2010年04月09日

NPRと朝鮮半島の南北統一

 4月に入ってから温められて冷やされてまた温められてという変化に耐えられなくなりました。頭がおかしいのはデフォとして体が参ると、もちません。以下、お食事中の方には申し訳ないのですが、火曜日あたりから嘔吐にお腹までくだしてしまい、胃腸の不調は滅多にないので驚きました。恥ずかしい話ですが、2年前、土曜日か日曜日にお腹を下してしまい、困ったことに手洗いから出られない状態になりました。思えばあれがノロウィルスにやられたのかもしれません。そこまでひどくはなかったのですが、嘔吐がおさまったと思ったら、今度は下痢に苦しんで、なんだこりゃという感じです。薬をもらって寝ているぐらいしか手がないのですが、近くの内科が休診日だったので止むなく、寝ていました。

 そうはいっても、寝たきりというわけではなく、パソコンの前に座ることぐらいはできるわけで、吐き気がおさまってから読んで、お茶を噴きそうになったのが、これ。あのお、エイプリルフールじゃありませんよねとカレンダーと記事の日付を見ながら、ブーメランを投げずに自分にお刺しになるというのはいかがなものかと。「政治家がばか者の集団では(国は)もたない」というご趣旨の発言のようですが、要は鳩山氏が国を滅ぼすぞということなのでしょうか。日本語というのは難しいものです(しっかし、これほど軽くてパーでペラペラとよくしゃべる神輿も珍しいなあ。小沢さんも担ぎ甲斐があるのかしら)。

 なかなか出なかったNPR(Nuclear Posture Review Report)が出ました。私はWashington Postの"New nuclear arms policy shows limits U.S. faces"という記事の中にあったリンクからドキュメントをダウンロードしました。頭も朦朧としているのですが、体力的にもきついので、最初の要約をプリントアウトして寝ながら15頁ほど読むのが限界です。批判ではないのですが、よくできた作文という感じ。核抑止と核不拡散がミックスされていますが、現状認識では核の拡散と核を用いたテロの脅威に最も高いプライオリティが置かれています。これが一番、微妙な部分かなあと。プラハ演説と現実には主としてアジアで核抑止を含む拡大抑止が不可欠な現状とを折衷したような印象でしょうか。なんともいえない、戦略が不透明な印象を受けます。次のあたりが象徴的でしょうか。

The United States will continue to strengthen conventional capabilities and reduce the role of nuclear weapons in deterring non-nuclear attacks, with the objective of making deterrence of nuclear attack on the United States or our allies and partners the sole purpose of U.S. nuclear weapons.


 合衆国は伝統的な能力を維持するとともに核兵器以外による攻撃への抑止における核兵器の役割を減少させる。核戦力による抑止は核に対するものだというわけで、CBW(chemical and biological weapons)に対しては一応、例外を設けてはいるものの、米国の核戦力はあくまで核攻撃に対する抑止に限定しています。ただ、このように宣言することになにか意味があるのかとなりますと、まあ、強いていえばNPT体制を強化する際に、アメリカの道義的立場が若干は強くなるというところでしょうか。むしろ、気になるのは、アメリカが核戦力を削減はしながらも、核戦力を維持すると述べているあたりで、削減しても核の均衡が保たれるのかどうか。伝統的な核抑止の問題では中露を挙げた上で、信頼醸成措置ととくに中国に対しては透明性を求めるとありますが、ベースになっているのは、核兵器を削減しても現状維持は可能であるという認識です。この現状認識がどの程度、確からしいのかは、要約を読んだだけですので断定はできませんが、ちょっと疑問に感じました。インドの核戦力の現状を知らずに書いているので危険ですが、中印関係が緊張してくると、重石としてのアメリカの核戦力は用心深く更新した方がよいだろうと。現状よりも核戦力を削減して現状維持を図るというのはちょっとロジックとしてはすっきりしないです。

 邦字紙では北朝鮮とイランがNPT遵守国への核攻撃の除外の適用外となったことが大きく扱われています。これ自体は当たり前で、騒ぐほどのことでもないだろうと。むしろ問題は、北朝鮮が破綻国家となる可能性が高まっており、核管理をどのように行うのかというフレームワークをつくる必要性が高まっていることでしょう。同様のことはパキスタンについても懸念すべきでしょう。NPR2010ではこのあたりも睨んで核物質の国際管理体制を強化するという方向を打ち出していますが、北朝鮮に関しては単にテロ組織に核兵器がわたること(決して軽視してよい問題ではありませんが)や核拡散を防ぐという点からのみ論じるべきではないと思います。この点については後で述べます。

 全体の印象としては、「冷戦」の発想が古くなり、オバマのプラハ演説を元に核不拡散と核によるテロリズムの抑止を前面に打ち出したものの、冷戦後にむしろ核拡散が進んでしまった現実に対応すべく折衷的な話に終始しており、戦略性をあまり感じませんでした。目先の問題としては中国の核を含む軍拡の問題にどう対応するのかという点には言及がなく、中印の緊張の結果、アジアにおける核軍拡という問題は戦略の基本だと思うのですが、オバマ政権はあまり関心がないようです。当面は、中国の軍拡との対応でインドとの連携は必要でしょうが、20−30年という単位で見ると、インドの方が優位に立つ可能性もあり、このあたり距離感のとり方は難しいと思います。私自身は、インドが孤立しない程度に関与するぐらいが望ましいのではと思いますが。感覚的な話じゃなかった「寝言」ですので、インドとの「同盟」に過度の幻想を抱くのは危険であろうと。非同盟外交は過去のものになったのかもしれませんが、インドも中国と同じく、独立の変数として国際関係で振舞おうとする指向が強く、御するのは容易ではないでしょう。ちょっと極端なことを書けば、中国に対しインドが優位に立った場合に、中国を引き込むぐらいの柔軟性を残しておく必要があると思います。この点では、要約部分で触れないのは利巧なのかもしれません。

 北朝鮮とイランに対しては、New York Timesの"Obama’s Nuclear Strategy Intended as a Message"とい記事でもNPR2010は両国へのメッセージなのだというゲーツをはじめとする発言が紹介されています(参照)。興味深いのはRobert S. Litwakの発言として紹介されている、イランと北朝鮮の「封じ込め」を国際化しようとしたブッシュ政権の努力を拡張しようとするものだという指摘です("Robert S. Litwak, vice president for programs at the Woodrow Wilson International Center for Scholars, said that Mr. Obama had expanded an effort begun by President George W. Bush to globalize the effort to contain the nuclear aims of both nations. ")。ブッシュ政権からの変化を強調する論調が国内では強いようですが、現実にはブッシュ政権から継承したことも少なくないでしょう。他方で、ブッシュ政権は北朝鮮の実質的な核武装を許してしまったという負の実績があり、多国間協議でアメリカがイニシアチブをとるための強制力が、NPR2010でも示されておらず、お題目はごもっともですが、implementationの欠如が問題だと思います。


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