2008年11月06日

"Yes We Can"は変わらないことを演出できるのか?

 風邪薬でこれほどまで眠くなるとは……。一日中、頭がボーっとしていました。とにかく、集中力を維持するのが精一杯。珍しく午後9時からのNHKのニュースを見ておりましたが、これは大変だなと。これだけオバマ次期大統領への期待値が高いと、どうやって政権への期待値を妥当な水準に落としてゆくのに苦労するような気がします。今回の大統領選挙で確定した"change"は、大統領選挙が正常に行われて、次期大統領が確定したことぐらいですから。"Yes We Can"が経済における政府への依存心に変われば、かなりまずいような。オバマがよほど上手に期待値を下げないと、かなり厳しい事態に陥るでしょう。率直なところ、金融危機をあるレベルで安定させるのが精一杯で、すぐに生活レベルで対策が打てる状況だとは思えないですから。もっとも、"Troubled Asset Relief Program"の成立過程でマケインとともに議論に参加していたわけですから、私などが書かなくても、理解されているのでしょうが。

 外交や安全保障でも劇的な変化というのは困難だと思います。イラクからの全面撤退は、いくら治安情勢が大幅に改善したとはいえ、マリキ政権がとても独り立ちできるところまでいっていないわけですから、イラク情勢を不安定化させかねないでしょう。さらに、アフガンに兵力を投入するというのは、イラクの治安改善と同列には議論できないでしょう。言いにくいですが、ブッシュ政権が「バターも大砲も」という時代を7年近くやった結果、それでもアメリカの選択肢は他国よりもはるかに大きいとはいえ、かなり制約されていると思います。現実問題としては、ブッシュ政権末期の政策を大幅に転換するのは難しいと思います。他方で、英米系メディアのブッシュ政権への支持率は軒並み20%であるのに加えて、不支持率が70%を超える状態です。ホワイトハウスの主は他の国の首脳よりも世界に与える影響力が大きいとはいえ、すべてを意のままにすることはできない。ホワイトハウスの主が変わること自体、"change"でしょうが、現政権の不支持率はそれ以上の変化を望んでいることを示しているのでしょう。オバマ政権が発足した後、事実上、ブッシュ政権と同じことをしなければならない場合、"change"がそのような印象を打ち消す可能性もあれば、やっぱり変わらないのかという失望に変化する可能性が高い。"Yes We Can"はアメリカ人らしくそれ自体は好感がもてますが、選択肢がそれほど大きくはないことを人々に伝えることはよほど難しい。

 アメリカ人の大部分はブッシュ政権の下で「閉塞感」を感じていたのでしょう。オバマは、党派間対立を克服しうる人材としてかなり早くから注目されていました。"Yes We Can"は、アメリカの民主主義の「復元力」の現われなのかもしれません。しかし、現在のアメリカが自らと世界に及ぼすことができる影響力は8年前と比較すれば、はるかに落ちている。そのような現実を受け入れるスローガンになるのか、現実を拒絶するスローガンになるのか、それとも、オバマが大衆が見たいと欲する現実を見せるためのスローガンにできるのか。ありきたりですが、風邪薬でボーっとした状態で、そんな「寝言」が浮かびました。


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