2008年10月27日

「バターも大砲も」という時代の終わり

 お金に関する話をネットで見ると、まったりと職人的なお話をされているところはホッとしますね。他方で、「オピニオン」がメインのところはとうぶん読まないでしょうね。新聞を読んでいたら、噴出しそうになるので、間違っても朝食後にコーヒーを飲んでいるときには読めません。利下げの是非はまだしも、売手を批判するというのはちとびっくり。インターバンク市場で「闇金利」でもつくれってことかとちょっとだけドン引きしますが、まあ、「寝言」みたいなものかなと思えば、心地よく、二度寝しそうになりました。今週は理由もなくスルーしてしまいましたが、先月の『サンプロ』で日経平均が1万円を割るという予想が悲観的すぎるというのが「エコノミスト」という方たちのコンセンサスだったそうで、奇怪な世界があるものだとびっくりしました。後出しじゃんけんですが、その頃、株式市場について尋ねられたら、今回の危機は、アジア通貨危機よりも厳しいのだから、そのときよりも悲観的に見る方が普通ではと答えておりましたが、「エコノミスト」と呼ばれる方たちはつくづく不思議な人種だなあと思いましたです。

 そうはいっても、記事が役に立たないとはいえ、新聞の株式相場欄を見ると、悲しいものです。しみじみ変な高校生だったのですが(たしか浜松市から静岡市に引っ越してから『中日新聞』から『静岡新聞』に変わった記憶がありますが)、一面から政治面、経済面をなめまわすように読んでつまらないなあと思って毎日見ていたのが、なぜか株価のところ。経済にはまるで興味がありませんでしたが、株価とドル円は毎日、見ておりました。「円高不況」で、父上がこれまで何度も修羅場を見てきたが、今度ばかりはもうどうにもならんとしきりに話していたせいかもしれません。ふと、郵便局と関係があるのかしらんという会社名が気になって父上に尋ねたら、海運会社とのこと。このように書くと、かえって深読みされそうですが、株価の水準を覚えているのが少ないのと、その中で社名が連続している会社が少ないことが理由です。

 株価だけ見ると、父上の勤務先と同じぐらいなので、小さな会社なのと尋ねたら、びっくりした様子で、「うちと比較するなんてとんでもない!」という反応でした。いい大学に入って、そういう一流会社に勤務してくれたらなあというのが、父上の願望だったようです。それにしても、金融セクターがボロボロなのは当然としても(失礼!)、私が高校3年生ぐらいのときに見た水準よりも一流企業の株価が下がっているのを見ると、この先、どうなるんだろうと。いくらでも後付けの理由なら探せそうですが、しみじみ市場というのは極端にぶれやすいものだと思います。2003年に冬を越したのに、日本経済にとっては春が短すぎたような感じでしょうか。ドルを支えることに反対するつもりはありませんが、足元をしっかり固めておかないと、現時点ですら、金融危機が対岸の危機という感覚が残っているようにも見えますので、危険な感じがします。

 それでも日本人は「冬」に慣れている部分があるのかもしれませんが、2008年のFT500のナンバーツーになったペトロチャイナがあっという間に3,000億ドル超から1,000億ドル超まで時価総額が低下するのを見ると、市場経済のおそろしさを初めて体験する国は大変だろうなあと。露悪的に言えば、ホッとしますね。英米の海上覇権が衰えて、新興国、とりわけ中国が経済的に力をつけ、それだけならまだしも腕力をつけるとなると、「日米同盟と国際協調」から「国際協調と日米同盟」へとウェートをかえて、リスクをヘッジする必要が生じるでしょう。時間稼ぎにすぎないかもしれませんが、アメリカ発の金融危機でアメリカのダメージも大きいですが、新興国の方がダメージが大きいのかもしれない。このあたりは、楽観も悲観も排して見ておいた方がよさそうです。経済のみで覇権が移り変わることはありませんが、その社会が使いうる資源の範囲をみておけば、長期での観測を、高い精度では無理でしょうが、意義あるものにするでしょう。

 それにしても、しみじみブッシュ政権というのは「大砲もバターも」という時代だったのだなあと実感します。両者は通常はトレードオフの関係ですが、ブッシュ政権は意図せざる結果として、「大砲もバターも」という異常な事態を継続することができました。大学時代に読んだ中村隆英先生の『昭和経済史』の章だったか、節のタイトルが確か「大砲もバターも」だったような。高橋財政の時代のことですが、日本は公債の日銀引受で、アメリカは投資銀行やヘッジファンドのレバレッジでそのようなトレードオフが存在しないかのような時代を演出したというのは「寝言」の域を超えているかも。それにしても、次期大統領が直面するのは、おそらくは景気後退下になるのでしょうが、「バターか大砲か」という通常のトレードオフであり、所得の減少を考えれば、普通の発想ではバターに極端にブレる可能性が高いと思うのですが、そのような観測が的外れなのかどうかを見極めてゆく必要があるのでしょう。もし、大砲をケチる状態が長期間にわたって続いた場合、米軍の抑止力が本格的に低下するだけでなく、覇権そのものが衰退するリスクを評価しておく必要がでてくるでしょう。もっとも、この国がアメリカの覇権を補完する勢力として生き残れるのかは別の問題としてあるわけで、リスクをヘッジする前に見捨てられる可能性の方がはるかに高いのでしょうが。


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