2007年10月06日

台湾海峡をめぐる「意匠」

 ちゃみ様のおかげで「マッコンキー」が「麦肯基」とわかりました。御礼申し上げます。土日月とフル稼働ですので、コメントはのちほどということでお許しください。

 話題があちこちにとびますが、今日は、「他人の褌」をそのまま、お借りします。佐藤空将のブログから引用させて頂きます。私自身は、以下の「シナリオ」が生じる確率は無視できる程度に小さいと思いますが、台湾海峡で米中が軍事的に衝突するという、最も極端なケースをシンプルに整理されているように思います。

 話は変わるが、門脇翁が発行しておられる小冊子「あけぼの」8月号に「米国側のある想定」というこんな記事がある。

●2008年北京オリンピックの終了を待って、中国は台湾に対し積極的行動に出る。翌9年1月中国海軍は、中国沿岸を航行中の台湾籍貨物船に対し、臨検を行い武器の有無を調べ、同時に台湾に対する経済封鎖を宣言する。

●これに対しアメリカは、空母と長距離爆撃機と海陸遠征部隊を派遣して、西太平洋地区を防衛する。

●中国はこれを中国への内政干渉であると抗議し、日本政府に対して中立を要求する。

●中国は台湾に対し、200基を越すミサイルを発射して、台湾の空軍基地、指揮センターと主要都市を攻撃する。

●30分後250機の爆撃機により台湾の軍事基地を爆撃。

●アメリカ大統領は、中国の台湾侵攻に対し武力で阻止する決心をする。

●これに対し日本政府は、国会の承認を経なくては、国内の米軍基地使用を承認することは出来ないと、アメリカに通告する。

 これに私の見解を付け加えるとすれば、◎時の米国大統領は誰になっているか?◎彼(彼女?)は台湾防衛を決心するか?◎イラクを中心とした中東情勢はどうなっているか?◎ロシアはどう出る?◎中国バブルははじけていないか?◎日本の首相は誰?福田?麻生?それとも小沢??◎その時沖縄では「11万人大集会」が開かれ「中立宣言」する?

 いやはや、何と無く現実味を帯びた「想定」で、2009年も、想像を超える事態がおきるような気がする・・・

(『佐藤守のブログ日記』2007年10月5日より引用)

 まず、このシナリオでは中国が台湾に対し、臨検や経済封鎖を行うタイミングと手段に関して完全にフリーハンドを有していることが前提のように読めます。現実的な問題として、「台湾籍貨物船」に対してのみ、臨検を行うことが可能なのかどうかは、素人なので疑問が残ります。また、臨検や経済封鎖を行うとなると、中台の往来だけでなく、台湾との通商のある国すべてが影響を受けるわけですから、中国が国際的に孤立する可能性が高い危険な行動でしょう。このような行動を起こした時点で、最後の部分である日本政府が米軍基地使用を事実上、認めないという選択肢はほとんどありえないと思います。

 このシナリオ自体が生じる確率そのものは低いと評価しておりますが、一つ一つの項目は、興味深い点もあるので、素人的に考えてみましょう。まず、台湾の政治日程ですが、立法院選挙が2008年1月、総統選挙が2008年3月に実施される予定です。現実的な問題としては、国民党が両者を制したときに、台湾の政権が中国への圧力に屈し、「一国二制度」をのんでしまえば、中国による台湾併合は完了してしまいます。その場合、アメリカの介入を排除するように、台湾を威嚇しながら、内部的に台湾の政権やメディアなどに侵入し、「一国二制度」をのませてしまうというのが、最も「安価」で確実な方法のように思います。ただし、この場合にも、武力による威嚇という点で経済封鎖は有力な手段ですが、これを中国の「国内問題」であるかのように演出できるかが鍵になるのでしょう。その演出に、仮に成功したとしても、国際的な非難を浴び、場合によってはアメリカの介入を招くリスクは決して無視できないでしょう。台湾の国連加盟に関する国民投票が中国を刺激するのは間違いないのでしょうが、仮に実施されて、加盟すべきだという結果になったとして、中国が介入する理由となりうるのかは、やや疑問ですが、中国が「現状維持」以上のものを望んでいる場合、この程度のことでも介入の口実にはなるのでしょう。

 以上のことを考慮すると、なんの背景もなく、いきなり臨検や経済封鎖が可能かどうかはやはり疑問ですが、無視はできないのでしょう。それでも、このような事態が生じる確率は低いでしょうが、万が一、中国が強硬な手段に出た場合、アメリカはどのように動くのかという点になると、これが非常に難しい。現在の「米中接近」からアメリカの対台湾政策を危ぶむ意見も多いのですが、これは予想がつかないです。シナリオでは臨検と経済封鎖のタイミングが2009年1月となっておりますが、大統領の交代時期を想定していると読めます。また、中国の挑発に対して具体的な措置を講じるのは行政府ではありますが、その長が誰になるかということ以上に、アメリカの世論、もっと限定すれば、そのときのアメリカ議会に中国の行為が悪玉としてプリゼントされるのか、台湾が中国の挑発を招いたとして台湾が悪玉としてプリゼントされるのかが、はるかに利いてくると思います。この点が、次期米大統領が誰であるかという以上に私は重要であろうと。大統領選挙と同時に実施される上下院の結果もわからないので、仮定に仮定を重ねるしかありませんが、中国に宥和的な大統領でも、議会で強硬論が支配的になれば、台湾海峡「危機」に無策であるというのは無理でしょう。逆に、対中強硬の大統領でも議会が宥和的であれば、説得が難しい。次期大統領が誰なのかという点が重要なのは当然ですが、それ以上に議会の動きが要注意だと思います。

 次に、中国の臨検・経済封鎖にアメリカが軍事的にプレッシャーをかけた場合の日本の対応ですが、中国が日本に対して「中立」を要求してきたとして、「中立」の中身が微妙です。空母機動部隊を派遣する場合、日本がこれを拒否するのは事実上、不可能ではないかと思います。なにもしない以上に、リスクが高く、拒否した場合、事実上、日米同盟というより日米安全保障条約は死文化するでしょう。むしろ、その後、「アメリカ大統領は、中国の台湾侵攻に対し武力で阻止する決心をする」という事態に至ったときに、海自や空自へのなんらかの支援を求めてくる可能性があって、これですら、協力しない場合、事態が収まったときに日米同盟が危機に瀕する可能性が高いと思います。ここで問題になるのは日本国内の世論と政権の「決断力」でしょうが、ぶっちゃっけ、政権の決断は混迷する可能性が高いでしょうね。周辺事態法の適用に踏み切れるのか、どうか。いずれにせよ、中国から圧力がかかるのでしょうが、ここでいきなり中立を宣言するのはあまりにリスクが高く、日本らしく曖昧にする可能性が高いと思います。

 次の中国の軍事行動ですが、これは越えてはならない一線でしょう。素人なので自信はありませんが、その前段階でアメリカが介入を躊躇った場合に、そのハードルを取り除く愚考としか言いようがありません。簡単に言えば、その時の状況に依存するとはいえ、宥和の背景にある、中国の言い分をある程度、認めることによって、事態の沈静化を図るという「幻想」を打ち砕く可能性がきわめて高いと思います。簡単に言えば、この段階まできてしまうと、中国がいかなる外交的言辞をもってしても、中国が台湾を攻撃しているという事態が明白になるので、アメリカを中心に先進国の態度は、仮にこの段階以前で宥和的な雰囲気が支配的だったとしても、それを打ち砕いてはるかに強い対応にでるでしょう。国連安保理決議はでないでしょうが、そういう問題ではなくなる可能性が高いと思います。「これに対し日本政府は、国会の承認を経なくては、国内の米軍基地使用を承認することは出来ないと、アメリカに通告する」というのは民主主義国の「ブレ」を無視した話だと思います。ただ、仮に、ここまでバカげたことをした場合、「戦後」、アメリカから一方的に日米安全保障条約の更新を認めない事態が生じる可能性が高いでしょう。

 現実に日本が対応に苦慮するとすれば、こちらのようなケースでしょう。この場合、台湾関係法が機能するかどうか、かなり微妙な問題が生じると思います。また、日本政府の長が誰であれ、対応が非常に困難だと思います。露骨に言えば、台湾海峡で中国が無神経に剥き出しの暴力を行使すれば、話は透明になるのでしょう。そうではない場合の方が中台統一の可能性が高いというのが、今日の「寝言」です。
posted by Hache at 07:59| Comment(0) | TrackBack(0) | まじめな?寝言