2008年09月30日

渦の中へ

 『日経』の一面トップがドル資金の供給倍増で、「金融危機封じ込め」という見出しでした。記事の内容ではまずいことに、欧米の銀行がドル資金をとれなくなって、日米欧の各中央銀行が完全に後手に回っている様子。さすがにマスメディアでは書けないでしょうが、大手金融機関が一つでも崩れると、もはや危機ではなく、一気に金融恐慌になりかねない緊迫した状況でしょう。

 他方で、"Bailout Plan"に関しては法案成立後の問題を論じていて、朝刊が発行された段階では下院を通過することが前提になっていた様子。無理もないでしょう。米各紙も日曜日には合意に達したと報道していましたから。で、通ったんでしょうねとWall Street Journal記事を読むと、もはや「ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ 」などといっている場合ではなく、なんと賛成205、反対228で否決。時間的には朝7時にインターネットでWall Street Jounalを先に見て、最悪の事態を確認してから、『日経』でドル資金供給の記事を読んだのですが、もうなにが起こっても驚かないところまできてしまいました。投票直前までブッシュ、チェイニー、ポールソンが共和党議員の説得に当たっていたというのが情勢緊迫を感じさせる以上に悲しい。"Lawmakers on both sides of the aisle suggested the legislation is not dead."というのがなんとも空しい。既に、ないよりはマシという状態だった法案よりも実効性のある法律が通る目算はないでしょう。ダウ平均は777.89ポイント下げただけではなく(−6.98%)、30の銘柄すべてが下落した。下げ幅でゆけばS&P500の方が大きく、8.79%の下落。年金なども絡んで、実体経済への影響がより深刻になる前に不安心理がいっそう強くなるでしょう。

 Wall Street Journalの記事では記事の最後に共和党のHensarling議員の発言を引用しています。"I cannot in good conscience support this legislation."非難をするつもりはありませんが、打算でなく良心にもとづいた行動は、しばしば破滅を招く。政権が今回の法案に資源を集中していただけに、もはやすぐに代替案がでてくる見通しが立たない。救命具がないまま、金融市場は渦の中へ飲み込まれた。

2008年09月29日

事務連絡(コメント・トラックバックに関して)

 書き落としておりましたが、2008年9月26日以降の「寝言」に関しては、コメント・トラックバックを受付後承認という形式にしております。問題のあるコメント・TBがあったことが理由ではなく、管理不能の状態になる可能性があるので、念のために承認制にしております。呼吸は座っていると少し息が上がる程度ですが、足萎えがひどくなっており、前回とは異なる症状を呈しているので、警戒モードです。なお、それ以前の「寝言」に関しては、さくらインターネット社のサービス仕様で個別の記事ごとに設定を変えなくてはならないので、中途半端ですが、放置しております。まあ、PCの前にまったく座れなくなる確率自体は低いとは思いますが、無視はできないので念のための措置です。
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文教族の破壊力

 朝刊を見たら、「麻生丸座礁」とあり、もう活字では表現できない気分です。あえて気分を表現すれば、「ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ 」。「えもじお」をいれてほしいなあなんてお願いされたこともありますが、お断りしました。あまり美学はありませんが、これは美学に反する。まあ、しかし、なんともいえない脱力感を表現するのには絵文字というのは便利ですね。あえて文字で表現するなら、「カオスをこえて終末が近づく…」というところでしょうか(ケフカ相手に全滅するのはよほどの……)。「終末」を迎えるのが自民党だけなら、どうでもいい話ですが……。金融危機を見ているよりははるかに気楽なのが悲しい気もします。実体経済に影響が出る頃には日本政府が打てる手などあまりないでしょうしね。言い訳になりますが、日曜日の「寝言」は辞意表明を知らないまま、書いたものです。

 さて、某サイトによると、出所不明とはいえ、文教族は誰にでもできるとのことで、あらためて読み返すと、これはひどい。あまりにひどすぎる。文教族たるもの、並々ならぬ力量が要求されるわけでして、決してバカにしてはいけません。私の感覚では、文教族たるには以下のような偉大な資質が要求されます。

(1)鋭い洞察力

 複雑な要素がからみあっている教育の問題を日教組が諸悪の根源とバッサリ断じる洞察力はすばらしいです。うっかり日教組と「全国学力・学習状況調査」の結果を複合させると、日教組の組織率が80%を超える県が1位だとか気の利かない批判を招きますが、教師のモラルが低下している原因は日教組、それを見ている子供がバ○になる原因も日教組、「モンスターペアレント」が出現する原因も日教組と「わかる人にはわかる」話です。文教族というのは、普通の人が複雑に考えすぎてしまう問題をばっさり切ってしまう、鋭い洞察力をもっています。現に、「火の玉」になるとおっしゃった方があっという間に炎上して燃え尽きたではありませんか。文教族の洞察力は、既に「実証」済みです。

(2)鈍感力

 引退された元総理も厳しい状況下にあった別の元総理に鈍感力が大切だと力説されたそうです。「空気読めない」などというのは批判にもなっていません。政治家たるもの、まして閣僚となれば、マスコミがどう反応しようが、世論なる実体があやふやななにかがどう反応しようが、「言うべきことは言う」という立場を貫くのが当然です。この立場を主張すること自体は簡単ですが、実行するのは難しいものです。なにかと異論を唱えにくい「単一民族」の中で政府に「ごねる」傾向の強い国でこのような資質をもった方は天然記念物並に貴重な存在です。また、公務員削減で逆手をとって天下り先を無闇に増やすお役所の行動を黙認するのも、とっても大切な鈍感力です。「お役人」と喧嘩するのではなく、彼らに焼け太りの「自己改革」のインセンティブを与えることこそ、族議員の大切な役割です。

(3)あふれんばかりの愛国心

 悲願であった教育基本法の改正が成立した後が肝心です。「我が国と郷土を愛する」という文言を入れても骨抜きにしようとする「闇の組織」である日教組の撲滅こそが教育「改革」の総仕上げです。「民主党の支持基盤」というのは枕詞であって、愛国心のたりない自民党内を最終血栓決戦へと導くことこそが文教族の偉大な使命です。日教組の組織率が9割を超える地方都市で軒並み国旗掲揚・国歌斉唱が行われているという事実もまやかしにすぎません。敵は強大ですから、普通の戦術では倒せません。「せいすい」や「バニッシュ→デス(orデジョン)」で一撃で倒せる相手をコツコツ呪文(ときどき行動している本人のみに「レベル1デス」がかかる可能性あり)を唱えてゆくのが正道ですから。大臣自ら所管を放棄して特攻してゆくしかないのです。仮に、敵が実体のない幻にすぎなかったとしても。

 以上で、「文教族」なら誰でもできるという見解が謬見であることは自明でしょう。普通の人にはまず無理でしょう。普通のことを普通にできない尋常ではない情熱で実行する方にのみ約束された「聖地」への道なのですから。文教族というのは、常人が近づいてはならず、まして私のような、いかれた「外道」には縁もゆかりもない、「約束の地」におられる方たちなのですから。


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2008年09月28日

キラーコンテンツの衰退?

 土曜も通院で、なんだか医療保険を食いつぶしているなあとため息がでます。おまけに外出すると、足はむくむし、息が苦しくなるので、出かける前にちょっとだけ欝になってアメリカ大統領選挙の討論を見ていたら、「ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ 」てな感じになって、病院に行きました。最初しか見ていないので討論の突っ込んだ中身はわからないのですが、マケインは露骨にオバマを攻撃して、若い世代には嫌われそうな笑みを最後に浮かべるのが気もち悪い。で、オバマは挑発に弱いのか、途中で割り込もうとして下品な感じ。さすがに自民党総裁選よりは中身がありましたが、「大丈夫か?アメリカ」という感じで、ただでさえ循環器に負担がかかっているので心臓までやられてはかなわないとオバマとマケインのおかげでそそくさと病院に出かけました。最初から最後まで見たのが、確か、ブッシュ対ゴアの第1回ぐらいなので適当な感じですが、指導者の劣化というのは日本だけじゃないのかもと思いました。討論の内容からゆけば、ゴアが実現可能性は疑わしいものの、おもしろいことを言っていて、ブッシュの話はまともだけれど、小振りな印象でしたが。ただ、ブッシュの首の細さが、やっぱり上流の人なんだなと変なところで感心しましたし、ゴアがブッシュが話している途中でやたらと首を横に振るのがひどく印象が悪かった覚えがあります。ひどく素人くさい感覚で、日本のCSでの解説では、やたらとゴアをほめているところが多くて、首を振るのは視聴者を意識した上手な演出だそうで、素人にはそう見えないけれど、プロが言うのならそんなものかなと思いました。

 そういえば、こんな話も当時は出ていて、へえと思いました。翌年、「INSS報告」がでた流れからすれば、ごく自然ではありますが。それにしても、2000年の大統領選挙は大荒れだったなあと懐古趣味。それにしても、党派性というのもある種の欲で、欲や先入観がある状態では物が見えなくなるとはいうものの、実践されておられる方がいるというのは、びっくりした覚えがあります。

 この夏くらいから大統領選挙の話が出ると、岡崎久彦氏が決まって「駄目だよ、僕は今回はpartisanだから」と言うんです。元大使がゲリラになるわけではもちろんなくて、この場合は「党派色が強い」の意味。「僕は色つきだよ」(ブッシュ支持だから、客観的な意見は言えないよ)といった感じでしょうか。アメリカ社会はどんどん中道寄り、無党派になっているはずなのに、大統領が決まらないからどんどんpartisanになっている。そういう意味でも早く収拾した方がいい。果たして今週末で決着がつくかどうか(かんべえの「不規則発言」(2000年11月24日)。

 8年前は世界最古の近代デモクラシー(日本語としても変ですが)も完璧ではないことを実感したことを思い出します。マケインは「ガラスの壁」よりも厳しい制約に直面しているわけで、「チ○、○ブ、○ゲ」(伏字は通称「通信品位規制法」とは無関係に自主規制)という鉄壁のジンクスに加えて、アメリカ大統領としては首が太すぎるという厳しい難関を潜り抜けられるのかどうか。オバマは煽りに弱そうな印象で、マケインの嫌らしいとはいえ限度のある批判でもあれでは、アフマディネジャドあたりに罵詈雑言を言われたら、やばそうな印象(宥和的だったのが突然、細かいことを言い出して、言っている途中で切れてミサ○ルをぶちこんじゃったりして)。話が具体的というより細かくなるのは微妙ですね。

 自民党総裁選は所詮は自民党の「キラーコンテンツ」でしょうが、アメリカ大統領選挙といえば、アメリカという国の「キラーコンテンツ」。最初の30分だけチラ見した程度なので、まさに「寝言」ですが、次の4年間は本当に大変かもと思いました。


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2008年09月27日

小泉さん、ありがとう。ごきげんよう。

 国内政治は関心がないというより、「解」の見えない渦に入ってゆくのでしょう。そんな中で、小泉純一郎さんが議員生活を終えるとの報道に接し、これでよかったのだと思いました。引退の話は以前から出ていましたし、この話がでてくるタイミングを詮索するのがメディアの中心のようですが、引退に際して、素直にありがとうございましたと言えることは数が少なく、政治が長期で混迷を深めようとも、政治という営みの夢とビタネスの双方を身をもって示された小泉さんに心から感謝します。

 小泉さんの議員引退表明の真意など私にはわかりませんが、結果的にこれから生じるかもしれない政界再編で政治的に未熟な議員に担ぎ出されて、無用の混乱を招く根本、すなわち小泉純一郎という議員としての存在を自ら断たれたのは、それが小泉さんの本意であるかどうかは別として、やはり、小泉政権がこれから長期にわたるであろう政治的混迷の時代に、小泉時代にもはや戻れないにしても、なにがしかの支えになるのでしょう。

 『産経』が2008年9月17日に報じた記事に次のような記述があります。「乱戦 総裁選」という連載で加納宏幸氏による記事です。最初に読んだときに、小泉さんの冷徹さ(裏にあるなにがしかのパッションの表出)に震えました。

 一方、小池陣営は16日昼、東京・北青山のイタリア料理店でワーキング・ランチ。12日に「小池支持」を表明した小泉純一郎元首相も招き、改革路線をアピールした。
 だが、小泉氏はつれなかった。
 「今日、小池さんを応援している人もいずれ敵になるかもしれない。昨日の敵は今日の友。政界ってのはそんなところだ。あまり気にしないことだ…」
 そう話すと小泉氏はデザートも食べずに会合を後にし、16日夜の東京・有楽町での小池陣営の街頭演説会にも姿を見せなかった。


 ある討論番組で司会者の方が小泉さんが小池百合子候補(当時)と一緒に全国を遊説すべきだと提案していましたが、そんなことは小泉さんはしないだろうし、もし、万が一、そんなことをしたら、安倍・福田政権で子分に担ぎ出されて、混乱を招くことを徹底的に抑制した行為が台無しになってしまう。麻生政権の船出を確認して自ら去ったのは一貫した行動だったと思います。

 5年を超える統治はすべて美化できるものではないでしょう。しかし、当時の小泉総理が行った、政権発足当初のハンセン病問題で見せた人間味のある決断と日米同盟の強化や訪朝に集約される非情ともいえる決断は、一体のものであったと思います。今後、長期にわたる政治的混迷が予想される現在、日本人にもこのようなリーダーがいたのだという記憶は、単なる懐古にとどまらず、すくなくとも10年間は政治的リーダーシップを発揮できる政治家の出現を待つ、長期にわたる楽観的希望を保つかけがえのない資産だと感じます。
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2008年09月26日

国際金融における「血栓」

 当初は階段を上ると息苦しい、ここ数日は寝ていても息苦しいと肺梗塞の症状が現れて、気もち悪いなと思って予定よりも早く心療内科の先生に相談に行きました。RI検査は別の病院なので、あと3週間ほど待たないと、空きが出ない状態で、さすがに打つ手が難しい様子。激しい胸痛や呼吸困難などはないのですが、肺がどの程度やられているのかはわからないので、緊急時の打ち合わせとワーファリンを限界まで投与するという対応です。血液の循環が人体にどのような影響をおよぼすのかを実感する日々です。以下は、今回の金融危機と米大統領選挙を重ねあわせたい方には誤ったメッセージになるでしょうから、お読みにならないことをお勧めします。ドサンピンもとい、ど素人(一応、運が悪ければくたばる状態なんですが)の混乱した説明をお読みになられて(整理できていないことは予めお断りしております)、ご立腹されても迷惑ですしね。


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2008年09月24日

分権的意思決定メカニズム自壊の「歯止め」

 人間というのは最悪の事態にも慣れてしまうと鈍感な私はよく感じます。「人口減少社会」とはいえ、都市部はいまだに人口密度が高く、人と接触するコストを低く見積もるタイプがある確率で存在する以上、もはや自然現象として受け入れるしかない。間違っても他人の悩み相談に積極的に乗る、心優しい人間ではありませんが、たいていの場合、時間が解決する。早いにこしたことはないのですが、個人の問題というのは本人の切迫感にもかかわらず、まずはそういうものだと自分と環境を受け入れると、たいていの場合、解決しているものです。もっとも、だんだんと組織もそういうゆとりを失いつつあるようにも見えますが。

 しかし、やはり社会の問題というのは対応が速いのがベストであって、月曜日のアメリカ議会は民主主義の最悪の側面を見せてくれます。New York TimesでもWall Street Journalでもなんでもよいのですが、あまり主観が入っていないだけに、かえって絶望的な気分にさせてくれます。もちろん、文字通りの意味で望みが絶たれたというわけではないのですが、借りて保護はどうするのとか、納税者の負担が大きすぎるとか、しごくもっともな意見で議論が紛糾する間に、どれだけ費用が膨れ上がって行くのだろうかという感じです。誰が好き好んで銀行を助けよというものか。事態を放置して信用秩序が崩れたときの災厄があまりに大きいことは過去が示していて、繰り返しているのにもかかわらず、人間というのは変わらない。ブッシュ大統領が、"Given the precarious state of today's financial markets―― and their vital importance to the daily lives of the American people――government intervention is not only warranted, it is essential."とコミットした以上、元に戻ることは出来ないでしょうが、巨額の"bailout plan"に反発している間に、7,000億ドルで足りるのだろうかとすら思えてきます。サンクコストを回収しようとすると碌なことがないのですが。もっとも、今アメリカで進行している事態は、これから将来も他国でも繰り返される光景のような気がしてなりませんが。

 それにしても、こちらを読むと公式声明をきっちりと読むのが肝心だと実感させられます。ポイントの部分で、笑うところではないのですが、つい噴出してしまいました。"We are ready to take whatever actions may be necessary, individually and collectively, to ensure the stability of the international financial system."とあって、国際協調とはいえ、戦争と同じではないにしても、よく似た状態だなあと。笑ってしまった後で、金融危機であれ、政治的・軍事的危機であれ、個別の国で対応できない問題には集団的に対処するという発想になじむのは、ひょっとしたら非常に難しいことなのかもしれないとも思いました。新聞など読まなきゃよかった。MUFGがモルガン・スタンレーに出資するという話がなんだかひどく好感をもって受け止められているようで、ひょっとしたら幻で終わるかもしれないし、下手をすると、最大で10億ドルに満たない程度の出資なんて議会の審議が一日遅れるだけで溶けてしまうかもしれないよとかひどいことを考えてしまいます。ああ、この国のジャーナリストは徹頭徹尾、対岸の火事なんだなあと感じ入ってしまいました。もちろん、けっして分の悪い賭けだとは思わないですが、もはや業態の問題ではなく、"Doomsday Machine"が敵味方(旧投資銀行よりも投資銀行を飲み込んだ商業銀行の方が体力を試されている)なく、皆殺しにしようとしている状態ですから、リスクも相当あるわけです。他人に向かって「リスクをとれ!」とお説教するのは簡単ですけれどもね。たいていの場合、ご本人は安全地帯にいる。

 煽りが嫌いな伊藤洋一さんらしく、さりげなくG8ではなくG7による共同声明であることに触れて、「この声明はポールソンの呼び掛けで行われたそうだから、アメリカは『ロシアを外した』とも読める」と実に簡潔に述べられています。もともとロシアに声をかける気がなかったのか、ロシアとの折衝で意味がないと感じたのか、背後がつい気になるところですが。一方が勢力圏の拡大を当然の権利とみなしており、他方がそういう発想は古いと感じている場合には思わぬ見込み違いが双方に生じるものです。『読売』が報じた欧州委員会の「技術的なミス」を確認しておりませんが、海外でも出来レースと見られているのかと反発するよりも、「自由と繁栄の弧」の提唱者はEUでも歓迎されていると済ましこんでおく方が、大人かどうかはわかりませんが、精神衛生にはよいのでしょう。それにしても、今回の金融危機で民主主義諸国の「兵站」が傷むのは避けられないでしょうから、そこを狙ってくるのはごく自然な感じです。ロシアの行動を正当化しようというわけではないのですが。軍事的なコミットメントなしでロシアと交渉しようとするのはばかげた話だ。お互いが食い違った状態で批判をしたり、コミットメントなしで交渉せよと空理空論がでてくるのは、やはりアメリカをはじめとする民主主義諸国の兵站が伸びきっており、「銃後」が動揺している現実を反映しているのでしょう。

 経済危機と政治的・軍事的危機はしばしば重なり合って生じる。なにか法則性というほど厳密な関係はないのでしょうが、連日同じ対象を見ているのは、なんとなく惹きつけられるものがあるからなのでしょう。それにしても、「拝金主義」がけしからんとかのたもうている新聞が「日本勢 海外攻勢の好機」なんて下劣な見出しを平気でつけているのを見ると、この国の「インテリ」とみなされている人たちの知的水準がひどいものだと脱力する日々です。もっとも、サンクコストを覆水盆に返らずと割り切ることは分権的意思決定メカニズムの下では時間がかかること(アメリカのスピードはそれでも世界最速でしょう)を実感する日々をすごしている私はいっちゃっている可能性が高いのですが。現実問題としては、解がもはや他にないことは自明でしょうから、議会がどの程度の日数で解を解として煮え湯を飲むかの問題だと見ております。


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2008年09月23日

現在と将来を結ぶのは誰?

 連休明けの連絡のおかげで念のため療養期間を一週間伸ばしましたが、さすがにいつまでも「ひきこもる」わけにもゆかず、出勤しました。杖を使うのもおおげさですし、この数日、ちょっとずつ歩く時間をのばしたところ、20分連続でもむくまないので、杖なしで「出動」しました。帰ってくると、もうふらふらです。やはり、足のむくみがきつい上に、いつも通り、スーツをばっちり決めている方に背後から押されて、疲れきってしまいました。自宅と職場は快適なのですが、途中が嫌で嫌でしょうがない。さすがに3週間も休んでいると、手を打っているとはいえ、片付けないと済まないことが多く、勤務先ではインターネットにまったく接続しない専用回線で業務をしなければならないので、火曜日も出勤です(ひどいことを書けば、下手な役所よりセキュリティが高い)。ちと欝ですね。病気さえなければ、海外の方がいいなあと「寝言」というより、独り言。

 それにしても、帰宅するとニュースの山でびっくり。国内のニュースはどうでもよく、まず、アメリカの二大投資銀行が銀行持株会社への移行。グラス=スティーガル法による銀証分離がどうたらこうたらという解説が英語で読める範囲では多いのですが、当面はそんな話ではなくて、要は公的管理の下に入る、あるいは資産の切り売りをする準備ではないかと思っていたら、『日経』のHPを見てさらにびっくり。MUFGがモルガン・スタンレーの第三者割当増資に応じ、出資額が最大で9000億円程度に上るとのことで、昨年のCICによる資本注入での騒ぎはなんだったんだろうと思いました。これも、"Bailout Plan"が成立しそうだという見込みのもとでの動きなのかどうか。この状況下ではある程度の規模をもっているところでなければ動けないのでしょうが、MUFGが手を上げたというのは、過去形になったとはいえ、二大投資銀行ですら、資金がとれなくなっていたという切迫した状況を象徴していると思います。あれこれ政治も絡んだ深読みも可能でしょうが、あまり興味がないので、成否はわかりませんが、公的なレベルだけでなく、民間レベルである種の「国際協調」が形成されるプロセスなのかもしれません。

 頭が混乱したところで、伊藤洋一さんの『住信為替ニュース』(第1939号) 2008年9月22日)を拝読したところ、恐ろしいまでにクリアカットな問題設定と分析がされていて、脱帽しました(実は私自身はブログ形式ではない、従来のサイトへアクセスすることがほとんどですが)。自分であれこれ迷いながら整理したことがゴミくずのように思えてきます。それにしても、頼もしいレポートです。「不良債権買い取り機構」に関する分析の前に問題を的確に整理されていて、現状では日本語で読めるベストの分析の一つではないかと。伊藤洋一さんの問題設定ですぐれいてるのは、「6. 一時的な不安定は収まっても、それは『市場』への不信として残らないか」という点で、現在の混乱を考えると迂遠なように見えますし、この問いにすぐに解答を急ぐ必要はないと思いますが、実は、このような視点を提起している方は、私が知らないだけかもしれませんが、他にいらっしゃらないように見えます。くどいようですが、当面は金融危機を乗り切ることが大切ですが、乗り切った後にくる世界ということも考えておく必要があるのでしょう。

 「続き」は伊藤洋一さんの提起した問題について「寝言」というよりも、「とんでも」の感覚で考えて綴ったものです。「と」が好きな方は、祝日の暇つぶしにどうぞ。お天気がよさそうですから外で日光を浴びる方が健康的ではありますが。ひがみですが、私は仕事があるんですけれどね……。


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2008年09月21日

ブッシュ政権の「最後の戦争」

 いよいよブッシュ政権の「最後の戦い」が始まりました。以下は、2008年9月20日、ブッシュ大統領の演説の最後です。名調子というわけではありませんが、民主党と共和党の「亀裂」を埋める機会になるのかもしれません。逆に、この事態にまとまれなければ、終わっているという感じもしますが。

We've seen that resilience over the past eight years. Since 2001, our economy has faced a recession, the bursting of the dot-com bubble, major corporate scandals, an unprecedented attack on our homeland, a global war on terror, a series of devastating natural disasters. Our economy has weathered every one of these challenges, and still managed to grow.

  We will weather this challenge too, and we must do so together. This is no time for partisanship. We must join to move urgently needed legislation as quickly as possible, without adding controversial provisions that could delay action. I will work with Democrats and Republicans alike to steer our economy through these difficult times and get back to the path of long-term growth. Thank you very much.(September 19, 2008, Rose Garden).


 この演説でブッシュ大統領は、"Given the precarious state of today's financial markets―― and their vital importance to the daily lives of the American people――government intervention is not only warranted, it is essential."とも述べており、かんべえさんがお好きな共和党の綱領は事実上、破棄されたといってよいでしょう。市場でプレーする人がいなくなっては自由もへったくれもなく、モラルハザードを懸念するといっても、市場に参加する人がいなくなれば意味がない(ある意味では究極の規律を守る「均衡」かもしれませんが)。もはや、投資銀行の経営者が腹を切ろうが、終身刑になろうが、まったく意味のない状態まできているので、無意味な演出をブッシュはまったくしない。最高司令官のブッシュは大筋を示した後、実際の指揮・作戦を担当するのがポールソン財務長官、バーナンキFRB議長。

 詳細を出せ出せと外野がうるさい中、"Bailout Plan"がメディアでも報じられるようになって、金融市場は修羅場から戦場に変化するようです。こちらの記事では、民主党は金融機関だけではなくて、住宅ローンを抱えている家計への対応も法案に含めるべきだと主張しているようですが、この問題とは区別して対応しないと、話が複雑になりすぎる印象です。ポールソン司令官は、納税者の負担が最も少なくて済む方法だと懐柔すると同時に、ニューヨークタイムズの記事によると(記事の内容は若干、古くなっていますが)、"the failure to pass a broad rescue plan would lead to nothing short of disaster"と迫り、バーナンキ司令官は"Wall Street had plunged into a full-scale panic, and warned lawmakers that their own constituents were in danger of losing money on holdings in ultra-conservative money market funds"と援護射撃をしているようです。"Bailout Plan"は、直接にはモーゲージ関連の資産を金融機関から買い取るのがメインで、7,000億ドルもの「実弾」を用意するようです。当初は5,000億ドルという金額が報じられていましたが、この記事でも、FTの記事でも実際に必要になるであろう費用は1兆ドル程度だという数字がでておりますので、ひどい言い方になりますが、もう3,000億ドル上積みしてもよさそうですが、さすがに1兆ドルとなると、そんな金額をウォール街救済のために使うのかという野暮な話がでてきそうで、この場合は半端な数字の方がよさそうです。

 "deleveraging"による金融危機は決済システムにも波及しているようで、3ヶ月物のドルもむちゃくちゃな状態。1990年代後半の日本の金融危機では「ジャパンプレミアム」で大揺れしましたが、それでもTiborとLiborの差は最大で39bp超(0.40%弱)でこの数日の動きは異常な感じです。どこか一箇所でも異常な事態が起きると、全体に波及する。まして、ウォール街というグローバルな金融市場の中枢での異変のインパクトははかりしれません。各国の中央銀行の協調体制は、国際的な決済システムが崩壊しないためには必要不可欠でしょう。先週はまとまりがなかった危機対応がアメリカを中心にまとまってくるプロセスだったのかもしれません。

 ニューヨークタイムズ紙の記事に戻ると、ポールソンはRTCのような財務省とは別の組織ではなく、財務省内に金融のプロを集めることに執着したようです。「有事」であるだけに、できるだけ指揮権限の自由と多額の資金を欲しているようにも見えます。たぶんですが、これで"delevaraging"とCDSによる"Doomsday Machine"の破壊力を抑制できなければ、次に打つ手が見えないでしょう。証券化商品等の買取額が時価か簿価かとか細かい話をいきなり盛り込んでしまうと、なにが起こるのか予想が難しい状態では法案成立のスピードが遅れますし、変に手を縛りかねない。フリーハンドを保持したいというポールソンの願望はもっともだと思います。ただし、次のような話も先ほど引用したニューヨークタイムズの記事にあって、これはさすがに。

  The Treasury Department had already announced plans to buy $5 billion worth of securities issued by Fannie Mae and Freddie Mac, as part of its bailout of those two government-sponsored mortgage companies earlier this month. But Mr. Paulson plans to step up the Treasury's buying, a move reminiscent of the Japanese government's attempt to prop up Japan's stock market by buying shares.


 この国の人は、自分の国の金融危機でこのあたりだなあというのがお好きなようですが、バブル崩壊後のPKO(Price Keeping Operation)が噂とはいえ、アメリカでもでてくるとは。微妙にポールソンの能力を疑わせる噂です。この非常時に余計なことをしている場合ではないと思いますが、事実上の金融恐慌のときには空売り規制を行ったり、あくまで観測でしょうがPKOを実施するかもしれないという話まででてくるというのは日米でも大差はないようです。こうしてみると、先週の日曜日にはメリルとリーマンに「自分の尻は自分で拭け」と突き放した後、事態に直面して豹変したというのが実態なのかもしれません。これが演出だったら、たいしたものですが、彼が「君子」かどうかはわからないです。

 この「戦争」はブッシュ政権では終わりそうにありません。当面のパニックは"Bailout Plan"で収まる見込みが高くなりましたが。こちらによると、マケインは批判的だとのことで、この姿勢を変えないと大統領の椅子は無理でしょう。もっとも、米紙の報道では時間が経つにつれてマケインが非常にぶれている印象。このスキームを支持するという報道もあれば、SECを攻撃しているという報道もあって、これはつたないという印象があります。オバマは、相変わらず、"Wall Street"だけでなく"Main Street"のために汗を流すと少なくともレトリックはさすがという感じ。茂木敏充大臣は、朝の番組で悪化した資産や証券化商品を買い取った後、不足するであろう資本への注入が必要と語っていて、手順は整理されてきているのでしょう。さらに細かな手順の問題などがあるのでしょうが、問題は連邦政府と議会が一体となって危機に対応できるかにかかってきていると思います。日本の「金融国会」のような醜態をさらすと、あっという間にアイスクリームがとけてしまう。現状では、"Bailout Plan"そのものへの反発よりも、とりわけ民主党サイドで失業給付を増やせ、インフラ整備で雇用を創出せよなどバラマキ圧力が強いようです。日本の「バラマキ」派には福音かも。

 問題は、ブッシュの"Given the precarious state of today's financial markets―― and their vital importance to the daily lives of the American people――government intervention is not only warranted, it is essential."という認識を共有できるのか、さらにそれを危機が収束するまで持続できるのかにかかっているのでしょう。本来の意味での「戦時」に、金融の「有事」が重なった状態で大統領選挙を迎えます。オバマ、マケインのどちらに転んでも選択肢は狭いでしょう。「変化」の演出は「戦場」以外で行わないと危険な状態だという、平和ボケした「寝言」が浮かびました。


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2008年09月20日

リハビリ中

 高原直泰『病とフットボール』(角川SSC新書 2007年)を読み始めたら、息が止まりそうになりました。お医者さんが変な顔をしていたのが理解できました。こんな劇的な症状はまるでなかったですから。しかし、ハンブルグからマンチェスターへのフライトで血栓が生じるとは……。わずか1時間半。これは厳しすぎます。サッカーのテクニカルなことはさっぱりで情けないのですが、職業がまるで異なるとはいえ、やはり体が資本。30代でくたばる予定でやってきましたが、これは考えなおなくていけないのかもと考えさせられました。彼のおかげで「エコノミークラス症候群」が有名になり、専門ではない開業医も疑ってかかるようになったおかげで、命拾いをしたようなものです。どこでも「サッカーの高原選手も苦しんだ病気」と言われて、あたしゃスターじゃないんだけどなあと思いつつ、順番が逆だったら大変だったんだろうなあと感謝しました。

 今週の後半からようやく熱が下がって、金曜日はようやく一日中、平熱でした。アメリカの金融ばかり見ておりましたが、正直なところ、国内の話題にはまったくといってよいほど興味がもてず、昨日の「寝言」を書き終えてさすがにぐったりしました。自分でも変かなと思いますが、"Worst Crisis Since '30s, With No End Yet in Sight"を読んだら、自分の病気より驚いたしだいです。この記事を読む前に、モルガン・スタンレーがあまり聞いたことがないところと合併しようとしているという記事も斜め読みしましたが、「本当か?」という感じで、まるで実感がありませんでした。昨日の「寝言」を書きながら、信用収縮期のCDSの破壊力に驚きました。コメント欄ではわけのわからないことを書いておりますが、日銀が発表しているマネーストック統計で最も大きい値を示す「広義流動性」ですら約1,400兆円。まともにCDSを処理しようとすると、手がつけられないだろうというのが率直な実感です。こちらで紹介されているRTC構想が"Doomsday Machine"の破壊力を和らげる手段だろうと。どうも、この国のエコノミストは経験から公的資金による資本注入が不可欠だという主張をされる方が多いようですが、手順からゆけば、まずは"Doomsday Machine"の破壊力を抑制しないと、いくら資本注入をしても追いつかないでしょう。ポールソンは「納税者にとっても長期的に最も負担の少ない方法だ」と説得にかかっているようですが、来週を迎えるまでに粗くてもしかけができていないとなにが起こっても不思議ではないと思います。

 昔話をしだすと終わりかなとは思いますが、2002年頃、まだ不良債権処理が終わっていない頃、とある「悪徳商人」さんに「公的資金による資本注入で粉飾して、RCCで飛ばし。両方ともやったらいいじゃないですか。どどんと100兆円積み上げて、市中で消化できなきゃ日銀に引き受けてもらいましょ」などと書き送ったら、素知らぬ顔で日銀も国債を引き受けさせられては困るだろうからとメールを読んだときの表情(筋の悪い話を聞くととてつもなく渋いお顔ですね。テレビではまずお目にかかれないでしょう)が浮かんでしまって噴き出した覚えが。もっとひどいことも書いたような気がしますが、忘れてしまいましたあ。

 危機は未然に防ぎ、生じてしまった危機への対応は素早くというのが基本でしょうが、なかなか理想どおりにゆかないのが世の常。今回の危機をアメリカが乗り切れるという保証もこれで終わるという見込みもありませんが、克服してきたときにはより力強くなっていることを忘れるのは危険でしょう。それと引き換えこの国は……。「『小泉時代』は大変だったけれど、よかったね」とずっと語り継がれることがないことを願わずにはいられません。と書いている時点で既に弱気ですね。もう疲れきってしまったので、さっさと寝ます。それでは、おやすみなさい。
posted by Hache at 00:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言