2007年05月28日

奇妙な「弔辞」

 あたふたと一日が終わって帰ってくると、ふだん見出ししか見ない夕刊に松岡利勝農林水産大臣の自殺が報じられていて珍しく読んでしまいました。よほど気が動転したのか、3週間ぶりぐらいにテレビの電源を入れました。自殺の背景(スキャンダルと党内の圧力)や参院選、そして政権へのダメージをコメンテーターなる方たちが解説するのをボーっと見ていました。メディアが報じない、あるいは誰にもわからない部分もあるのでしょうが、こんなものでしょうなという感じ。ついでに年金の問題も見ましたが、いまだによくわからない。生活に直接かかわるだけに、「被害」にあった方々にとっては切実な問題でしょうが、記録が完全になくなってしまっている場合はともかく、そうではない方も少なくないようなので、社会保険庁の過去の「悪行」も含めて実態を把握してほしいというところでしょうか。ことがことだけに、短期的に話を済ませたくなるところですが、あまりにずさんな話なので、ここで膿をだしつつ、BSE騒動のときのように騒ぎを収拾することだけに追われて、別の「傷」をつくるのはまずいだろうなと思ってしまいます。

 話がそれましたが、松岡大臣の自殺。首相官邸HPを見たら、若林正俊環境大臣が既に「臨時代理」となっていて、不測の事態とはいえ、政権は機能しているんだなあと素人的に思いました。ちょっと気になったのが、副大臣が臨時代理というのはないのかなということです。ちゃんと根拠となる法律を読んでいないので、たぶん無理なんだろうなあとは思うのですが、内閣法10条の規定を読むと、国務大臣の(臨時の)代理は総理または他の国務大臣に限定されるのでしょうか。今回の事件とは性格がおおいに異なりますが、リクルート事件がらみで宮澤喜一大蔵大臣(当時)が辞職した後、竹下登総理大臣(当時)が兼職したことを思い出しました。自分でも本題から逃げていますね。

 正直な感想を書いてしまうと、今回の事件で大臣というのはずいぶん値打ちが下がってしまったなあということです。スキャンダルやその他の事由(今回はスキャンダルのみが焦点のようですが)で閣僚というよりも、総理大臣が交代すること自体は、散々見てきたので、スキャンダル自体に、一時期はうんざりしましたが、なんとなく鈍感になってしまう。ただ、国務大臣が自殺するというのは、ひどい話だと思います。ここまで国務大臣の値打ちが下がったのは初めてでしょう。死者に鞭を打つつもりはないのですが、「責任」のとり方として最悪の方法を選ばれてしまったようにしか見えないです。こんなことで国務大臣が「首」ではなく(それですらどうかと思うのですが)、「命」を捨てるようでは国務大臣の値打ちがゾッとするほど下がってしまったという印象をもちます。私自身が、キリスト教その他の宗教の価値観の影響を受けているわけではなく、自殺を美化しかねない風潮には子供のときから違和感があったので、まして公人が自殺するとなると、もう「評価」する気にもならないぐらい、やるせない気分になってしまいます。例外は、戦時ぐらいで、戦時ですら、自死による「解決」というのは美化できない部分があります。先の大戦のような場合は、選択の余地が少なかったのでしょうが、公人たるもの、死ではなく、生きて責任を全うしていただきたいと思うのです。

 困ったことに安部総理が「任命権者」としての「責任」をあっさりと認めてしまった。おそらくは、松岡大臣をかばいすぎて、結果的に「退路」がなくなってしまったことへの率直な感情の発露ということなのでしょう。世評は私よりもはるかに複雑に安部総理を批判したり評価しているようですが、私自身は、安部総理は「善意」の方だと考えておりました。それとなく懸念をもっていましたが、このような形ででるとは思いませんでした。今回の事件そのものは、安部総理と松岡大臣という個性の組み合わせによるところが大だと思うのですが、「統治」の中枢でこのような事態が生じることは、非常にまずい。メディアでは政権へのダメージばかりが取り上げられるようですが、今回の事件が突発的な、一過性のことで終わるのを心から願っております。職に一命を捧げること自体は美しいのですが、今回の事件は、「善意」をもつ側と受ける側のきわどい部分がもろにでてしまったように感じます。この事件そのものは、安部政権のもつ独特のあやうさがわかりにくい形(というより報道を見聞きしてあらためて解説部分がいらないことを感じます。高いところからものを申すようで気がひけるのですが、深読みばかりしていると、当たり前のことが見えなくなる印象があります)で表出しただけの話だと思いますが、国務大臣の「値打ち」の低下となると、一政権の問題にとどまらないでしょう。深刻に考えすぎているのかもしれませんが、この種の悪しき「前例」は、二度と起こさないことによってしか、根絶することが難しい。今回の事件が、安部政権特有の問題で終わることを願わずにはいられません。神経質すぎるのかもしれませんが、悪しき前例というのは、ことが起きたときにはわからないことが多いような気がいたしますので。
posted by Hache at 23:57| Comment(0) | TrackBack(1) | 不幸せな寝言