2011年06月16日

中部電力浜岡原子力発電所運転停止の罪

 先週、時間がぎりぎりだったので、勤務先の敷地内で走っていたら、いつの間にかかなりのスピードになっていたようで、記憶が不確かですが、左足で地面を蹴り上げたときに滑ったようで、見事に仰向けに転倒しました。周囲には人が少なかったのですが、数人が駆け寄ってくれて、「大丈夫ですか?」と不安そうに声をかけてくれるので、実際には転倒のショックで、気が遠くなりかけておりましたが、「なんでもないです。心配してくれてありがとう」と返して、そのまま、歩きました。今思うと、ゾッとしないのですが、どうも上半身からダイブした形になったようで、右胸を中心に痛みがあります。顔面が地面に激突する前に手が出ていたようなので、顔は無傷でした。通常ならば、まず膝を打つものですが、まったくといってよいほど傷がなく、ズボンの左ポケットに入れていた携帯の液晶画面が破損していたので、大腿部から地面に接していたようです。いまだに病院にいっていないのですが、胸の痛みが金曜日の朝まで続くようだったら、やむをえないかなと。いい年をして転んでけがをしましたというのがいまいましいのと、レントゲンをとるのが嫌いなので、眠るときに胸がひどく痛むことがあるのですが、うっちゃっています。たぶん、打撲でしょうし、内出血すらしていないので。気象のめまぐるしく変わる時期なので、そうでなくても疲れているのですが、思うように仕事がはかどらず、焦ってもしかたがないなあとのんびりとすごしています。

 久しぶりに東京に行きましたが、相変わらず人が多いなあと。しかし、鉄道を始め、便利なもので、夜になるまで節電というのが実感できませんでした。昔ながらのメンバーと店をはしごしながら、千代田区とはいえ、こんなに賑わっているのかとびっくりでした。データ上は関東の景気の落ち込みが大きいはずですが、これで景気が悪いとなると、地方はいったいなんなのよという感じ。酒も料理もおいしくて、チェックインしたときには12時を回っていました。さすがに、この時間になると、宿は港区の安ホテルが基本ですが、いつもよりも道が暗いのと、ライトアップがほとんどなくて、さすがに暗いなあと。朝食付きで珍しく1万円を切っていたので助かったのですが、この15年近く、料理の質が落ちるばかりなので、宿を変えるか、朝食なしにするか迷うところです。

 少しだけ違和感を覚えたのは、1年半ぶりぐらいにお会いした方が「被爆してるんだろうな」とふっと呟いたことでした。実は、出張前に、今、東京に行くなんて被爆しに行くようなものでしょとびっくりされて、こちらが反対に唖然としました。公表されている放射線量からすれば、東京が終わっているなら、本州の大半は終わっている状態だと思うのですが、やはり距離感の違いなのでしょうか、あまりそういうことを気にしないタイプだと思っていたので、意外な感じがしました。雰囲気をぶち壊すのが好きな私も、さすがにこれには困ったので、何事もなかったように、別の話題をふって流しましたが。

 しばらく「寝言」を書いていなかったので、関係のない話が多くなりましたが、東京出張のお目当ての一つだった東京電力さんは私みたいな暇人を相手にしている余裕はなく、こちらは予想通りとはいえ、収穫なし。中部電力は身内の関係でうんざりするデータをもらいましたが、これはさすがに出せません。ちなみに原発がらみの話ではなく、今夏の電力需給の見込みですが。やはり、無法政権によって浜岡原子力発電所を止められたのはあまりにも厳しく、東電の信頼できるデータがないので迂闊なことは言えませんが、東北地方を除くと、需給が最もタイトな地域になりそうで憂鬱になります。比較的、オープンな場でデータを提供してくれたのが関西電力さんでした。ただ、いくつかタイプミスを発見したので、ちょっと不安はありますが。

 まず、関西電力管内の今夏の電力ピーク予想は3,037万kWとあります。現在の供給力は約3,000万kWとあり、安定供給に必要な予備率が8%とあるので、概ね3,240万kWほどは確保したいというところでしょうか。現時点では、揚水式発電などを除いた安定供給力は2,800万kWで、関西電力も中部電力と同等程度に需給がタイトな状況にあるのが伺えます。なお、気温感応度(気温が摂氏1度変化するときの電力需要の増加量)は、28度から33度までが約100万kWで、33度以上は約80万kWとされています。もちろん、需要規模やその他の条件の違いがあるので、他の地域では異なる可能性が高いのですが、夏の気温が1度あがるごとに原子力発電所のプラント1機分の需要が増加するというのは大変だなあと。今年は、気象庁の予想最高気温が実際の温度よりも高い場合、国土交通省の電気を止めるというルールを導入するのもありかと。

 次に、平成23年度の供給計画は3,381kWとあります。これには、現時点で定期検査中の原子力発電プラントの供給力が含まれています。関西電力のサイトでも確認できるデータですので、定期検査中のプラントのうち、今夏の供給計画に含まれているものを抜粋してみましょう。

   美浜原子力発電所1号機  出力 34.0万kW
   美浜原子力発電所3号機  出力 82.6万kW
   高浜原子力発電所1号機  出力 82.6万kW
   大飯原子力発電所1号機  出力117.5万kW
   大飯原子力発電所3号機  出力118.0万kW

            合計  出力434.7万kW


 なお、定期検査中の美浜原子力発電所3号機と大飯原子力発電所4号機の出力は平成23年度の夏の供給計画には含まれていません。報告自体は東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一原子力発電所の事故の分析がメインだったのですが、外部電源喪失とディーゼル発電機の不具合が大きいことは周知のことでしたので、割愛しました。震災直後(2011年3月14日)に東京電力管内の電力危機の可能性について「寝言」にしたことがありますが、経済学村から周波数変換所の増設と周波数の統一の話がうるさかったのには閉口しましたが、いかに空論であったのかということを実感する数字です。この時期には漠然と福島第一原子力発電所の事故は、他の電力会社の原子力発電にも影響するのだろうと考えておりましたが、熱源として原子力が40%を超える関西電力は慢性的で深刻な供給力不足に陥る可能性が高いのでしょう。

 質疑応答では、太陽光発電のプレゼンの方には無慈悲に、仮に10年後に再生可能エネルギーが全発電量の10%程度まで引き上がるとしても、それまでは天然ガスなど火力に頼らざるを得ないでしょうと私見を述べた上で、報道では5,000億円程度の社債発行を予定されているそうですが、東京電力は資本市場での資金調達が無理なのは自明であり、他の電力会社も格付けは高く、CDSのスプレッドも小さいとはいえ、中長期的には無理なのではないですかと、やや不躾な質問をいたしました。エンジニア畑の方だったので、申し訳なさそうに実はそちらは不案内ですのでとのことで、こちらが恐縮しました。ただ、回答の中で、今夏の安定供給を確保するために必要な天然ガスと重油の燃料費だけで少なく見積もっても3,000億円程度の費用増になるとのことで、驚きました。平成22年度の関西電力の連結損益計算書(平成23年度3月期決算短信はPDFファイルでこちらから)によれば、営業利益は2,738億8,500万円で、火力発電による代替が進んだ場合、慢性的に営業費用が収益を上回りかねない状態です。関西電力には失礼かもしれませんが、この状況で社債を発行するというのは無謀ではないかと思います。また、原子力損害賠償支援機構法案に関しても、原子力事業者に負担金を課しても、実際に支払い能力があるのか、疑念をもたざるをえません。ちなみに、電気事業連合会の会長に関西電力の八木誠社長が就任した関係で、電事連が単に福島第一原子力発電所の賠償だけではなく、将来の万が一の事故への保険となるスキームをつくるよう、政府への働き掛けを強めていることや電力各社の負担金が各社の利益から生まれる以上、電気料金への転嫁が避けられないため、負担金の金額を極力、抑制することなどを求めていることを強調されていました。今回の原子力損害賠償支援機構法案では電力各社の負担が明確ではない印象がありますが、燃料調整費による料金引上げに加えて原子力損害賠償支援法案に定める負担金による電気料金の引上げが加わると、利用者の反発が強くなる可能性があります。政府がどのような政治的説得を行うのか、通常ならば期待するところですが、絶望的だと思います。

 漸く本題なのですが、定期検査中の原子力発電所の運転再開が困難になった背景は、もちろん、福島第一原子力発電所の事故が最大の要因でしょう。この報告で最も興味深かったのは、関西電力の方とはいえ、個人的な意見だと思いますが、菅直人内閣総理大臣の要請による浜岡原子力発電所の運転停止が、むしろ地震や津波に対する原子力発電の危険性を原発が立地している自治体に実感させたことがはるかに大きいとおっしゃっていたことでした。「浜岡原発の運転停止で流れが大きく変わりました」とはっきりと述べていました。後知恵にすぎませんが、浜岡原子力発電所の運転停止要請は、嫌な感覚しかなかったのですが、この方の見解が正しいとするならば、菅直人内閣総理大臣が中部電力に対して運転停止を要請した際の「科学的根拠」は原子力発電所が立地する自治体では信用されておらず、逆に、不安を高めた可能性があるのでしょう。2011年5月8日の「寝言」で法的根拠がない「要請」によって運転停止を実質的に強制することに懸念を示しましたが、この時点で想像していたよりも、この要請がもつ負の効果ははるかに大きいのかもしれません。


続きを読む
posted by Hache at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言