2007年04月17日

ユニバーサルサービス制度(2)

 林紘一郎・田川義博『ユニバーサル・サービス』(中央公論社(中公新書) 1994年)は、今回の「寝言」のお題になる「古典」です。アル・ゴアの「情報ハイウェイ構想」が、1990年にNTTが発表した「VI&P(Visual, Intelligent and Personal)構想」への対抗意識ではないかという当時の最先端の話から「物語」が始まります。ユニバーサルサービスの定義は英米系の辞書にも載っておらず、日本語に強いて訳せば、「あまねく公平原則」。そこから、話は電話の「祖国」アメリカの電話史に移ります。なお、最近ではユニバーサルサービスという表記が多いようですので、この「寝言」でもそれにしたがいます。

 1900年代初頭、AT&Tの社長に就任したセオドア・ヴェイルは、電信会社ウェスタン・ユニオンの買収を代表とする買収を強引なまでに進めました。林・田川[1994]の64頁に1908年にだされた広告の写真が掲載されています。そこには"One Policy One System Universal Service"というタイトルが掲げられています。林・田川は、「ユニバーサル・サービス」とは、AT&Tによる独占を美化する「イデオロギー」という側面を認めた上で、このスローガンには技術標準が存在することが望ましいという現実的な背景があることも指摘されています。この後、アメリカの通信の歴史が現代にわたるまで概観された上で最終章でジョン・リー『電信と電話の経済学』の紹介され、経営環境の変化にもかかわらず、電話をめぐる論点が当時で90年以上変わらないことが指摘されています。この本について語りだすときりがないのでやめますが、本書の154頁で示されているOECDレポートによる、ユニバーサルサービスの定義を記しておきます。

(1) 全国どこに住んでいても電話を利用できること(Universal Geographical Access)
(2) 誰でも経済的に電話を利用できること(Universal Affordable Access)
(3) 均質サービスが受けられること(Universal Service Quality)
(4) 料金について差別的取扱いがないこと(Universal Tariff)

 ユニバーサルサービスの話から離れて電気通信事業者は、英語で"common carrier"(最近は、単に"carrier"、日本語でも「キャリア」あるいは事業者と呼ぶことが多いようです)ですが、元は鉄道や汽船などで顧客を「差別」せずに広く公衆に運輸サービスを提供する事業者を指していました。うろ覚えなのですが、19世紀末には使われていた用語のようです。現代と比して、交通インフラがはるかに整備されていなかった頃には、一般に妥当な代価で役務を提供させることが大切だったのでしょう。今日では様々な割引などによって、価格差別が行われていますが、妥当な金額を支払いさえすれば、事業者がサービスを提供するのは当然であるという原則は変わっていないように思います。実を申しますと、ユニバーサルサービスというのはこの国ではあまりに狭く捉えられていると考えておりますが、現代の問題は、"common carrier"を現代の情報通信技術の進歩や市場競争の激化に対応してどのように定義するのかが基本の問題と考えております。

 例によって、とりとめがなくなってきますが、J. Church and R. Ware, 2000, Industrial Organization: A Strategic Approach(McGraw-Hill)には次のような記述があります。

 おそらく,反トラスト歴史の中で最も有名な事件は,スタンダード・オイルと典型的な石油王であったJ.D.ロックフェラーの指導の下で石油の精製で独占を形成したことである.スタンダード・オイルが支配的地位に上りつめていったのはまさに目覚しいものであった.1870年にはスタンダード・オイルは合衆国の精製能力のたった約4%しか占めていなかった.攻撃的な買収によって1879年にはスタンダード・オイルは合衆国の生成能力の90パーセント以上を支配した.
 従来のスタンダード・オイル事件の扱いは,精製市場それ自体の買収やその行為が「略奪的」でと定義できるかどうかに焦点を当ててきた.Granitz and Kleinの最近の再調査はスタンダード・オイルの市場支配力が精製市場ではなく,鉄道を経由する石油の輸送に関する市場から生じたことを示した.輸送におけるRRC戦略(競争相手の費用を引き上げる戦略)によってスタンダード・オイルは石油精製への新規参入を妨げることができた.
 鉄道は固定費用が大きく可変費用が低い産業である.また,カルテルを企てようとするということでも知られている.鉄道は共謀的な運賃協定を維持するためにクリーブランドのスタンダード・オイルを含めた精製所に協力を求めた.合意は石油貨物についてそれぞれの鉄道のシェアを固定することによって欺く別の強いインセンティブをカルテルに与えた.合意の一部はメンバーの精製所の貨物運賃を引き下げ,メンバーでない精製所から高い運賃を要求することであった.これは事実上ライバルの石油精製会社に部分的に所得を移転していた.これはライバルの製油所のコストを増やしていたことである.
 この合意とそれに付随する運賃の増加の結果,独立系の製油所の多くは赤字を余儀なくされた.独立系の製油所はカルテルに参加していた製油所の魅力的で無力なターゲットとなった.スタンダード・オイルは独立系の窮状に大いに乗じた.その期間はカルテルの合意後であったが,実行以前であった.スタンダードはクリーブランドの独立系製油所をすべて買収し,合衆国の製油能力の25%を手中に収めた.

 有名なスタンダードオイル事件の解説です。現代ではこのようなあからさまな反競争的行為は非常に例外的でしょう。他方で、鉄道のように公益性の高い事業では、カルテルの企図が核心ではありますが、価格差別が競争制限的な効果をもつことを反トラスト政策、日本ならば独占禁止政策が未発達な状態において赤裸々に示しているでしょう。「コモン・キャリア」を定義し、行動にある程度、制約を課すことは、今日でも反競争的な行動を抑制する上で意義を失っていないでしょう。ユニバーサルサービス制度は、いってみれば、収益性が低い、あるいは不採算である地域でも事業者にコモンキャリアとして振舞うよう、制約するある種の規制であると考えます。ただし、コモンキャリアといえども、採算無視で経営を行うことはできません。「格差是正」から遠い地点に来てしまいましたが、ユニバーサルサービス制度というのは、事業者に不採算地域でコモンキャリアとして行動するよう制約するとともに、その代償をいかに補うのかという、ある種の「方便」であるというのが、今日の「寝言」です。

気分しだいの必殺技(後編)

【今日の『らんま1/2』】

 「気分まかせ」、「すちゃらか」、「ちゃらんぽらん」という本性を剥き出しにした効果がでてくるのはこれからです。今後も、いっそうアクセス数を激減させるよう、「寝言」以上の破壊力をもつ「おまけ」の充実に力を入れてまいります。昨日に続いて、「気分しだいの必殺技」後編です。どうでもいいのですが、仕事が終わってから、勤務先を後にして戻って当ブログにアクセスしてついつい自分が見てしまいました。なんとバカなことをやっているのでしょう。

気が重い。気が重い。気が重い。気が重い。気が重い気。重い気。

……。続きは下記からどうぞ。

気分しだいの必殺技(後編) 『らんま1/2』熱闘編123話

(1) http://www.youtube.com/watch?v=FJd8gNo2RkQ(9分43秒)
(2) http://www.youtube.com/watch?v=OL7uML9THbA(8分50秒)
(3) http://www.youtube.com/watch?v=xvnPQ4sHySo(3分21秒)