2009年03月24日

Public Private Partnership Investment Program(特典画像あり)

 いまだに体調が悪い状態です。発熱に動悸、目のかゆみに鼻のむずむず感と集中力を事欠く状態。なんとなく健康状態が悪いと悪いニュースばかり拾ってしまうのでしょうが、日曜日には「オバマ政権が一気に乱気流に巻き込まれてコントロールが難しくなりつつある印象です」とまで書いていて、自分でも精神的に参っているんだなあと。日曜日には日本の論調をあえて相手にしましたが、もはや無視に近い状態です。いまだに、アメリカのおかげでひどい目にあっているという被害者意識が抜けない話がほとんどでうんざりします。

 体調の悪いときには、ついつい日本語の記事も読んでしまうのですが、アメリカが没落するか否かを心配する前に、若年層の雇用のセーフティネットには無関心な割りに、その世代に支えてもらうであろう方たちが年金だけは死守というのがミエミエで、フランスみたいなお国柄でなくてよかったですね。アメリカが経済政策で混乱気味だったのは英字紙でも明白でしたので、非常に憂鬱でした。率直に言えば、日本やその他の先進国よりもアメリカの景気回復が早く(それがいつになるのかは現時点では見通しが立ちませんが)、その他の先進国はそれなりに没落するなり停滞する期間が続くだろうと見ておりましたので。

 それにしても、1月にPCが復旧したものの、相変わらず、不安定な状態です。この「寝言」も途中まで書いていたら、突然、再起動して、消えてしまいました。時間がないので、ざっくりした話にします。現時点では、不確実な要素が大きいだけでなく、私自身が消化不良の部分もありますし。

 それにしても先週までの米紙におけるガイトナー財務長官の叩かれ方は尋常ではなく、さすがに動揺しましたが、月曜日に、"Public Private Partnership Investment Program"(参照)がプレスリリースされて、かなり練られた案だなと思いました。財務省のプログラムでは、図に示されているように、米紙で"toxic assets"と呼ばれている"legacy assets"を"legacy loan"と"legacy securities"にわけています。政府が自己資本の50%を資金供与する投資ファンドの設立という新しい枠組みを創設して、FDICやFRBのTALFを統合的に活用して、融資(legacy loan)と証券(legacy securities)の双方に対応する案です。ここでポイントになるのが、金融市場のプライシングが機能不全の状態で政府が関与して金融市場を補完し、政府の関与の下とはいえ市場機構を活用することが基本になっていることでしょうか。

 TARPのときに問題となった政府が不良資産を買い入れる際の価格の問題を売却する金融機関のインセンティブを考慮するとともに、納税者の負担を抑えるという難題に解をただちに与えるのかは、現時点では評価できないでしょうが、擬似的とはいえ、政府が市場を活用するというのは試してみる価値があるでしょう。全部とりあげるのが面倒になったので、"legacy loan"の問題を見てみましょう。なお、財務省のプレスリリースとWall Street Journalの"Treasury Unveils Toxic-Asset Plan, Citing 'Acute Pressure' on Banks"(参照)がソースです。

 まず、FDICの監督下で銀行から不良資産を買い入れる投資ファンドを設立し、財務省が自己資本の50%を提供します。投資ファンドのマネジャーは民間から募り、不良資産のマネジメントができるスキルがあるのかを審査した上で採用されるようです。売り手となる金融機関は売却する資産のうちエクィティ部分を負債の6分の1に抑える必要があります。レバレッジ自体を否定しているわけではなく、リスク資産のうち、かなりの部分を身奇麗にした上で、FDICの精査を経た上で保証が与えられるという仕組みです。したがって、このプログラムが理想的に機能すれば金融機関へ過度のレバレッジによるリスクを負担させた上で"toxit assets"の毒を抑制を図るインセンティブを与えるでしょう。

 また、購入する資産はまったくの安全資産ではないので納税者に負担が生じるリスクが生じますが、金融機関に対してリスクを抑えるインセンティブとFDICによる保証を与えることで金融機関サイドの売却のインセンティブと納税者の負担というトレードオフを完全には解消しないものの、相反する利益を妥協させることが可能になるでしょう。やはり、金融市場の問題はプライシングが機能しないことによって不良資産の問題が解決しないことですが、現状ではあくまで実験的な試みではありますが、根本的な問題に解を与える可能性を十分にもった案だと思います。

 "legacy securities"に関してはTALFが活用されるとのことで、こちらがより厄介な問題が多いとは思いますが、レバレッジを積極的に活用して住宅用モーゲージや商業用モーゲージ、その他の資産担保証券を購入するというのは、"The resulting process of price discovery will also reduce the uncertainty surrounding the financial institutions holding these securities, potentially enabling them to raise new private capital"という状況を生む可能性があるでしょう。TARP導入前後に問題となった不良資産の買入価格の問題に解を与えるだけでなく、それ以外の資産の価格発見機能を回復させる効果が生じるかもしれません。

 なお、WSJの記事では、ガイトナー財務長官がスウェーデンや日本の事例も参考にした上で、スウェーデンのような国有化は複雑なアメリカの金融市場では適さないと指摘しています。もちろん、スウェーデンの金融市場が単純だということではないと思いますが(このあたりの表現は若干、政治的配慮を欠いているようにも思います)。日本でも国有化しなければ解決しないだろうが、アメリカでは金融機関に限らず、企業の国有化には抵抗が多いから抜本的に解決するのには時間がかかるだろうという意見も少なからずありました。

 アメリカでは企業の国有化が行うことに抵抗があるのは事実でしょうし、今回の事態の場合、国有化も手段の一つでしょうが、それでは解決しない問題を見落としていると思います。今回の事態では、証券化商品だけでなく、金融市場のプライシングが機能しておらず、国有化をしても、金融機関の救済にはなっても、市場機構の回復には至らず、場合によっては国有化にもかかわらず、プライシングが機能しない状態が続く可能性が無視できません。

 昨年、"bail out"が相次いだために、金融機関の経営が安定化することばかりが金融市場の安定化と同義であるかのような話が日本では多かったのですが、プライシングが機能しなければ、国有化したところで、とりあえず金融機関の動揺は一時的に収まっても、金融市場そのものの機能が回復するのにはあまりに時間がかかるでしょう。今回の案の成否は、率直なところ、実施しなければ機能するかどうか、判断に苦しむ部分が大きいのですが、単に金融機関の経営問題だけではなく、金融市場におけるプライシングの回復にもつながる案として期待したいです。

 ちょっと株価上昇が期待先行で不安もありますが、このプログラムが機能すれば、現時点ではどの時期にという予想はできませんが、金融安定化は大幅に前進するでしょう。この国のアメリカの不幸を内心、嘲る傾向が強いだけに、根っから母上から救いようのない「ひねくれ者」と面と向かって言われた私はどんどんとオバマ政権の支持に傾きつつあります。


続きを読む