2007年09月01日

いい加減に財政を考える

 気がついたら、9月です。残暑が厳しいのが恒例ですが、今年はどうなりますやら。気象庁のHPをほとんど欠かさず見るくせに、今夏は冷夏という予想をまったく知らなかったので、気象庁の予測が外れたと怒っている人たちを見て、世間の話題への疎さに恥じ入るばかりです。露骨に言ってしまうと、予測など外れることの方が普通なのだから、冷夏でも猛暑でもどちらでもよいように準備(上着が多少変わる程度ですが)をしておくというちゃらんぽらんな人間なので、予測など見ない方が対応という点でも精神衛生という点でもよいというのが、後付けの理由ですね。理由になっていないか。

 気象庁には失礼な話ですが、天気予報よりもあてにならないのが、経済予測。経済成長率が代表ですが、株価や金利、物価など数値で表現できるものになると、まず外れて当然という感じでしょうか。岡崎久彦さんなどは手厳しく、経済関係の人たちは何度も丸坊主にならなきゃいけないようなミスをしてあらためる雰囲気がないと1990年代の論説では書かれています。なにしろ数値や指標で予測をすると、「鬼が笑う」というのが普通でして、丸坊主程度で済むなら、私もやってみようかなと思いますが、予測の前提になっているパラメータや諸条件でどこが狂ったのかを突っ込んで示していれば、外れた予測にも意味があるのかなと。多少、マシになるという程度でしょうが。そうじゃないとあんまり変わらないでしょうね。

 えー、まったく脈絡がなくて恐縮ですが、予測は苦手なんですが、長期的なトレンドで変化しない確率が高い事象を見るのは大切でして、私自身は、経済のなかで「財政の硬直化」というのは変わらない可能性が高い事象だと考えております。あれこれと迷いながら書いていたら長くなってしまいましたので、要旨のみを記し、「寝言」にお付き合いしていただける方は「続き」をクリックしてくだされば、幸いです。なお、「論拠」は薄弱ですので、突っ込みたい方はご自由に。

【要旨】

(1)わが国の財政が既に「大きな政府」というべき状態にあるという指摘がある。これには疑義がある。国レベルに限定すると、予算規模(2007年度)が粗生産(2005年)に占める割合は約4分の1程度であり、付加価値ベースでは約22.4%(2006年)である。比較の手法としては乱暴な点を含むが、概ね、わが国の経済は民間部門が主役であって、公的部門ではない。なお、これは民間部門に対する公的部門の権限を捨象した検討にすぎない。

(2)財政そのものの問題に絞ると、国レベルで一般会計全体における国債費の増加による「財政の硬直化」が進んでいる。さらに、一般会計内の一般歳出を見ると、社会保障費の割合が極めて大きく、費目ごとに見ると、年金・医療・介護など今後の社会構成の変化を考慮すると、削減が困難な分野が予算全体でも大きな割合を占めている。このことは、いわゆる「財政の三機能」のうち、(A)資源配分の効率、(B)所得再分配、(C)景気安定化のうち、(A)や(C)の機能を発揮することは困難になりつつあり、所得再分配を重視する方向に進んでいることを示すと考える。

(3)上記の検討ではあまりに乱暴な点も多いが、消費税率の引上げに関しては、実体経済をはじめとする景気への影響を無視しても、慎重な考慮を要する。消費税率の引上げによってある程度、「財政の硬直化」を緩和することができるだろうが、他方でそれらを社会保障関係費などに目的税化しようとしまいと、社会保障関係費が漸増する現状を追認するだけで、財政の自由度を高めることに貢献することは困難であろう。

(4)「大きな政府」、「小さな政府」という議論は、財政規模だけでなく政府の民間部門への権限も含んでいるため、財政規模だけで判断することは一面的であろう。さらに、財政規模に限定しても、適切な財政規模がある範囲内で特定化できなければ、意義が少ない。ただし、現下の財政状況を考えると、「大きな政府」を指向する立場は、概ね財政改革に否定的であるか、「現状維持」を基調としつつ、さらに予算措置を含む積極的な政策を主張する立場と考える。他方で、「小さな政府」を志向する立場は、財政が拡張する傾向への「抵抗勢力」であると考える。「小さな政府」を主張する立場からは国債費だけでなく、今後の社会保障関係費の増大を抑制する方策がなければ、現実的な政策提言は困難であろう。他方で、この立場は財政の基本的な機能のうち、所得再分配による非効率と非効率を抑制することを重視する立場である。


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