2008年12月09日

オバマ政権への幻滅と期待

 これまでオバマ次期政権が提示している経済政策を粗雑ではありますが、検討してきました。率直な実感は、おそらく雇用対策や企業の救済策などはさほどの効果を挙げないであろうと。オバマ次期大統領とその経済政策の決定者が無能というわけではなく、新しい危機にふさわしい経済政策の輪郭はいまだに不透明で、現時点で漏れてきている政策メニューはどうも新しい危機に対応できるだけの確信をもてないでおります。もちろん、私自身が現時点で危機の全貌を把握し、適切な対処法を提示する能力などもちあわせておりません。おそらくは、ブッシュ政権から行われた「実験」に加えて新しい「実験」を繰り返す試行錯誤の過程が続くのでしょう。

 2001年にこの国で小泉政権が誕生したとき、私自身、歓迎しました。他方で、小泉政権が提示した構造改革は、その大半が1980年代というインフレーションの時代にはふさわしいものでしたが、当時の状況にそぐわないという感覚をもっていました。率直に言えば、金融セクターを再生することに全力を挙げるべきであって、他のイッシューなどは少々、遅れてもよいとすら感じておりました。

 小泉政権下の構造改革は単なる経済政策に留まらずに、中央政府における政治的意思決定過程から中央と地方の関係を見直す広汎な内容となりました。これらの政策に関してはこれから評価を行ってゆく必要があるのでしょう。ただ、間違いないのは、小泉氏は国民の欲するところを満たそうというよりも、党内の権力基盤を固めることと改革という国民にとって必要なことを一致させる演出を行いました。そのようなギャップを埋めるためには、小泉氏に対する底堅い国民の支持が不可欠でした。小泉氏は、当初の高い期待値を維持することこそできませんでしたが、国民の支持をある一定の水準に保つ政治的リーダーシップを発揮しました。

 オバマ次期大統領は、おそらくは一時的に期待値をコントロールできない状態に陥ることもあるでしょう。とくに、経済政策では従来のような政府のどんぶり勘定に基づく政策のみでは危機への対応が困難だと思います。財政政策の必要性を否定するわけではありませんが、アメリカ経済を「再生」するにはよりミクロレベルで細かなディスインセンティブを取り除いてゆく作業が不可欠だと考えております。私の考えが正しいとしても、オバマ次期政権がそのような政策にたどり着くには、多くの試行錯誤を重ねる必要があるのでしょう。

 さらに、「『グランドデザイン』のない国際経済」という「寝言」で雑駁な話をしましたが、政策運営によってはドルの信認の低下のリスクというミクロレベルの対応では解決できないであろう問題もはらんでいます。それでも、オバマ氏は少なくとも一度は失敗せざるをえないでしょう。その代償は大きいのかもしれませんが、もし、オバマ氏が困難に陥ったとき、どの程度、アメリカ人がそれを支えるのかが最も不確実な要素です。オバマ氏が困難を克服する過程は、基本的にアメリカ国内の問題ですが、その方向性はアメリカ以外の国の運命を左右するでしょう。

 いわゆる「信用収縮」とは異なるかもしれませんが、英字紙でも邦字紙でも国際的に債券の発行残高が大幅に減少しています。個人消費や企業の投資意欲の減退など国際経済をとりまく環境は非常に厳しく、適切な対応策をアメリカをはじめ、各国がただちに実施するのは困難でしょう。オバマ次期政権の経済政策には批判的ですが、依然とは異なった形で政策を実施するためには、そのような試行錯誤が避けられないと思います。なにか私がアメリカ経済や国際経済の次の「設計図」をもっているわけではなく、オバマ次期政権が試行錯誤を重ねる中で新しい対応策を意図せざる結果として発見することを願っております。率直なところ、小泉政権発足当初からの2年間はフラストレーションのたまる状態でした。オバマ氏がそのような期間を耐え抜くことを期待しております。


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