2010年09月10日

クリントン米国務長官のCFR演説

 クリントン米国務長官がCFRで行った講演で、アジアにおける同盟国を列挙する際の順番が、従来は「日本、韓国、オーストラリア」となっていたのが「韓国、日本、オーストラリア」になっていたそうで。この演説は知らなかったので、アメリカ国務省のHPで"Remarks on United States Foreign Policy"(2010年9月8日)の原文を見ると、そんな瑣末なことはどうでもよいのではと思いました。まず、日米関係の現状を考えれば、オーストラリアよりも先にくるというのは相当なものです。米韓関係が改善している状態で、アメリカとしては日米関係がうまく機能すれば、中国との関係もマネージしやすいところでイライラするところでしょうが、よく自制しているものだと感心します。まだ、体力的に全文を熟読するのは厳しいのですが、ざっとした印象です。

(1)外交の対象となる地域としてやはり中東の優先順位が高い。イラン、中東和平、アフガニスタン・パキスタンなどがアメリカ外交では最も高いプライオリティがおかれている。後半部分の多くは、アジア・太平洋地域に割かれているが、「中国包囲網」のような単純な発想は薄く、中国と並んでインドへの関与が併記されているのが興味深い。

(2)政策手段として、まずオバマ外交の優先順位は経済力や道徳的な影響力など、いわゆる「ソフトパワー」に置かれていることが明確になった。オバマ政権の内政・外交を問わない政策において最も高いプライオリティは国内の経済再建に置かれており、外交は、事実上、その従属変数である。次に、"international diplomacy – good, old-fashioned diplomacy"が挙げられている。具体的には、リスボン条約発効後のEU、そしてNATOの関係が挙げられている。ヨーロッパの変化に適応する課題も指摘されている一方、「大西洋同盟」がアメリカから見て、最もプライオリティが高い状態であることには変わりがない(他方、米英関係には言及が少なく、やや気になる。戦時モードから平時モードへの転換点だからかもしれないが)"the ability to evoke support from others" is "quite as important as the capacity to compel."というアチソンの言葉を引用して、アメリカの同盟政策の基本を確認している。この点は、抽象的ではあるが、日本のように、同盟を漂流させたいのかそうでないのか、はっきりしない国はよく理解しておいた方がよいだろう。形式的には同盟であっても、潜在的な対立を含む中国とのパートナーシップ程度の関係すら困難になる可能性を示唆しているからだ。

(3)次のヘッジクローズは要注意だろう。

  In this interconnected age, America’s security and prosperity depend more than ever on the ability of others to take responsibility for defusing threats and meeting challenges in their own countries and regions.


 この後に続く具体例は、低開発国の経済発展などが主題になっているが、ハース議長との質疑では同盟国へ応分の負担を求めることが明らかだ。この点でも、政権交代後の日本はアメリカを大きく失望させているだろうし、今後はさらに混迷する可能性がある。防衛費というハードパワーにおける問題に加えて開発援助なども考慮する必要があるのかもしれない。

(4)対中関係

 米中関係をこのスピーチから全体像を描くのは難しい。ただ、明確なのは、南シナ海への関与では米中対立の側面が強く出ていたが、このスピーチでは経済的には互恵的な関係を結び、イランなどを含む地域の諸問題に関して話し合うパートナーとしても位置付けられている。私のような素人には米中関係が対立一色になったり、逆に"G-2"のように米中共同統治という協調一色になることもないだろう(個人的には経済危機の前の段階でアメリカ中心の国際秩序に中国を組み込むという意味での"G-2"は中国が乗るかどうかは別として試してみる価値はあったと評価している)。また、スピーチでは、東南アジアにおけるアメリカの投資が中国のそれを上回っているなど、経済的な問題でも対立か協調かでは割り切ることができない、ライバルであると同時にパートナーでもあるというのが現状だろう。

 アメリカの姿勢は、対立一色でもなければ協調一色でもない。したがって、中国には選択の余地がある。アメリカとの同盟関係に入ることは無理だろうが、アメリカとの協調を重視して事実上、現状維持勢力の一員に加わるのがベストではある。他方、あくまで現状維持を超える行動を続ければ、今度はアメリカ側の選択の余地がなくなる。前者が、外交や安全保障だけではなく、先進諸国で保護主義色が強くなっている今日ではベストであろう。中国の行動を変えることは難しいかもしれないが、少なくとも選択の余地を中国に与えることは、有益だろう。ただし、中国の戦略が現状打破で一貫している場合、このような選択の余地を与えることは、中国にとって極東だけではない、アジア・太平洋全域において米中のバランス・オブ・パワーを変える時間を与えるリスクもある。


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「老いの坂」を迎える日本社会

 どこぞの島国のどこぞの政党の代表選を排泄物がらみでたとえていたら、自分がお腹を下してしまいました。どうも、火曜に食べたカツオの叩きかちょっと遅い時間に食べた梨か、どちらかにあたったようで、水曜日は朝から風邪のような状態でしたが、途中から便所から出られない状態になりました。あまりブログで書くことではないのでしょうが、ノロウィルスにやられたと思しきときにも、その自覚がなく、一日で収まってしまったので、消化器系統は異常に丈夫なのかもしれません。便秘を経験したのは、1か月も入院したときぐらいですが、便秘があれほど苦痛とは。下痢なんぞ、流してしまえばどうということはないのですが、便秘のときには死にそうなほどのたうちまわって、とても書けないようなことまで試した上で、あまりの苦痛に睡眠導入剤を通常の倍(危険な行為ではありますが)ほど服用して、12時間ほど眠った後で、1時間かけてゆっくり排泄しました。たぶんですが、入院中は歩けない状態でしたので運動不足もいいところで、退院後、ようやく解放されたという感覚が強く、いろいろ歩きましたので、腸が刺激されたらしく、正常に戻る過程で苦しんだのでしょう(阿比留瑠比さんのエントリーを読みながら、「誰かが『下痢と便秘のどちらがいいかという選択だ』と言っていましたが」とあって民主党代表選を見ていて似たような感想をもつ人がいるのだなあとまったくのマイノリティでもないのかなとホッとしました。どうでもよいのですが、「イザ!」界隈では某巨大掲示板経由で今泉画伯の絵に一発で惚れてしまい、しっかりリーダーで読み込んでいます(「ひ、ひいい!」がお気に入り)。「時の最果て」の住人ですのでコメントなどはせず、日の当たるブログを日陰から見ている感じですが)。

 それはともかく、下痢に苦しみながら、たまにPCを付ける状態でしたが、目を剥いたのは、『産経』が配信した「民主党に政権担当能力なし 東大・御厨貴教授講演」という記事でしょうか。ほお、さすがに御厨先生でもこのざまを見れば、1年もかかったとはいえ、民主党に政権担当能力がないということぐらいは理解できるのかとちょっとは安心しましたが、記事の中に「4、5年はかかるが、明治維新や戦後改革など過去の政治的歴史を対照して大きな改革をしてもらいたい」とあって心が折れました。「歴史に学ぶ」というのは無理なのでは。あるいは、プロにしかわからないから黙れと言われれば、なにも申し上げることはないのですが。まあ、政権交代後のドタバタを明治維新に喩えられるとげんなりするのですが、現代的には明治維新も内ゲバの嵐であったと言われれば、まあそんなものかなあと。ただ、明治維新というのは、西欧流に表現すれば、市民革命であったのに対し、今回の政権交代自体は国家体制を転覆することが目的だったのあろうかと。結局は、小泉氏が確立した官邸主導の政治的リーダーシップをその後の自民党の後継者が引き継ぐことはできず、国民の多数に見放され、民主党政権に変わってさらに迷走を重ねているだけにしか見えないのですが。というよりも、民主党政権は統治機構そのものを破壊しているようにしか私の目には映らないです。簡単に言えば、統治機構の麻痺状態ということでして、御厨説によると、麻痺状態は4、5年は続くということでしょうか。日本国の存続にかかわりそうですな。

 そういえば、珍しく民主党のコア支持層と話す機会があって、地元の後援会の有力者だそうですが、議員さんは政務三役の一角を占めている方ですが、本当に情けないとのこと。菅か小沢かで迷っているので、菅は参院選を無にして許せないが、小沢ではお前の次はないと思えと叱り飛ばしたそうで。あくまで一地方の話ですので、まあ、代表選がどうなるかはさっぱりわかりませんが、「う○ち」(ジュニアサイズ)が「う○こ」(シニアサイズ)か「○んこ」(特大)を選ぶという状態のようですなあ。大変だなと思うのは自民党の地方組織で、よほどカネがないのか、人が集まらないのか、この手の噂すら耳にしなくなりました(あの人事は微妙だなあ。閣僚を配置する必要がないのですから、メディアではスルーされても、石破さんなみに安定感と能力のある人材がよかったような。あ、石原さんや小池さんへのあてつけではありません)。クルーグマン先生の日本観察は雑な面もありますが、一人当たりGDPが米国に比して低下している現象を人口という要因でかなりの部分が説明できるというのは、まあ、そうだろうなと。「寝言」として浮かぶ感想は、社会全体が「老いの坂」を迎えるときに、政治的混乱が生じるというのは、宿命論的な見方かもしれませんが、ある程度までやむをえないのかもしれないということでしょうか。


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2010年09月08日

コーランの「焚書」 破綻国家を2つもつくるのか?

 なんだか変な気候ですね。台風まで日本列島をうろうろする始末で、昨年の9月から碌なことがないような気がします。暑さもあるのでしょうが、前歯の治療に入ってから、歯軋りでもしているのでしょうか、夜中にすぐ目が覚めて、再度、床に入ってもうとうとするのが限界です。ほとんど思考らしい思考ができず、厳しいです。不思議なことに、電車の中ですと、爆睡できるので、早めに出かけて始発の駅から乗って睡眠時間を補っています。起きているには仮歯にしては食事などに支障を感じないほど噛み合わせはよいのですが、先に治療した奥歯とて異物を入れているわけでして、意識しないうちに体が反応しているのかもしれません。

 そんなわけで思考力がゼロ、判断力もゼロという平常運転ではあるのですが、アフガニスタン絡みの米紙の報道で気になることがありました。Wall Street Journalが2010年9月6日付けで配信した Julian E. Barnes and Matthew Rosenbergの"Petraeus Condemns U.S. Church's Plan to Burn Qurans"という記事がタイトルからして穏当ではなく、内容を読んで、目を剥きました。フロリダの小さな教会が9月11日にコーランを焼く計画をしているのに対し(後で紹介する記事では50人程度が参加する模様)、ペトレイアスがそれだけは勘弁というところでしょうか。怒ったアフガニスタンの抗議デモ参加者が石を投げるなど、しゃれにならない騒動になっているようで。世論に見放されたカルザイ政権の顔を立てながら、アフガニスタンの治安構築を、米軍へのアフガン市民の信頼にもとづいて再建しようとするペトレイアスからすれば最悪の状況と言ってよいのでしょう。WSJの報道から1日遅れでNew York Timesが"Petraeus Warns Against Planned Koran-Burning"という記事を、Washington Postが"Petraeus condemns Fla. church's plan to burn Korans"という記事を配信しました。基本的にはWSJの記事と変わらず、コーランを焼くという計画だけでも、アフガニスタンの狂信者へプロパガンダの材料を与え、実行されたら(以下略)というところですが、NYTの記事では、コーランの「焚書」を計画しているTerry Jonesを単なる狂信者としてしか伝えていませんが、WaPoの記事では、次のような記述があります。

In Florida, Jones rejected the warnings and said his church plans to go through with its "International Burn a Koran Day."

Jones said he agrees with Petraeus that burning copies of the Koran could provoke violent opposition, but he argued that the United States should stop apologizing for its actions and bowing to kings, the Associated Press reported. He apparently referred to a London summit meeting in April 2009 when President Obama greeted Saudi Arabia's King Abdullah II, now 86, by clasping his hand and bowing.

 フロリダでは、ジョーンズは警告を拒否し、彼の教会の計画を「国際的なコーランを焼き払う日」として実行すると延べた。

 ジョーンズはコーランの写本を焼くことによって暴力的な反対を誘発するだろうという点でペトレイアスに同意した。しかし、彼は、アメリカは行動に関する謝罪と王に頭を下げるのをやめるべきだと主張したとAPが報じた。彼は、どうやらオバマ大統領がサウジアラビアの現在86歳のアブドッラー2世の手を握り、お辞儀をして敬意を表した2009年4月におけるロンドンサミットに関して述べているようだ。


 まあ、いずれにしても、ジョーンズさんに「逝っちゃってる」感を覚えるのは禁じえないのですが、以前、斜め読みした記事に、やはりWaPoで無視できない程度にオバマ大統領はイスラム教徒だと信じ込んでいるアメリカ人がいるという世論調査が以前、出ていて、オバマさんも大変だなあと。いろいろと国内で誤解されているようですなあ。天皇陛下ともそうでしたが、オバマさんは精神的権威にはごく普通の礼をとっている気もします。他方、オバマさんが国民への説得が不十分なまま、成果を出そうとしてアメリカの世論を分断しているのは否定できないのでしょう。コーランを焼くという行為を肯定するつもりはまったくありません。ただ、彼が仕事をするほど、アメリカの世論が分断されていっていることは否定できないと思います。彼が歴史に名を残すとしたら、アメリカ国内を砂漠のようにバラバラにし、アメリカの世界への影響力を決定的に貶めたということになるのかもしれません。

 なんといっても、イラクから撤退してアフガニスタンへは増派するというオバマさんの戦略は理解不能でして、やはり破綻国家を中東と南アジアに2つもつくりたいのだろうかと。2010年9月7日付でWall Street Journalが配信した"Petraeus Sees Gains Amid Afghan Violence"という記事ではペトレイアスがアフガニスタンとイラクの違いを分析しています。アフガニスタンでは部族(民族)対立が強く、武力による掃討作戦は部族間対立を高める可能性が高いとのこと。ペトレイアスは文句なく、優秀な司令官だと思いますが、最高司令官は軍事的才能は皆無といってよいのではと思います。オバマの資質をあれこれ詮索する方が少なくないのですが、軍事に興味がないのではなく、まったく軍事がわからないから成果を収めようと意気込んだり、腰砕けになったりと肚が座らないだけなのでしょう。よほどブッシュ政権の路線を踏襲してくれていれば、こんなバカなことにはならなかっただろうにと悔やまれます。


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2010年09月03日

隠れ小沢ファンばかり?

 オバマ大統領の8月31日のイラクにおける戦闘任務終結に関するWSJの論評が簡潔なのですが、微妙に文意を読みとれず、悩みます。単に余計なことを口走るなと嫌みを言っているだけなのかもしれませんが、私の英語力だけではない読解力では厳しいです。他方で、リーダーなどで読み込んだものなどでは民主党代表選ばかりで、しかも、非常にわかりやすいですね。お手軽なので(失礼!)、こちらを「寝言」にしてみましょうか。

 名指しはあえてしませんが、まず、小沢氏を表だって支持しているサイトは皆無ですねえ。読んでいても、小沢氏を批判する内容がほとんどです。しかるに、なんと隠れ小沢ファンが多いのだろうと目を剥きます(私の見た範囲だと隠れ小沢ファン(もちろん小沢ファンという意味でもない)ではないのはこちらぐらいでした)。これが「闇の勢力」の真の力なのだろうかと。一見、小沢氏を批判しているようで、総理である菅氏はガン無視状態ですので、菅氏はお供え物状態にして主役は小沢氏になるというなんという高度なオウンゴール狙いサポーターなのだろうかと。候補者討論の段階で既に空気と化した菅氏の存在感をさらに希薄化しようということで、これほどまでに小沢氏の影響力は自民党の軍師を自称される方までに浸透していると震えあがってしまいました。もう、間違っても「お縄先生」とか口走ったりできませんね。さくらインターネットから利用者情報が漏れてリアルで止めを刺されそうです。

 それはさておき、閣僚もすごいですなあ。財源があるなら言えよとか、まるで野党に対する態度みたいでして、菅氏と小沢氏で終わった後は挙党一致なんて完全に無視されていて、これまた小沢氏が党を割るように促しているようにしか見えないのですが(小沢氏が勝つ前提で内閣不信任に言及する官房長官には口あんぐりですナ)。唯一まともに見えるのが蓮舫さんぐらいでして、この人、世間じゃ事業仕分けで目立っているだけでどうなんだろうと内心では半分以上、バカにしておりましたが、まともに菅総理を支えようという発言はこの方以外からはなく、みんな小沢攻撃。これでは小沢さんがでっかく見えるだけではありませんか。この小沢さんがしかけているであろう罠に見事に釣られる閣僚も、実は反小沢派のふりをしたオウンゴールの名手隠れ小沢ファンではないのかと感じますなあ。小沢さんの「魔の手」は閣内にまで伸びているのであった。蓮舫氏はきついタイプの女性の典型で苦手なのですが、小沢さんが仕掛けた罠を見抜くのが彼女一人というのがお寒いですね。

 露骨に言えば、お二人が出した政策の骨格を見ると、どちらも終わっているので興味がないのですが、みなさん、なんだかんだおっしゃっていても、「神輿は軽くてパー」がいいんだなあと。言いにくいのですが、菅さんならきゃんきゃん吠えていても、薄ら笑いを浮かべて「菅がなんか言ってるよ」で終わりですが、小沢さんとなるとみなさん凍るという構図ですね。しかし、重くて意志もある「神輿」は嫌だと拒否するほど、「神輿」の重みがでてくる。なんとも不思議な光景を目にしているようでもあり、この程度の人たちが「団塊の世代」はふんだらだと批判しているのだなあと考えると、彼らの老後は安泰だなあと滑稽でもあります。


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posted by Hache at 20:03| Comment(0) | TrackBack(0) | ふまじめな寝言

2010年09月01日

イラク失陥の始まり

 歯の治療も根気が要りますね。まあ、こちらはじっとしているだけで、作業は歯医者さん任せではありますが。上の左側の前歯2本の傷みがひどく、膿が骨を突き抜けて唇の裏側にたまっていたようです。仮歯の装着を含めて2時間を超える治療だったため、途中で寝てしまっていたようです。治療の初期の段階では炎症がかえってひどくなるかもしれませんからということで抗生物質と痛み止めを処方していただきましたが、痛みはまったくなく、安心です。仮歯を装着する前に違和感があったのですが、歯根を除いてほとんど削られていて、ああ、こうやって自分が自分でなくなっていくのだなあと老化の悲しみを覚えました。仮歯ということもあって噛み合わせは今ひとつですが、この数日はまずは快適ですね。驚いたのは、支払額でして、これだけの作業にもかかわらず、保険全体で6,100円、本人負担は1,830円でして、これは少ないなあと。本人としてはありがたいのですが。そんな心配をする必要もないのですが、子どもがいたら、医師・歯科医師は絶対、反対ですな。

 これだけ診療報酬を抑制しているのにもかかわらず、『日経』の月曜日の朝刊を社会保障関係費は伸びて、概算要求は96兆円を越すそうで。お茶目な『日経』だけあって公的年金が運用益を出したときには一面もしくは三面ぐらいにのるのですが、横に「公的年金 損失3.6兆円」とあって当然だろうと。まあ、あきれるほど金遣いの荒い政権を日本人というのは好きなんだなあとあきれますね。しかも、運用益が出る状態ではないのに積立金を取り崩す有様。2010年8月31日終値で東証一部の時価総額は273兆4,588億87百万円でして、とても経済成長が見込める状態ではありませんから、今後10年間ぐらい1986年の時価総額を越える水準で安定的に推移するとはとても思えないです。というわけで、不謹慎ですが、国民年金を納めない若年世代の行動は合理的ではありますなあ。無為無策の政党を選ぶ中高年者への消極的な抗議というところでしょうか。頭が誰になるかで世間ではバカ騒ぎをしているようですが、あんなものついてりゃ同じでありまして、債券市場がそれで動くとしたら、頭が腐っているのと同程度にたいした人が運用していないというだけのことでしょう。単に価格が上がったからいったん利益を確定して、リスク資産に回す状況じゃないからまた債券高という話だと思いますが。『日経』の夕刊を見て玄葉という人がまた補正がどうたらに加えてFRBの動きを「注視」して日銀は行動するようにと注文をつけていてうんざりしました。閣僚の「守備範囲」が支離滅裂ですなあ。これが民主党中堅の「優秀」な御仁だとすると、政界再編などせずに、野垂れ死にしてほしいものです。

 そんなわけでリーダーで読み込んでおりますと、バカみたいに民主党代表選挙に関する話ばかりでして、平和だなあと。平成最大のバカ予算(今後、新記録が出る可能性が大ですが)を組んで消費税増税という寝言は寝てから言えという「時の最果て」における禁句を薄ら笑いを浮かべながら言いたくなる候補とまだまだばらまくぞ、財源は将来に付回しだという候補の選択でしかなく、拒絶感の強い政党の筆頭に民主党がくる私にとっては無縁の世界です。他方、アメリカ発のニュースは、重苦しく、今後10年間、現状維持を図ることができるのだろうかという危惧の念を抱かせます。米中関係も大きいのですが、なんといっても、中東はアメリカから見て、最も影響力を行使することが難しく、常に紛争の種を抱えているだけに、米中の緊張関係と並んでイラク撤退は神経を酷使する問題です。リーダーで日本語のものは流し読みで終わりですが、Washington Postが2010年8月30日付で配信したAnne E. Kornblutの"Obama speech on Iraq has risks"という記事を読んで、前途の多難さに重苦しい気分になりました(現時点では2010年8月31日付になっています)。

 オバマ大統領は8月31日午後8時から執務室から15分から20分程度の演説を行うとのことです。記事では、この演説(この「寝言」を書いているときには未発表)に関してまず批判的な意見が紹介されています。まず、ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロンは、部分的には勝利だと大統領は述べるだろうが、今はそのときではなく、また演説の作成過程で混乱があったと指摘しています。下院の少数派の指導者であるJohn A. Boehnerは「オバマ政権がイラクにおける『戦闘任務』が終結したという功績を求めるのなら、この変化はオバマ大統領とバイデン副大統領が反対した増派によって可能になったことを思い起こすことが大事だ」と述べたとのことです。退役軍人のPaul Rieckhoffは、「戦争が終わったのなら、来週、ブラックホークが撃墜されるなら、何が起きるというのか、断じてないだろうね?」と述べました。まったく異なる立場の意見で共通しているのは、イラクの治安が一時期に比べて改善しているとはいえ、全面的な撤退へ向かうほど安定している状態からは程遠いという認識でしょう。

 戦闘部隊がイラクを離れる一方で、数万の軍隊がイラクに残って必要に応じて防衛的な軍事行動に携わることとされており、特殊部隊はテロリストと戦いを継続することになっています。L. Paul Bremer(2003年から2004年にかけてイラク統治の責任者であった)は、「アルカイダは米軍ではなくて現地の治安部隊を狙っているようだ。実際、彼らの声明は、イラクの治安部隊が政府の最も基本的な任務すら遂行できないことを示そうとしている」と述べました。また、オバマ政権が戦闘が行われるであろうことを認識してきたと述べています。ブレマーは、オバマ政権がイラクに残っている5万人の兵士が帰還する2011年により大きな脅威が出現すると考ええています。「政治的リスクは、2011年にイラクの治安部隊が自分の手には負えず、米軍に留まるように望むことだ。オバマ大統領は、米軍が残るということについて曖昧さがない」と述べています。私みたいな下品な人間に言わせれば、イラクの治安が米軍の後ろ盾なしでは不安定な状態で、完全撤退の時期を明示すれば、イラクを混乱させようとしている勢力に明確な目標とタイミングを教えるようなものでしょう。バイデンのアドバイザーは2011年の完全撤退に関して法律家のように述べています。すべては契約どおりというところなのでしょう。前提条件であるイラクの治安が崩壊するリスクに直面したらという配慮はまったくありません。結局、イラクからの完全撤退が結論としてあり、それを淡々と遂行するという状態にもっていきたいのでしょう。

Some outside observers questioned the decision to stick so firmly to the 2011 deadline - and to describe the current moment as a watershed, given how slowly and unevenly Iraq has improved.

"I don't think moments of transformation are the right way of thinking about Iraq," said Stephen Biddle of the Council on Foreign Relations. "Everybody wants them. Both political leaders and analysts are looking for them as a way of organizing our thoughts about a long, complicated process. But the reality of the situation is Iraq had become an extremely violent ethnic conflict by mid-2006, not unlike the Balkans or Rwanda."

 外部の観察者は2011年の撤退期限に頑固にこだわることとイラク情勢が緩やかにそして思いがけず改善したことから最近の変化を分岐点のように描くことに疑問をもっている。

 「私は転換点がイラクについて考える正しい方法だとは思わない」と外交問題評議会のStephen Biddleは述べた。「すべての人がそれを欲している。政治的指導者とアナリストは 、転換点を長く複雑な過程に関する思考を組織する方法として探求している。しかし、現状はイラクは、バルカンやルワンダとは異ならない、2006年半ばまで極端に暴力的な民族紛争の状態にあった」 。


 2008年にはイラクの治安はペトレイアスの指揮の下、好転しました。他方、ビドルが指摘しているように、それ以前は事実上の内戦といってもよい状態にありました。したがって、治安情勢の好転後、それを定着させ、イラク人自身の国家を建設するには時間がかかります。イラク戦争の是非に関しては議論がわかれるところでしょう。ただ、現状ではイラクの治安部隊は米軍から一人立ちしてイラク人自身の安全を確保する能力に欠いています。この状態で、イラク情勢が劇的に改善したのだから撤退するのだという話では撤退するために情勢判断を歪めることになるのでしょう。

 イラクからの撤退そのものはオバマ大統領の既定方針です。他方、オバマはアフガニスタンに増派を行っています。記事では、イラクからの撤退がアフガニスタン増派の軍事的負担を和らげ、財政負担をも軽減すると指摘しています。率直なところ、私自身は、アフガニスタンにおける軍事行動にあれほどオバマ政権が肩入れした戦略がまるで理解できないのですが、イラクから撤退した後、アフガニスタン情勢の改善が見られないとなると、アメリカの内向きの傾向が強まる可能性があるのでしょう。中東におけるアメリカの同盟国はイスラエルのみといってよく、イラクを失えば、アメリカの中東におけるプレゼンスは大幅に低下するのでしょう。米兵の死者は数千、イラクの民間人の死者は10万人にもおよんだ戦役の帰結が混乱したイラクであるというのはあまりにも残酷な結末のように思います。