2008年01月07日

リーダーの選び方 合衆国編

 かんべえさんの米大統領選挙ウォッチングが絶好調のご様子。やはり、好きこそものの上手なれというところでしょうか。政策ありきで賛同する人を集めようというよりも、有権者、とくに特定の政党への「ブランドロイヤリティ」が薄い人たちを巻き込むために政策が変化してゆく、民主主義のプロセスを期せずしてよく描いているなあと感心します。このような傾向を「ポピュリズム」と見ることもできるのしょうが、それ以上に、この国よりもはるかに多様な有権者層を抱えるアメリカの政治家が多様なニーズを反映し、集約してゆくダイナミズムを興味深く見ております。また、政治的リーダーの個人的資質を否応なくさらけだしてゆくプロセスでもあって、このあたりは内政問題(日本人である私にはぴんとこない論点も数多くありますが)でよくでてくる印象があります。アメリカの大統領選挙が各候補者の政治的リーダーシップを試す最善の方法であるかどうかは私の手に余りますが、長い期間をかけて候補者の多様な側面を浮き彫りにしてゆくということを考えると、優れた点が多いように思います。おまけに楽しみながら、「商売道具」にしてしまう人まででてくるわけでして、「雇用」まで生むのかと不謹慎な「寝言」が浮かびます(戦争と選挙を「食い物」にするというのは、やはり人を食った話ですね)。

 かんべえさんの周辺には、アメリカ・ウォッチャー、失礼な表現をすると、アメリカ・オタクの方が少なくなく、2006年の中間選挙後に「みなさん、次の民主党の大統領候補はヒラリーで決まりと思われているでしょうが、実は、同僚議員に最も信頼が厚いのが、オバマです」というところから、はじめてオバマという名前を覚えました。恐ろしいことに、議会で可決した主要法案への賛否などのデータが整備されていて、ありゃまという感じ。この種のアメリカ・「ヲタク」(尊敬の念をこめた愛称です)の方々のお話を伺っていると、アメリカ大統領選挙というのは、政策だけでもいくつもの争点があり、なおかつ政策だけで決まるものではないということでした。あまりに平凡な感想ですが、アメリカ最大の政治の「祭典」は、実に多岐にわたるイベントからなっており、なおかつ勝者は一人という過酷な結末が待っており、私のような素人さんでも、わからないなりに楽しめます。既にハードルが高いので、「食い物」にしようという野心はないのですが(正直なところは「つまみ食い」が精一杯です)。

 さて、こちらでは、かんべえさんが暗躍して、運営者の方から「平時の選挙」という感想も漏れています。『世界の論調批評』「ブッシュ外交安保政策を採点」では、Krauthammerのコラムを紹介した上で、「もっとも中間選挙後のアメリカの世論の主流は、イラク戦争は初めから誤算であり、失敗だったことが民意で確認されたというものであり、成功と認めているのは、わずかにクラウトハマーのような保守派だけです」という嘆きともつかない評価がされています。さらに、「イラク戦の当初から、米国の戦争遂行者の夢は、イラクを米軍の恒久基地を置く同盟国にして、それを中東政策の要とすることでした」という指摘がされていて、イラク戦争とその後の占領統治の戦略が示されています。他方で、安井明彦さんは、『日経CNBCジャーナル』のコラムで「一方で、最近の選挙で圧倒的な存在感を示してきたイラク戦争を巡る議論は、一種の膠着状態にある。不人気な戦争を擁護したくない共和党候補はもちろんのこと、あれだけ反対していたブッシュ政権による『増派』が戦況の安定につながっているだけに、民主党候補でもイラク戦争には触れにくい。ニューヨークタイムス紙のコラムニストであるデビッド・ブルックス氏は、『2008年の選挙は「戦後」の色彩を帯びそうだ』と指摘している」という興味深い評価をされています。

 イラク戦争が大統領選挙の主要な争点になるのかどうかはわかりませんが、「変化」がキーワードとはいえ、イラクからの即時撤兵論が力を失いつつあり、しばらくは膠着状態が続くのでしょう。他方で、イラクのみならず、中東全域でブッシュ政権は外交上の資源を投入し続けており、新政権に移行しても選択の余地が少ないのかもしれません。希望的な観測ですが、「イラクを米軍の恒久基地を置く同盟国」にするという「夢」は異なった形で実現する可能性も消えてはいないと思います。ただし、新政権が「内向き」になった場合には、このような観測は願望にすぎないのでしょうが。

 それにしても、予備選挙の段階からリアルタイムで観察するのが『溜池通信』の「お約束」とはいえ、毎回、新しい「発見」があるのが楽しいです。政策論争がないとか、ブッシュ政権の成果を否定するのはいかがなものかとか、オバマは大丈夫かと「外野」の心配をよそにアメリカでは実に多様な予備選挙が実施されていて、あらためて分権的社会の意思決定の過程を楽しんでしまいます。「宝の山」は無党派層にありというのは、太平洋の東側でも同じようでありまして、ちょっとだけうらやましいのは、どこかの島国よりも「スター予備軍」のヴァラエティが広いということでしょうか。素人目には過酷とさえ映る競争の中からリーダーが生まれてくる。そんな分権的社会の活力をアメリカが失っていないことを痛感します。