2010年03月04日

ギリシャ問題:ヨーロッパへのアメリカの苛立ち

 ギリシャ問題に関する報道は多すぎて手に負えないぐらいです。「なまもの」は苦手ですから、この2か月ぐらいはちょっと不幸な気分です。しかも、ギリシャ問題ばかりでアフガニスタンや米中関係が疎かになっているのが気になります。グーグル関係の記事は最近、見当たらないのですが、現在も捜査中でしょう。『日経』にも記事が出ていましたが、上海交通大学など中国の教育機関が関与しているというあたりまでは絞られているようです。某巨大掲示板への攻撃もありましたが、個人的にはそこで正視にたえない差別用語や侮蔑用語がとびかっているだけにあまり関心がわかないです。向こうの掲示板を眺めていたら、憲法のせいか、中国や韓国から先制攻撃を受けても、自発的に日本人が攻撃したことはないよという弁護なのか、皮肉なのかわからない書き込みをみて複雑な気分ですね。まあ、海外へサイバー攻撃をしかけてバカ騒ぎを起こされるのは同じ日本人としては迷惑千万なので、「専守防衛」はこういう場合には悪くないのかもしれませんが。

 さて、話をギリシャ問題に戻すと、ゴールドマンサックスがギリシャの粉飾にスワップなどを利用して加担していたという話がありました。テクニカルな面はよくわかりませんので、それがどの程度、悪質なのかよくわかりませんが、問題であること自体は間違いないようです。ただし、2008年9月以降、急速に顕在化した金融危機ではアメリカが「震源地」(現時点ではやや不謹慎な表現ですが)とみなされたために、悪いことはアメリカからやってくるという捉え方が広がりました。これに対し、アメリカ国内のメディアも巨額のボーナス問題もあり、金融機関に対する厳しい報道が多いのですが、他面で今回のギリシャ危機をアメリカの「ハゲタカ」によるものとして描こうとする風潮に苛立ちも生じています。

 2010年3月3日にWall Street Journalは"Europe's Original Sin"(Charles Forelle and Stephen Fidler)という記事を配信しました。タイトルにも「苛立ち」という感情を表す言葉を用いましたが、記事の内容はいたって冷静です。ただし、タイトルに"original sin"(原罪)という表現が用いられていることから、ギリシャ問題があたかもゴールドマンサックスによる2001年のスワップ契約から粉飾されていたかのような報道に対して、ユーロ圏成立から既に問題があったことを指摘し、ギリシャが当初の財政赤字の見込みと修正を行い、EUも適切な対応を怠ってきたことを指摘しています。

 結論は非常にシンプルです。LSEのVassilis Monastiriotisがギリシャは「財政規律というユーロ圏のロジックをわがものとすることに失敗した」と述べたことを引用しています。ユーロ圏の問題をとりあげている割に、基本的なことを理解していないことに気がついたので、下記は自分用のメモです。

  Predicaments of the sort Greece is facing―years of overspending, leaving bond investors worried the country can't pay back its debts―weren't supposed to happen in the euro zone. Early on, countries made a pact aimed at preventing a free-spending state from undermining the common currency. The pact required countries adopting the euro to limit annual budget deficits to 3% of gross domestic product, and total government debt to 60% of GDP.

  But an examination of budget reports to the EU shows Greece hasn't met the deficit rule in any year except 2006. It has never been within 30 percentage points of the debt ceiling.

  Greece has revised its deficit figures, always upward, every year since 1997―often considerably. Several times, the final figure was quadruple what was first reported. Late last year, the Greek government set in motion its current crisis by increasing its 2009 budget-deficit estimate, initially 3.7% of GDP, to nearly 13% of GDP.

  Those revisions far exceed the impact of controversial derivative transactions Greece used to help mask the size of its debt and deficit numbers. The 2001 currency-swap deal arranged by Goldman trimmed Greece's deficit by about a 10th of a percentage point of GDP for that year. By comparison, Greece failed to book €1.6 billion ($2.2 billion) of military expenses in 2001―10 times what was saved with the swap, according to Eurostat, the EU's statistics authority.

 ギリシャが直面している種類の困難――数年間にわたる歳出超過により債券の投資家が債務返済を心配する――はユーロ圏では生じないと考えられてきた。早い段階から、ユーロ参加国は、気ままに財政を支出する国が共通通貨の基盤を掘り崩すことを妨げることを妨げる協定を結んでいた。この協定は、ユーロを採用した国々に対して、単年度の財政赤字を国内総生産の3%に、政府債務総額を国内総生産の60%に制限することを要求していた。
 しかし、EUへ提出された予算に関する調査によると、ギリシャは2006年を除いて財政赤字のルールを満たしたことがない。ギリシャの財政赤字は上限の30%(引用者:3%の誤りか?)以内に収まったことがない。
 ギリシャは、1997年以来、毎年のように財政赤字の数値を常に上方に修正してきた。その修正は、しばしば大幅であった。昨年、ギリシャ政府は、当初、財政赤字の国内総生産比は3.7%であったが13%近くに上るという2009年度予算の推計によって通貨危機を招いた。
 この見直しは、議論の的となっている、ギリシャが負債と赤字を隠すのを手助けしたデリバティブ取引の影響をはるかに超える。2001年にゴールドマンによる通貨スワップはギリシャの財政赤字の国内総生産比への割合を10分の1ほど隠したにすぎない。対照的に、ユーロスタット(EUの統計局)によると、ギリシャ政府は、2001年から2010年の期間の16億ユーロ(22億ドル)の軍事支出を計上しなかった。これはスワップによって蓄えた分の数倍である。 


 邦字紙などではギリシャが社会主義国であったこと、公務員のストライキが目立つことなどから、支出削減の話に偏りがちです。ここでは興味深いことに軍事費が、いわば「簿外処理」されていたと指摘されています。うっかりしておりましたが、ギリシャはトルコをはじめ、周辺諸国と係争地を抱えていますから、軍事費の問題は言われてみれば当然だなあと。また、ゴールドマンサックスのいかがわしい通貨スワップの問題を過大視する傾向が英字紙にもありますが、データを用いて、それが本筋ではないという指摘もしています。

 ちょっと疲れましたので、折をみて、この「寝言」に追加してゆきます。


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2010年03月01日

銀で泣かないで

 一応、登録はしているTwitterですが、いまいち使い方がわからない。そんなわけで結局、つぶやくこともなく、過疎の「時の最果て」でつぶやくわけですが。それにしても、浅田真央さんが銀で涙を浮かべたのにはびっくりしました。もう言いたいことはわかったよって?

 まあ、そうなんですけれどもね。五輪で銀メダルといえば、世界で2番目。私は舞台に立つことさえない。毎日を振り返れば号泣しなければならない。お気楽に見ておりましたが、考えると気が遠くなるような話です。

 エキシビジョンの演技は最高でした。素人目にはフリーは難しすぎて、やや硬い印象もありましたが、エキシビジョンの演技は見惚れてしまいました。飛びぬけて高い運動能力を余すことなく披露していて、赤い矢が遠く彼方へと飛んでゆくようなスケールを秘めているなあと。なおかつ優美さも感じさせる演出もよく、見ていてちょっとした心地よかったです。

 男子フィギュアのプルシェンコはやはり巧いし、楽しいです。演技がどうこうというのは素人の手に余りますが、とにかく存在感が素晴らしい。私のスケートを楽しんでほしいという欲求が素直に表現されていて、とにかく楽しい。対照的に、ライサチェックが衣裳はやはり黒ですかと苦笑しますが、華麗ですね。

 で、非国民としては、やはりキム・ヨナの演技の完成度の高さにうっとりします。あまりテクニカルなことはわかりませんが、小学校のときの読書の時間の前に瞑想で流れていたマスネの曲をスケートでここまで優雅に表現できるのかと。世代的には浅田真央とキム・ヨナが競い合ったら、どんな美しい演技が見ることができるのだろうかと。見ている方は気楽ですが、並々ならぬ競争がこれからも続くのでしょう。

 ふと思うと、2008年9月から急速に顕在化した金融危機でグローバル化の負の側面ばかりが目立っていましたが、可能性に満ちた世界にいるのだと実感します。モノ・カネの国際的な移動は一時的に機能不全に陥りましたし、現在でも動揺はありますが(今でもギリシャ救済で独仏は"muddle through"しようと苦しんでいます)、ゆっくりと回復を始めています。ヒトのグローバル化は、移民問題のように互恵的な側面では語れない問題が多いのでしょう。しかし、モノやカネにしても動かすのは人間だ。もう、世界が分断されたブロックに戻ることは難しいのでしょう。ただし、それを担保するのは現状では国家間の協調しかないでしょう。今回の大会では中国人選手の活躍にも目を見張りました。問題は、中国共産党、あるいは中国政府が協調を支える一員へと変化させることでしょう。現在の中国は、現状を変革する勢力で留まるでしょう。用心深く、国際秩序を壊しかねない行動を軍事で抑止しながら、中国政府が諦めるまで限られた資源を活用するのが肝要だと思います。それは困難な事業かもしれませんが、中国の秩序を変革しようという野心を抑えることができれば、可能性の世界がかつてみない繁栄を生む。そんなことを思いながら、冬の四年に一度の祭典を楽しみました。


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posted by Hache at 01:18| Comment(0) | TrackBack(1) | 気分しだいの寝言