2007年10月25日

無責任に財政を考える

 そういえば、久しぶりに会った友人の表情が政治の話になると暗くなって、なんだか投げやり。私とまるで異なるタイプなので、補給活動などやめてしまえと言い出すので、おそるおそる民主党のほうがいいのと尋ねると、国際貢献自体やめてしまえ、ODAなんか出している場合じゃないと言い出すので、ちとびっくり。どうしたんだろうと思ったら「日本は詰んでません」と尋ねてくるので、念のために「将棋の詰みのこと?」と尋ねるとそうですとの返事。私は諸事迂闊なので、おそるおそる何の話かと思ってそんなにやばいのと迂闊なことを言ったために、「財政が危機的状況で外国に金をくれてやる必要はないでしょう」と怒らせてしまいました。

 それでも性格が曲がっている私は、まともに財政再建なんてやると碌なことがないよと諭すしかない。政党や役所の回し者でもなんでもなく、彼は消費税増税をすべしとのことでしたが、これはさすがに。税収の弾性値の計算など最近のデータを見ていないので細かい議論は避けましたが、税金を増やして喜ぶ人はいないよ、あなたがよくても他の人がいいって言わないと話にならないからと言うと、少しは冷静になりました。現金なもので、世界的な信用不安が広がるほど、ありがたいと思っている様子。年明けあたりに銀行セクターは買いどきかなあとあっけらかんとしているので、こちらがあっけにとられました(あくまで彼の判断で利益が出るのか含み損を抱えて「塩漬け」になるのか、私の財布には影響がないので薄情ではありますが)途中で気がついたのですが、民間部門は信頼しているけれども、公共部門は信用できないという感覚があるようで、それを指摘したら、そりゃそうですよとあっさり認められてしまいました。もちろん、財政問題は深刻ではありますが、財務省の広報が効きすぎているのか、少数だとは思いますが、「詰んでいる」と感じている人もいるようですね。あんまりこういう人が増えてしまうと、増税以外の手段は、「詰んでいるのに穴熊!」という状態になってしまうので、匙加減は考えた方が良いのかも。

 自民党内の消費税をめぐる議論はさすがにウォッチする気力が起きないのですが、ネットで経済関係のサイトを見ても、どうもなあという感じ。政策を主張するタイプのサイトよりも、丁寧にG7の声明などを分析しているサイトを見ている方が、楽観できない状態であることが伝わってきて、政策の選択の余地などそれほどないことを感じます。延長戦15回裏二死満塁でサヨナラ満塁ホームランみたいな話を読むと、別の意味で切迫しているんだなとは思うのですが。勝海舟が財政困難から空論が生じるという発言は、日清戦争の批判としては、世論は別として伊藤内閣批判としては二流だとおもいますが、世相を捉えているなあと思います。選択の余地が狭まると、みんな息苦しいのでえてして妙なロマンを求めたり、主張しているご本人はご無体な話だと確信犯であったりしても、煽りにマジレスする方が増えるものだなあと思います。結局、選択肢が限られている中で、それじゃあ嫌だという程度の話でしょう。

 話を財政に戻しましょう。もちろん、長期では選択肢を増やす努力をすることが必要ですが、そんなことを急にできるわけもなく、短期の努力の積み重ねとしてでてくるもので、実は歳出削減が与野党で事実上コンセンサスとなっている状態ですから、まずはこちらを実のあるものにすることが大切だろうと。今は不毛な与野党対決でコンセンサスがないように見えますが、歳出削減が必要だという大枠では全くコンセンサスがないという状況ではない。政府も民間議員の試算として基礎年金を全額税負担にする場合、消費税率を5−7%程度をあげる必要があるとの指摘をされるそうですが、こういうジャブをかましながら、まずは歳出削減で実を挙げてゆくのが筋だろうと。それだけやっていると、息が詰まりますから、上手に無駄遣いをする必要もあるのかもしれませんが。

 余計なお世話だと思いますが、こちらで紹介されているデータを見ましたが、少なくとも少子化対策への公的支出と出生率との相関があるようには見えませんでした。まあ、同一サイト内で同一年度の少子化対策の公的支出と合計特殊出生率の相関も計算されていて、Rスクエアが0.2794となっており、作成された方自身が高くない(はっきり言ってしまえば、公的支出の多寡では合計特殊出生率を説明できる水準ではないでしょう)と書かれているので引用されているサイト自体はやや良心的だとは思いますが(高齢化との相対比はちょっと意味不明ですが。このあたり、やはり結論ありきかなと懐疑的になります)。このデータを見れば、むしろ、「少子化対策」に公的支出を増やすことがどれほどの効果があるのかは疑問でしょう。このあたりはデータを丁寧に見る必要があると思います。強いていえば、この状況下で子育てをされる方の負担を軽減するという目的にした方がよさそうです。また、教育への支出水準が低いというのも、具体的な政策的効果と対応しているのかが明確ではなく、あまり意味がないと思います。記事を書かれた方、コメントされている方はとってもよい方たちだと思いますが、数字を出されると騙されそうなタイプですね(実際は、自分の主張に耳障りのよい良いデータにのみ反応しちゃうんでしょうけれど)。

 私自身が現在進行している歳出削減の実態に疎いので「べき論」になってしまいますが、まずは余計な仕事を増やさないということが基本だと思います。上手に役人にこの事業は不要です、あるいは縮小してもかまいませんということを正直に申告する方法を考えたいところですが、難しいところです。正直に申告して予算が削減されるとなると、バカ正直に言うわけがないわけでして、かくして政治のトップダウンで無理やり予算を削って、おそらくはかなりの期間、不必要な事業がある程度、温存されてしまう一方で、必要な事業もある程度、削られてしまうのでしょう。もっと露骨に言えば、歳出削減にメリハリをつけたところで官邸をはじめ、政府、議員と近い事業が生き残る可能性も無視できないでしょう。それじゃあ、余計に悲観的になるじゃないかと思われるかもしれませんが、よほど目利きがいなければ、そんなものです。

 要は、財政というのは、様々なインセンティブとディスインセンティブが混在している行政の姿を金額で現しているということです。選択肢が限られている中では、インセンティブを与える政策は歳出の増加を伴い、その効果が必要な経費よりも大きく上回らない限り、実行可能性が薄いでしょう。ディスインセンティブを取り除くには、役人との関係を密にする必要があります。正直に申告した人が報われるメカニズムが必要なのですが、これはなかなか難しい。あれこれ書いておりますが、財政の現状を私は「危機」というより「硬直化」と見ておりますが、まずは、硬直化するディスインセンティブを取り除いてゆく地道な作業を行うことが、効果が目に見えるまでには時間がかかりますが、不可欠だと考えております。それにしても、最近のネットでの経済関係のサイト(ごく一部を除くと、ほとんど見ませんが)を見ていると、インセンティブの問題にまるで配慮がなく、自分の見解と異なる方たちを罵倒するだけの「保守論壇」と似た雰囲気を感じます。まあ、選択肢が限られているということを認めない人たちというのは、似たような行動をとるというだけなのでしょう。言いにくいですが、自分の主張が通らない日本は滅ぶかのような「憂国の士」が多く、失礼ながら、平和に暮らしている私には理解不能だったりします。

 歳出削減を行った上で消費税率を引上げを争点にし、引上げを主張した政党が衆院選で勝利しても、実際に消費税率を引き上げると、有権者が事後的に「裏切る」可能性も無視できないでしょう。橋本内閣はまさによい実例です。かといって、事前には消費税の「し」の字も出さずに、引き上げても、恨み骨髄になるだけでしょう。いずれにせよ、私は現状では否定的ですが、消費税率を引き上げる場合、景気の減退は避けられないわけですから、第1にタイミング、第2に景気へのショックを和らげる財政政策と金融政策のミックスが不可欠になります。現状では消費税率の引上げに日本経済が耐えられるかどうか懐疑的ですが、仮にショックを吸収できる状況がやってきたとき、結局ものをいうのは政府の日銀への説得力というところでしょうか。「デフレの原因は日銀の『バカの壁』」説は、失礼ながら影響力がない方がいくらでも叫ぶのはなんの問題もないのですが、政府や財務省が間違っても言わない方がよろしいんじゃないですかと思いますね。フフン。 
posted by Hache at 01:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ふまじめな寝言