2009年09月02日

米紙による政権交代への祝福

 今更ですが、テレビ東京の『週刊ニュース新書』8月29日放映分を見ました。御厨貴先生が出演しているからですが、(1)民主党中心の政権(以下、面倒ですので実際は連立政権になるのでしょうが民主党政権と記します)になるんだろうけれど、大混乱で大変だよという指摘がありました。次に、(2)混乱するのは目に見えているので国民が支えないと、先の見えない政治的混乱に陥るよというわけで、これまた至極、常識的で納得です。違和感を覚えたのは、話の順序を変えていますが、(3)今回の総選挙では郵政選挙の逆が起きているというあたりで、御厨先生や田勢康弘さんの方が正常なとらえ方かなと思いますが、やはり違和感があります。

 郵政選挙は、率直なところ、衆議院の採決で造反者が出るかもしれないという報道が出始めた2005年7月あたりから造反しろ、造反しろと思っておりました。当時の小泉首相が郵政民営化を実現したいという意欲が本気ではなかったということではなく、これで自民党内の権力闘争に選挙という形ではっきりと決着がつくだろうという感覚がありました。不安はどうでもいいといえばどうでもいい郵政民営化(小泉首相自身が「この程度の改革」とすら8月には言っていた)という争点にどの程度、他の意識をもつ人たちがついてくるのかなと。民主党には敵意はなく、失礼ながら脇役でしょうと。これを「劇場型政治」にしたのはマスメディアの役割が大きく、2005年の総選挙の本質ではないでしょう。後継者は苦労するかもしれないが、自民党の路線が明確になるという意義を私はあの選挙に見ておりました。御厨先生の『「保守」の終わり』に対する解の一つが小泉改革路線だった。そのように見ております。

 また、国内では民主党の外交・安全保障政策への不安が指摘されています。私自身も強い懸念をもっておりますが、小泉政権の負の側面として、小泉−ブッシュの首脳間のあまりに良好な関係に依存しすぎて、実務的なレベルで日米間の外交政策や安全保障政策をすりあわせる作業がないがしろになっていたことがあると思います。この点はブッシュ政権における対北朝鮮政策におけるアメリカ側の混乱もあり、現在に至るまで改善の兆しが見えません。他方、オバマ政権のアジア外交の布陣を見ると、日本重視の姿勢も見えますが、日本側の政治的不安定によってアメリカ側の失望に終わるリスクを無視できないでしょう。

 今回の選挙は、小泉政権後、三代にわたって路線を継承できなかったことに対する自民党政権をとりかえるしかないというところまできた不作為の結果でしょう。郵政選挙が自民党が改革政党としてしか生き残る道がなくなったのにもかかわらず、安倍、福田、麻生の各首相は決断力がなく、小泉改革への批判にぐらついてしまった。小泉政権後の三代に目立った失政がなかったというのは表面的には正しいのでしょうが、改革政党としてしか生き残ることができない自民党を継承することはできなかったという評価になります。結果として起きたのは、小泉政権によってお株を奪われた民主党による「反革命」といってよいのでしょう。あの執行部の顔触れを見れば、菅氏を除いて、小泉氏が自民党内で権力闘争をしかけた人たちと同じ出自であり、もっと速く自民党を出た人たちでしたから。小泉改革といっても、可塑的な部分が大きく、「市場原理主義」(鳩山氏のオピニオンのおかげで"market fundamentalism"という英語があるのを初めて知りました。知ったのですが、いまだに意味がわからないので困惑気味ですが)というほど単純な話ではなく、(1)経済のグローバル化(私自身はこの表現が嫌いだ。幕末・開港はグローバル化ではなかったのか? 市場経済は本質的にグローバルだ)へ成長の好機を見るという意味で積極的に対応する、(2)官邸機能の強化(民主党の国家戦略局は安倍政権の首相補佐官制度を想起させるもので総理大臣の内閣における指導力をむしろ曖昧にするという危惧を私はもっている)、(3)歳出削減を優先した上での財政再建(消費税率を未来永劫、引き上げるなとは思わないがあまりにタイミングが難しい)というところでしょうか。

 そんなわけでどうやら自民党本部が勝手にやっていたらしいアニメやパンフレットによるネガティブキャンペーンにも屈せず、耐えた私は民主党政権を冷ややかに見ておりますが、海外、主として米紙ですが、Googleリーダーで日本の総選挙がまずWall Street Journalの8月29日の社説("Japanese Protest Vote")でとりあげられているのを見て驚きました。まあ本当は医療保険制度改革が米紙を読んでもわからず、イライラしながらアフガン情勢の方に目がいっていたのですが、ほおという感じでした。Wall Street Journalらしく、突き放したような表現も目立ちますが、民主党による政権交代が実現しそうだという状況で、非常に好意的だと言って内容でした。選挙後にはNew York TimesやWashington Postも社説を掲げるので、びっくり。New York Timesは末尾で"A version of this article appeared in print on September 1, 2009, on page A28 of the New York edition."と断っているので、日本人ジャーナリストが関与した質の低い日本関連の記事とは異なるのでしょう。本題に入る前が例によって長くなりましたが、各紙の社説は、(1)日本の政治的意思決定プロセスの改革、(2)政府債務の制約と景気刺激策、(3)日米関係など全般にわたって論じた上で民主党政権そのものというよりは政権交代を歓迎しており、Kissingerの論考をきっかけに今後の政治と経済の「間」を考えたいと思っていましたが、中断して、とりあえず記しておきます。


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