2009年11月08日

虹を追いかけて

 目先の仕事が片付いたわけではありませんが、なんとなかなるだろうと。気を抜くと碌なことがありませんが、最悪でも凌げそうなところまでなんとかきました。ふと気がつくと、もうすぐ40歳です。冗談で年をとったというと、この若造がとしかられる時代です。あまり誕生日とかに関心がないのですが、40という数字は重いです。なぜかといえば、この年まで生きていることを考えたことがありませんでした。30代までにさっさとなにかをして、さっさとくたばるのだろうと。自分の寿命すらまったくわかりませんが、小さいときから体が弱かったので、こんなに長生きしてしまうとは。しかも、これという仕事をしたわけではなく、「余生」(明日くたばっても驚くわけではないのですが)をどう過ごすのか、ふと思いを馳せたりします。

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 で、考えてもわからないので、いつくたばるのかはわかりませんが、なんだか私みたいな者が生きていること自体が「寝言」みたいな話だなあと。あるいは悪い冗談でしょうか。そんな程度の頭で世界を眺めますると、なんだか世界自体が悪い冗談のように思えてきます。「はずみ」とか「気分」とか「ひょんなこと」が支配している。10代の頃に自然界のように社会にも法則性があるのだろうかと考え始めてから、行き着いた先がこれとは。われながら、冗談は顔だけにしろと呟きたくなるのですが、なにかのはずみとかそんな気分になったということは案外、恐ろしいものだと思ったりします。創造主がありきで被造物があるとすると、人間というのは創造主にバカにされているようなものだなあと思います。被造物の中でも最も哀れむべき存在は人間なのかなと。虹を追いかけて、地球をぐるりと回って、気がついたら元の地点に戻っていたりする。そんな気分で日米関係を眺めると、悪い冗談が重なると、ある種の必然になるのかなと思ったりします。

 私の主観にすぎませんが、現在の日米関係は「同盟」と称するような関係ではなかろうと。日米同盟と表現しても内実が一致していた時期はほぼ小泉政権で終わったと思います。「テロ対策特別措置法」や「イラク特措法」にもとづいて陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊がインド洋からサマワ、クウェートに至る地域で活動していた頃が同盟の名にかろうじて値する時期でしょう。小泉政権では集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の解釈を変更することはありませんでした。安倍政権は本格的に取り組もうとしましたが、実現しないまま、今日に至っています。

 また、米軍再編にともなう日本国内の米軍基地と兵力の再配備の問題も政権交代以前から難題でした。民主党を支持しないから、批判しているわけではありません。しかし、政権公約や『政策インデックス2009』を読んでから、憂慮せざるをえませんでした。政権公約では「緊密で対等な日米関係を築く」とありながら、具体的な政策として挙がっているのは、「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」であり、『政策INDEX』でもほぼ同様のことが記されています。「対等」の解釈の相違でしょうが、民主党政権では日米同盟の双務性を高める努力は、控えめに表現しても全く期待できない状態でした。その状態で日米地位協定の改定や米軍再編、在日米軍基地の見直しを要求すれば、日米関係のコアとなる日米安保体制を解体する破壊力を秘めていると感じておりました。総選挙の前後で民主党不支持という私の立場が変化しない最大の理由です。

 予期したごとく、日米関係は漂流しています。率直なところ、鳩山政権の閣僚名簿を見たときに、ドン引きしました。昔なら、2005年の総選挙で三条河原で首を晒されても不思議ではないお方が外相とは。あの方に臨機応変の対応が終始、求められるポストをあてがうこと自体、嫌がらせの度が過ぎていて、気の毒な話です。もっと気の毒なのは日本国民ではありますが。マスメディアでも似たような感覚なのか、この間のオバマ米大統領訪日前の日米外相会談をめぐる混乱を岡田外相の問題として捉える記事が多いようです。しかし、任命権者である鳩山首相の責任はさらに大きいのでしょう。

 『日経』の2009年11月6日朝刊に「普天間移設 埋まる外堀」という記事が掲載されていました。ネットでも配信されているようですが、最初の部分だけです。気になる点があまりに多いので、記事の後半部分を引用しておきます。

 「衝突」は回避

 日米両政府の共通認識は、首脳会談で普天間問題をギリギリと詰めない点だ。キャンプ・シュワブ沿岸部に移す現行案以外の案を拒む米側と、嘉手納基地への統合案を訴える外相を含め方針が定まらない日本政府。首脳会談で正面切って話し合えば、互いの主張の違いだけが浮き彫りになるのは避けられない。
 決して失敗が許されないオバマ米大統領の初めての来日。両政府は円満な首脳会談を演出して「当面の決着先送り」で一致した。
 問題はその先だ。日本政府でも外相は米側と同じで、普天間問題の期限は年内。政策の裏付けとなる予算案は年内に編成する。普天間問題の対応が決まらず、外交・安保関係の予算案づくりが滞る事態を懸念している。
 政府内でも外務、防衛両省を中心に「期限は年内」という相場観がつくられつつある。それを覆しているのが首相の「それなりに時間が必要だ。名護市長選、沖縄県知事選もある」との発言だ。名護市長選は来年1月、沖縄県知事選は同11月。この期限設定の意味に関しては、米政府ばかりではなく日本政府内でもいぶかる向きがある。
 現行案の受け入れを決定した名護市だが、来年1月の市長選の結果次第で、それが流動的になる恐れがある。日米関係にそのまま跳ね返るリスクを頭に入れたうえで首相が発言しているとしたら、その狙いは何か。
 外務省幹部は「名護市長選以降との首相の発言は、米政府からみれば『現行案をつぶす口実にするのでは』と受け止められてもおかしくない」と指摘する。

 参院選にらむ

 一方、来年の政治日程を考慮すると、首相の発言も符合する部分がある。来年の最大の政治課題は参院選。その前に普天間基地の県外移設を求める社民党との関係がこじれるのは得策ではない。少なくとも来年度予算案の成立にメドが立つまでは普天間問題を先送りし、与党の結束を優先。その後に普天間問題を決着させるシナリオだ。
 「最後は私が決める」。こう言い切り、胸のうちを明かさない首相の決断を日米双方が待つ展開がしばらく続く。


 社民党との連立を維持することが政権を安定的に運営するための条件であることは、現状では動かすことが難しいでしょうから、それ自体は否定しません。ただし、記事で指摘されているように、国内政局を優先すれば、それが控えめに表現してもアメリカの行政府と議会には対米関係をないがしろにしている、もっと悪く見れば、「現行案をつぶす口実」と映ることもやむをえないでしょう。マニフェストの「在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」という表現は再検討した上で従来のあり方を継続することを排除しない柔軟さを残した表現ですが、現状では見直しありきととられてもおかしくない、岡田外相ではなく鳩山首相の言動があまりにも目につきます。

 まあ、鳩山首相を批判するのは容易なのですが、連立を維持するために、普天間基地問題を再検討するというのは、なんとなくバカバカしく、悪い冗談みたいだなあと。もし、鳩山氏がごく普通の感覚、端的にいえば、アメリカとの縁が切れれば、極東に限定しても、日本をまともな外交交渉の相手にする国はないということをわきまえていれば、まあ、ゴタゴタしても、落ち着く先が見えています。運命のいたずらと申すべきか、「友愛」の精神の伝道者たる鳩山氏にはそのような現実よりも軍事力に代表されるハードパワーに基づく外交をソフトパワーに依拠する外交で代替したいという抑えがたい欲求があるために、日米同盟と国際協調という日本外交の建前を急進的に変革しようとしているように、内外で映るということにお気づきにならないご様子です。鳩山氏が意図せざる結果として、日米安保体制の変革者になりかねないことに気がついて頂きたいのですが、60歳を過ぎた方に変われといっても酷なのでしょう。まず、現政権には意図せざる結果として、日米安全保障条約を死文化する可能性のある傾向があるということを認識しておいた方がよいと思います。

 上記引用記事ではアメリカ側の予算案にも影響がでることを指摘しています。こちらは、さらに深刻です。11月6日の『日経』では上記の記事と並んでアメリカ側の事情を描いています。

議会が壁、米にも焦り

 米オバマ政権が普天間問題の決着期限を年内にずらしたのは、13日に予定する日米首脳会談が決裂に終わる最悪の事態を避けるためだ。世界経済がなお回復途上にある状況で日米が決定的な対立に陥るのは得策ではないと判断したもようだ。
 ただ、普天間移設は北朝鮮の核開発、中国の軍事費膨張など東アジアの不安定な安保環境をにらんだうえでの合意。国防総省などは日本の国内事情で先送りが続くのは看過できないとしており、早期決着を求める姿勢に変わりはない。いつまで鳩山政権の決断を待てるのか。政権内だけで決めるならばオバマ大統領次第だが、問題は米議会の壁だ。
 普天間移設が困難になれば2006年5月の日米安全保障協議委員会で合意した沖縄県南部の基地の返還や海兵隊のグアム移転なども白紙に戻る。
 年末までに議会を通さなくてはならない国防歳出法案に盛り込まれているグアム移転経費の扱いなどを巡り議会審議が止まれば、政権の最重要課題である医療保険改革法や気候変動対策法案も影響を受けかねない。
 議会対策の司令塔であるエマニュエル首席補佐官がホワイトハウス内で最も厳しく鳩山政権を批判している背景にはこうした事情がある。
 米議会は例年、12月20日前後にクリスマス休会に入る。日米関係筋は、日米間で06年合意の推進を同15日ごろまでに確認する必要があると指摘する。
 日本の政権交代を踏まえ、ホワイトハウスは9月の首脳会談での「安保素通り」は容認した。それだけにさらに1カ月以上待っても政治決断しない鳩山政権への不満はより高まっている。
 対日交渉の最前線にいるキャンベル国務次官補はホワイトハウスから見通しの誤りを指摘され、政権内で針のむしろ状態にあるという。
(ワシントン=大石格)


 『日経』からの引用が続きますが、まるで悪い冗談のようにアメリカ側から、これまた意図せざる結果として、日米安全保障条約があたかも日本にとっての負担を増すかのような錯覚を政権と支持層に与える話が進んでいるようです。露骨にいえば、海兵隊にしろ、基地にしろ沖縄に居座りますよ、費用は日本が負担して下さいね、というシグナルがでてきているということです。しかも、そのシグナルが、オバマ政権の戦略的意図の結果ではなく、予算審議のプロセスでオバマ政権にとっては致命的でしょうが、アメリカ人にとってどれほどの価値があるのか外国人にはわかりづらい、医療保険制度改革の審議に差し支えがでるかもしれないという国内事情から生じているのは悪い冗談みたいです。もう一つの案件として挙げられている気候変動対策に至っては皮肉としかいいようがありません。この点では日米関係を強化する可能性が十分にあると思いますが、少なくとも現時点では反対の方向に作用している始末。もちろん、この記事の観測が正しければという条件がつきますが。

 また11月7日には「海兵隊のグアム移転費7割削減 米上院で法案」という記事が配信されました。ネットで配信している記事と紙面と若干異なりますので、国際面に掲載された記事を引用しておきます。なお、記事の検証が目的ではなく、単にネット上で保存される期間が短いのが惜しいだけですが。


米海兵隊グアム移転費7割減

【ワシントン=弟子丸幸子】
米議会で審議中の2010会計年度軍事施設建設予算歳出法案を巡り、米上院が在沖縄海兵隊8000人のグアム移転に関する経費を約2億1,000万ドル削減していることが明らかになった。米政府の要望からは約7割の削減。ホワイトハウスは5日、「この規模の削減は(日米間での合意に)有害な影響を与える」として増額を求める書簡を上院に送付した。グアムの移転経費は日米間の最大の懸案となっている米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設問題と「パッケージ」ととらえられている。
 7割削減の背景について、議会筋は「普天間問題との関係性は分からない」と指摘しているものの、日本政府は危機感をもって受け止め、議会への情報収集に6日、入った。
 法案は今夏に下院で可決しており、成立までには上院での採決と上下両院協議会による調整、オバマ米大統領による署名などが必要になる。


(付記)よく読みましたら、ネットで配信している記事の方が事実関係をよくまとめてありました。GAOの評価が「不透明」というあたりで外交とは直接関係のない行政府の部門には日本側の再交渉を求める動きが、どのように交渉相手には映るのかがよくわかります。それにしても、よくこの字数で記事がまとまるなあと感心しますね。邦字紙を軽く扱っていましたが、『日経』ぐらいはちゃんと読もうかなと。

海兵隊のグアム移転費7割削減 米上院で法案

 【ワシントン=弟子丸幸子】米議会で審議中の2010会計年度(09年10月〜10年9月)の軍事施設建設に関する予算歳出法案を巡り、米上院歳出委員会が在沖縄海兵隊8000人のグアム移転経費約3億ドル(約270億円)を約7割削減する修正案を作成したことが明らかになった。ホワイトハウスは5日付で議会に「この規模の削減は2月の日米合意に有害な影響を与える」と見直しを求める書簡を送付した。

 海兵隊のグアム移転は日米間の最大の懸案となっている米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設問題と一体になっており、予算減額には鳩山政権の普天間問題先送りが影響しているとみられる。米政府監査院(GAO)は米政府のグアム移転計画が不透明と批判する報告書をまとめていた。日本政府は6日、情報収集を始めた。

 米下院は同法案を可決済み。成立までには上院可決、上下両院協議会による法案一本化、上下両院での再可決、オバマ大統領の署名が必要で、今後の調整が焦点となる。 (01:56)

 他紙もほぼ同じ内容の記事を配信しておりますが、『日経』の記事には簡略とはいえ、法案成立のプロセスが描かれておりますので引用しました。また、グアム移転費用の大幅削減と普天間基地移転問題との関係を断定的に描いている記事が多い中で、『日経』だけは留保をつけた上で、日本政府(外務省?)が「危機感」をもっていることを描写しています。ここで興味深いのは、日米の行政府が調整している間にかえって再交渉が始まるかのような印象が生じていることでしょうか。『日経』では政権交代との関連を断定しない分、2010会計年度軍事施設建設予算歳出法案が下院では既に成立しており、政権交代後に普天間基地移設問題が浮上するとともに、上院が予算を渋り、海兵隊のグアム移転費用が削減されかねない状態に至っていることがわかりやすいことです。まあ、普通に考えれば、日本が実質的には合意を破棄したわけですから、じゃあ海兵隊の移転もなしねというわけで、驚く話ではないと思います。驚くべきは、この程度のこともおそらく予想せずに、合意を破棄した鳩山政権の「鈍感力」でしょうか。

 この「鈍感力」の源泉は、鳩山首相の虹を追いかける傾向にあるのでしょう。虹は美しいですし、それを私人として追いかけるのならば、どうぞご勝手にというところです。今の政権を見ておりますと、うっかり長生きしてしまうと、日米関係が詰むところまで見れそうで、非国民の私からしますと、バカな外交の典型として記録に残したいなあと。しかし、さすがに日本人ですので、ブログのタイトルに「寝言」を掲げている「時の最果て」とはいえ、寝言は寝てから言えと言いたくなります(「お前が言うな」というコメントにはお答えしないとお断りしておきます)。


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posted by Hache at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言