2007年04月20日

ユニバーサルサービス制度(4)

 今回でユニバーサルサービス制度の話は終わりですが、歯切れが悪くなります。「ユニバーサルサービス制度の将来像に関する研究会(第1回)」の資料1−4「ユニバーサルサービス制度の現状と課題」(PDFファイルですので、リンク先の該当資料をクリックする際はご注意ください)が主たる資料ですが、たとえば、スライド番号14枚目の「最も低いコストの局」の札幌と青森の加入数のセル中で桁数区切りであろうところが、小数点になっていて数字自体は信用しても大丈夫なんでしょうが、なんとなく不安になります。パッと見た目はExcelで作成した表をPowerPointに貼り付けたのでしょうが、元の表を作成する際にコンマを手で打っていたのでしょうか。通常はセルの書式設定で済む話でしょうが、細かいところで少しでも狂いがあると、この話は結局、数字の問題になるので、すべてが狂ってしまう。このあたりの無神経さはお役所らしくないですね。いかれた「外道」が「寝言」を綴る「時の最果て」では珍しくないのですが。

 そんなわけで慎重になってしまいますが、スライド番号14の数字を信用するものとすると、全国で最もコストが高い局が属するMA(Message Area:資料では単位料金区域)は夕張で、夕張内のこの局ではわずか3回線でコスト単金が405,305円ですので、3回線に1,215,915円ほど費やされていることになります。離島が高コストになりそうですが、東京都で最も高コストの局が存在するのは八丈島。八丈島内のこの局はコスト単金が157,864円で加入数が247ですので、38,992,408円が費やされています。 これらはMA全体の数字ではなく、あるMA内で最も高い局を抽出した数字ですので、極端な数字になります。ちなみに、MAというのは単純に言ってしまうと、東京でたとえば「03」、大阪で「06」の市外局番で統一されている区域を指します。一つの市町村が複数のMAに分割されることはありませんが、MAが複数の市町村(東京の場合、特別区を含む)を含むことがあります。高コスト地域の損失を低コスト地域の収益で補填することは当然の前提となっていますが、実はこの点は難しい部分があります。

 念のため、申し上げておきますと、長期増分費用のように競争的な水準でのコスト算定や高コスト地域のコスト削減努力などもうたわれています。本質的な問題は、低地域コストでえられた収益を低地域コストに投資した場合にえられたであろう便益と比較して、低コスト地域でえられた収益を高コスト地域の損失を補填する場合にえられるであろう便益が大きいのかという問題でしょう。さらにいえば、公正を重視するのなら、高コスト地域の損失負担の便益が仮に小さい場合でも、ユニバーサルサービスを維持すべきでしょうが、低コスト地域の消費者の厚生を無視するのは、「公正」という点でも、正当化が困難でしょう。これは効率の観点であって、ユニバーサルサービス制度のように、公正を問題とする議論にはなじまないという考え方が支配的なのでしょう。しかし、報告書では、このような視点すら見あたらず、読みながらやや苦痛を覚えます。露骨に言ってしまえば、公正の問題だけを論じていて、効率の問題はまったく無視されているといってよいでしょう。

 効率と公正の問題を、それだけを取り出して論じることは、私の手に余ります。しかし、公正と効率が一致しないにしても、公正を確保する際に効率の問題を無視することは、長期的に非効率を拡大するばかりで、「公正」な制度を保つことは困難になるでしょう。この資料では、私の偏見にすぎませんが、費用効率のみが問題となっている印象があります。効率という場合、費用効率だけでなく、消費者の厚生を含むというより、こちらを重視するのが通常だと思います。「採算地域」でえられた収益を、ごく一部とはいえ、「非採算地域」の損失補填に充当することによって発生するであろう非効率に関してはまったく無視されていて、現状では地理的公平が確保されているのかどうかすらわからないというのが率直な印象です。場合によっては、低コスト地域が地理的に不公平な状態にある可能性すら否定できないでしょう。  

 さらに「ユニバーサルアクセス」、すなわちブロードバンドへのアクセスの地理的公平を確保することは「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会報告書」にでてくる概念ですが、ずいぶん贅沢な話だなあと思ってしまいます。お役所の報告書らしく慎重な留保は着いているものの、競争が進展した場合、ユニバーサルサービスにせよ、ユニバーサルアクセスにせよ、地理的公平を確保するための原資は確実に減少してゆくでしょう。肝心の部分に関してはほとんど触れられていない。現状ではNTT東西への補填対象額が約152億円程度ですので、金額からすれば大したことはないのかもしれません。しかし、ユニバーサルサービスがユニバーサルアクセスに拡大した場合に、補てん対象額が現状よりもどの程度、変化するのか、資料からは見当もつきませんし、「採算地域」においても、ブロードバンドサービスを利用しない利用者が「非採算地域」のユニバーサルアクセスを確保するための原資を負担すべき正当な理由は理解できないです。

 これはわき道にそれますが、スライド番号15では「平成17年度ユニバーサルサービス収支表」が示されています。この収支表は加入電話と第一種公衆電話に区分されています。ユニバーサルサービスにせよ、ユニバーサルアクセスにせよ、根幹は地理的公平なのでしょうが、公衆電話は地震など緊急時の通信手段としては移動体通信と同様に、場合によってはそれ以上に有効に機能することもありえます。ユニバーサルアクセスの場合で、"essentiality"(国民生活に不可欠であるという特性)の概念は重要でしょうが、高コスト地域でのサービス・アクセス維持の問題に議論が偏っていて、低コスト地域・高コスト地域を問わない"essentiality"にはほとんど注意が払われていないようです。この資料のあら捜しをしているわけではないのですが、どうも、「次世代ブロードバンド戦略2010」の整備目標が先走っていて、それを正当化するために議論が行われている印象が拭えません。 

 ユニバーサルサービスからユニバーサルアクセスに発展するにせよ、スライド番号8が問題を集約していると思います。この図で示されている「補てん対象地域」の設定には、ある種の恣意性がともないます。先述の「低コスト地域」の収益で「高コスト地域」の損失を負担することに関して消費者の厚生の観点、あるいは便益評価が事実上、無視されている状態では、「補てん対象地域」の設定は、いつまでも恣意的なものに留まるでしょう。IP化やFMCの進展による市場の変化にユニバーサルサービスを対応させること自体は大切でしょう。しかし、ユニバーサルサービス制度による非効率が明示されていない現状では、競争の進展ともに、ユニバーサルサービス制度は複雑化し、恣意性を高めてしまうでしょう。「公正」の確保を議論することはけっこうなことです。それが効率という冷徹な計算を欠く場場合、「善意」なるものから悪しき制度が生まれるものだという「寝言」が浮かんでしまいます。

 「格差是正」にも、多様なレベルがありますが、ユニバーサルサービスは、「所得格差」や「デジタル・ディバイド」とは異なる地域間格差にかかわる問題です。「政治と経済の関係あるいは無関係」というカテゴリーから離れた話になってしまいましたが、冷戦下で影響をもった「経済的土台が上部構造を決定する」という、社会主義の発想でも、極度に図式化された、ものの見方はいまだに影響力があります。経済的相互依存と政策決定過程の関係に理論的に明確な法則性が存在するのか否かすら私には確信がありませんが、内政という点からこの問題を考えるときに、政策決定とその執行過程は、一国の統一性を保つために、市場機構の性能や経済的相互依存の恩恵を犠牲にすることが少なくないように思います。外政という点では、他国という自国だけでは動かしがたい変数がある以上、互恵的な関係を破壊することがありうること、それを避けうる手段が限られていることは否定しがたいと思いますが、内政では政策の決定・執行にあたって非効率が避けられないにしても、その非効率を的確に評価し、可能な限り抑制する発想が少しでも省みられることを願ってやみません。「市場原理主義」などというまったく意味をなさない言葉が、無意味であるという自覚すらないまま、メディアや論壇で用いられているのを見ると、遠い道のりであることは覚悟せざるをないと、「寝言」をつぶやいてしまいます。

(追記)記事タイトルを「ユニバーサルサービス制度(4)」に訂正いたしました。また、下線部以外にも記事をエントリーした後で訂正した部分があります(2007年4月20日)。 

幻の八宝大華輪を探せ

【今日の『らんま1/2』】


 今日は次回、紹介する番組の「予習」です。もちろん、この作品単体でも、「鳥乱す」や覗きの「極意」、秘伝書の解読など「無差別格闘早乙女流奥義 テニスコート天使の舞プロジェクト」などナンセンス度が高い見どころ満載なのですが、次回、紹介する原作にはないナンセンス度の前にはノーマルな作品としてさえ映ります。

 それにしても、八宝斎師匠の「ご勇姿」は、ある師匠のお姿と重なります。ああ、あの方の底意地の悪さといったら…。ここでかんべえ師匠を思い浮かべた方は、「時の最果て」からご退場ください。かんべえ師匠は、子育てに疲れた、あるいは飽きたが一段落したせいか、会合の途中に大声で「ああ、た〜いへん」と叫びながら、ご息女ではなく、たまごっちの世話をする(Yさんも「私などいつまでたってもおよばない、とてつもない器のかたでございます」と絶賛されておりました、とってもよい方です。私の脳内で八宝斎先生と重なる方は別の方です(ここはけれんみなどまったくありません。文字通りお読みください。反転…宝珠?その話はまた後日)。


幻の八宝大華輪を探せ 『らんま1/2』熱闘編26話

(1) http://www.youtube.com/watch?v=p9iPkVKmzDY(7分59秒)
(2) http://www.youtube.com/watch?v=LdHHR3c_M6E(7分59秒)
(3) http://www.youtube.com/watch?v=XinnVGKIz-Y(7分07秒)