政策や金融政策の重要性が失われたわけではないと考えます。他方、私は、小泉改革の最大の成果は、経済政策、とりわけマクロ経済政策への「期待値」を下げたことだと周囲には主張してきました。共感してくださる方がほとんどいないのはちょっと残念ではありますが。簡単に述べておきますと、景気が下降局面に入ったときに、政府が拡張的財政政策を、中央銀行が金融緩和を行うことが繰り返し行われると、各経済主体が政府や中央銀行の行動を織り込んで意思決定を行い、資源配分の歪みを是正するインセンティブを損なう可能性があるというあまりあてにならない仮説が前提になっています。もちろん、程度問題であって、たとえば財政の三機能のうち、景気安定化を完全に否定することは経済学というよりも、政治的に非常に難しいだろうと思います。景気循環を「市場の失敗」としてどこまで捉えられるかは、私自身、確信はありませんが、「どんぶり勘定」で景気対策をやっていた頃よりは、分析が進み、より効率に配慮した政策が実施される程度の効果はあるのだろうと思います。

 もう少し経済政策そのものに関する議論を整理しておきたいのですが、「なまもの」から離れすぎてしまうので、この程度に抑えて、あらためて小泉改革を見てみると、あまり意見が変わらないことに驚いてしまいます。「改革」の具体的内容は、道路公団民営化や郵政三事業の公社化、さらに民営化など実施の必要性が疑わしかったり、あのタイミングで行う必要性があったのか疑わしいものが少なくありません。さらにいえば、不良債権処理問題についても、事態に追われてようやく実施したという感覚があります。個々の政策について見てゆくと、経済畑から見て必要かどうかも疑わしいものが小泉改革には含まれていたと思います。「寝言」をこいている人間が「ずいぶんえらそうだな」と言われてしまいそうですが、個別の政策は、どうでもいいものがかなり含まれているというのが率直な実感です。また、小泉政権の当初3年間は、各種世論調査でも、有権者のニーズと実際の政策には乖離がありました。そうであるにもかかわらず、私自身は総体として小泉改革を肯定的に評価します。周囲ではあまり共感を呼ばない「マクロ経済政策への過度の期待値を下げた」という理由につきます。あるいは、雪斎先生の「独立自尊」の精神を鼓舞する政策だ(こちらはちとかっこよすぎる感じがするので、私は使いませんが。「時の最果て」というよくわからないところで「寝言」を書いている人間にはきれいすぎるかな)という評価も可能でしょう。

 私自身は、安倍政権に期待するところが大です。昨日の記事では安倍政権に批判的な意見を紹介しましたが、突き詰めて憲法改正などに突っ込んでやりとりをすると、意外と改正そのものに反対という方はほとんど皆無といってよい状態です。自衛隊が「違憲」というのは明らかに変、自衛権の行使に変な枠をはめるのもおかしいという方がほとんどです。他方で、安倍政権への共感は広がっていないというのが、率直な実感です。露骨にいってしまえば、権力に求めるものが食(職でもいいかもしれませんが)よりも安全という発想は少数派だということです。安倍総理のやりたいことは安全に関することが主になっていて、私自身はそれに共感しますが、そんな人は少数だということです。

 小泉政権全体が安全よりも食を重視したのかという評価は私にはちょっと手に負いかねます。おそらく二流よりも上の政治家ならば、安全と食のうち、安全を重視するでしょう。安倍政権では小泉政権よりも安全に高い優先順位をおく傾向が鮮明です。表現が悪いかもしれませんが、食べることに関しては小泉政権を踏襲するのが無難だと思います。食べることよりも安全を重視すること自体はまともだと思います。ただ、残念ながら、共感は広がりにくいというのが率直な実感です。ならば、事実上、後継のレールをひいてくれた前任者の路線を継承することを言葉だけでなく、実行で示すことが重要であろうと。細かいことでいえば、復党問題で年明けまで引っ張るのはどうかしていると思います。前任者の路線を引き継ぐのか、変えるのか。このあたりに明確なメッセージがないため、どうでもいい問題で有権者の関心がじわじわと離れている(ただし、小泉政権を支持した層がただちに民主党支持には回らないでしょうが)原因だと思います。個人的には、食に関することは前任者を引き継ぎこと(所得再分配については前任者よりも、少なくとも心を砕いていると有権者に映ることが肝心だと思いますが)が、安倍総理が最も関心と懸念を抱いている安全の問題(私自身はこの姿勢に共感しますが)に専念するための不可欠の前提であると考えます。