2010年06月06日

厄介なヨーロッパ

 お人が悪い人が民主党叩きのネタを振って、道ならぬ道を歩く人が煽ると。リーダーを育てるために日本人よ寛容たれと主張する人が、小沢だけは許すなと。いかにもうるわしい、日本人らしい、忠臣蔵を見ながら白けるような気分ですな。世も末かなと思いますが、インターネットの発達のお陰で、拡声器の性能が格段に上がって、寝言もといノイズも大きく聞こえるだけで、昔からこんなものなのでしょう。

 新人議員の「小沢離れ」を勧める声が世論的には圧倒的多数なのでしょうが、普通の会社だったら、新入社員に財務や人事、企画をはじめ経営全般を任せたら潰れるでしょうに。中央政府というのは、そんなにインスタントにマネージできるものなのでしょうか。政治学者が率先して国政の「おニャン子クラブ」(若い人にはわからないと思いますが)化を提唱するというのは目を剥きます。リアルで「菅氏の偉大さは俺でも総理大臣が務まるぐらい楽な仕事だという希望を与え、敷居をさらに下げたこと」と話したら、「是非、総理におなり下さい」と真顔で言われて困りました。たぶん、こいつ消えてくれないかなあという社内の「デスノート」、あるいはブラックリストに載っているのではと今更ながら人望のなさを実感しますなあ。

 こんなことよりも気になるのは、最近、買ったアジシオの穴が大きくなったのではないかという重大な「疑惑」です。たぶん、勘ぐりすぎなのでしょうが、朝のトーストにハムとチーズ、トマトをのっけて食べるのが習慣ですが、トマトがなんとなく辛い。使い始めなので気もち弱めに一振りしないとまずいだけなのでしょうが、古い方を捨ててしまったので、穴が大きくなったのではないかとついつい勘ぐってしまいます。最近、白身の魚でおいしいものが少ないなあと、久しぶりに舌ヒラメのムニエルを作ったら、おいしかったなあ。さすがに、ヒラメに塩を振りかける際には匙を使うので、トマトのような「悲劇」はおきず、やや薄味に仕上がって、満足しました。ただ、歳のせいか、バターはくどく感じるようになって、ちょっと後が重いのが難でしょうか。

 それはさておき、ユーロが4年ぶりに1.2ドルを切る水準になって、持久戦も大変ですなあという気の利かない「寝言」が浮かびます。プロの見立ては長期戦なら2008年9月以降よりも手の打つ時間が稼げるとのことのようですが、13兆ドルを超える経済規模をもつユーロ圏が動揺するのはあまり外人の目からしても気もちがよいものではなく、どこぞの島国のように、「失われた10年」となるのはどうなのかなと。しかも、どこぞの島国と異なって、債務危機ですので、ある国家を他の国家、あるいは国際機関が助ける構図になり、なおかつ、域内には16もの国家が存在するとなると、協調的な解に至るまでの政治的なコストがバカにならないでしょうし、IMFもEUやらECBやら面倒な連中との調整に時間をとられるでしょう。そう意味で"acute"ではないことが本当に幸いなのかどうかは難しい問題かなという気がします。気のせいで終わることも否定できないのですが。

 ネタ元はWall Street Journalが2010年6月4日付で配信したNeil Shahの"Europe Default Insurance Jumps"という記事の予定でしたが、記事のタイトルが"Debt Insurance Soars Across EU"に変わり、配信日も6月5日に変更されています(参考)。この辺の事情はよくわかりませんが、内容も若干、変わっているので、変更前の記事からの引用であることをお断りします。なお、あわせて、Wall Street Journalが6月4日に配信した"Euro Sinks Below $1.20 On Data, Debt Worry"という記事も参考にしていますが、ちんぷんかんぷんのところもありますので(『大航海時代III』で背表紙が伏字になっているような感じ)、メインの記事は、上述の通りです。

 Shahは、金曜日にヨーロッパの借り手となる国が発行した債務を保証する費用が上昇したと指摘しています。その理由としてフランスの銀行(ソシエテ・ジェネラル)が金融派生商品で損失を出したという噂とハンガリーの首相報道官がバカ正直に財政の見通しが悪いことを公表したことを挙げています。

  The cost of insuring debt issued by European sovereign borrowers rose Friday as a weaker euro, speculation in the market about losses at French banks and concerns about Hungary added to persisting doubts over economic recovery in Europe.
  While Spain has taken a beating lately, investors also appear to be taking their frustration out on stronger euro members like Italy and even France―Europe's second-biggest economy after Germany. French banking giant Société Générale SA on Friday was hit by rumors of losses tied to derivatives, which has sent its stock plummeting.


 上記引用が冒頭部分ですが、投資家はスペインを叩きのめしただけでは気が済まず、イタリア、さらにフランスにまで不満を強めているとのこと。率直なところ、おフランスざまあという気もしないでもないのですが、"contagion"がフランスにおよぶ可能性はまったく考慮していなかったので、一時的な現象で収まるだろうとは思うのですが、気もち悪いです。"Debt Insurance Soars Across EU"と改題された記事の方にはMarkit社による5年物国債の1,000万ドルに対する保証に要する金額が掲載されていて、はっきりとハンガリーはスパイクしていますが、図で見ると、イタリアは微妙な感じ、フランスはハンガリーにつられたのか、ソシエテ・ジェネラルに関する噂につられたのかは判然としませんが、スパイクしているようにも見えます。ハンガリーはユーロには加入していないので因果が本当にあるのかは私自身は確信がもてませんが、ギリシャに続く、「疫病神のヨーロッパ」の象徴なのかなと。2008年に既にIMFの貸付を受けているのですが、旧共産圏の国だけに思うように財政再建が進んでいないようです。暇だったら、ハンガリーもついでに見ておきます。

  Budget deficits in France and Italy are small compared with those threatening Greece and Ireland―and possibly Hungary, which isn't a member of the euro zone. But the derivatives market is growing concerned regardless as European debt jitters persist. It now costs $290,000 a year to insure $10 million of Italian government bonds against default for five years, compared with $237,000 on Thursday, according to data provider Markit.
  The extra interest Italy has to pay investors to buy its bonds instead of Germany's has also jumped. That is painful because Italy tends to visit the market more often to raise cash, having the world's third-biggest bond market, after the U.S. and Japan. Meanwhile, the cost of insuring Irish debt against default is only slightly higher at $340,000 even though Ireland has a budget deficit many times bigger than Italy's.


 実額で見ますと、イタリア国債の保証に要する費用はバカにならず、木曜日に5年物国債1,000万ドルに対して237,000ドルであったのが金曜日には290,000ドルに跳ね上がったとのことです。上記引用部分で目を引くのが、イタリアの国債市場の規模がアメリカ、日本に次いで世界で3番目という指摘です。アイルランドのすら340,000万ドルだと指摘されると、これは怖いですな。こんなおっかない国債を引き受けるのはご免蒙りまするなんて金融機関がでてきそうです。

  One explanation: While Italy's deficit is relatively small, it is burdened with a national debt that is well over 100% of its GDP and the highest in the euro area―creating its own potential problems.

  解説:イタリアの財政赤字は相対的に小さいのだが、国債残高は、GDP比で100%をゆうに超えており、ユーロ圏で最も高く域内の潜在的な問題をつくりだしている。


 この後、フランスの10年物国債の利回りが3.01%から一晩で3.08%に上昇したとあるのですが、債券はさっぱりわからず、実感がない数字です。まあ、債券の世界では"jump"という表現がぴったりなのでしょう。しかし、BloombergのHPで見ると(参考)、ドイツのクーポンレートが10年物国債で3%ぴったりに対して日本が1.3%とは「寝言」、あるいは悪い冗談のような気もしますが。ドイツに関する記述がよくわからないので誤魔化しましたが、ドイツなみの金利を払わなくてはならないとなりますると、1.7%×850兆円=約14.5兆円の国債費の増加となり、消費税率1%の引上げで概ね2−3兆円の増収ですから、2.5兆円の増収として約5.8%程度の引上げが必要になりますなあ。これに加えて基礎年金の国庫負担の引上げ(これは文句なく自公政権が「やり逃げ」した案件)や医療費など社会保障関係費の増加を加味すると、まあざっくりと10%程度、引き上げておけば、当座はやりくりできるのでしょう。話がそれますが、「ギリシャ化」を心配する前に、ドイツなみの金利を払うだけで大変だということを抑えておいた方がよいと思います。

 ハンガリーの話は紛れるのでとばして、ギリシャ国債の利回りが安定しているのに対し、スペインの利回りがじわじわと上昇しているのは不気味です。この場合、スプレッドという表現が適切なのか疑問ですが、ドイツ国債に対するスペイン国債の利回りは1.92から1.96に上昇したと指摘されています。1日でこれだけプレミアムが上昇すると厳しいですなあ。もっとも、フランス国債は同じ週に80億ドルの新規発行があったと指摘しており、その影響もありそうだとのこと。

 "acute"ではなくても"chronic"というのは大変ですなあと。バークレイズ・キャピタルのAksuは以下の可能性があると述べたとのことです。

  First, while markets have become less panicky recently, investors remain nervous about European bonds. They're not selling, but they're not buying either, limiting the so-called liquidity of the market. That, in turn, is exaggerating the impact of even small price moves, leading to jerky market movements based on trading rumors that are themselves pushing insurance costs higher.
  The European Central Bank's emergency bond-buying program may be creating its own distortions. While the ECB has calmed some segments of the market by buying Greek, Portuguese and Irish bonds, investors don't know how far the central bank will go with its purchases, making it hard to participate in the market. Some ECB policy makers like top German central banker Axel Weber even publicly oppose the effort, making things more blurry.
  In a way, the ECB faces a no-win-situation: Worsening market conditions are already prompting calls for the ECB to act more aggressively to buy bonds. But if it does just that, worries about the future of Europe's market may keep investors away by increasing uncertainty.

 第1に、市場が最近になって平静を取り戻してきているのに対し、投資家はヨーロッパの債券に弱気のままだ。投資家は売りはしないが、同時に買いもしない。いわゆる市場の流動性が限定されている。それが、今度は、価格のごくわずかな変動の影響を誇張し、取引にまつわる噂をもとにした市場の発作的な行動を導いてしまう。結果として、保険に要する費用が高くなるよう押し上げる。
 欧州中央銀行による緊急の国債買入計画はそれ自体が歪みをつくりだしているのかもしれない。ECBが、市場の特定の部分を鎮めようして、ギリシャやポルトガル、スペインの国際を買い入れるが、投資家は中央銀行がどの程度まで買い続けるのかを知らない。この結果、市場の期待形成が困難になる。ECBの政策決定者のうちドイツ人の中央銀行家Axel Weberのように公然と努力に反対する者がいると、ことはさらに不透明になる。
 このようにECBは勝者がいない状況に直面している。市況の悪化は既にECBに対してさらに積極的に国債を買い入れるように促してきた。しかし、ことがそのように行われると、ヨーロッパ市場の将来への懸念によって、投資家は去ってしまう。不確実性の増大によって。


 この予測が正しいのかは私の理解の範囲を超えるのですが、ヨーロッパの国債市場で売買が閑散としているという指摘が事実なら、噂やハンガリーのバカ正直なスポークスマンがやらかすだけでソブリンCDSが荒れるというのは理解できなくもないです。持久戦に持ち込む条件の一つは、時間とともに景気が回復することですが、ヨーロッパの各国が緊縮財政に取り組む状態ではどうなることやら。「ユーロ本位制」は、加盟国の誰をも満足させないシステムとしてしか残らないのかもしれません。


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