2011年07月07日

中国の地方政府の債務問題

 眠い日々が続くので、英字紙も大半はプリントアウトして後で読む状態ですが、中国はまずいなあと。Wall Street Journalが2011年6月28日付で配信したTom Orlikの"China Tallies Local Debt"という記事によると、中国の公的債務はGDPの82%に上り(ファニー名などの、そのうち27%は地方政府が発行したものとのことです。まあ、国と地方の長期債務残高が180%を超える国に住んでいる者としては、まだまだ「メタボ」には遠いわねという感想とともに、利上げしてもインフレを鎮めるのは大変なんだろうなと。

 まずは、地方債の大部分は不動産と関連しており、不動産価格の下落は地方政府の償還能力を損なうだろうと指摘しています。また、水関連(上水道でしょうか)の投資も資金繰りが苦しい事例が紹介されており、公的資本形成などというのは本質的に非効率だと思うのですが、なかなか大変なご様子です。商業銀行の不良債権問題にも多くを割いていますが、ハッと息を呑んだのは次のあたりでしょうか。

A report published early this month by China's central bank suggested that just the debt taken on by local government financing vehicles−entities created and backed by local governments to get around legal constraints on their borrowing−could equal 30% of loans in the banking system. That would be about $2.2 trillion.

 今月(6月:引用者)のはじめに中国の中央銀行によって公表された報告は次のことを示唆している。地方政府の金融機関(地方政府が借入れに関する法的制約を逃れるために創設し、支援している)が引き受けた債務は銀行システムの30%に上る。これは、約2.2兆ドルだろう。


 共産党中央が地方のグリップをどの程度まで握っているかどうかは、中国の国内情勢で最も不透明な問題の一つですが、これはさすがに。いわゆる「不動産バブル」が崩壊しなくても、地価の上昇が鈍り、成長率が低下すれば、高い成長率を前提とし、またそれに拍車をかける要因の一つであった地方政府の公的固定資本形成の原資が厳しくなり、金融システムにも負荷がかかるリスクがあることを示していると思います。私自身は、中国の経済成長に関して10年単位では楽観的に見ておりますが、中国共産党がマクロ経済政策の舵取りを間違えると、かなりきわどい状況なのかもしれません。この記事だけで論評するのはあまりに危険ではありますが、地方政府の公的債務の膨張を考慮すると、金融政策のみを用いたインフレーションの沈静化は容易ではないのでしょう。他方で、地方政府も含めた財政政策も本格的に引き締めると、それまで脱法的な手段によって調達されてきた地方の公的債務問題が表面化し、単に成長率の低下に留まらず、地方政府の共産党中央への向背や社会的不安にもつながるのかもしれません。財政状況はひどく、中央銀行もゆるゆるなのに物価が上がらない国にいると、感覚が麻痺してきますが、中国の方が、政治システムの透明さという点で分からないことが多いのにもかかわらず、起こっているであろう事態は、昔の教科書レベルなのかもしれないなと思いました。

 あとは南シナ海だけではなくインド洋まで人民解放軍のプレゼンスが高まっていますが、財政に負荷をかけられる余地が低下している可能性もあるのでしょう。あえて軍拡競争へと巻き込まなくても、既に中国の側に"overextend"を抑制するインセンティブがない状況では、下手を打たなければ、財政における脆弱性が顕在化するのかもしれません。


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