2011年03月31日

安っぽい「正義」

 ある電力会社の質素な会議室。ある電力マンが「○は悪くないんです」といきなり頭を下げるのでびっくり。目には怯えたような、疑心暗鬼。こちらが呆然とする。連日、マスメディアに叩き続けられていたせいなのか、人間不信なんだろうか。私自身は、中立的よりはやや好意的だが。なにか言葉の揚げ足をとったりとか、発言が矛盾しているとか、そういう話にはまったく興味がない。雑談をしているうちに、一人だけ縮こまっていた電力マンが徐々に平常に戻る。「村八分」の現代版も残酷なものだ。


「うわー、あんたの業界もそうなの?」
「ええ。東京からくる先生はみな同じですよ。街が明るいって」
「あとは東電の悪口ばかっかりだな」
「○○電力さんだったらよかったのに、だってさ。こういう専門家もどきがすぐに掌を返すんだよね。最悪」
「平岩外四さんも碌に知らないエコノミストもいましたね。学者さんも似たりよったり」
「街が明るいってさ、あのパチンコ屋はいつもはネオン全開ですよとは言えないしな」
「東北とか北関東の人への配慮はないんだよね。こちらが心配しているぐらいなのに」
「無理無理。都からきて、ふだん田舎と見下しているところで、ご高説をのたもおうておられる人たちですから。浦安の液状化は大丈夫ですかと尋ねたのに、目を白黒させていましたよ。知らないんだって。2ちゃんで15日にはでてたのに」
「終わってるな。お隣というより千葉都民の被災には無関心か」
「ぶっちゃけた話、東電がミスって大規模停電という経験がない人達ですからね。まあ、他の大都市圏は似たり寄ったりですかね。昔は、親父が懐中電灯をとってきたり、ロウソクつけたりって経験がありましたが、今はみんな忘れてますからね」
「でも、電気事業者としては終わりなんだよ。計画停電を実施した時点で、東電はもはや電気事業者の名に値しない。問題は夏だ。このままでは死人が出かねない。東電は当然、理解しているだろうけれど、本当に厳しい」

 そういえば平岩外四さんの「私の履歴書」は昔読んだけれど、単行本なりに入っていないのかなと。財界人しての平岩さんの軌跡は功罪相半ばする印象もありましたが、とびぬけた人物なんだなあと感心した覚えがあります。今の東京電力の経営陣からはそのような畏敬の念を覚えさせるものはありません。

 しかし、ネットで配信されている東京電力本店での記者会見や原子力安全・保安院の記者会見を見ているうちに、この会見で映されているのは、東電や原子力安全・保安院の人たちというよりも、質問に立ち、相手をあたかも裁くかのように質問を浴びせる側なんだなと。東京電力の「エース」さん、西山英彦さんは日を重ねるごとに愛着がわいてきますし、「ムトゥ」、「かっちゃん」を見ていると、いかれた「外道」の目には質問する側よりも、はるかに自己抑制能力では上だなとと映ります。「社長様」、「会長様」と呼ぶ卑屈な経済新聞の記者。自称ジャーナリストのプルトニウム厨、昔懐かしの過激派のアジ演説のように東電を説教する市民ジャーナリスト。とりわけ後者はなにか深刻なコンプレックスでも抱えているのだろうかと心配になりますが。安っぽい「正義」を振り回し、放射能の恐怖を煽るマスメディアは軽蔑するだけです。笑えないのですが、タンカーに汚水を移すという官房長官の発言を肯定した上で、それを実行しようとしない東電はなにをやっているのだという東京の評論家にはぞっとしました。もっと笑えないのは、今やるべきこととして述べたことは、とっくに29日の東電の記者会見で提示されていたことですが。素人が思いつきそうなことは、現場でとっくに検討済みでしょう。

 救いはといえば、増税論やマネタイゼーションを笑い、復興事業の具体化のめどが立たない状態で財源論ばかり出てくるのに違和感を覚えている方でしょうか。私とは気質が異なるのでしょうが(まあ、自分でも「外道」かなとは思いますので)、安っぽい「正義」を振りかざしたり、無理に元気になろうとしないあたりがホッとします。非日常で日常を貫くのが難しいのか、わたくし自身があまり物事を深く考えない気性だからなのかはわかりませんが、なんとも不思議であり、こんな変な気性よりも人間らしいのかしらと半分おかしみを感じます。

 もっとも、ツイッターなどで見ていると、首都圏の方のほとんどは大声を張り上げない方でして、本震の後にくる余震でも疲労困憊しそうだなあと。そこに計画停電は被災とは異なる苦痛だと思います。60kHz地帯に住んでおりますので、ご不快な点もあろうかと存じますが、私のようなものでも評論家や学者などの先生方の相手をすると別の意味で疲れますが、ツイッターを見ながらこれが普通だよなあと癒されております。

 年度の締めに帰りに心臓内科によりましたが、やはり付近の他の店舗の照明が控えめになっていて、中は普段どおりでした。いつもは、お元気な70歳を越えている先生も、あの光景を見るのは本当に辛いと珍しく愚痴をこぼしていました。普段は年齢を感じさせない明るい先生ですが、珍しくややふさぎ込んだ感じでびっくりしてしまいました。医師という立場上、臨終をみとられることが多いのでしょうが、心理的な負担というのは大きいのだなあとあらためて実感しました。看護師さんの親戚が仙台にお住まいで、地震が起きた晩に「被災した」という電話が入ったそうです。「でも、生きてるし、電話がつながるぐらいだから大丈夫じゃない?」と返したら、素に帰って「そうだね」と。震災関連で自衛隊や警察、消防の活動以外でホッとした話でした。人の生き死にを日常的に見なければならない立場の方が非日常に強いのは当たり前なのかもしれませんが、生命力という点では女性の方が強いのかもしれません(これが書きたかったので、「ふまじめな『寝言』」に分類しております)。


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posted by Hache at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ふまじめな寝言

2011年03月29日

ああ、無能 2011年3月28日被災者支援各府省連絡会議

 テレビのニュースサイトは、紙媒体より流れるのが速いので、とりあえず自分用にメモです。「TBS Newsi」のサイトから、「次官を大臣ら叱責、『責任押しつけ合い』という動画のテキスト全文を転載しておきます。私が他の紙媒体で読み落としているだけかもしれませんが。それにしても、目をそむけたくなる無能さ。

次官を大臣ら叱責、「責任押しつけ合い」

http://news.tbs.co.jp/20110328/newseye/tbs_newseye4686293.html

 政府内で責任の押しつけ合いが展開されているようです。被災者支援を話し合う政府の連絡会議が原発問題の責任の所在などを巡って、連日荒れていることが分かりました。

 28日昼前の総理官邸、各省の事務次官が続々と集まりました。松本防災担当大臣を議長に2日に一度のペースで開かれている「被災者支援各府省連絡会議」。非公開のこの会議が28日は大荒れになったといいます。

 「もっと自分の問題として対応しなきゃ駄目だ。余りにも無責任ではないか」(片山善博 総務相)

 片山総務大臣が非難したのは、東京電力を指導監督する経済産業省の松永次官。問題となったのは、福島第一原発事故で屋内退避エリアとなった市町村に、原発の状況をどのように説明するかという点でした。

 松永次官が「原子力・保安院長らが2週間かけて説明する」と言うと、片山大臣は・・・
 「2週間は長すぎる。2日で回らなきゃ駄目だ。各省一生懸命やっているんだから、次官が説明に行け」(片山善博 総務相)

 また松本防災担当大臣は、県外に避難している被災者への炊き出しを東電も行うべきだと主張。松永次官が「東電の動きを把握していない」と答えると、松本大臣は「次官が知らないことが大問題なんだ」と厳しく非難したといいます。

 先週のこの会議では仙谷官房副長官も「計画停電が場当たり的ではないのか」などと、松永次官を叱責したということです。

 事務次官が集まる会議は政治主導の名の下にいったん廃止されました。今回、被災者支援のために復活した格好ですが、ある省の幹部は「責任の押しつけ合いの会議ばかりでは、被災者は助からない」と指摘しています。(28日23:17)


 2011年3月19日の「寝言」では、内閣官房が機能マヒではという憶測を書きましたが、さすがは民主党政権。予想を上回る斜め上杉で、災害の大きさにも慨嘆しますが、よりによって、こんなときに歴代最低の内閣というのは人災なのか天災なのか。片山総務相はいまだに鳥取県知事の感覚なんでしょうかね。それとも、自治官僚出身の癖なのか。松本大臣は……。政府内の「パワハラ」というのは民間の比ではないですなあ。東電を擁護する気は全くないのですが、福島第1の収拾に全力を投入することができないのにはそれなりの事情があるだろうとは思いましたが、これほどとは……。

 他のメディアでは見当たらなかったので、事実ではないかもしれませんし、そうであってほしいとすら思う内容です。「NHKスペシャル 日本人はなぜ戦争へと向かったのか」の第4回の内容を髣髴とさせるような光景に絶句するばかりです。

東北地方太平洋沖地震発生直後における福島第1原子力発電所に関する事業者・政府の情報共有に関するメモ

 この数日は抑鬱状態に近いですかね。日本語のニュースは見ない方がいいなあという感じ。英語はといえば、やはり日本のニュースの扱いが相変わらず大きいので、鬱になる感じでしょうか。リビアでは反カダフィがだいぶ盛り返したようで。他方、なぜ、リビアで介入をしてバーレーンには介入しないのかという問題は今後残るのでしょう(参考)。こんな問題でも考えていた方が気が楽になりそうですが、さすがに。ふらふらと日曜日の午後7時のNHKニュースを見ていたら、ほほう、とうとう1000mSvですか。どうでもいいのですが、放射線医学総合研究所前(元?)理事長という肩書で出演していた長瀧重信氏が、スリーマイルはおろかチェルノブイリを超えましたと発言して、不安を煽る専門家というのは最低だなあと思いました。それはともかく、「ミリ」もいらなくなったのかしらと思ったら、即座に誤報とのこと。しかし、月曜日に2号機のトンネルからありゃまという展開でメディアは大騒ぎのようですが、素人目には根っこは、2号機のメルトダウンがどの程度、進んだのかという問題だと映ります。その危険を東京電力や経済産業省原子力安全・保安院がどの段階で意識したのか。私の聞いた範囲では、緊急炉心停止装置が機能しない段階で最悪の事態を東電が考えないはずはないし、保安院にも上がっているはずだろうと。東電と保安院の関係は、他の電力会社と保安院との関係とは異なる部分があるそうですが、ことがことだけにあげるでしょうと。端的に言えば、電力会社は最後の最後で経済産業大臣とは「喧嘩」ができないということです。電力の小売自由化の最終段階まで緊張関係にあっても、最後は妥協が見えている。電気事業法で定められている経済産業大臣の権限は極めて広範で、本気で逆らう電気事業者はいないそうです。善悪は別として、保安院と電力会社は情報を、報道はおろか、公開されない部分も含めて、情報を共有しているというのが、事業者側の常識のようです。

 そんなわけで、共同通信が2011年3月28日付で配信した「炉心溶融を震災当日予測 応急措置まで半日も」という記事は、読めば読むほど、記事が読者を誘導しようとする方向とは異なる意味で憂鬱になるのですが、ここに書かれていることが事実を含んでいるのなら、事態は想像以上に深刻だなあと。記事では菅首相の現地訪問のとベントのタイミングが問題とされていますが、私のようなど素人にはどうでもよく、保安院が11日の夜には「炉心溶融」を予測していたことに目がいきます。事業者たる東電との情報共有がどこまで進んでいたのかはこの記事では不明ですが、この記事が正しく原子力災害対策本部の文書を反映していることが前提となりますが、少なくとも「ベント」に限定すれば、東電幹部と内閣府原子力安全委員会および経済産業省原子力安全・保安院との間では情報共有が進んでいたと考えます。枝野官房長官が意味不明の質疑応答で信憑性を否定していた記事はこれかなと思うので、一応、この記事の事実関係に関する描写には留保をつけておきますが、以下の「寝言」の関心は、菅首相の現地訪問とベントのタイミングの問題はほとんど関係ないので、『共同』の記事で、以下では事実であろうとして扱うけれども、その真偽について留保するのは、東電と内閣府原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院との間で情報と状況把握の共有が行われていたのが事実かどうかという点です。以下では、まずこの点を確認しておきます。

 今回の災害のメインは、やはり東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波による想像を絶する犠牲です。菅首相が地震発生当日、地震緊急災害対策本部を立ち上げたことは評価に値すると思います。実は、私のような、明日にでも民主党が消滅したとしても成仏しろよと呟きそうな人間でも、兵庫県南部地震からすれば、格段のスピードだと感心しておりました。しかるに、兵庫県南部地震と比較して、震源域という表現が象徴するように、震災を受けた地域の広がりや津波の発生にもかかわらず、東北自動車道などの動脈にあたる輸送インフラは信じがたいことに震災直後も生きており、その割に物資があまりに届くのが遅いことに異常さを感じます(もちろん、各被災地へ至る道路は寸断されており、輸送が困難であったことは否定はしませんが)。今回は、主として福島第1原子力発電所の問題に集中しますが、対策本部を立ち上げても、中央政府内の省庁間の調整や自治体との連絡など、その後の実務が滞っていたのではないかという話の前段が、この「寝言」の趣旨になります。

 首相官邸HPの「東北地方太平洋沖地震への対応」(参考)というページにある「平成23年(2011年)福島第一・第二原子力発電所事故について」という文書(PDFファイルはこちらから)では、福島第1原子力発電所に関する「原子力緊急事態宣言」が発令されたのが3月11日午後7時03分であり、これと同じタイミングと解釈してよいのでしょうが、「福島第一原子力発電所に係る原子力災害対策本部」が設置されました(PDFファイル17頁)。くどいようですが、初動における対応は極めて迅速であったという印象をあらためてもちます。枝野官房長官は3月28日の記者会見で『共同』の報道に関して事実関係の一部については肯定しています。ただし、「危機管理センター」による公表というのは、私の調べ方が甘いのかもしれませんが見当たりません。枝野官房長官の発言を裏付けるのは、上記のPDFファイルの21頁にある「原子力安全・保安院」に関する記述です。11日午後10時には「福島第一2号機の今後のプラント状況の評価結果」を保安院が作成したと思われる記述があります。次のように、要約されています。なお、文書では明示されておりませんが、3月11日午後10時までに起きた事象が「実績」として示されているものと思います。

  (実績)14:47 原子炉スクラム(RCIC起動)
  (実績)20:30 RCIS停止(原子炉への注水機能喪失)
  (実績)21:50 水位計復活(L2:燃料上部より約3mの水位)
  (予測)22:50 炉心露出
  (予測)23:50 燃料被覆管破損
  (予測)24:50 燃料溶融
  (予測)27:20 原子炉格納容器設計最高圧(527.6kPa)到達
          原子炉格納容器ベントにより放射性物質の放出


注:本記述の「予測」は3月11日22:00時点のプラントの状況を前提としたものであり、その後のRCIの推移により予測は大きく変化している。


 上記のあまりに簡潔な記述から読み取れるのは、原子炉停止後、全電源喪失事故が発生し、制御棒が一斉に注入され核反応を抑制したものの、起動した緊急炉心冷却装置が午後8時30分には停止したため、原子炉が、部分的とはいえ、いわゆる「空焚き」の状態になっていたことです。同日、9時50分には水位計が復活しており、燃料上部から3mの推移とあることから、燃料の一部が既に露出していたことを経済産業省原子力安全・保安院が把握していたことを示しています。したがって、この段階では、首相官邸にある文書でも、東電と原子力安全・保安院との間で情報が共有され、さらに官邸でも共有されていた証左となります。この文書を読むまで、私が報道で受けた印象は、東電と経済産業省原子力安全・保安院、内閣府原子力安全委員会、そして官邸で情報共有ができておらず、バラバラだったのではということでしたが、それは誤りであったと思います。この文書は、既に、震災発生直後の3月11日夜の段階で首相官邸は、福島第一原子力発電所で燃料溶融の危険があることという情報が上がっていたことを明確に示しています。

 したがって、私が報道から受けているあいまいな印象にすぎませんが、東電は政府にすら情報を隠蔽しているかのような報道やあるいは政府が情報を隠蔽しているかのような報道は事実に基づいていないと思います。少なくとも、起きうる最悪の事態に関しては、初動の段階で事業者と政府の間で情報共有が行われており、政府に対する隠蔽などはなかったといってよいと思います。

 他方、政府側の情報公開が万全とは言えず、全体で102頁にわたる文書を読まなくては、最悪の事態としてどのような状況を想定して、ベントを行うという判断に至ったのかが理解できないという問題があります。次に、福島第一原子力発電所周辺住民をパニックに陥れないための政治的な配慮は理解できますが、もし早い段階で燃料溶融のリスクがあり、ただちに半径30kmの住民に避難指示を出しておれば、半径30km以内の地域で事実上、行政の空白地帯をつくることはなかったのでしょう。また、軽水による冷却が困難になった場合、液体窒素などによる冷却などが検討されたたという資料は全時点では見当たりません。

 驚くことに、原子力安全・保安院に関する記述は3月13日午前9時30分まででいったん途切れています。再度、記述が始まるのは25日からであり、「第一原発のタービン建屋における作業員の被ばくに関して、東京電力に対し、再発防止の観点から、直ちに放射線管理を見直すよう、口頭指示」からです。やや乱暴かもしれませんが、東電と原子力安全・保安院と首相官邸の原子力災害対策本部の連携が機能したのは、12日のベントの検討と翌13日の福島県他自治体に放射能除去スクリーニング基準に関する指示までなのでしょう。これ以降、例えば、CH-47による3号機への放水は16日に中止された分と17日に実施された分の事実に関する記述が防衛省の項目に存在するだけで、東電や原子力安全・保安院との関係に関しては不明です。簡単に言えば、原子力災害対策本部は東電や原子力安全・保安院など原子力災害の最前線と防衛省の対応を調整する機能が麻痺していた可能性があるということです。

 3月11日午後10時に原子力安全・保安院が燃料溶融のリスクを官邸にあげていたのにもかかわらず、ベントを行っても、燃料溶融が進み、事態がさらに悪化する場合の官邸の対応がなかったことを示していると思います。これは憶測にすぎませんが、3月12日午前10時17分に1号機でベントが開始された後、午後3時36分には1号機建屋で水素爆発が生じたことが、大きいのではと思います。この水素爆発はメディアによって一斉に配信され、土曜日ということもあって注目されました。この段階で原子力安全・保安院に関する記述が途切れいていることから、官邸が不信をもち、東電と原子力安全・保安院を実質的には干して、官邸主導で、16日は断念したものの、17日に実施されたCH-47による放水や過激派対策用の放水車の動員など愚策が連続しています。もちろん、東京電力や経済産業省原子力安全・保安院の対応も拙劣であり、後手に回ったことは事実ですが、「官邸主導」の場当たり的な冷却対策が根本的なメルトダウンに対する対応策を考慮することなく行われたことが、今日の事態に至る大きな要因であったと考えます。


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2011年03月25日

リビア戦争 エスカレートする空爆と混迷の兆候

 日本のマスメディアは驚くほど内向きのようで。アメリカのメディアも日本に関する報道が相変わらず多いのですが、見出しと記者名を見た瞬間に読む気が失せます。社内の喫煙所(わが社もほとんど隔離されました)で一服していると、福島第1の話も出ますが、60kHz地域に住んでいるおかげで、放射性物質の心配をするよりも、副流煙の方が害が大きいでしょうな、などと自虐的な話をすると、東電よりも有害な人物扱いされるぐらいなら、やっぱり禁煙しましょうかというオチになりまして、まことに平和な光景です。ちなみに、自己弁護ではないのですが、喫煙所での立ち話はバカにできなくて、○○電力の○○さんが東電は救いようがないと言っていましたわという話がでてきて、いやあ実は企画の○○さんも同じようなことを言っていましたよと。東電が計画停電を避けるべく火力発電を増やすのはやむをえないのでしょうが、60kHz地域の電力会社は原子力発電所を増設するのを断念せざるをえないという見込みの下、既に長期計画の練り直しを始めているようです(C電力さんとかK電力さんとか)。おまけに、東電にガスを融通しろとか、こちらも余って余ってしょうがないという状態じゃないんだけどね、だそうで。露骨に言えば、首都圏ほど優遇されている地域はないわけでして、東電の本社所在地は知っているよね。あそこは、万が一、他の電力会社が潰れる事態になっても、霞が関が死守するからと親戚に言われて、まあ、内幸町ですから歩ける距離だし、首都圏は保護されてどうせ地方は切り捨てられるんだろうなと。

 ちなみに、某電力会社の企画部の方が、4年前ぐらいでしょうか、電力自由化後、競争はやはり必要だとおっしゃっていたのを思い出します。あまりにも優等生的な発言だったので、無神経に電力自由化反対の某中央研究所の言い分をあえて反論としてもち出しましたが、自由化以前はコスト意識が甘く、顧客へのサービスという感覚も失いつつあったのが、自由化してから社内に緊張感が高まり、経営の意識がでてきたのですよと真面目に答えられてしまい、下心でいっぱいだったので、恥じ入りました。同じ話を東電の人にしたら、そんなバカなことをしているのは、そこの管区ぐらいですよ。競争なんてしたって、電力では無意味ですと全否定されました。そのバカにしていた会社がオール電化とかでガス会社を実質締め出すなど、本当にふざけた会社だなというのが率直な実感です。松江までも微量とはいえ、ヨウ素を撒き散らすなど、言語道断ですなあ。津波が天変地異の類に近かったことばかりが公共放送に登場する「専門家」のご意見のようですが、その辺も、地方在住者の耳に入ってくるのは、原子力がらみではどこも叩かれているのですが、東電は柏崎からひどくて、人災だそうで。書けないことが多いのですが、C電力さんとかK電力さんによると、要するに東電というのは「顧客最良 経営最悪」だそうで、かなわないのは政治力とマスコミ対策とのことでした。僻みも多いのでしょうけれどね。

 それはさておき、最近はリビアばかりだと嘆く方もいますが、開戦直後に報道があっただけで、国内メディアは完全に超ドメモードですね。自国が弱っているときには、用心深く海外情勢を見ておいた方がよいと思うのですが、なにせ首都が「脳死」状態だけにやむなしかと。『世界の論調批評』なるサイトが、1週間ぐらい前でしょうか、オワコンじゃなかった「ネオコン」としてならしたウォルフォヴィッツ(世銀総裁としてはゼーリックよりもひどく、イラクの民主化ではなく、ご本人の「民主化」が必要なのではと思うのですが)の作文に深い賛意を示し、「それにしても、今回の中東の激動には経済的不満も含めて様々な要素があり、簡単な説明を拒否するところがありますが、人間はやはりパンのみならず、正義と尊厳を求めるものだ、という感慨を持ちます」(参考)とのことで噴きだしました。およそ、人道といい、人権といい、「善意」というものの危険さに鈍感なんだなあと。

 2011年3月11日の「アメリカはリビアに深入り無用?」という「寝言」では、ハースCFR議長のコラムのメモをしておきました。私自身が、ハースのコラムを読んでいた時点では、安全保障理事会が飛行禁止区域まで深入りすることはなかろうと考えていたので、想像力の欠如という点では救いがたいなあと自分自身に失望する日々が続いておりました。

 ざっくり見ていると、国内の報道では空爆には限界があるという程度の認識ですなあ。この3日間ぐらいは仕事以外はリビア情勢をめぐるアメリカのメディアの報道ばかりを追っていたので、コメントへのリプライをする余裕がなく、ご容赦のほどを。Twitterで、デマを批判している軍事村の一人が国連安保理決議1973(参考)は陸上部隊の派遣をも容認していると主張していて、それはどうかなと。議論をしていた方があっさり同意をしてしまったので、安保理決議1973を読み返したのですが、ちょっと無理があるのではと思います。リビア戦争の現状に入る前に迂遠なようですが、この決議がどこまでの手段を容認しているのかが悩ましいところです。

“Reiterating the responsibility of the Libyan authorities to protect the Libyan population and reaffirming that parties to armed conflicts bear the primary responsibility to take all feasible steps to ensure the protection of civilians,


 ここでは"all feasible steps to ensure the protection of civilians"とあるので、海上封鎖や空爆だけではなく、陸上部隊の派遣を含めたあらゆる手段を含むとも読めます。次の引用部分もそれを補強しそうです。

“Recalling its decision to refer the situation in the Libyan Arab Jamahiriya since 15 February 2011 to the Prosecutor of the International Criminal Court, and stressing that those responsible for or complicit in attacks targeting the civilian population, including aerial and naval attacks, must be held to account,


 ただし、湾岸戦争のようにヘッジクローズを入れないほどの事態とも思えず、私の能力を超えますが、地上部隊の派遣はかなり難しいのではと思います。素人の読解力では怪しいのですが、飛行禁止区域の設定や武器禁輸措置にともなう実質的な海上封鎖でもリビアの主権を、「人道の名において」、カダフィを追い詰めるためとはいえ、制限することになるのですが、地上部隊の派遣となりますと、明確に領土を抑えることになるので、次の部分は抽象的ですが、ヘッジクローズのように、素人目には映ります。

“Reaffirming its strong commitment to the sovereignty, independence, territorial integrity and national unity of the Libyan Arab Jamahiriya,


 ぐだぐだと素人談義が続きましたが、既に飛行禁止区域の設定という目的を超えて、多国籍軍は空爆によって、カダフィの地上部隊を攻撃しています。リビア戦争で、アメリカのメディアの中でも、最も好戦的といってよい記事を書いているNew York TimesのDavid Kirkpatrickは、2011年3月20日に、Elisabeth Bumillerとの連名で"Allies Target Qaddafi’s Ground Forces as Libyan Rebels Regroup"という記事で、次のように連合軍の狙いを説明しています。

The chairman of the Joint Chiefs of Staff, Adm. Mike Mullen, also focused on those goals, talking about how allied forces had grounded Colonel Qaddafi’s aircraft and worked to protect civilians − both objectives stated by the United Nations Security Council in approving the military mission. “We hit a lot of targets, focused on his command and control, focused on his air defense, and actually attacked some of his forces on the ground in the vicinity of Benghazi,” Admiral Mullen told Fox News.

But the campaign may be balancing multiple goals. President Obama, Secretary of State Hillary Rodham Clinton and British and French leaders have also talked of a broader policy objective − that Colonel Qaddafi must leave power. In his comments on Sunday, Admiral Mullen suggested that objective lay outside the bounds of the military campaign, saying on NBC that Colonel Qaddafi’s remaining in power after the United States military accomplished its mission was “potentially one outcome.”


 マレン統合参謀長は、防空網の破壊やベンガジ陥落の防止などの軍事的目標を掲げ提案しました。また、政治レベルではカダフィが権力の座から追い落とすことが戦略的目標だったことがうかがえます。カダフィを物理的に葬るのか、政治的生命を奪うのかは別として、オバマ米大統領がカダフィ後のリビアをどのように考えていたのかはわかりませんが、ハースが警告したように、飛行禁止区域の設定は、結局、全面的な戦争への突入を遮る障壁をなくすものでした。マレンはカダフィが生き残ることも想定していますが、人道という「大義」の下、ひとたび軍事介入を認めてしまうと、エスカレーションを招くのは必定といってよいのでしょう。

 2011年3月19日の「リビアに関するオバマ大統領の演説 『思い上がり』の克服への第一歩」の「寝言」では、オバマの演説をとりあげて評価しましたが、様々なヘッジクローズにもかかわらず、戦争へと突入していくプロセスでは、結果論になりますが、あまり意味をもちませんでした。この演説を読めば、アメリカが軍事介入の中心的な主体となる可能性はほとんどなく、米軍が攻撃を抑制しているのを見て軍事村が大騒ぎをしているのを見て、ドン引きしました。もっとドン引きしたのは、安保理決議に留保するらなく賛成した著名な国際政治学者が軍事介入を擁護しながら、いまさら迷っているツイートでしたけれども。

 リビア戦争で最も弱気といって記事を配信していたのはWaPoで、2011年3月22日にLiz SlyとGreg Jaffeの"Allied strikes pummel Libya's air force but do little to stop attacks on civilians"という記事を配信しました(2011年3月25日現在ではWaPoのHPには掲載されていないようです)。比較的、強気の記事を配信していたWSJやAPも取り上げたMisurataにおけるカダフィの攻撃を取り上げて、Misurata('Misrata'と表記されていることもある)の周辺では80人が殺害されたと報じています。また、医師は、カダフィの航空戦力はもともと貧弱であり、必要なのは飛行禁止区域ではなく、陸上の移動禁止区域だと主張していると報じています。ベンガジについても、この時点ではカダフィの攻勢が強まり、犠牲者が増えていると報じています。まあ、言いにくいのですが、当然でしょう。「窮鼠猫を噛む」というところで、戦争をしかけられた以上、カダフィからすれば反カダフィ勢力をありとあらゆる手段で潰してしまい、安保理決議で定められているレビューで、停戦やむなしの雰囲気をつくりたいのというのは、感情を抜きにすれば当然であろうと。人道の名における戦争が、非人道的な結果をもたらすという当たり前の洞察を欠いた現代人にはバカバカしささえ、覚えます。

 ベンガジをめぐる情勢では、Wall Street Journalが2011年3月24日付で配信したSam Dagher , Stephen Fidler and Nathan Hodgeの"Allies Target Gadhafi's Ground Forces"という記事が興味深いです。空爆は一定の「成果」を挙げて、カダフィを押し戻すだけではなく、反カダフィ勢力の戦闘機が食糧や医薬品をMisurataに空輸できるようになったとのことです(私の勘違いなのでしょうが、「飛行禁止区域」というのはカダフィ側であって、反カダフィは往来自由なんですかね)。しかし、カダフィ側は空爆を避けるべく、戦闘員を陸上から都市内部に浸透させ、大虐殺の危険が高まっていると指摘しています。

 なお、WaPoも木曜日あたりからSlyなどの連名の記事が、空爆と飛行禁止区域の設定に関してマレンが順調に進んでいるという発言を紹介するなど、当初の悲観的な報道から姿勢が変わってきていますが、依然として、カダフィ側の抵抗が根強いことも指摘しています。また、飛行禁止区域は湾岸戦争でもありましたが、実質的な内乱状態では、反カダフィを援助する効果をもちます。現状は、カダフィが倒れるのか生き残るのかさえ不明な状態がしばらくは続くのでしょう。


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2011年03月22日

3月19日と3月21日の「寝言」に関する訂正

 2011年3月19日の「福島第一原子力発電所をめぐる日米の微妙なズレ」という「寝言」と3月21日の「リビア戦争とエネルギー資源(原油・天然ガス)」という「寝言」に痛いミスがありましたので、訂正いたします。

 まず、3月19日の「寝言」です。こちらの「寝言を書いたときに、3月12日に出された福島第一原子力発電所から半径20km圏内の住民に対する避難指示と3月15日に出されたら半径20km圏から30km圏内の住民に対する屋内待避指示が混同していました。出所は、原子力安全・保安院の「地震被害情報(第40報)(3月21日21時00分現在)及び現地モニタリング情報」(参考)で、基本情報をもう一度、確認するべきでした。避難指示と屋内退避支持の区別は知ってはいたものの、基本的なミスで、恥じ入ります。

現時点では半径20kmではなく、30kmですので、どの程度、日本の現状を理解しているのかは疑問がありますが。


 次に、リビアからヨーロッパへのパイプラインですが、地中海の地形を理解していなかったのが丸わかりです。3月21日の「寝言」では、基礎的な事実も調べていなかったことが明白です。ちなみに、天然ガスの確認埋蔵量と生産量は問題がなく、論旨等はとくに変更いたしません。

 こちらもBPのデータを見ますと、世界全体で天然ガスの埋蔵量は 187兆4,900億立方メートルです。リビアの確認埋蔵量は1兆5,400億立方メートルと世界全体の0.8%にすぎません。天然ガスについても、中東全体で 76兆1,800億立方メートルの確認埋蔵量があり、世界全体の40.6%を占めます。また、ヨーロッパ・ユーラシアも確認埋蔵量が63兆900億立方メートルで世界全体の33.7%を占めます。ロシアやトルクメニスタンなどが大半を占めますが、ノルウェーが2兆500億立方メートル(1.1%)、イギリスが1兆6,800億ドルの確認埋蔵量を有しており、ロシアを経由しない天然ガスというのは主としてパイプラインでしょうが、日本のように船で液化天然ガスを輸入すれば、リビアの魅力がどれほどあるのかは、ごく表面的な数字の上での話でしかありませんが、極めて疑問です。

 2009年の生産量で見ても、ノルウェーが1,035億立方メートル、イギリスが596億立方メートルであるのに対し、リビアは153億立方メートルにすぎず、リビアからヨーロッパに天然ガスを輸送する際に液化しないというのは考えにくいので、ノルウェーやイギリスから供給を受ける方が経済的には合理的ではないかと思います。アフリカ内部でさえ、確認埋蔵量の点でも、生産量の点でも、アルジェリアやエジプト、ナイジェリアと比較してさえ、矮小な存在です。リビアの天然ガスは石油と比較すれば(石油でさえも疑問ですが)、カダフィの恭順を受け入れた理由としても、ドイツが棄権した理由としても、ドイツ政府が細かいことに目をとられすぎているのなら別ですが、根拠としては極めて薄弱な印象です。カダフィが大風呂敷を広げて、ドイツをはじめ、欧米諸国が基礎データも確認せずに、それを受けれいたというのなら理解できなくはないのですが。



 下記のページの下部にある地図を見ますと、リビアからシチリア島を経由してイタリア半島に至るパイプラインが存在します。

http://www.theodora.com/pipelines/north_africa_oil_gas_products_pipelines_map.html

 また、ヨーロッパ・ユーラシアに関しても誤解しておりました。ノルウェーやイギリスのガスはパイプラインで輸送されています。

http://www.theodora.com/pipelines/europe_oil_gas_and_products_pipelines.html

Googleを使って"gas pipeline"というキーワードで検索すればすぐにわかる程度のことを確認してせずに、国内のLNGを前提に論じたのは不注意を通り越して無知です。恥じ入ります。とくに、ご指摘を頂いてはおりませんのですが、わたくしの方で気が付きましたので、訂正いたしました。他にも事実誤認があるかもしれません。ご指摘を頂ければ、幸いです。

2011年03月21日

リビア戦争とエネルギー資源(原油・天然ガス)

 東北地方太平洋沖地震があってからもう10日がすぎたのですね。被災された方々が平常に戻るのには、まだ多くの月日がたつのでしょう。ご健勝をお祈りします。首都圏では連休で「計画停電」も一息といったところでしょうか。私事で恐縮ですが、日曜日に停電があって、東北電力や東京電力のエリア以外でも停電が始まったのだろうかとびっくりしましたが、20分ほど復旧しました。雷が鳴っていた形跡もないので原因がわからないのですが、ごくローカルな現象だったのでしょう。PCの電源が突然落ちたので作業中のデータが飛んでしまい、困りましたが、復旧してから作業を終えてホッとしました。

 国連安全保障理事会決議1973(参考)にもとづていて、英仏米を中心に武力行使が始まりました。主としてリビア市民や外国人労働者・ジャーナリストの保護など人道的な目的から、飛行禁止区域の設定や武器禁輸の実施、資産凍結などが行われるそうです。既に、日本語でも報じられているように、フランス軍の航空機がカダフィ政権の戦車を破壊し、トマホークによる攻撃も実施されています。マレン統合参謀本部議長によると、カダフィ側の兵站を断つ作戦が順調に進んでいるそうです。普通に見ればリビア戦争ですが、国内外では武力行使とかぼかした表現ばかりのようです。まあ、きれいな表現を用いれば、行為も美しくなるという言霊信仰が全世界に広がっているのでしょうか。

 クリントン米国務長官が今回の戦争をサポートはしますが、主導はしませんよと発言したとのことで(Mary Beth Sheridan, "Clinton says U.S. supports, but will not lead, military operation against Libya", Washington Post, March, 19, 2011(参考))、微妙な感じもしますが、戦列からアメリカが離れることはないのでしょう。要は、湾岸戦争時の多国籍軍のように、米軍が扇の要になる準備と意思はなく、サポートはするからフランスさんとイギリスさん、その他の国々さんも頑張ってねというところでしょうか。オバマ米大統領は2011年3月18日の演説で次のように述べています。

In this effort, the United States is prepared to act as part of an international coalition. American leadership is essential, but that does not mean acting alone -– it means shaping the conditions for the international community to act together.

 この取り組みでは、合衆国は国際的な連合の一部として行動することになっている。アメリカのリーダーシップは不可欠だが、単独で行動することを意味しない。それは、国際社会がともに行動するための条件をつくることを意味する。


 クリントン国務長官ほど露骨ではなく、上手な表現だなと思います。クリントン元大統領のように"reluctant"でもなければ、ブッシュ前大統領のように"unilateral"でもありませんよと。作戦が失敗しそうだから控えめというよりは、間違っても口には出せないでしょうが、アフガニスタンとイラクで手いっぱいの状況で、後のパラグラフでも出てくるように、カダフィの蛮行を抑えるための飛行禁止区域の設定には、アメリカならではの方法で手を貸しますよというところでしょうか。「参加することに意義がある」よりは意欲的なのでしょう。

 適当に某巨大掲示板を見ておりますと、英仏のねらいは「石油だろ、言わせるな恥ずかしい」みたいな雰囲気です。もう少し知的な方ですと、カダフィがイラク戦争後にアメリカに対し恭順の意を示し、これを許した背景としてリビア国内の原油と天然ガスの存在を上げる方もいらっしゃいます。石油、天然ガスというと、ガス欠気味の日本では目の色が変わるようでして、戦前も戦後も変わらぬ麗しい光景に感動いたします。ざっくりと、BPのHPにある"BP Statistical Review of World EnergyJune 2010"(こちらのページの右側にPDFファイルへのリンクがございます)で確認をしてみましょう。

 まずは、原油です。2009年の原油の確認埋蔵量は世界全体で1兆3,331億バレルです。中東全体で7,532億バレルと実に世界全体の56.6%を占めます。リビアの確認埋蔵量は443億バレルで全体の3.3%ほどです。「世界で第8位の産油国」という表現を国内で見かけることが多いのですが、確認埋蔵量ですね。他方、原油生産の方を見ますと、世界全体で日量7,994万8,000バレルです。中東全体で2,435万7,000バレルで、これは世界全体の生産量の30.3%にすぎません。チュニジアに端を発した中東・北アフリカ危機以前の数字ですので、供給量を抑制している可能性もありますが、投資不足なのでしょう。リビアは 165万2,000バレルと世界全体の約2%にすぎません。アフリカの中でも、ナイジェリア、アルジェリア、アンゴラに続いて4番目の生産量です。2003年以降リビアの生産量は伸び始め、2008年には頭打ちになり、2009年には減少に転じています。現状では、リビアの原油供給が止まっても、現物の取引に与える影響は微弱でしょう。目先の原油高は、リビアの内戦からリビア戦争への発展というよりは、バーレーンとその背後にあるサウジアラビア、イランなどの政情不安がはるかに投機筋に影響を与えているのでしょう。石油利権というのはおいしいように見えるようですが、油井の開発には最低でも1,000億円単位の投資が必要であり、リビアの確認埋蔵量を考えると、投資に見合うリターンがえられるかどうかは微妙な感じがします。もっとも、サウジアラビアをはじめとする中東諸国と比較すると、リビアの確認埋蔵量は1989年から2009年の20年間で倍近くになっており、資源へのアクセス確保を無視はできないのでしょう。他方、採算を考えれば、カダフィ政権をつぶすためにリビア戦争を行うのは、かえって投資環境を整えるまでに多くの犠牲を払う可能性もあります。英仏米が戦争を行う動機としては、ほとんど無視してよいのでしょう。他方、原油開発のためにカダフィの恭順を許したというのも、結果論であって、ナイジェリアでも確認埋蔵量が1989年から2009年でやはり2倍程度になっていることや1989年から1999年の期間に確認埋蔵量の増加がリビアを大幅に上回っていることを考慮しますと、1990年代から北アフリカの油田開発が進み始めており、カダフィが2003年のイラク戦争で恭順した結果、それがリビアにも及んだということなのでしょう。

 藤原帰一先生のツイートでは、国連安保理決議1973の採決でドイツが棄権したのは、リビアのエネルギー資源をめぐる思惑が大きいそうです。

軍事介入に消極的な理由は複数だと思いますが、ロシアを経由しない天然ガスを手にするために、ドイツにとってリビアが不可欠の存在だったことは見逃せません。ドイツばかりでなく、欧米諸国が西側との対決姿勢を改めたカダフィ政権を受け入れた理由も、石油に加え、天然ガスの開発でした。less than a minute ago via web



 こちらもBPのデータを見ますと、世界全体で天然ガスの埋蔵量は 187兆4,900億立方メートルです。リビアの確認埋蔵量は1兆5,400億立方メートルと世界全体の0.8%にすぎません。天然ガスについても、中東全体で 76兆1,800億立方メートルの確認埋蔵量があり、世界全体の40.6%を占めます。また、ヨーロッパ・ユーラシアも確認埋蔵量が63兆900億立方メートルで世界全体の33.7%を占めます。ロシアやトルクメニスタンなどが大半を占めますが、ノルウェーが2兆500億立方メートル(1.1%)、イギリスが1兆6,800億立方メートルの確認埋蔵量を有しており、ロシアを経由しない天然ガスというのは主としてパイプラインでしょうが、日本のように船で液化天然ガスを輸入すれば、リビアの魅力がどれほどあるのかは、ごく表面的な数字の上での話でしかありませんが、極めて疑問です。

 2009年の生産量で見ても、ノルウェーが1,035億立方メートル、イギリスが596億立方メートルであるのに対し、リビアは153億立方メートルにすぎず、リビアからヨーロッパに天然ガスを輸送する際に液化しないというのは考えにくいので、ノルウェーやイギリスから供給を受ける方が経済的には合理的ではないかと思います。アフリカ内部でさえ、確認埋蔵量の点でも、生産量の点でも、アルジェリアやエジプト、ナイジェリアと比較してさえ、矮小な存在です。リビアの天然ガスは石油と比較すれば(石油でさえも疑問ですが)、カダフィの恭順を受け入れた理由としても、ドイツが棄権した理由としても、ドイツ政府が細かいことに目をとられすぎているのなら別ですが、根拠としては極めて薄弱な印象です。カダフィが大風呂敷を広げて、ドイツをはじめ、欧米諸国が基礎データも確認せずに、それを受けれいたというのなら理解できなくはないのですが。

 リビアのエネルギー資源が、欧米諸国の対リビア政策を左右する主要な要因どころか、補助的な要因としてもデータ上は極めて弱いと思います。某巨大掲示板で、戦前の軍部程度の認識で石油だろというのはいつもの光景ですが、識者と思しき方からこのような認識が出るのはやや意外です。人道を守るための戦争というアクロバティックで、世論の理解をえることが難しい問題に苦し紛れにもちだしたのではないことを願います。


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2011年03月19日

リビアに関するオバマ大統領の演説 「思い上がり」の克服への第一歩

 下記は、前の「寝言」の「続き」として書きました。さすがに、いくら「時の最果て」とはいえ、内容に連続性がないので、別途、新しい「寝言」として呟きます。

 リビアに関する「寝言」を用意しようとしていましたが、日米間の微妙なズレが気になっていたので、こちらを優先しました。ホワイトハウスのサイトにオバマの演説がアップされました。19日の未明にはCNBCがツイッターで部分的に流れていましたが、全文を見たのは、午後でした。リビアに関する演説で最も重要なポイントは下記の部分だと思います。

This is just one more chapter in the change that is unfolding across the Middle East and North Africa. From the beginning of these protests, we have made it clear that we are opposed to violence. We have made clear our support for a set of universal values, and our support for the political and economic change that the people of the region deserve. But I want to be clear: the change in the region will not and cannot be imposed by the United States or any foreign power; ultimately, it will be driven by the people of the Arab World. It is their right and their responsibility to determine their own destiny.


 これは中東と北アフリカにまたがって広がっている変化のもう一つの章にすぎない。抗議の始まりから、われわれは暴力に反対することを明確にしてきた。われわれは、普遍的価値や地域の人々が享受するに値する政治的経済的変化を支援することを明確にしてきた。だが、私は次のことを曇りなく示したい。地域における変化はアメリカや外国の力によって押し付けられるものではありえない。究極的には、アラブ世界の人々によって達成されることである。それは、自らの運命を決定する彼らの権利と責任である。



 冷戦後の思い上がりの産物であった、いわゆる「ネオコン」の思想の全否定といってよいのでしょう。彼らは、力の論理に鋭敏であり、勢力均衡も正確に理解する側面があったと思います。他方で、世界を民主的に変革するためには武力の行使をも正当化しました。過去ログをお読み頂ければ幸いですが、私自身はイラク戦争そのものには賛成でした。中東の心臓部を抑えて、イスラエルをも睨みつけながら中東和平を図るという点で犠牲は多いものの、武力を用いることに見合うだろうと。ただし、民主化については明確に反対でした。それぞれの政体には歴史や地理その他の背景があり、外部から押し付けることはできるものではないと考えるからです。「ネオコン」がイラク戦争を引き起こしたというのは誤りだと思いますが、政策の理念として影響力をもったことは否定できないでしょう。私には、この理念が冷戦に勝利した旧西側陣営の思い上がりとしか映りませんでした。

 「時の最果て」の「寝言」ですので、クソ真面目なことを書くのも憚られるのですが、一方でアメリカに武力行使を迫り、他方で財政再建を求めるというのは、頭の中がどうかしているのではと思います。「羹に懲りて膾を吹く」と小バカにされて上等。イラク戦争で懲りたのではなく、冷戦後の思い上がりに、いい加減、気が付いてほしいものだと思います。オバマの演説が理念として燃え上がるような情熱には欠けていることに、むしろ共感を覚えます。相手は狂信の徒であっても、自分はそうではあってはならない。突き放して言えば、アラブ世界の今後など、数年で定まるものではないでしょう。オバマの最初の任期1年はヒヤヒヤの連続でしたが、ここにきて謙抑であることを示したと思います。だからといって、世の中が安定するほど甘くはない。ただ、思い上がりで没落するぐらいなら、謙抑で世界が混乱する方がマシだとすら思います。見通しが立つ状態ではありませんが、少なくとも、現時点でアメリカの最高指導者が謙虚であり、冷徹でもあることは、歓迎です。

福島第一原子力発電所をめぐる日米の微妙なズレ

 テレビをつけると、憂鬱になるので、ついに現実逃避ですねえ。某外資系Pによると、『大魔法峠』なるアニメは、「いかれた漫画に、いかれた監督を用意したら、いかれたフィルムが出来上がった」そうで。次なるいかれた漫画を読み返していたら、読者サービスでパンチラがあるなあと見ていたら、なんとパンツに万字の刺繍とか、もうね、いかれた漫画家ってなんでもありかよという感じ。満貫確定とはいえ、たかが東の暗刻をムダヅモを繰り返しながらつくるだけなのに、「人はポンのみに生きるにあらず」(人はパンのみに生きるにあらずとおっしゃる方から年金の減額の話がでないのは不思議で不思議でしょうがないのですが)とかくだらない上にシュールすぎて笑えます。この漫画、やはりスーパーアーリア人やハイゼンベルクストライクあたりが受けるところなのでしょうが、単にべたおりするのに、「神を試みてはならない」あたりで噴いてしまうあたりは、いかれた漫画を読む読者の中でもいかれている方なのかも。嘘字幕シリーズで「あんなにすごかったら、ドイツだけで、戦争に勝利してるわ!」とあって、正論すぎて噴きました(自粛期間中につき動画は略させていただきます)。

 まあ、しかし、リアルはリアルでいっちゃっている感じもありますなあ。CH-47が海水を福島第1原子力発電所3号機に撒いたり、過激派対策の放水車が出るのかと思ったら引っ込んだり(シャレにならない状態に過激派が原発で粘る根性はないでしょと嫌みの一つも言いたくなります)と大和田先生も思いつかない展開ではないかと愚考します。あの映像を海外から見たら、日本もヤキが回ったねえという感じではないかと。いくら今の首相がアレだからとはいえ、さすがにそこまでひどい案を出すとも思えず、どこから出たのだろうかと。木曜日のNHKのニュースで阪大の先生(誠に非礼ながらお名前を忘れてしまいました)が鉛などで遮蔽を確保した上で常温の水を注入して熱した水を排出するサイクルを確立することが本筋ですとおっしゃっていて、素人にもそれが普通だと思うのですが。サイクルを確立するまでには時間がかかるので、放水はやむをえないにしても、日本人が見てもひきそうな方法を使うというのはいかがなものかと。あまりに不謹慎ですが、ああいう変態的な方法でも自衛隊は優秀なので、何回かやっていくうちに、熟練しそうなのがなんとも。さすがに温度測定に変更しましたか。しかし、無理難題でもなんとかしてしまう自衛隊というのはすごいなあと。

 大魔法峠もムダヅモも及ばないシュールさは民主党のコア支持層でありまして、どう見ても、今回の事故で私の住んでいるところは安全地域なのですが、政府は絶対、なにかを隠しているというので、あなたは支持者じゃないですかと尋ねるのですが、どうも信用していないみたい。理解不能なのですが、公権力への信頼感というのが民主党コア支持層と私みたいに麻生は嫌だけれども、民主党はもっと嫌という、まあ、われながら、なかなかに、いかれたスタンスですが、非民主層との差なんでしょうかね。東電さんは前科があるので、疑われてもしかたないのかなと思う部分もあるのですが。そうはいっても、ロシアや中国、そしてアメリカも監視している中で、データの隠蔽・改竄なんざ無理ざんしょと内心、思いましたが、面倒になって、この話題はボツ。なんで民主党なんぞ消えてなくなればいいと思っている側が弁護しなきゃならんのかという感じ。

 しかし、放射線量の増加は首都圏ではいくら数値で説明しても、現在の環境では不安に思う人がいるのはやむをないだろうなあと。このあたりを感情論として片付けるのは、個人的には微妙なところです。もっとも、福島第1原子力発電所の半径30km圏から退避した方と比べれば、杞憂に近いとは思いますがね。現段階で結果論は言いたくはないのですが、早期に大事をとって移動していれば、混乱も少なく、周辺住民の方々の不安も少なかったと思うのですが。

 この不安に拍車をかけた要因の一つが、アメリカ政府による半径50マイル(約80km)内からのアメリカ人への避難勧告であったと思います。他国の政府も類似の措置をとっているようですが、やはりアメリカ政府が日本政府よりもはるかに広い範囲で避難するように勧告すれば、日本政府はなにか隠しているのではと勘繰る人たちがある程度、出てくるのは、やむをえないかなあと。この報道を聞いたときに、ふと頭をよぎったのは、空母ロナルド・レーガンが2011年3月13日に、軽度とはいえ、乗員の被曝を確認したという報道でした。例えば、2011年3月13日付でNew York Timesが配信したWilliam Broadの"Military Crew Said to Be Exposed to Radiation, but Officials Call Risk in U.S. Slight"という記事は、USS Ronald Reaganがどのような航路をたどっていたのかは明示されておりませんが、福島第1原発から北に60マイル(約97km)を飛行したヘリコプターに洗浄が必要な程度に放射線を浴びたと指摘しています。私が勘違いしている可能性がありますが、陸上と比較して海上は障害物が少ないゆえに風が流れやすく、不幸にしてUSS Ronald Reaganに放射線が到達してしまったのではないかと思います。しかし、この出来事と避難勧告との関係は私の憶測に過ぎず、裏付けはありません。米紙各紙が報じているのは、この事件がアメリカ側の不審を招いたというあたりでしょうか。"Operation Tmodachi"に関する「寝言」を書いた段階では、この報道を知らなかったので、触れておりません。あとで、まずいなあと思いましたが、追記をしている暇もなく、むやみに情報ばかりが流れてくるので、更新も面倒になりました。

 他方、この問題とは別に、Wall Street Journalが2011年3月17日付で配信したTennille Tracy and Ryan Tracyの"U.S. Nuclear Industry Questions 50-Mile Radius"という記事では、原子力エネルギー協会(Nuclear Energy Institute)がオバマ政権の避難勧告に疑義を唱えたことを報じています。記事のタイトルにある通り、原子力関連産業の業界団体ではありますが、健康への影響を防ぐという点では日本の12マイル(約19km)で十分であり、アメリカ政府の半径50マイルの科学的根拠を疑問視しているとのことです。現時点では半径20kmではなく、30kmですので、どの程度、日本の現状を理解しているのかは疑問がありますが。反対に、Union of Concerned Scientistsという団体は、逆に、アメリカの緊急時には半径10マイル(約16km)と定められているが、なぜ50マイルにしないのかという疑問を呈しています。なお、この記事では、アメリカ政府が半径50マイル以内を避難対象とした理由を次のように示しています。USS Ronald Reaganとの関係ではないようです。

Nuclear Regulatory Commission Chair Gregory Jaczko said Wednesday that the U.S. decided to clear a wider evacuation radius than Japan had imposed in part because of concerns over spent fuel pools in a fourth reactor at Fukushima.

Gregory Jaczko原子力規制委員会議長は、福島の4号炉にある使用済み燃料に対する懸念から日本が部分的に実施していた範囲よりもより広い半径から避難することを明確にすることを決定したと述べた。


 地震に続く津波は事前の想定を超えるダメージを原発にも与えました。福島第1原子力発電所が早期に落ち着いていれば、不謹慎かもしれませんが、マグニチュード9.0の地震、陸地を飲み込む津波にも耐えられる日本の原子力技術を海外で活用するチャンスだったともいえます。現状では、アメリカの反応は冷静だと思いますが、内部でも使用済み核燃料への懸念から避難範囲に関してはコンセンサスが確立しているとはいえない状況のようです。書きづらいことではありますが、現状では住民の方々よりも、原発で活動している作業員や自衛隊員の方が被曝の危険が大きいのですが、地元住民の信頼が揺らいだことは大きいと思います。現実には、土壌汚染による二次被害が大きいと思いますが、このあたりは現政府でも理解しているでしょう(枝野官房長官の記者会見を見ていると、既に対応が始まっています)。妙な情報がネットで流れていますが、あまり深読みするのは意味がないと思います。それにしても、2009年の総選挙でも民主党だけはダメと入れなかった私が現政府の擁護をしなければならない状況というのはなんとも面映ゆく、なんだかバカバカしさとおかしみをこらえるのに苦労する日々が続きそうです。


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2011年03月17日

福島第一原子力発電所の事故 スリーマイル以上 チェルノブイリ未満?

 火曜日の晩(正確には水曜日の未明)あたりから東京電力のHPへアクセスができるようになりました。プレスリリースに「福島第一原子力発電所の現状について」という資料(2011年3月15日最新版はこちら)がアップロードされていて、見ていて拍子抜けしました。報道では「まいくろしーべると」(報道で聞いていると、しゃべっている人たちが専門家を除くと"μSv"の意味を知らずにしゃべっているようにしか聞こえないのであえてひらがな)がいくつになったとか騒いでいるのですが、γ線かと。中性子線は実質的に漏れていないので、爆発など派手なことは起きていますが、核分裂反応そのものは制御されていて、核燃料が他のアイソトープに変化する際にγ線が出ている状態でしょう。まあ、もちろん、γ線は遮蔽が難しいので厄介ではありますが、ネットでチェルノブイリだの、いやチェルノブイリまではいかないがスリーマイル島クラスだの騒いでいる人たちはなんなのだろうと。過去の事故は、東海村も含めて運転中の出来事ですから、問題の性質はかなり異なるのでしょう。もちろん、原子力格納容器内の燃料棒の破損が進んだり、余熱を発している使用済核燃料から火災が生じると、放射性物質が大量に拡散するリスクはあるのでしょうが、いわゆる「メルトダウン」とは事態が異なる印象があります。もっとも、先に記した、じゃなかった「寝言」で呟いたのはあくまで素人の「寝言」ですので、多々、的外れなことが多いと思います。「時の最果て」のいい加減な「寝言」にここは間違っているとか、こんなことも知らないとか、「あんた、バカァ?」と突っ込みたい、ご奇特な方はご自由にお願いいたします。

 そうはいっても、建物の爆発など派手な絵がとれるおかげで、米紙をはじめ、地震と津波に関する報道は、依然として同情的ですが、原発関連は批判的な記事も増えています(個人的にはNHKのニュースで自衛隊のヘリがバケツみたいなもので海水をすくって運ぼうとする映像を見て泣きたくなりました)。たとえば、2011年3月15日のAP電の"Explosions at Japanese nuclear plant raise radiation fears, complaints government hiding truth"という記事では、日本国内で避難している人たちに十分な情報が国から送られてきていないという不満がでています。Wall Street Journalが
2011年3月15日付で配信したNorihiko Shirozu and Alison Tudorの "Crisis Revives Doubts on Regulation"という記事は、東京電力の事故隠蔽や原子力安全・保安院の対応の拙さを指摘していて興味深いのですが、長くなるので詳細はカットします。

 今回の事故を受けて、原子力を温暖化ガス削減のために導入しようとしていた国がやめるそうです。WSJがスイスも中止するという記事を流していて、スイスが津波に襲われるというのはいったい、どんな「ジャイアント・インパクト」を想定しているのだろうかと首をかしげました。不謹慎ですが、残るのはパルテノン神殿ぐらいではと思うのですが。とりあえず、動画で確認してみましょう。




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すみません、貼る動画を間違えてしまいました。でも、お詫びする気も、差し替える気も毛頭ございませry

 それはさておき、Economist View経由で読んだ、Scientific AmericanのJohn Mastonの"Fast Facts about Radiation from the Fukushima Daiichi Nuclear Reactors"という記事(2011年3月16日)はよくまとまっていると思いました。

 まず、サマリーでは、「放射線レベルが上昇したことは、日本の原子力発電所がうちのめされていることを示しているが、チェルノブイリ事故は、今でもはるかに破滅的なのだ」とあって、冷静に観察していることを示していると思います。

Since a magnitude 9.0 earthquake rocked Japan and set loose a massive tsunami March 11, the Tokyo Electric Power Company (TEPCO) has been scrambling to avert a nuclear disaster at its hardest hit plant. The Fukushima Daiichi nuclear power station, home to six nuclear reactors, has witnessed explosions at three reactors and a fire in a spent-fuel pool at a fourth. At two reactors, units No. 2 and 3, the vessels containing the nuclear material are suspected to be compromised.

 3月11日にマグニチュード9.0の地震が日本を揺るがし、巨大な津波を解き放ってから、東京電力(TEPCO)は、最もこっぴどく打ちのめされたプラントで原子力災害を避けるよう一刻を争ってきた。福島第一原子力発電所は、6個の原子炉を収容しているが、3か所の原子炉で爆発と第4原子炉では使用済燃料プールで火災が目撃された。第2原子炉と第3原子炉の二つの原子炉では、核物質を密閉する格納容器が破損しているのではないかと疑われている。


 日本語の報道ではそこかしこの問題をバラバラに報道するので、頭が混乱するだけです。現時点における状況を手際よくまとめていると思います。

A handful of plant workers remain on the site, implementing emergency cooling measures at the stricken, overheating reactors. Radiation levels have fluctuated wildly during the crisis, and the extent to which the workers' health has been endangered may not become apparent for years. But so far, the releases of radiation have been limited compared to the 1986 Chernobyl disaster, an explosive event that caused dozens of cases of fatal radiation poisoning among plant workers and that has been implicated in thousands of thyroid cancer diagnoses in the years that followed. (Nuclear fission of uranium fuel produces radioactive iodine, which gathers in the thyroid gland.) As many nuclear experts have noted, the Fukushima Daiichi reactors are better designed than the Chernobyl reactor that failed.

 少数のプラント労働者が敷地内に残って、被害を受け過熱している原子炉への緊急冷却装置を作動させ続けてきた。危機の間、放射線レベルは激しく上下し、労働者の健康がどの程度まで危険にさらされたのかは、数年後まで明らかにならないだろう。だが、今のところ、放射線の放出は1986年のチェルノブイリの惨害と比較して限定的であった。チェルノブイリは、致命的な放射性物質の毒によって何十人ものプラント労働者が死に、その数年後に何千もの甲状腺がんの診断と関連があった爆発だった(ウラン燃料の核分裂によってヨウ素の放射性同位体が生じ、甲状腺に集まる)。多くの原子力専門家が述べてきたように、福島第一原子力発電所の原子炉は、崩壊したチェルノブイリの原子炉よりもより優れた設計である。


 現状では、アメリカの専門家はやはりチェルノブイリの事故との比較をするのでしょうか。福島第一原発の現状については、作業員の被曝がどの程度であるのかは、現時点での評価が困難であることを指摘して、これに続く"fact sheet"もあわせて、チェルノブイリとは比較にならないことを指摘しています。率直なところ、一般の米紙の報道でも混乱が多く、この内容ならば、日本語の報道でもとれる状態になってきましたが、論旨が明快だと思います。

 この観察も、今後の推移によって適切ではなくなる可能性が皆無ではありませんが、福島第一原子力発電所の現状は、スリーマイル島よりは深刻な事態であり、チェルノブイリ未満というところでしょうか。もちろん、この記事の内容も現時点における評価の一つにすぎません。ただ、国内外であまりに断片的に報道されている現状では私自身が混乱しますので、メモを残したという程度です。例によって長くなりましたので、"fact sheet"は「続き」に回します。


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2011年03月14日

Operation Tomodachi

 報道を追っていると、痛ましさとともに、なんともいえない無力感に苛まれます。ツイッターの方が、イライラするツイートが稀にあるのでかえって助かる感じでしょうか。もっとも、大半は炊飯の時間をずらしたりと、首都圏の人たちのまともさにホッとしますが。テレビは危なくて、日曜日の午前に自衛隊が漂流していた男性を救出したという報道が接すると、うれし涙が出そうになり、惨状を見ると、重い涙が出そうになるので、どの道、今日からテレビどころではないので、「安全地帯」にいるなりのことをしておこうというところです。

 多少はツイッターの使い方がわかってきたので、土曜日あたりから"#Japan"タグで検索した結果を見ていると、流れの速さについていけないのですが、この非常時に世界中に善意の人たちが多いので、素直に感謝してしまいます。ここで見つけたのか、他なのかは自分でもあまりに多くの情報を見ていたのでわからないのですが、"Operation Tomodachi"には驚きました。通常の外交政策に関するアメリカの「善意」には複雑な心境なのですが、これはアメリカでなければできない、惜しみのない善意で、アメリカの同盟国であるということがどれほど幸運なことであるのかを実感します。以下で引用するツイートには、事実の描写のみです。これほど雄弁な善意は少ないので、無断引用ですが、こちらに保存しておきます。

Operation #TOMODACHI involves ~14 US #Navy ships, more than 100 aircraft and 1,000s of US servicemembers assisting or prepared to do so.less than a minute ago via web



 下の動画はニコニコ動画で検索したら出てきました。ミリオタではないので動画で出てくる艦船や航空機などがパッとはわからないのですし、今回の作戦そのものとは直接関係がなさそうですが、14隻の艦船、100機以上の航空機をイメージするのにはよいのかなと(当初の動画が投稿者によって削除されておりましたので、別の動画に差し替えました)



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