2008年11月11日

衰退産業の構造調整

 『朝日』の「ビッグ3、国にすがる公的資金、生き残りへ頼みの綱」という記事を読みましたが、ちょっとだけ気になる数字が。「米国の自動車業界は産業の多様化とともに米経済での存在感は徐々に小さくなり、すでに国内総生産(GDP)に占める割合は3%」とありますが、以前はどの程度だったのだろうと。GDPの3%というと小さく見えますが、日本の場合でもほぼ同様の水準です。平成18年度国民経済計算 (平成12年基準・93SNA データはこちら)の「5. 付表」の「経済活動別の国内総生産・要素所得」のうち、「固定基準年方式 実質暦年」のデータから計算すると、1996年には輸送用機械が国内総生産に占める割合が約2.0%だったのが、2006年には約2.9%に上昇しています。また、農林水産業の場合、1996年には約1.7%のが2006年には約1.5%に若干ですが、ウェートが落ちています。産業の特性があるのでいささか乱暴ですが、GDPに占める割合という点からのみ見れば、自動車産業を救済すべきではないのなら、農林水産業も保護すべきではないでしょう。もちろん、悪い冗談ですが、金銭的な合理性からすると、自動車産業を保護すべきではないのなら、海外からの輸入によってある程度、代替することができる農林水産業保護など論外です。露骨に言えば、衰退産業への対応は経済合理性では説明がつかない部分が大きく、政治的問題としての側面が強いのでしょう。

 オバマ関連だったこともあって自動車産業が注目されたようですが、実体経済の低迷によって、金融機関の不良資産が拡大する状態が予想されます。AIGの救済に関しても、英字紙、邦字紙が報道していますが、TARPの目的であった、"troubled asset"の処理は景気悪化とともに困難を増してくる事態が予想されるでしょう。TARPで確保した7,000億ドルのうち、3,500億ドルは金融機関の資本注入に利用されましたが、経済情勢がさらに悪化してくると、7,000億ドルでも足りないという事態が生じるのかもしれません。可能性でしかありませんが、金融機関の"bailout"にさらに公的資金が必要となったときに、オバマは直接には議会、より広くは世論の支持をえるために腐心しなければならない局面がやってくるかもしれません。米自動車産業の救済が大きな論点であること自体を否定するつもりはありませんが、金融システムの安定は、あるレベルで抑制している段階で、それ以上の解決に踏み込むためには政権のリーダーシップと説得力が問われる厳しい局面もありうるでしょう。

 EU諸国内でも経済政策がバラバラだという指摘もありますが、アメリカをはじめ、金融システム不安をあるレベルまでに抑制するためには、金融機関への公的資金の注入や不良資産の買い入れなど納税者が不満をもちやすい政策的イッシューが国家間の協調以前に生じるでしょう。各国の政治的指導者の説得力が問われる厳しい局面が続くと思います。


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