2010年06月24日

カンダハールの一縷の望み そして暗転

 なんだか「寝言」が浮かんでも書かなくなったなあと思っておりましたが、一週間もたっていなかったのですね。5月下旬から6月にかけて極度の睡眠不足が続きました。夜の1時半に就寝というのは私にしては早いほうなのですが、朝方の4時半頃に目が覚めてしまい、おかしいなあと。熟睡して進退にかかわりかねない事故を起こすことがあったのですが、睡眠があまりに浅く、なおかつ眠れない日々が続きました。年相応に仕事が増えているので、人並みにはストレスがあるのですが、それが原因とも思えず、寝ぼけた状態で、ミスや失言が多く、まずいなあと。

 鈍い私でも6月の第2週になると、原因がはっきりしてきました。なんと歯痛です。大学生時代に右の奥歯の虫歯治療を受けたのですが、25歳頃に再度、虫歯が進行して治療を受けました。このときの歯医者さんは非常に優秀で、30代前半に出張先で歯が痛んだので歯医者に駆け込んだのですが、「奥歯の治療はしっかりしてますね」と感心していました。確か、今年の正月にガチッという音とともに、金属が口から出てきてびっくり。あとで気がついたのですが、その奥歯の表面を覆っていた合金でした。25歳のときに治療を受けた医者は引退して息子さんがあとを継いだようですが、失礼ながら、下手糞で前歯の治療を受けた翌日にイソジンでうがいをすると着色する始末。他によい歯医者がみつからないので、ついつい放置していたら、神経にまで達してしまい、寝不足になってしまいました。先週の火曜日に別の歯科で神経をとる治療を受けましたが、疼痛が残っているので、長期戦になりそうです。

 加えて嫌な兆候であった尿潜血ですが、こちらは心臓内科で毎月、見て頂いている先生に話すと、血液検査で異常が出たためしがないから、念のため検査するけれど、大丈夫でしょうと。再度、検査を受けましたが、異常なしでした。睡眠不足が重なっていたせいなのでしょう。毎日、3リットル以上の水分を補給しているので腎臓に過負荷がかかっているのかと少し心配でしたが、杞憂だったと思ってよさそうです。

 あれこれ書いていますが、国内メディアは完全にスルー状態です。6月から米中関係を中心に米紙の記事を追っていましたが、元切上げの話は、オバマ政権がBPで国内問題に足をとられているのを見透かしたように巧みだなあと。中国の粗暴さには目に余るものもあるのですが、けち臭い話ばかりしている(なぜか若いOBが絶望的ですが)無能な外務省官僚に代わる人材を、中国から日本国への忠誠心があることが前提ですが、引き抜けないものかと。もっとも、これとてやはり政治的リーダーの質の差が大きいのでしょうが。

 漸く、本題ですが、Washington Postが2010年6月21日に配信したRajiv Chandrasekaranの"U.S. eager to replicate Afghan villagers' successful revolt against Taliban"という記事の内容をメモしておこうという予定でした。記事によると、カンダハールの北北東に位置するGizabは、タリバンによる長年の支配下にあり、カンダハールやヘルマンド州に浸透するタリバンの戦士の休息の地であると同時に戦士の補充を行う地でした。この地でアフガニスタンの15の村で反タリバンの「反乱」が起きたことは、現段階では戦術的なレベルとしてChandrasekaranは評価していますが、軍や外交当局は2010年に起きた最大の転換となるかもしれないという見解を紹介しています。私自身は、アフガニスタンにおける軍事行動は、出口戦略もさることながら、戦略目標が曖昧であり、仮に成果を収めたとしても、アフガニスタンの戦略的価値が低いと評価しているので、米軍の、純粋な戦闘能力というよりは、国際秩序の重石としての価値を高める点が少ないという点で評価していませんでした。失敗すれば、いくら戦闘能力が高くても、侮りを招くでしょう。その意味で、やや憂鬱な気分でアフガニスタン情勢を眺めておりましたが、米軍にとって有利な情勢の変化自体は、懐疑的かつ慎重に見ておりますが、歓迎したいと思って読んでおりました。

 しかるに、ワシントンではPetraeusが上院の公聴会を病欠して大丈夫だろうかと思っていたところに、McChrystalがオバマ政権の高官を批判する発言が雑誌に掲載されるとのことで、オバマが激怒して、McChrystalをワシントンに呼びつけるという事態になっています。WaPoやWSJはアフガニスタンの指導者がマクリスタルを支持するAP電を配信していますが、このゴタゴタは最悪ですね。マクリスタルが昨年9月に提出されたとする報告書自体は読んでいませんが、率直なところ、イラクとは異なるアフガニスタンで平定戦のような作戦は非現実的ではないかと感じておりました。雑に理由を述べると、カルザイ政権の腐敗はひどく、アフガニスタン住民の米軍への信頼は高いものの、カルザイよりもタリバンはまだましといった世論調査の結果が根拠ですが。Gizabでのタリバンへの反乱は、決定的にアフガニスタン情勢を変化させるものではないと思いますが、漸く、好転の手がかりとして活用できる可能性が生じました。このタイミングで現地司令官とオバマ政権の高官やスタッフの軋轢が表面化するのは、最悪と言ってよいでしょう。

 米紙の報道では、McChrystalが雑誌記事で""Are you asking me about Vice President Biden? Who's that?" McChrystal is quoted as saying at one point in the article."( Greg Jaffe and Ernesto Londoño, "Obama orders McChrystal back to Washington after remarks about U.S. officials", Washington Post, June 23, 2010)と述べたとのことで、この発言自体は無思慮と言ってよいでしょう。直接的にはバイデン副大統領への批判ですが、実質的にはMcChrystalの「武断派」とバイデンに象徴される批判派の調整を十分に行わず、折衷的にアフガニスタンへの増派と安全地帯からの「ラララ無人君」による攻撃をミックスさせたオバマ大統領の優柔不断さが露呈したのだと思います。

 今回の件は、米紙が洪水のように情報を流しており、私自身、歯痛によって集中力が保てないこともあって、整理しきれておりません。現段階では、オバマが軍事行動にあたって優柔不断であり、マクリスタルをどう処遇するかというよりも、米大統領としての重要な資質が欠けていることが露呈した問題でしょう。鳩山政権があまりにひどかったために、昨年11月のサントリーホール演説を歓迎する「寝言」を書きましたが、その後、アジア政策ではめぼしい進展はありません。菅政権への交代で日米関係の改善を期待する論評もありますが、集団的自衛権が行使できないという制約の下でも、最低限の双務性である米軍基地使用の問題で大きな進展はないでしょう。

 米紙でもいわゆる「サイバー戦」の強化が報道されており、安全保障面では米中対立が本格化してくるのでしょう。動員することができる物的・人的資源に関しては楽観はできませんが、アメリカが直ちに覇権を喪失する自体ではないと思います。問題は、軍事力の多寡ではなく、もてる力を有効に活用する政治的リーダーシップでしょう。オバマ氏程度(日本の政治家ならば文句なくトップレベル抜きん出た存在でしょうが)の政治的リーダーしかアメリカが輩出できない状態が20年程度、続くと、アメリカの覇権もさすがに揺らいでくるリスクが生じるでしょう。私自身は、アメリカ通でもなんでもない、単なるど素人ですから気軽に「寝言」を述べることができます。アメリカの覇権は、単に物質的な優位によるものではなく、理念とそれを支える資源を活用する知的能力に依存していると思います。その前提がオバマ政権から大きく崩れるリスクに警戒が必要だと思います。


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