2011年06月22日

第69期将棋名人戦七番勝負第7局

 観る側としては楽しかったです。どこまでが研究済みなのかはわかりませんが、封じ手局面はさすがに研究外だろうと。火曜日の晩に棋譜を見たときには、パッと浮かんだのは▲5三左桂成でした。棋譜を見ていると、森内俊之九段が先手の利を主張する点で一貫していたので。いろいろ解説を読んで「次の一手」には▲8二歩を選んで、この七番勝負では初めて予想が外れました。まあ、▲5三左桂成とするには寄せまで読みきらないと指せないので、確実にポイントを稼ぐ方を選ばれるだろうという邪心が入ったことが大きいのでしょう。羽生善治名人も新山崎流の強烈な攻め手順を選ばれては防戦が中心になって「後の先」を主張する機会がなかったのは惜しい気もいたしますが、素人目にはすさまじい受けでした。七番勝負の最終局は、両者の実力がいかんなく発揮されて、楽しいとしかいいようがないです。ややどちらかのよさばかりが目立つ対局が多い印象がありましたので。永世名人資格をお持ちの方には微妙な気もいたしますが、両雄が燃焼しきった最終局を見て、あらためて森内名人の誕生、おめでとうございます。

 
posted by Hache at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言

2011年06月16日

中部電力浜岡原子力発電所運転停止の罪

 先週、時間がぎりぎりだったので、勤務先の敷地内で走っていたら、いつの間にかかなりのスピードになっていたようで、記憶が不確かですが、左足で地面を蹴り上げたときに滑ったようで、見事に仰向けに転倒しました。周囲には人が少なかったのですが、数人が駆け寄ってくれて、「大丈夫ですか?」と不安そうに声をかけてくれるので、実際には転倒のショックで、気が遠くなりかけておりましたが、「なんでもないです。心配してくれてありがとう」と返して、そのまま、歩きました。今思うと、ゾッとしないのですが、どうも上半身からダイブした形になったようで、右胸を中心に痛みがあります。顔面が地面に激突する前に手が出ていたようなので、顔は無傷でした。通常ならば、まず膝を打つものですが、まったくといってよいほど傷がなく、ズボンの左ポケットに入れていた携帯の液晶画面が破損していたので、大腿部から地面に接していたようです。いまだに病院にいっていないのですが、胸の痛みが金曜日の朝まで続くようだったら、やむをえないかなと。いい年をして転んでけがをしましたというのがいまいましいのと、レントゲンをとるのが嫌いなので、眠るときに胸がひどく痛むことがあるのですが、うっちゃっています。たぶん、打撲でしょうし、内出血すらしていないので。気象のめまぐるしく変わる時期なので、そうでなくても疲れているのですが、思うように仕事がはかどらず、焦ってもしかたがないなあとのんびりとすごしています。

 久しぶりに東京に行きましたが、相変わらず人が多いなあと。しかし、鉄道を始め、便利なもので、夜になるまで節電というのが実感できませんでした。昔ながらのメンバーと店をはしごしながら、千代田区とはいえ、こんなに賑わっているのかとびっくりでした。データ上は関東の景気の落ち込みが大きいはずですが、これで景気が悪いとなると、地方はいったいなんなのよという感じ。酒も料理もおいしくて、チェックインしたときには12時を回っていました。さすがに、この時間になると、宿は港区の安ホテルが基本ですが、いつもよりも道が暗いのと、ライトアップがほとんどなくて、さすがに暗いなあと。朝食付きで珍しく1万円を切っていたので助かったのですが、この15年近く、料理の質が落ちるばかりなので、宿を変えるか、朝食なしにするか迷うところです。

 少しだけ違和感を覚えたのは、1年半ぶりぐらいにお会いした方が「被爆してるんだろうな」とふっと呟いたことでした。実は、出張前に、今、東京に行くなんて被爆しに行くようなものでしょとびっくりされて、こちらが反対に唖然としました。公表されている放射線量からすれば、東京が終わっているなら、本州の大半は終わっている状態だと思うのですが、やはり距離感の違いなのでしょうか、あまりそういうことを気にしないタイプだと思っていたので、意外な感じがしました。雰囲気をぶち壊すのが好きな私も、さすがにこれには困ったので、何事もなかったように、別の話題をふって流しましたが。

 しばらく「寝言」を書いていなかったので、関係のない話が多くなりましたが、東京出張のお目当ての一つだった東京電力さんは私みたいな暇人を相手にしている余裕はなく、こちらは予想通りとはいえ、収穫なし。中部電力は身内の関係でうんざりするデータをもらいましたが、これはさすがに出せません。ちなみに原発がらみの話ではなく、今夏の電力需給の見込みですが。やはり、無法政権によって浜岡原子力発電所を止められたのはあまりにも厳しく、東電の信頼できるデータがないので迂闊なことは言えませんが、東北地方を除くと、需給が最もタイトな地域になりそうで憂鬱になります。比較的、オープンな場でデータを提供してくれたのが関西電力さんでした。ただ、いくつかタイプミスを発見したので、ちょっと不安はありますが。

 まず、関西電力管内の今夏の電力ピーク予想は3,037万kWとあります。現在の供給力は約3,000万kWとあり、安定供給に必要な予備率が8%とあるので、概ね3,240万kWほどは確保したいというところでしょうか。現時点では、揚水式発電などを除いた安定供給力は2,800万kWで、関西電力も中部電力と同等程度に需給がタイトな状況にあるのが伺えます。なお、気温感応度(気温が摂氏1度変化するときの電力需要の増加量)は、28度から33度までが約100万kWで、33度以上は約80万kWとされています。もちろん、需要規模やその他の条件の違いがあるので、他の地域では異なる可能性が高いのですが、夏の気温が1度あがるごとに原子力発電所のプラント1機分の需要が増加するというのは大変だなあと。今年は、気象庁の予想最高気温が実際の温度よりも高い場合、国土交通省の電気を止めるというルールを導入するのもありかと。

 次に、平成23年度の供給計画は3,381kWとあります。これには、現時点で定期検査中の原子力発電プラントの供給力が含まれています。関西電力のサイトでも確認できるデータですので、定期検査中のプラントのうち、今夏の供給計画に含まれているものを抜粋してみましょう。

   美浜原子力発電所1号機  出力 34.0万kW
   美浜原子力発電所3号機  出力 82.6万kW
   高浜原子力発電所1号機  出力 82.6万kW
   大飯原子力発電所1号機  出力117.5万kW
   大飯原子力発電所3号機  出力118.0万kW

            合計  出力434.7万kW


 なお、定期検査中の美浜原子力発電所3号機と大飯原子力発電所4号機の出力は平成23年度の夏の供給計画には含まれていません。報告自体は東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一原子力発電所の事故の分析がメインだったのですが、外部電源喪失とディーゼル発電機の不具合が大きいことは周知のことでしたので、割愛しました。震災直後(2011年3月14日)に東京電力管内の電力危機の可能性について「寝言」にしたことがありますが、経済学村から周波数変換所の増設と周波数の統一の話がうるさかったのには閉口しましたが、いかに空論であったのかということを実感する数字です。この時期には漠然と福島第一原子力発電所の事故は、他の電力会社の原子力発電にも影響するのだろうと考えておりましたが、熱源として原子力が40%を超える関西電力は慢性的で深刻な供給力不足に陥る可能性が高いのでしょう。

 質疑応答では、太陽光発電のプレゼンの方には無慈悲に、仮に10年後に再生可能エネルギーが全発電量の10%程度まで引き上がるとしても、それまでは天然ガスなど火力に頼らざるを得ないでしょうと私見を述べた上で、報道では5,000億円程度の社債発行を予定されているそうですが、東京電力は資本市場での資金調達が無理なのは自明であり、他の電力会社も格付けは高く、CDSのスプレッドも小さいとはいえ、中長期的には無理なのではないですかと、やや不躾な質問をいたしました。エンジニア畑の方だったので、申し訳なさそうに実はそちらは不案内ですのでとのことで、こちらが恐縮しました。ただ、回答の中で、今夏の安定供給を確保するために必要な天然ガスと重油の燃料費だけで少なく見積もっても3,000億円程度の費用増になるとのことで、驚きました。平成22年度の関西電力の連結損益計算書(平成23年度3月期決算短信はPDFファイルでこちらから)によれば、営業利益は2,738億8,500万円で、火力発電による代替が進んだ場合、慢性的に営業費用が収益を上回りかねない状態です。関西電力には失礼かもしれませんが、この状況で社債を発行するというのは無謀ではないかと思います。また、原子力損害賠償支援機構法案に関しても、原子力事業者に負担金を課しても、実際に支払い能力があるのか、疑念をもたざるをえません。ちなみに、電気事業連合会の会長に関西電力の八木誠社長が就任した関係で、電事連が単に福島第一原子力発電所の賠償だけではなく、将来の万が一の事故への保険となるスキームをつくるよう、政府への働き掛けを強めていることや電力各社の負担金が各社の利益から生まれる以上、電気料金への転嫁が避けられないため、負担金の金額を極力、抑制することなどを求めていることを強調されていました。今回の原子力損害賠償支援機構法案では電力各社の負担が明確ではない印象がありますが、燃料調整費による料金引上げに加えて原子力損害賠償支援法案に定める負担金による電気料金の引上げが加わると、利用者の反発が強くなる可能性があります。政府がどのような政治的説得を行うのか、通常ならば期待するところですが、絶望的だと思います。

 漸く本題なのですが、定期検査中の原子力発電所の運転再開が困難になった背景は、もちろん、福島第一原子力発電所の事故が最大の要因でしょう。この報告で最も興味深かったのは、関西電力の方とはいえ、個人的な意見だと思いますが、菅直人内閣総理大臣の要請による浜岡原子力発電所の運転停止が、むしろ地震や津波に対する原子力発電の危険性を原発が立地している自治体に実感させたことがはるかに大きいとおっしゃっていたことでした。「浜岡原発の運転停止で流れが大きく変わりました」とはっきりと述べていました。後知恵にすぎませんが、浜岡原子力発電所の運転停止要請は、嫌な感覚しかなかったのですが、この方の見解が正しいとするならば、菅直人内閣総理大臣が中部電力に対して運転停止を要請した際の「科学的根拠」は原子力発電所が立地する自治体では信用されておらず、逆に、不安を高めた可能性があるのでしょう。2011年5月8日の「寝言」で法的根拠がない「要請」によって運転停止を実質的に強制することに懸念を示しましたが、この時点で想像していたよりも、この要請がもつ負の効果ははるかに大きいのかもしれません。


続きを読む
posted by Hache at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言

2011年06月09日

第69期将棋名人戦七番勝負第6局

 睡眠時間は6時間程度と最低限のラインは確保できているのですが、いかんせん睡眠の質が悪く、生きているのがやっとという状態です。おまけに月曜日からお腹をくだして、ぐったりしました。土日にそれぞれ2時間程度、散歩をしてほどよい汗をかいたのですが、困ったことに便通が止まってしまい、不思議な感じでした。運動不足の状態が続いた後で、散歩をする程度で、便通があっても、すっきり感がない状態の時には、汗をかく状態が2時間も続くと、翌日すっきりしたものですが。月曜日からよもやの下○で、週明け早々、疲れてしまいました。国内政治はまったく食指がのびないですし(政権交代後、政治がなにかを与えてくれることよりも、どんなダメージを食らわせてくるのか、私の生存にかかわるのかどうかという程度の期待値しかないですし)、海外もカオス状態で、私の元々、足らない脳みそでは、「寝言」にすらならない始末です。週末は出張の予定ですが、不安が大きく、金曜日しだいでしょうか。

 NHKの表記にしたがって、囲碁の名人戦と区別するために、面倒ではありますが、「将棋名人戦」と記しております。公共放送様にとっては形式的とはいえ、配慮が必要でしょうが、私にとってはどうでもいい、細かいところでこだわるのが「時の最果て」の流儀というところでしょうか。それにしても、まさかフルセットになるとは思いませんでした。実は、第5局の大盤解説を聞いたおかげで興奮してしまい、ないなりに手の意味を考えたり、頭の中で盤面を進めていたので、金曜日頃にはぐったりしてしまいました。

 そんなわけで、火曜日の晩に明日から第6局かなと思っていたら、既に始まっていて、口があんぐりでした。65手目までは第4局と同じ進行でしたが、率直なところ、森内俊之九段がこの戦型にこだわる理由がよくわかりません。今回の七番勝負は永世名人資格者どうしの対決ですので、まさに「名人に定跡なし」といったところでしょうが、先手にあえて穴熊に組ませるのが素人目には得策なのかどうかがまったくわかりません。しかし、44手目で先手の穴熊を阻止しても、第69期順位戦A級の木村一基八段対森内九段戦のようにきわどい勝負になる例もあるので、あえて穴熊に組ませてカウンターで追い込むというところなのでしょうか。

 当たり前ではあるのですが、へぼの手にはまったく負えないのですが、先手が矢倉から穴熊に組み替えても、固める余裕がなければ、端と8筋からの攻めと6筋の下段からの攻めが実現すれば、かなり狭い印象もあります。ただ、第4局で敗れた森内九段があえて同じ局面に誘導しているわけですから、1日目の段階で先手の羽生名人もどこで森内九段が手を変えてくるのか、手探りの状態で、苦吟している様子が消費時間でうかがえました(ひょっとしたら、森内九段がどんな会話をしてくるのだろうと楽しみにしている部分もあるのかもしれないなどと不謹慎なことも考えてしまいますが)。封じ手は、棋譜解説にある手が本命でしょうが、20回以上、応募して9割近く当たっているのに、景品が当たったことがないので、放置しました。

 それはさておき、森内九段の66手目で第4局とは異なる将棋となり、先手の攻め駒を攻めるという展開にはなりそうになくなりました。それにしても、先手の羽生名人は飛車角銀桂のすべてが攻めに参加していて、この形で指せると見る森内九段の自らの受けへの自信というのはすごいなあと。しかし、端と2筋を制圧されて、玉が下段で右辺に逃げるのがやっとというのは、私のように攻めもパッとしないが受けはもっとひどい人間には生きた心地がしません。

 羽生名人の93手目の▲6四歩から角をつり出して、▲5六金は驚く手順です。指されてみればなるほどですが、左右挟撃の体勢になっては後手には楽しみがありません。これで漸く森内九段も肚を決めて、先手の穴熊を崩しにかかるのは素人目にも当然なんだろうなと。第4局と比較すれば、はるかに先手陣が乱されて、素人目には先手がよさそうに見えますが、きわどい差のように映ります。ただ、やはり気になるのは、羽生名人の飛車で横利きが受けに利いていて、金銀3枚分ぐらいの値打ちがありそうです。この形で寄せるのは容易ではなく、123手目で用心深く先手陣に刺さったとげのような金を角で外して、さらに香車で寄りにくくすれば、素人目にも羽生名人の勝ちが見えてきます。寄せでの歩の捨て方は、プロなら当然かもしれませんが、実に巧みで、3連敗後の3連勝となりました。もし、羽生名人が防衛に成功すれば、第21期竜王戦で渡辺明竜王が3連敗後、4連勝して初代永世竜王の資格を獲得した七番勝負以来になります。

 しかし、番勝負の行方よりも気になるのは、66手目の△5六歩で森内九段がなにを主張したかったかという点です。感想戦の内容が反映されていないので、棋譜解説が頼りですが、私の棋力では無理です。素人目には、第4局と同じ手順に森内九段が誘導し、羽生名人が追随した印象ですが、△5六歩の主張が棋譜を眺めている程度ではまったくわかりませんでした。コテコテの相矢倉を期待していた者としては楽しいのですが、このあたりの呼吸があまりに難しく、考えても無駄なので、このあたりで止めるのがよいのでしょう。


続きを読む
posted by Hache at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言

2011年06月05日

解説者を泣かせる手順の不思議

 第69期名人戦第5局2日目午後のBS中継を録画しておいたので、見ました。やはり午後の中継で、後手の羽生名人が△5二金と指した時点で、解説者の阿部隆八段も意表をつかれたようです。久保利明二冠と解説を進められていましたが、指された当初は、意味を考えようと駒を動かして、うーんとなっていました。久保二冠があっさりとこの手の説明は無理ですねと話すと、阿部八段が二冠がそれじゃあ困りますと苦笑いをしていたのが印象的です。角の打ち込みを防ぐという狙いははっきりしているといえばはっきりしているのですが、あまりに漠然とした手です。羽生善治名人らしいといえばそうなのですが、やはり普通ではない手だなあと。谷川浩司九段と井上慶太九段の二人で検討が進んでいくうちに、先手の森内俊之九段の応手が難しく、こちらも困ったご様子でした。

 森内九段は50分前後、考えて▲6六歩と指されました。これも不思議な手で、やはり意味が分かりにくいです。BS中継の解説では、△4五桂とはねられた場合、玉が6筋から逃げられるという手ではありますが。やはり、羽生名人の「手渡し」に対して、飛車を逃すなどの有効な手がない状態で、動かしてもダメージが相対的に少ない手を選んだというところでしょうか。谷川九段が▲6六歩にかえて▲6八銀とすると、ひどいことになるという手順を示されていて、なるほど。この手を考えているときの森内九段はつらい苦吟を続けられていたと思いますが、飛車角交換後、その後の手順は直線的ですから、この時点で▲8八角という、バラバラの陣形をまとめながら、最後の反撃を狙う局面を描いていたのかどうか。

 BS中継では阿部八段が56手目あたりで後手が既によかったのではとのことでした。棋譜解説では、封じ手の▲4五歩がまずく、この段階で▲2七銀など陣形を整えなくてはならないとのことです。△2六銀から銀桂交換で十分と見た羽生名人の大局観が、優れいてたのでしょう。なお、山崎七段が話していた羽生名人の調子は、BS中継での谷川九段の発言でした。対局数を重ねるごとに羽生名人が調子を上げているが、名人戦に間に合うかどうか。一方の森内九段は名人戦に専念できる状態のようですが、それがプラスに働くのかは難しいところのようです。第1局までは森内九段の良さばかりが目立ちましたが、第5局で羽生名人らしい手が出て、両者のよいところがぶつかる好勝負を第6局に期待したい気分です。



続きを読む
posted by Hache at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言

2011年06月02日

第69期将棋名人戦七番勝負第5局

 海外も含めて、この世のあれやこれやを忘れたい気分です。クラシックもよいのですが、段々、贅沢になって生で聴きたいなあと。そんなわけで、真剣勝負に申し訳ないのですが、名人戦第5局の棋譜を火曜日から見ておりました。途中までは先手は森内俊之九段、後手は羽生善治名人です。途中までは、封じ手予想クイズでは▲4五歩を予想しました。以下、△3五銀、▲3六歩で後手の銀が遊べば、先手陣の整備ができるでしょうと。驚いたことに、羽生名人は銀を引かずに、△2六銀とどんどん進んできて、悲鳴を上げそうになりました。職場には内緒ですが、このあたりは、仕事用のパソコンで駒音を消して見ておりました。

 5月末日締切の書類を私にしては珍しく期日までに提出したこともあって、本当は木曜日の準備のために残業が必要ですが、大盤解説を聞きたくなりました。同僚たちが早めに帰宅するムードだったので、6時過ぎに勤務先を出て、大盤解説場へ。実は、将棋会館に出向くのは初めてですが、山崎隆之七段と大石直嗣四段の解説だったので、出かけました。6時40分ぐらいに到着したので、72手目の△5二金を解説されていました。山崎七段が先手森内九段に角を渡した後で、後手羽生名人が▲7二角の打ち込みを消しているという手の狙いを解説していました。実際は、終局後の開設だったと思うのですが、山崎七段も大石四段も△5二金を印象深い手として挙げておられました。山崎七段の説明よれば、先手から指す手がないのを見切った手で、将棋盤全体を見渡していないと指せない手とのことです。大石四段なら、この手を指さずに、△6三桂として飛車角交換の後で手を考えるんでしょと山崎七段がジョークを発して、大石四段がそうなんですよねと答えているあたりが楽しかったです。

 しかし、△5二金と▲6六歩の交換は先手がつらいのですが、このあたりで羽生名人と森内九段は、盤上で、どんな会話をしていたのだろうかと。ちょっと想像したくなりますね。

羽生名人:いきなり桂馬で飛車をつますのは簡単ですが、角打ちの備えもしたいですよ。
森内九段:……。
羽生名人:それにそれに、森内さんから積極的に出ていく手がないでしょ?
森内九段:…・・・。正直なところ、困りました。

 8時すぎから後手の寄せの手順と先手からの詰めろの手順が検討されていましたが、会場から派手な寄せ手順が示されて、こちらの方が華やかなせいでしょうか、最初は異なる手順で示されていたのですが、派手な手順がメインになりました。羽生名人の最後の手がファックスで入って、解説をされていましたが、終始、楽しいトークで楽しませてくれていた山崎七段が羽生名人は冷たいですねと。また、強くなるためには、このような厳しい手を指さなくてはとも。このあたりは、会場向けでもありますが、ご本人にも言い聞かせているような印象をもちました。

 山崎九段の全体を通しての印象は、序盤で森内九段が後手陣の形をとがめようと▲3七桂と跳ねたあたりに問題があり、△2六銀から銀桂交換を行って、飛車を中心に先手の攻め駒を攻めていけば十分だという羽生名人の大局観のよさが際立った将棋だったそうです。棋譜解説でも同工異曲のことが述べられており、プロ棋士の共通した感覚なのでしょう。個人的には、もっとひどい手順で崩壊させられる可能性があった局面で自陣に角を打った森内九段の受けもすごみがありました。今後の七番勝負の行方ですが、谷川九段の話として、羽生名人の2011年勝率は悪いけれども、対局を重ねていくうちに調子を上げてくるでしょうと。ただ、それが名人戦に間に合うかどうか。山崎九段は、棋聖戦に王位戦の挑戦者決定戦もあり、体調が大丈夫かなどうかと心配されていました。大石四段は、やはり第7局まで見たいですねと話されていて、まったく同感でした。それにしても、山崎七段はユーモアもさることながら、見る側への心配りが実に細やかで、もともとファンでしたが、ますます好感が上がりました。大石四段は、穏やかですが、若い世代らしく、筋が悪くてもあえて踏み込む手順を多く示して下さって、若いときに安全勝ちを目指すよりも、リスクをとるというのは大切なので、さらなる活躍を期待いたしております。



続きを読む
posted by Hache at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言