2007年05月03日

『第一次世界大戦と日本海軍』メモ(9) 第3章(B)

 前回は、気合が入りすぎまして、『第一次世界大戦と日本海軍』のメモという趣旨から外れてしまいました。まず、本書全体での第3章第1節の位置付けを序章からの引用で確認しておきます。

 本研究で重視した第三の視点は、日本の動向が同盟国イギリスだけでなく、それ以外の第三国に与えた影響にも極力目を向け、日本の第一次大戦へのかかわりを広く多面的にとらえようとしたことである。すなわち、日本の参戦は日英の二国間だけでなく、日本の中国や太平洋への進出を危惧するアメリカに大きなインパクトを与えたが、それは日米間のみにとどまらず、さらに日本とメキシコ、アメリカとメキシコの関係にも大きな波紋を生起させた。例えば開戦直後に日本海軍は、ドイツ東洋戦隊の捜索撃滅のために遣米支隊をアメリカ西岸に派出したが、この作戦中に巡洋艦浅間がメキシコ領マグダレナ湾で座礁してしまった。浅間の座礁は単なる偶発事故であった。しかし、この座礁事故がアメリカ、メキシコ、そしてドイツなどによりさまざまに利用されてしまった。浅間の座礁はメキシコによって対米牽制に利用され、ドイツには日本とメキシコが同盟してアメリカを攻撃するとのツィンメルマン事件を引き起こす遠因を与え、さらに大戦後にはアメリカの軍備拡張主義者に対日脅威を煽りたて、恐日・反日世論を高め海軍力増強の道具として利用されたのであった(4頁)。


 ツィンメルマン事件というのは、1917年1月、「ドイツ外務大臣ツィンメルマン(Arthur von Zimmermann)からメキシコ駐在ドイツ大使に宛てた、メキシコが日本と同盟しアメリカから旧メキシコ領土の回復を望むならば、ドイツは経済的軍事的支援を与えるとの条件でメキシコと交渉せよ、との電報が発覚」したビスマルク亡き後の粗暴な帝政ドイツの外交らしい粗雑な「陰謀」です。この事件が、どの程度、日米関係に影響を与えたのかは疑問ですが、第一次世界大戦は、単に「戦需景気」をもたらしただけでなく、軍事行動や戦争にともなう様々なプロパガンダによって、日英、日米、その他の国との関係にも戦後にも影響の残る爪あとを残したことを確認しておきます。

 第2節は、石井・ランシング協定に三日ほど先立って成立した日米海軍協定と日本海軍のハワイ警備行動が対象です。第2節の冒頭で、主題が簡潔に提示されておりますので、引用いたします。

 第一次大戦中の日米関係には、人種差別問題に始まり南洋群島の占領、対華二十一ヶ条の要求、アメリカに対抗するメキシコへの武器輸出問題や、ツィンメルマン事件などによる不信や猜疑の側面と、アメリカの参戦にともない日本海軍がハワイに巡洋艦を派遣し、太平洋の海上交通保護作戦を引き受け、日米共通の敵ドイツと戦う参戦国(同盟国)としての側面との二つの側面があった(120頁)。

 まず、前回の浅間座礁事故が1914年、石井=ランシング協定の締結が1917年11月ですので、第1節と第2節の記述は時期的にずれがあることに注意が必要です。また、日米海軍協定の調印が1917年10月3日、石井=ランシング協定の調印が同年11月2日ですので、時期としては、第一次大戦の終盤であり、1915年の対華二十一ヶ条の要求(アメリカの対日警戒心を強めた)やアメリカの参戦(これにより日米は戦争協力が可能になった)よりも後であることにも注意が必要でしょう。当たり前ですが、日本海軍がハワイを警備するというのは、アメリカが外交上、中立を捨て、建前上も協商国側に立って戦争に参加していることが当然の前提条件です。

 『第一次世界大戦と日本海軍』第3章2節では、アメリカ側、あるいはランシング国務長官が日米協定に提案した目的として対独戦争協力と中国問題に関する協議を成立させることが挙げられています。また、日本側の態度として、アメリカの目的に応じるとともに、「石井大使特命全権大使ニ対スル訓令案上裁指令の件(一九一七年六月一二日)」や「石井遣米特派大使ニ対シ内訓ノ件(一九一五年七月二四日)」など『外交青書』からの引用によって、アメリカ国内における日本人の地位向上や中国における日本の特殊な地位を認めること、赤道以北の旧ドイツ領南洋諸島の譲渡の内諾をえること(内訓による)などが挙げられています。石井遣米特命大使だけでなく、陸海軍大臣が陸海軍随員に与えた訓令もあわせて、121頁では次のように整理されています。

 
 一 中国問題、特に日本の特殊権益の問題(石井特使・陸軍随員)
 二 対日人種差別の問題(石井特使・陸軍随員)
 三 南洋諸島の領有に対する内諾(石井特使)
 四 フィリピン・グアムの軍備制限、フィリピンの独立又は他国へ
   譲渡の場合は先ず日本に交渉すべきこと(陸軍随員)
 五 太平洋警備問題(海軍随員)
 六 兵器軍需品製造および造船に要する資材の確保(海軍随員)


 項目の第1から第4までを見れば、対独戦争のおける協力ということがほとんど後回しであることは一目瞭然です。事実上、アメリカの参戦に乗じて日本側が言い分を通そうとしていたことがうかがえる内容です。あとで検討しますが、日米の単純な二国間交渉であれば、妥結は困難であったと思います。

 他方で、日米海軍協定に関する協議は、1917年9月8日より始まり、日本海軍の積極的な姿勢によって交渉が順調に進んだ結果、9月27日には共同声明を発表するに至りました。交渉の過程ではアメリカ側から太平洋から巡洋戦艦サラトガ、フィリピンから巡洋艦ガルベストン、シンシナチと駆逐艦5隻を大西洋に展開するため、交代艦を派遣する依頼がありましたが、後にフィリピンの海軍兵力は移動しないことになり、日本側に通知されました。日本側がフィリピンの警備について確認を行うと、フィリピンへの日本の海軍兵力の派遣が必要な場合、希望する旨の解答をアメリカ側からえるなど、微妙なやりとりも行われました。

 10月17日に、アメリカ海軍から装甲巡洋艦サラトガを11月下旬に太平洋から大西洋に派遣するために、11月15日頃までに日本海軍から代わりとなる軍艦を派遣する旨の以来がありました。日本海軍はこれに応じ、10月19日に巡洋艦常盤(艦長森本義寛大佐)へ出動を命じました。

 また、日米海軍協定の調印を受けて日本海軍は11月1日に「ハワイ警備命令」を発しました。124頁では次の二項目が挙げられています。

 
 一 常盤ハ急速出動準備ヲ整へ「ハワイ」ニ向ヒ進発シ
   当分同方面ニ在リテ行動スヘシ。
 二 本行動中ハ所在米国海軍官憲ト気脈ヲ通スヘシ。

実際のハワイ警備行動は、日本商船山川丸やスウェーデン船の遭難救助に出動した程度で、特筆すべき作戦行動はありませんでした。日米海軍の関係は良好でしたが、幸か不幸か、ハワイ周辺だけでなく、太平洋自体がこの時期には平穏だったため、1918年には常盤は日米協同作戦を中止して、独自の計画にもとづいて巡航移動警戒することとなりました。さらに、日本海軍は日米海軍協定にもとづいて相互に艦艇の配備・行動予定を通知することをアメリカ海軍に提案して同意をえましたが、アメリカ海軍が小型艦艇しか保有していなかったため、日米協同作戦が実際に発動される機会はありませんでした。

 日米海軍協定によってアメリカはハワイ・太平洋の警備を日本に任せ、大西洋へ海軍兵力を送ることができましたが、結果的にハワイ警備での日本海軍の活動は、その活動によって海軍のみならず、日本軍の特徴である高い錬度や厳正な規律、他国の比ではない高い稼働率などを示すことによって、皮肉にもアメリカ海軍はへ尊敬や信頼だけでなく、脅威として映る結果になってしまいました(129頁)。結果論になってしまいますが、「日米共通の敵ドイツと戦う参戦国」という日米の共通の基盤は、日本海軍の活躍によって、むしろ両者を引き離す効果すらもってしまったことは、「歴史のアイロニー」という言葉で片付けるには重大な問題です。この問題を「解く」には私は力不足ですが、平間先生が省いている石井・ランシング協定成立の背景は、この問題の補助線になると考えます。以下、長くなりますが、岡崎久彦『幣原喜重郎とその時代(文庫版)』(PHP出版 2003年)の「第七章 パリ講和会議」213−215頁から引用いたします。

 さらに日本には当時アメリカが中国における日本の特殊な地位を認めていると信じてよい理由があった。それが石井・ランシング協定である。
 一九一七年四月、アメリカはドイツに宣戦した。その結果、日米は同じ側で戦うこととなったわけであり、同盟国間に利害関係の摩擦があってもいけないので、日米関係を調整するために石井菊次郎を特派大使としてアメリカに派遣することになった。
 とくに日米関係の調整を望んだのは、当然、日米それぞれの同盟国である英国であった。石井大使とランシング国務長官の正式協議が始まる前の九月三日、駐米英国大使は石井大使を訪れ、英国政府は日米間の満足な了解が成立しないとたいへん困るので、シナ問題と太平洋諸島問題について日本の希望が正当であることを事前にアメリカ政府に説明しておいたと述べ、そして、「シナ問題についてアメリカは重大な利害関係がないにもかかわらず、現国務長官がフォスター(元国務長官、退官後シナ政府顧問、ランシングは女婿)の姻戚であるため非常なシナびいきであるが、これをもってアメリカ政府がシナ問題についてどこまでも固執して譲らない態度であることは大いなる誤解であろう。要するに、国務長官個人の感情より出るものと看做し、軽く受け流しておくのがよろしかろうと思う」と述べ、ひたすら石井大使の忍耐を求めた。

 同盟国の存在、とくに英国のように発言力の強い同盟国の存在はありがたいものである。石井・ランシング協定は、中国における日本の特殊な地位をアメリカに認めさせたという点で、日米関係において例外的な文書である。もし、これを日米二国間だけで交渉していたとすれば、このような結果はまず得られなかったであろう。
 アメリカと日本が同じ側に立って戦争をするという大きな背景があって、なおかつ英国の強い影響力と、細心練達の外交的配慮があってはじめてできたものである。後年、日英同盟が破棄されたことによる日本の最大の損害は、英国の情報力、外交的影響力、とくにアメリカに対する影響力の恩恵を受けられなくなったことにあるといっても過言ではないだろう。

 九月五日、今度は石井大使が英国大使を訪問すると英国大使は「シナにおける日本の地位はアメリカも内心承認しているが、ただ、これを公然承認するのを憚るものと察せられる。モンロー主義について外国の承認を求めたことのないアメリカ政府のことであるから、日本がシナについて何らかの承認を求めてもアメリカ政府はこれを与えないであろう。日本は、アメリカが他国の承認を求めずしてモンロー主義に満足しているように、シナにおける特殊な地位について明文の承認を得ることは不必要ではあるまいか」と述べ、万一交渉が不成立の場合も日米摩擦に進展しないような、日本の退路まで示してくれた。
 また、英国大使は、本国政府の訓令に基づいて、日本が開戦以来連合国のために尽した実績を列挙した文書を、国務長官に手渡してくれている。


 『第一次世界大戦と日本海軍』では日米海軍協定の進展と石井・ランシング協定の調印への影響に関して論じる叙述(123−124頁)がありますが、現実には妥協が難しい日米間の懸案をイギリスがアメリカへの影響力を駆使して交渉の土俵をつくったというのが実相のようです。日本海軍のハワイ警備を過小評価するわけではありませんが、戦局の変化とともに、日米海軍の協力は、太平洋でのドイツ東洋戦隊の駆逐ではなく、大西洋へ派遣されるアメリカ海軍を日本海軍が補完する関係でした。もちろん、このことは、日米の海軍兵力が補完関係に入ることを意味し、日本も応分の「負担」をしたといえるでしょう。

 他方で、石井・ランシング協定は、中国における日本の権益をアメリカの普遍的原則から離れてアメリカに認めさせる、より強い内容でした。この協定が成立するためには、とりわけ日本側の粘り強い外交交渉が不可欠でしょうが、なによりも、日米を調停しようとするイギリスの存在が大でした。英国大使が「退路」まで示しているように、イギリスにもこの交渉が妥結する確たる見通しはなかったのでしょう。それでも明文の協定までこぎつけた日本側の交渉は、粘り強いものであったのでしょう。ワシントン会議において、四ヶ国条約によって日英同盟が廃棄され、九ヶ国条約で石井・ランシング協定が破棄されたのは象徴的です。日米は、当時、氷炭相容れずという関係ではなかったと思いますが、利害が相反することも多く、イギリスは両国にとって重石であると同時に、両国を結ぶ絆を握っていました。日英同盟の破棄が日米開戦まで一直線に結びついていたとは思いません。

 ただし、岡崎先生が指摘されているように、日英同盟を失うことによって、日本はアメリカへの外交的影響力と的確な情勢分析を行う能力をもつイギリスという理想的なパートナーを失いました。その後、事実上、単独でアメリカと外交を行う羽目になり、結果論になってしまいますが、惨憺たる失敗を犯したことは、より詳細な検討が必要ではありますが、自明といってよいのでしょう。 

一粒コロリ・絶倫ホレ薬

【今日の『らんま1/2』】

 ものすごいタイトルですが、原作では「ハッピーとコロン」、「一瞬の恋」、「誰が惚れるか」とまっとうなタイトルの三部作。原作10巻あたりになると、男性陣では九能帯刀や響良牙、ムース、女性陣では九能小太刀やシャンプー、久遠寺右京などらんまとあかねに思いを寄せる「名(?)脇役」がほぼ揃います。また、「邪悪」こと八宝斎先生も…。これらのメンバーを中心に「ラブコメ」という名のどんちゃん騒ぎを格闘で敵が現れて繰り返すというのが22巻あたりまでの流れです。

 今回ご紹介する作品は、原作10巻の3話を集約したTVアニメです。格闘がメインではない場合、(1)乱馬があかねをからかって「煽りにマジレス」が特技のあかねが乱馬ともめているところへ第三者が介入してさらに話がややこしくなる、(2)乱馬があかねをからかうも、あかねが軽くいなしているところへ第三者が介入して話がややこしくなる、といったあたりが基本パターンですが、この作品は両者が絶妙に絡み合って、乱馬とあかねのかけあいの基本がいろいろでてきます。

 さて、女性陣で格闘という点で最強なのはシャンプーなのですが、あかねの恋敵としても最強。右京でも強烈なシリーズがあるのですが、シャンプーに関しては「腐れ外道」とあかねとムースを言わしめた強烈な作品があります(こちらはまたの機会に)。今回の作品は、ナンセンス度が高いものの、比較的、穏健な作品です。

 なお、TVアニメのタイトルでは「ホレ薬」となっていますが、原作ではコロン−シャンプーの家に伝わる先祖代々の家宝。腕輪にはめられた丸薬を飲むと、最初に見た異性に一目惚れするという、要は特殊な刷り込み効果をもつ薬です。一瞬玉、一日玉、一生玉の三種類があり、これがコロンの手にあれば、乱馬が一生玉を飲まされてシャンプーと結ばれる・・・てなことになるはずですが、これを盗んだ八宝斎の手にありました。このあたり、実に話がよく練られています。

 この作品の大半は、一日玉を飲んでしまったあかねの話がメインなのですが、前半も「目がパッチリしたロングヘアー」の女性の「正体」やシャンプーに一瞬玉を飲まされた乱馬のチャランポランぶりなど、見所満載です。ただねえ、一瞬玉を飲んだ(実際にはふりで口の中)乱馬が最初に見た「異性」であるあかねに向かって「か・わ・い・い」などとからかって思わずあかねが「こんなのいやっ。こ、こういうことは薬ぬきで…」と漏らすあたりをカットしたのは許しがたい怒りを覚えますが(コメントでご指摘頂いたとおり、アニメでも再現されております私の勘違いでした。リンク先では見ることができませんが、オープニングソング込みで9分前後でこのシーンが登場します)。


一粒コロリ・絶倫ホレ薬 『らんま1/2』熱闘編35話

(1) http://www.youtube.com/watch?v=1E-d3tFbr0E(7分03秒)
(2) http://www.youtube.com/watch?v=HLaYYCjbuLE(6分21秒)
(3) http://www.youtube.com/watch?v=-7_nzx1ESzI(6分26秒)