2008年04月30日

ユーラシア大陸の東側の民主主義国

 4月27日の衆院山口2区の補選や国内の揮発油税の暫定税率をめぐるドタバタは気になりますが、とくに感想めいたこともあまりありません。強いて言えば、ガソリン価格が上がったり下がったりと忙しいと、普通の人たちは朝令暮改というイメージが残るのでしょう。私自身がそう感じているからかもしれませんが、政治がなにかをしてくれることよりも政治がよけいなことをしないことを希望するという意味で、期待値が下がっている感覚があります。

 イラク関連の記事とアフガニスタン関連の記事を読んでいますが、驚くほど状況が悪いように感じます。個々の話はまたの機会ということにしまして、「時の最果て」らしく、ちゃらんぽらんな「寝言」でまいりましょう。

 ユーラシア大陸の中心部は、ロシアと中国という歴史的に専制政治を行ってきた国々が抑えています。ロシアを中心に地図を見ていれば、西の果てに民主政が定着しているEU諸国があり、東の果てに日本やインド、韓国、台湾、東南アジア諸国の一部など歴史の差がありますが民主政が定着しつつある国々が点在しています。アフガニスタンではNATOが存続の危機といってもよい状況ですが、西側の民主主義諸国は自ら「攻撃」にはたえられないのかもしれません。また、旧ソ連のような明白な脅威が存在しない状況では、NATOは目的が曖昧になりつつある冷戦後の状況を反映しているのかもしれません。逆に言えば、ロシアへの警戒心は皆無ではないのでしょうが、冷戦期と比較すれば、はるかに希薄なのでしょう。

 ユーラシア大陸の中央部から東部にかけて最大の変化が生じています。当然のことながら、中国の台頭であり、キッシンジャーも19世紀後半のドイツの台頭となぞらえています。ただし、キッシンジャーは経済や財政的な米中の結びつきなどが米中衝突の可能性を和らげると指摘しています。米中が衝突するのか、共存するのかという問題は重要な問題ですが、それすらもここでは考えずに地図を眺めてみましょう。聖火リレーに関しては、ネットでも実施の前後で厳しい意見を読みましたが、日本ではチベットを人権問題として捉える雰囲気は欧米より希薄だと思います。別にそのことが悪いという意味ではなく、中国が欧米よりもはるかに身近な脅威、それも安全保障は当然として環境などでも日本に悪影響を与えかねない存在として映っているからなのでしょう。また、朝鮮半島の北側には世界でも悪名高い独裁国家が存在している状態です。現在は、中国のナショナリズム高揚への反発が日本側を刺激している状態だとみておりますが、長期では中国の相対的な国力(曖昧な表現ですが便利ですので利用します)の向上と日本の長期的な停滞に対する恐怖感が日本人にのしかかってくるのでしょう。

 ユーラシア大陸の中央部を占めるロシアと中国の関係を考えると、あらためて日本が危険な位置にあることを感じます。国際法に疎いので誤っているかもしれませんが、日本は中露と正式な講和条約を結んではいません。中国との間には日中平和友好条約が存在するものの、日本がサンフランシスコ講和条約で主権を放棄した台湾に関しては外交上、日本側にフリーハンドの余地が残る表現になっているとはいえ、中国側も自らの領土であると読める主張をしています。ロシアに至っては、領土問題自体がまったくといってよいほど解決しておらず、先日の訪ロではなにが成果だったのかすらわからない状態です。ヨーロッパはロシアとの関係を見ていればよいのに対し、日本はロシアのみならず中国をも同時に敵に回しかねない、潜在的には危険な位置にあるということを忘れてはならないと思います。

 それでは日本はユーラシア大陸の東側に位置する民主主義国とNATOのような地域集団安全保障の枠組みを設けているかといえば、それとはほど遠い状態にあります。韓国とは竹島をめぐって領土問題が存在しますし、台湾も日中の間で向背が定まらないだけではなく、尖閣諸島をめぐっては紛争当事国になりかねないリスクもゼロではありません。もちろん、日本人の立場からすれば、竹島は占領下のどさくさに紛れて火事場泥棒にあっているようなもので、尖閣にいたってはいいがかりのようなものでしょう。敗戦のおかげで旧植民地から手を引くコストが低くなったことは間違いないのですが、主権国家として機能を回復するプロセスで最も基本となる領土の保全という点でさえ、日本はユーラシア大陸の西側と異なって、専制国家と民主主義国家の双方にリスクを抱えている状態です。アジアにも地域集団安全保障をという発想もあるようですが、ソ連という明白な脅威があった西側でさえ、NATO内部で混乱がありましたし、参加する国々によって脅威の捉え方も異なってきます。ユーラシア大陸の東側ではアメリカを中心にアメリカとの同盟によって民主主義国が結びついている状態で、自発的に東側の民主主義国が結束する可能性は低いと評価するのが当然だと思います。さらにいえば、日本の安全保障に最も効果的な外交政策である日米同盟においてすら集団的自衛権を使えない状態では地域集団安全保障には形以上の意味はなく、10年ぐらい前にずいぶん批判されましたが、アジアにおける集団安全保障は、民主主義国がバラバラで、潜在的に脅威となりうる国まで巻き込むとなると、なんの担保もない枠組みにしか現在でもならないでしょう。

 アメリカが日本と事実上、手切れをするとすれば、日米安保条約の代わりに地域安全保障の枠組みをつくって日米同盟を代替させればよい。そんなことが現実に起こるかどうかは別として、米軍の抑止力が低下した場合ですら、日米同盟に代替する外交政策はないという当たり前ですが、今後の大統領選挙のプロセスと結果を見る際に忘れずに観察したいと思います。