2012年07月25日

進行するユーロ危機 ギリシャ(2)

 あまり時間がないので、早速、本題です。WSJが2012年7月19日付で配信したMarcus Walker and Marianna Kakaounakiの"Greeks Brace for More Pain on Wages"から引用が続きます。以下の指摘は目新しいものではありませんが、あとででてくるIMFやEUの見方と対比すると興味深いと思います。

Greece, Spain, Portugal and Italy all face the same arduous route to recovery as Mr. Petsas's business. They must push down wages and prices at the same time as they labor to pay down heavy public or private debts.

There is hardly any successful precedent. In advanced economies, wages generally fall only amid long recessions and mass unemployment, and even then, only slowly. In Greece, the public backlash against such immiseration has brought the nation to the brink of ungovernability.

To make matters worse, the more incomes fall and economies shrink in the crisis countries, the less confidence financial markets have in their ability to repay their debts, adding to capital flight from banks and government bond markets.

If the euro zone unravels, the deeper reason won't be fiscal indiscipline or political dithering. It will be because struggling nations' euro membership, coupled with Germany's approach to its own economy, leaves them with a route to recovery that some economists say is barely feasible−socially, politically or financially.

 ギリシャやスペイン、ポルトガル、イタリアはすべてPetsas氏の事業と同じように、困難な回復への道に直面している。これらの国々は、重い公的負債または民間の負債を返済すると同時に賃金を引き下げなければならない。

 成功した先例はほとんどない。先進国では、賃金は、一般的に長期の景気後退と大量の失業が生じている最中でのみ、ごく緩慢にしか低下しない。ギリシャでは、そのような窮乏化に反対する社会の反発が、国家が統治できないという危機を招いた。

 問題を悪化させているのは、所得がより減少し、危機に陥った国々の経済が収縮すると、金融市場でこれらの国軍の債務を返済する能力に対する信頼がさらに失われてしまうことだ。加えて銀行や公債市場から資本逃避が生じる。

 もし、ユーロ圏を解体すれば、財政的な規律が乱れていることや政治的混乱がより深い理由ではないことがわかるだろう。より深い理由は、ユーロに参加している諸国が、ドイツの自国経済へのアプローチに連結されていることである。ドイツのアプローチに関しては、経済学者の中には社会的に、政治的に、あるいは金融の面から実現可能性がほとんどないと述べる者もいる。


 実際に紙にノートしているだけなら不要のお断りですが、私は上記の見解に近く、ギリシャの財政規律などを無視してもよいとまでは思いませんが、ドイツのユーロ圏における失政がユーロ危機の原因の主たる要因であり、南欧諸国自体の問題は従だと考えております。これは、一般的とはいえない特定のスタンスで、私の知る限り、アメリカの経済学者でも支配的な見解ではないと思います。ただ、日本と比較すれば、クルーグマン先生はちと極端すぎてついていけないのですが(案外、こういう変態(失礼!)の方が異常な時代には物が見えている可能性があるのではと思うこともありますが)、ドイツの緊縮財政がユーロ危機の主たる要因として捉える立場の専門家が存在するように思います。

 この点に関しては、だから日本の専門家はダメだというつもりはまったくなくて、IMFやドイツ流のアプローチ、すなわち危機が生じている国の財政規律を回復して、労働市場などで構造改革を行うという方法は、通常の事態であれば、排斥するほど問題のあるアプローチではないと思います。また、私自身はちゃらんぽらんなので、WalkerほどIMFやドイツのアプローチに批判的ではない部分もあって、財政規律の回復や構造改革などは危機の解決の本質的な手段ではないけれども、ドイツを宥めておくにはあるレベルまではやむをえない部分があるだろうと。これは不純な政治的理由ですが、ドイツの言い分を完全にシャットアウトしてしまうと、ユーロが本当に壊れる可能性が高いでしょう。これは避けたいということですね。寄り道はこれぐらいにして記事に戻りましょう。

Germany could help these nations recover, many economists say, by increasing spending to boost domestic growth and imports, or by tolerating significantly higher inflation so that Mediterranean wages become more competitive in relative terms. But Germany isn't prepared to take either step because it fears for its own hard-won stability and competitiveness.


 上記引用では、要はドイツが財政刺激でまず自国の内需を拡大して地中海諸国の競争力を回復させるべきだが、そんな気はないと指摘しています。この点は、前回ちょっと疑問ですねと書いた部分です。ドイツに同情するというより、反論としては弱いのですが、ドイツが財政支出を拡大して地中海諸国の需要を補おうとしても、輸入先として地中海諸国の財貨やサービスのみが選択されるわけではないでしょう。また、債務危機は金融市場の問題で実体経済が仮に多少でも回復すれば、地中海諸国の犠牲は軽減されるかもしれませんが、根本にある信用不安そのものは財市場から切り離すことはできないとはいえ、財市場だけを見ていては解決しないだろうと。もっとも、ドイツは緊縮財政を実施しているおかげで低金利という恩恵を被っているのだから、その恩恵を地中海諸国の救済に回すべきではないかという主張に反論を考えているのですが、なかなか難しいです。現実のドイツの政策は救いようがないというのが率直な実感ですが。

 想像以上に長くなってしまいましたので、労働市場に関する部分は「続き」に回しました。内容的には素人が、根拠薄弱なまま「寝言」を呟いているだけですし、お暇な方だけでよかろうと。十分な検討がないまま、ずいぶん大胆なことを書いてしまったなと思いますが。なお、この「寝言」のタイトルを「進行するユーロ危機 ギリシャ(2)」としたため、前の「寝言」のタイトルを「進行するユーロ危機 ギリシャ(1)」としました。


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2012年07月23日

進行するユーロ危機 ギリシャ(1)

 ユーロ圏の話は、さすがに疲れていたのですが、目を通してはおります。ユーロ圏がデフレーションに転じたというのはいよいよユーロが袋小路に入っていることを象徴しているように思います。対ドルで下げている通貨が域内では価値が上がってしまうわけですから。

 思えば、2010年2月15日に書いた、「ヨーロッパを変貌させた『ギリシアの悲劇』 "The Greek Tragedy That Changed Europe"」という「寝言」は、たまたま取り上げたSimon Johnsonの記事の見通しがよかったおかげで、ぶっちゃけ読者の方には申し訳ないのですが、自分が一番、読み返して助かるなあと。ユーロ圏の諸国にとっては、ユーロの存在自体が、国内経済に与える影響という点で、第2次世界大戦前の金本位制と酷似するという洞察は、その後のユーロ圏の動向を見る上で、非常に有益な視点でした。「ユーロ本位制」の下で将来が見えない消耗戦をギリシャが強いられている記事と緊縮財政でますます煮詰まっているスペインの記事が目につきましたが、まずはギリシャから参りましょうか。

 Wall Street Journalが2012年7月19日付で配信したMarcus Walker and Marianna Kakaounakiの"Greeks Brace for More Pain on Wages"という記事は、「ユーロ本位制」がギリシャの経済的・政治的安定を今もなお破壊している状況を描写しています。ジャーナリストらしく、コモティニというギリシャの北東部に位置する都市の製造業の描写が中心です。冒頭でユーロ加盟当時には90近くの工場で賑わっていた工業団地が現在では26にまで減少したと述べています。これに続けて、「ユーロ本位制」という表現は用いていませんが、ユーロが存在するおかげでギリシャの国内経済が破壊されるメカニズムを端的に表現しています。

Greece, like other euro members that now need financial help, struggled to compete in the European and global economies as cheap credit and structural problems inflated prices and wages faster than its palette of products could justify. Now, lacking a national currency that can depreciate to make its goods cheaper in foreign markets, it must embark on a grinding "internal devaluation," pushing down its wages and prices.

 ギリシャは、他の財政的な支援を必要とするユーロ加盟国と同じように、低金利と生産量の増加よりも価格や賃金がより速く上昇するときに、ヨーロッパ経済と世界経済で競争するよう努めた。外国市場で財を安くする自国通貨を欠いているために、ギリシャは過酷な「国内的な通貨切り下げ」、すなわち賃金と価格の押し下げることに手を付けなければならない。


 訳にてこずったので、実は日曜日に「寝言」を書き始めたのですが、全体を読んだだけで寝てしまいました。お世辞にも訳として正確でもなければ、こなれてもいないと思います。ギリシャ危機が本格化して1年ぐらいしてから自国通貨がないことが問題の解決を困難にしているという指摘を日本語でも見るようになりましたが、この問題を記事の軸に据えて、ジャーナリストらしく、取材内容を整理している水準の記事というのは残念ながら日本語では見たことがありません。私程度の英語力でニュースの大半を英語に依存するというのは無謀極まりないのですが、記事のレベルが違いすぎるので、辞書を引く手間をかけても、英字紙を読み続けるでしょうし、そうせざるをえないのが実情です。

 余計なお世話ですが、どこぞの経済専門新聞はオリエンタルランドの決算でまたやらかしたようで。いまどきインサイダーまでやっているとは思わないのですが、疑うほうが普通ではと思います。この国のトップや周囲の知的階層は能力が低く、人の上に立つ際に最低でも要求される道徳もないというのが現実なのでしょう。東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波、東京電力福島第一原子力発電所の事故などは日本人が自分の歴史として記憶する、欠かせない「歴史」ですが、最も公的な機関が議事録すらまともに残せないようでは論外です。驚くのはメディアの扱いが異常に小さくて、日本ではコソ泥が厳罰をくらい、(現行犯の)強盗犯が無罪放免されるのかと驚き入ったしだいです。

 それはさておき、ギリシャですが、この記事は分量がやや多いので、全訳するのは無理です。他方、部分的な訳では記者が冷静に観察する一方、ギリシャ人への温かい視線が伝わらないと思います。残念ながら、この「寝言」では後者を犠牲にせざるをえません。後者は参照した記事をお読みいただいて、感じていただけばと思います。何様なのかは知りませんが、訳知り顔で選挙のたびにまたギリシャがやらかしたみたいな論調で平気で論評できる輩の精神の背後を疑いますが、(背後にはなにもないだけかもしれませんし)「時の最果て」のモットーである「他人がそうであってもお前がそうであってはならない」にだけ従うことにします。

"When we became one with Europe in currency, many Greeks thought we were all one economy," says Dimitris Petsas, whose underwear factory is one of Komotini's survivors. "We forgot that we have to actively export, to bring the euros of Germany and core Europe to Greece." Instead, he says, "the core countries stripped us naked."

 「ヨーロッパが一つの通貨になったとき、ギリシャ人の多くは一つの経済になったと思いました」とDimitris Petsasは言った。彼の肌着工場はコモティニの生き残りの一つだ。「私たちは積極的に輸出してドイツやヨーロッパの中核国からユーロをもってこなければならないことを忘れていました」。もっとも、彼はこうも述べた。「中核の国々は私たちを丸裸にしたけれどね」。


 この記述に続いて、Petsasが賃金の3割カットを実行し、肌着工場を中国やインドとまともに競争しても、やっていけるところまで復活させたと記述されています。他方、工場で働いている従業員の賃金はモーゲージや車のローンの支払いでなくなる水準にまで低下していると指摘しています。後半で指摘がありますが、単にギリシャがダメだと批判するのは簡単なのですが、ギリシャを襲っている、ウォーカーの表現を拝借すれば、"internal devaluation"(国内における通貨切下げ)の過酷さを考えると、ギリシャの政情不安が、必然とまでは言えないとは思いますが、"internal devaluation"の辛さが政治に反映しているのだろうと思います。

 「寝言」とはいえ、あまりにひどい脱線もあり、予定よりも長くなりました。このあたりで、公開して(あるいは後悔して)楽になりたいなと。続きは、睡眠時間が確保できたときになりますので、あまり期待なさらないで下さい。


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2012年07月19日

都合の悪いことは文書に残さなければよい

 大津市教育委員会が2011年3月11日以降、真っ先に国が都合の悪いことは文書に残さなくなったので、われわれはそれに従っただけだと言えばよいのに。妙に小心なのか、隠ぺいしたり、小出しにしたりにするから叩かれるんですよ。SPEEDIの結果を公表しなかった文部科学省を手本にしましたと言えばよいのに。



 大津・中2自殺 教職員への聴き取り、記録残さず

 大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が昨年10月に自殺した問題で、学校側が自殺後、生徒へのいじめを見聞きしたかどうかを教職員約60人に確認した際、聴き取った内容を記録に残していなかったことがわかった。教師らは自殺前、2度にわたっていじめの情報が寄せられながら「けんか」と判断するなど、当時の学校の対応が問題となるなか、検証に必要な記録が残されていなかった。

 文部科学省は昨年6月、有識者会議がまとめた「子どもの自殺が起きたときの調査の指針」で、再発防止に向けた具体策を示した。数日以内に子どもから聴き取りをするとしたほか、「原則3日以内にできるだけすべての教師から聴き取る」「校長や教頭が聴取するのが一般的で、教師の話しやすさを考慮し、必要なら教育委員会など学校外の者が聴取する」とした。

 市教委によると、学校では自殺後間もなく校長ら複数の管理職が教職員1人ずつから聴き取ったが、どの教職員が何を話したか、書面に残していなかったという。指針では、学校とともに教育委員会も調査主体となるが、市教委は当時、学校から「(男子生徒は)仲の良い友人たちと過ごすことが多く、遊んだりふざけあったりする場面があった」「時おりふざけすぎが気になることもあった」と報告を受けただけで、個々の教職員の聴取内容は確認しなかったという。

 市教委と学校の14日の会見によると、いじめに関する情報は自殺前に2度寄せられていた。1度目は昨年9月30日。女子生徒が「あれ、いじめちゃうん」と担任の前でつぶやいた。2度目は自殺6日前の10月5日で、担任が「トイレでいじめられている」と連絡を受け、トイレに駆けつけて生徒に話を聞いた。「大丈夫。これからも友達でいたい」と答えたという。この後、担任や学年主任ら5、6人が15分ほど話し合い、「けんか」として校長や教頭に報告していた。

 市教委学校教育課の川崎文男課長は「調査指針の趣旨を十分に理解し、自殺直後に教職員から聴き取った内容については詳しい記録を残しておくべきだった。市教委として今後、一連の調査の不備を検証したい」と話している。


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posted by Hache at 12:56| Comment(2) | TrackBack(0) | ふまじめな寝言

2012年07月18日

震災2年目のある日の電力事情

 いきなり暑気負けでぐだぐだな日々です。頭はたいして使っていないので疲れがないのですが、体が疲れて、いくら寝ても足りない感じです。火曜日に帰宅したら、なんと室温が午後9時で38度近くあって、驚きました。この気温でますます暑苦しくて申し訳ないのですが、私みたいなデブに抱きつかれている気分でして、節電とかそういったことは頭から飛んで、設定温度27度で冷やしましたが、室温が28度まで下がるのに、3時間近くかかりました。

 電力使用状況に関してはいろいろなサイトがありますが、とりあえず、ヤフーのページからデータを取り出してみました(参考)。下記の数字は、2012年7月18日午後1時現在のデータです。


北海道電力 使用電力 410万kW 供給電力 490万kW 使用率 83%
東北電力  使用電力 1128万kW 供給電力 1477万kW 使用率 76%
東京電力  使用電力 4643万kW 供給電力 5256万kW 使用率 88%
北陸電力  使用電力 474万kW 供給電力 554万kW 使用率 85%
中部電力  使用電力 2342万kW 供給電力 2695万kW 使用率 86%
関西電力  使用電力 2444万kW 供給電力 2902万kW 使用率 84%
中国電力  使用電力 1020万kW 供給電力 1191万kW 使用率 85%
四国電力  使用電力 465万kW 供給電力 548万kW 使用率 84%
九州電力  使用電力 1403万kW 供給電力 1592万kW 使用率 88%


 まずは需給が最も厳しいと予想される九州電力ですが、下記のリンク先から、九州電力のサイトで供給力の内訳をみることができます。2012年7月18日のピーク時供給力のうち、他社受電が333万kWと供給力全体の約21%と高い水準になっているのは当然でしょうか。融通は意外と小規模で、中部電力から10万kW、北陸電力から6万kWで合計で16万kWで、ちょうど地熱・太陽光など、いわゆる「代替エネルギー」と同程度のようです。トップページのヘッドラインが計画停電の有無を知らせる仕様になっているなど、逼迫した状態であることを象徴していると思いました。

(九州電力の供給力の内訳:PDF)
http://www.kyuden.co.jp/power_usages/pdf/20120718_forecasts_detail.pdf?date=20120718134903

 次に関西電力ですが、他社と比較して、データが非常にわかりづらいです。平成24年5月19日付の「今夏の需給見通しと節電のお願いについて」というPDFファイルがあるのですが、現時点での供給力の内訳は公表されていないです。関西電力大飯原子力発電所が再稼働しないという前提の数字しかないのですが、「供給力確保の状況(8月)」というスライドでは他社・融通が644万kWと供給力全体の25%を占めています。関西電力の回し者ではありませんが、大飯原子力発電所の再稼働せず、今夏の気温がが2010年並み(今の暑さを経験すると、2010年を超える気がしますが)となれば、計画停電が常態化するのは必然ともいえるでしょう。愚鈍な豚政権が消費税率の引上げを最優先事項にして、原発の安全対策など喫緊の課題を後回しにしたツケでしょうが、現状では原発の再稼働をするなというのは、近畿地方で計画停電を毎日のように実施して、産業と生活を麻痺させよというのに等しい結果を招くことに注意が必要だと思います(近畿地方の方に恨みはないのですが、あえて再稼働をゴリ押しせずに、放置してまとまった人口を抱えた地域で本格的な電力供給不足が長期間にわたって続いた場合、先進国とは思えないほど荒廃するかどうか、実験してみたら、電力会社の出している電力需給の見通しは原発を再稼働させるための「脅し」で、恣意的なものだというお気楽な批判への、これ以上わかりやすい「現実」を見せる機会を失いつつあることは残念ですが)。

「今夏の需給見通しと節電のお願いについて」(関西電力)
http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/pdf/0519_1j_01.pdf

 地味に、他社を支えているのが中部電力といった風情でしょうか。7月18日の他社受電が161万kWです(参考)。この数値は、応援融通の46万kWを差し引いた値だと思いますが、ピーク時供給力の約6%で、自前ではかつかつですが、他社受電があれば、応援融通が可能という状態です。関西電力へ36万kW、九州電力へ10万kWほどですが、応援融通をしており、関西電力ならだいたい火力発電の2基分程度というところでしょうか。

 トップページに「『エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会』での当社社員発言について」というお知らせがあります。まあ、この件については書きたいのをずっと抑えていましたが、中部電力自身が「当社社員の個人的、自主的な参加である」と述べている同じ文書で、「当社社員の意見の中に、福島第一原子力発電所事故の被災者の方々のお気持ちを傷つけるような不適切な発言があったことに関して、深くお詫び申し上げます」とお詫びするのは失敗ではないかと。以前から、リアルでは「震災ファッショ」と呼んでいて、そういうことは言わない方がいいと色々な人に忠告を受けましたが、菅のなんの法的根拠に基づかない浜岡原子力発電所の停止要請以来、戦争前の昭和期というのはこれよりきつかったんだろうなあと。「日本型ファシズム」というのは東条英機のような無能な働き者によって完成するというのが持論ですので、豚が首相になってから、こいつみたいなやつが「震災ファッショ」を完成させるんだろうなと思いながら見ていましたが、想像以上にひどいので、国内は見ないようにしております。

 東京電力は、下記のPDFファイルによると、他社からの受電もなければ送電もなく、アウタルキーですな。さすがに、値上げを要請している電力会社が他社への送電どころではないといった風情でしょうか。料金値上げに節電要請ではさすがに首都圏がもたないでしょうから、本当は今年あたりで一休みというのが理想ですが、地味に供給電力の上乗せも限界にきているので、九州電力や関西電力よりも余力があるとは思うのですが、微妙な感じがします。

http://www.tepco.co.jp/forecast/html/pdf/0718uchiwake-j.pdf

 分析というほどのことは無理なので、ざっとデータを追うだけに留めました。それにしても、夏がヤバいとは思っていましたが、帰宅時でまさか37度を超えるとはね。窓を空けてでかけているのですが、涼しい風を取り入れるのが難しいようで、今更ですが、日除けのやり方を根本から変える必要がありそうです。


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2012年07月15日

あっとらんだむ

 「寝言」ですし、元々、日々の雑感を書きとめる程度で始めたので、大袈裟ですけれども、原点回帰でしょうか。国内は、歌詞を書いていたら、今のままでは維新の会が伸びるのかと憂鬱になったので、忘れたいですね。大津市の中学校の「いじめ」は事実関係がわからなさすぎるので、いろいろ思うところはあるのですが、いじめは小学生で卒業してほしいと思ったりします。

(モーツァルトのオペラの「ドイツ的」なるもの)

 そういえば、モーツァルトのオペラって時々、歌が主なのか伴奏が主なのかわからなくなりますねと話しておりましたら、イタリアオペラと聴き比べを最近していたという方が、「モーツァルトの段階でオペラがシンフォニックになって、ベートーヴェンも引き継ぎ、ワーグナーの楽劇で頂点になるねとのことでした。対照的に、イタリアオペラは歌がメインで伴奏はあくまで従というスタイルがほとんど崩れることはなく、正統的とのこと。オペラまでシンフォニックだと疲れるからなあとおっしゃるので、全く同感でした。まあ、ワーグナーは飽きるんでいいんですけれどと話すと、「神々の黄昏」はくどいからねと。苦手なショスタコーヴィッチもオペラがあるんだけど、知ってるといわれて、もちろん知りませんと。プロットを聴いていたら、そりゃあスターリンが激怒するわなてな感じ。作曲者本人が劇の最後のようにシベリア送りにならなくてよかったですねと話すと、苦笑していました。

(節電)

 まだ、猛暑というほどではないので、家でも普通にデスクトップの自作機を使っていますが、本格的な猛暑が到来したら、Ivy Bridgeを使っているノートをメインにしようかなと。本当は、次世代のCPUマイクロアーキテクチャの省エネ性能がすさまじいようなので、来年に延ばしたかったのですが、停電とか最悪のことを想定すると、まあ今年で買い替えておくのがよいだろうと。やはり、節電に関しては、首都圏が最先端で中部地方や北陸地方も意識が高いようです。不思議なのは近畿地方で、関西電力は近隣の電力会社からの融通がなければ、関西電力大飯原子力発電所が稼働しても苦しいのですが、あまり危機感がないみたいです。原発を動かすためにカラ脅しの数字を出しているんじゃないのという話が近畿地方の方から複数、聞いたので、ちとびっくり。東北地方太平洋沖地震前には関西電力のベース電力の3割程度を原子力発電でまかなっていたことを考えると、2010年並みの猛暑なら当然の想定だと思いますが、これは参ったなあと。電力会社の回し者ではないのですが、中部電力や北陸電力が営業エリアで節電を前提に融通を行う予定まで立てていたのに、融通される側の意識というのはこんなものかと。それにしても、本気で発送電分離とかやるんですかね。国有化された東電ならありかなと思いますが(東京電力福島第一発電所の事故の補償を電力料金の値上げでまかなうのは無理でしょうし)、他の電力会社は純然たる民間企業なんですが。うっかり『日経』の「電力改革」に関する記事を読んで、うんざりしたので以下に。

(日本の電力改革ごっこで欠けている視点)

 データなどは古くなっている部分が少なくありませんが、下記の文献を参照しております。

Ioannis N. Kessides,2004, Reforming Infrastructure Privatization, Regulation, and Competition, The International Bank for Reconstruction and Development / The World Bank.

http://www-wds.worldbank.org/external/default/WDSContentServer/WDSP/IB/2004/06/16/000012009_20040616143838/additional/310436360_20050007115940.pdf

 上記の文献の162頁から引用します。

 But one of the most important second generation issues in restructured electricity markets is the potential exercise of horizontal market power. Even in some large industrial countries that had an opportunity to create several private generators of approximately equal size, the market structure of generation tends to be highly concentrated. Market concentration in generation is even more pronounced in developing and transition economies (table 3.4).

 電力改革が進んでいくと、とりわけ発電部門において市場集中が生じると指摘しています。ただし、顕著なのは、途上国と移行経済にある国であるという指摘もあります。

Electricity markets are especially vulnerable to the exercise of market power because they are characterized by highly inelastic demand, significant short-run capacity constraints, and extremely high storage costs. These factors make traditional measures of market concentration somewhat inaccurate indicators of the potential for−or existence of−market power (Borenstein, Bushnell, and Wolak 2000). Moreover, an electricity market may sometimes involve very little market power, and
other times suffer from a great deal. The shift between these states occurs when demand rises above the level that generators can supply. In addition, the distinction between these states is more pronounced in markets where small generators have limited production capacity and there is widespread potential for transmission congestion (Borenstein, Bushnell, and Knittel 1999).


 非弾力的な需要や短期における供給能力制約などの理由から、電力市場は市場支配力の行使に脆弱だと指摘しています。他方、電力市場では、まったくいってよいほど市場支配力がない状態と強い市場支配力に苦しむという両極端が生じるとも指摘しています。

 上記の指摘は、電力市場の自由化とともに当然、生じうる問題です。特に、最後の市場支配力が需給状況によって両極端にぶれるという指摘は重要でしょう。日本では電力事業の自由化が部分的であるがゆえに、電気事業者が供給不足の状態で市場支配力を行使しない(高い料金を課す)という特殊な状態にあります。現状では、制度いじりをして、供給が脆弱な状態を日本の経済学者やエコノミストなどヤブ医者に任せるなどというのは背筋が寒くなります。治る病気で死ぬのは勘弁です。なお、上記の文献では送電に関しては系統電力の調整が必要であり、規制が難しいことを認めているなど実際的な指摘も目立ちます。送電部門では長期にわたって投資不足が続いているというのは、現在では検討の余地のある問題かもしれませんが、
もともと、民営化の必要がない日本では発電と送電の分離を行う必要は乏しいと思います。とくに、発送電分離は送電への投資のインセンティブを喪失させる可能性もあり、事態を悪化させるリスクも考えておくべきでしょう。現状では電力会社をいじめることが世論の大勢を占めていて、自称「専門家」も世論に迎合しているだけでしょうが、一時的な感情に実際的な問題を委ねるのはあまりに危険でしょう。世論に阿る「専門家」の声ばかりがでかいのが現状ですね。


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2012年07月13日

国会は珍獣陳列室

 どこかで、本当は『ぷよm@s』の話がしたいんでしょという声が聞こえたような聴こえなかったような気がしますが、私は真剣に日本と世界の行く末を憂えておりますお。どれぐらい憂いているのか、その本気をとくとご覧あそばせ!


♪国会は珍獣陳列室♪

無駄に対の関係が
二人の討議の狭間で
増殖していく権力の
気まぐれ無常の偽りの
あー人でなし
あー闇の合意
あー野次の声

税金とって、道路つくり
民主を自民と対にする
赤字の発生、その理由
民主を自民と対にする

双児
不義理の双児
バラマキ双児
無能の双児

見えるものを見えなくするため
バラマキ委員会が浮上する
徴税装置や目くらましの
バラマキ委員会が浮上する

国会は珍獣バラマキの
国会は珍獣おもちゃ箱
国会は珍獣百貨店
国会は珍獣博覧会
国会は珍獣博物館
国会は珍獣ガラス棚
国会は・・・

(原曲「地球は人物陳列室」作詞・作曲:J・A・シーザー 唄:杉並児童合唱団/上谷麻紀/幾原邦彦/光宗信吉)


 替え歌としては、「撃つわ」(参考)以来、それなりに気合を入れてみましたが、あのときほど対象(もちろん政局のことです)に愛着(?)がないので、さらっと終わっています。

 ちなみに、「地球は人物陳列室」は、『少女革命ウテナ』第17話「死の棘」の対高槻枝織線の決闘曲です。生徒会メンバーでも頭一つに抜けいている樹璃の力を封印しているカラクリがわかります。なお、『ぷよm@s』ではpart4の美希対亜美戦で使われています。素人目には、part5で春香対美希戦前に「絶対運命黙示録」を使ったのは、「変な歌」のストック切れの一因ではないかと。「デスタワー」の完成編なので、「争いの城下へ」から「平俗宇宙に不滅の皇帝」とつなぐこと自体はそれほど違和感はないのですが、試合開始前にウテナの曲を2曲を使うとは中々、豪華です。ニコ動のプレミアムではない人の方が多そうなので、YouTubeの方がよいのでしょうが、こちらをあえて貼っておきます。ちなみに、替え歌でも歌えます(実験済み)。



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2012年07月09日

なんだかどうでもよくなってきた

 先週、NHKのニュースで豚と出目金を平面金魚にしたような顔を見ていたら、5分が限界でした。内容以前に、顔が終わっている感じで、お世辞にも鏡を見ると、不器量はつらいよねと自分で自分を励ますしかないのですが、公共の電波にあれはないだろうと。そんなわけで、元々、国内の話は興味がないので、無視しておりました。テレビは見ないし、新聞は読まないと。それでも、気象の変化で体がくたくたでしたので、「寝言」など言わずに、時間があれば寝ていました。実は、週末からマスクを外したのですが、控えめの冷房でも喉が痛いので、汗がつらいのですが、マスクをして過ごしております。

 他方、先週、日本語でもさすがにアメリカの雇用データが弱いのは報道されていると思いますが(本当に日本語の報道はまったくといってよいほど見ない・読まないを徹底しているので憶測です)、いい感じで2連鎖トリプル(発火地点:南欧、アメリカ・ヨーロッパ・中国同時発火)ができているなあなんて、感心しながら見ておりました。ヨーロッパは、それはそれは麗しき足の引っ張り合いで、イギリスの嫌味ざますにバローゾがマジ切れしたのは「www」といった風情でしょうか。なお、イギリスはユーロ圏には含まれていませんが、ヨーロッパが「トビ」となれば、イギリスも心中しそうですね。

 あとは、トリプルからクアドラプル(quadruple)に拡張したいのですが(「時の最果て」ですので、そんな必要はないというまともな指摘は無視します)、まあ日本ぐらいしかないのかなあと。毛色が変わっているという点では、色ボーナスぐらいはつきますか。

 そんなどうでもいいことを考えながら、そろそろ「ですたわー♪」(かたかなよりもかわいい感じがするので、デスタワーBの方が好きですね)が完成したかなという話を考えようかと思っていたら、月曜の晩にGoogleリーダーでWall Street Journalが2012年7月9日付で配信した、Alexander Martin and Tatsuo Itoの"Japan's Noda Hints At More Stimulus Spending"という記事のタイトルを見て目を疑ったので、元記事を斜め読みしたところ、記者も違和感を強く感じているのが伝わってきました。まあ、WSJは社説自体が日本の1990年代に象徴される景気刺激策に懐疑的なので、私の好みにあうだけかもしれませんが(個人的には、今でもオバマが大統領就任前に大規模な景気刺激策を検討しているのに対し、1990年代の日本を「お手本」に経済的な効果と帰結を予想した2008年12月16日付でWSJが配信した"Barack Obama-san"という論説は熱狂的なオバマブームの中でよくこんな醒めた話をさらっとするなあと印象に残っています。まあ、オバマブームとは無縁だったので、バイアスがかかっているのでしょうが、4年たってこのざまですな)。

The comments follow calls from both ruling and opposition party lawmakers for more spending to support Japan's economic recovery, but the possibility of further fiscal stimulus measures is likely to raise fresh questions over the government's resolve to bring its borrowing under control.

野田氏の意見は、日本の経済回復を支援するためにより多く支出することを求める、与野党の議員の要求に従うものだ。だが、いっそうの財政刺激策は、借金を制御下に置く政府の決定に新しい疑義を生じさせそうだ。


 日本の財政など大した話ではなくて、いかなる形であれ、増税は財政再建の最終段階まで反対でよいというのが、私みたいな、いかれた「外道」の見立てです。要は、今の国というのはギャンブル依存症の親父みたいなもので、これでもう止めるからといっては、何度も借金を増やし、小遣いまで増やさせてきたわけで、気がついたら、借金の金額はとても返せそうにない状態です。長期的に財政破綻を避けるのは本当は無理かもしれませんが、カネがあればとにかく使うというギャンブル依存症が治らないと、どうにもならないわけでして、小泉氏の構造改革とその後の安倍・福田政権というのはなんとか治療を確立しかけた時期でした。それをぶち壊しにしたのが麻生政権で、以後、政権交代を挟みますが、財政再建が絶望的になった時期は麻生政権からであろうと。民主党中心の連立政権など、麻生氏の金魚の糞みたいなもので、今回の消費税率の引上げでも、どうして引上げに賛成する人たちは統治機構としての国が信頼できるのかが理解できないです。

 小峰隆夫氏のツイートで「特に、社会保障を増やしたい民主党と、公共事業を増やしたい自民党が組み合わさった結果、増収分を全て使い切ってしまい、せっかく消費税を上げてもあまり財政再建につながらない雰囲気になってきたのが気になります」(参考)と書かかれていて、あのお、そんなこと消費税率の引上げの議論の前に気がつかないのですかと尋ねたくなりました。まあ、簡単なことがわからないということが、日本の経済学者やエコノミストには欠かせない資質のご様子なので、経済には興味があっても、間違っても日本の経済学者やエコノミストの仲間扱いはされたくない身としては、こんな程度でしょうねと。別の人ですが、なんの根拠もなく、ヨーロッパ人はすれからしですから、ユーロもなんとか凌ぐでしょとか、恥ずかしげもなく書ける神経というのは驚きです。しかし、まあ、消費税率の説得をまともにできずに、ぐちゃぐちゃにした豚が同じ口で景気刺激も必要というのは、まったくといってよいほど予想が当たらない日本の経済学者やエコノミスト以上に破廉恥なようで、二度と責任のある立場に立てないまで、ボロボロになることを祈るばかりですなあ。

 国内ネタはアホらしいほど簡単に書けるのですが、ストレスが溜まりますね。もううんざりという感じ。しかし、スペインの銀行に直接、資本注入しても一週間ももたないとは、「ですたわー♪」が完全致死に近づいているのかなと。実は、同じ2連鎖でも、ヘルファイヤーから「真川折り返し」(part30まで「まかわおりかえし」と思っていたのですごく恥ずかしかったです)の方が怖くて、こちらだったらどうしようとか考えていたら、段々、どうでもよくなりましたあ。なぜ、『ぷよぷよ』にたとえる必要があるのかは自分でも謎ですが、疲れたせいでウテナも見てないし、ニコ生のミンゴスとはらみーの公録もまだ見ていないので、ああ忙しい、忙しい?


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posted by Hache at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 気分しだいの寝言

2012年07月02日

ユーロ危機が続くメカニズム

 ユーロ圏関係の記事が土曜日で出尽くした感じで、見ているのは、WaPoとWSJ、NYTの3紙ぐらいですが、あっという間にオバマケアの方に関心が移っているご様子です。Caluculated Riskが2012年6月30日付で掲載した"On Europe"という記事がよくまとまっていて、いつも感心します。クルーグマンの見方でも私から見れば十分、楽観的です。ヨーロッパ版のTARPとQE(Qualitative Ease 質的緩和と訳すぐらいですが、(原文で"a very small version of quantitative easing"とあるので、どこをどう読んでも普通の意味のQE(quantitative easing)です。ここは単なる読み間違い(なにか妙な深読みをしていた気がします)ですが、完全に誤りなので訂正しておきます)この文脈では要するにECBに各国の債券を買い取れとクルーグマン先生はおっしゃっておりますな)で成長を回復するには力不足だが、危機を防ぐことができるというのは、感覚的ですが、アメリカではそうだったかもしれないですが、ヨーロッパではどうなんでしょうねというところです。この記事で一番感心したのは、最後のところですが、話を急がずに、少し適当に散歩でもしてみましょう。

A comment a few weeks ago from Mark Dow keeps ringing in my ear: "Germany is now pot committed."


 まずは、New York Timesが2012年6月26日付で配信したEduardo Porterの"Why Germany Will Pay Up to Save the Euro"というコラムが当初はユーロ危機に関する楽観的な見方としてだけ読んでおりましたが、上で紹介されている見方を読むと、異なる視点から立場が見えてくる感じがあります。タイトルの通り、ドイツがユーロ圏の救済資金を担保せよという主張ですが、理由や論旨は明快です。

  But Ms. Merkel knows that Germany must ultimately underwrite the euro’s rescue, pretty much regardless of whether its conditions are satisfied. There are three good reasons. First, the euro has been very good to Germany. Second, the bailout costs are likely to be much lower than most Germans believe. Third, and perhaps most important, the cost to Germany of euro dismemberment would be incalculably high − far more than that of keeping the currency together.

 メルケル首相は条件が満たされているかどうかにほとんど関係なく、ドイツが究極的にユーロの救済を裏書きしなければならないことを知っている。3つのもっともな理由がある。第1に、ユーロはドイツにとって有利な存在であり続けていることだ。第2に、救済の費用はドイツ人が考えているよりもはるかに小さいことだ。第3に、これが最も重要な点かもしれないが、ドイツがユーロから離脱する費用は、ユーロを続ける費用よりも計算不能なほど高くなるだろう。


 日本語ですと、ユーロ債だのそういう話がすぐにくるのですが、ドイツ政府とドイツ政府にドイツ国民を説得する道具を整理すために、単刀直入に利害得失を論じているのが好感をもてます。このコラムで興味深いのは、やはり第3の指摘です。

If the package for Spanish banks was agreed to, Germany would be left directly responsible for more than $100 billion committed since 2010 to the rescues of Greece, Ireland, Portugal and Spain. The Bundesbank is owed nearly $900 billion by other central banks in the euro area. And its banks still have hundreds of billions in loans to banks in peripheral countries. It’s hard to say what would happen to this debt if the euro were to break apart and weak countries to default. But chances are much of it wouldn’t be honored.

And that’s just the direct financial hit. The German government has reportedly estimated that the German economy would shrink 10 percent if the euro were to break up, twice as much as it did in 2009, during the global financial crisis.

 もしスペインの銀行が包括案に合意するなら、ドイツはギリシャやアイルランド、ポルトガル、スペインの救済に2010年以来コミットしてきた1000億ドル以上への直接的な責任を負ったままだろう。ユーロ圏の他の中央銀行はブンデスバンクから9000億ドル程度借りている。加えて各国の銀行はまだ周辺諸国へ数百億ドルの貸出を行っている。ユーロが放火し、弱い国が債務不履行になった場合、なにが生じうるのかを述べるのは困難だ。だが、機会は首尾よくいかない場合と同じぐらいである。

 また、それは単に直接的な金融の打撃である。ドイツ政府は、伝聞によれば、ユーロが崩壊すれば、ドイツ経済は10%ほど収縮すると推定した。これは、世界的な金融危機の最中で2009年に生じた縮みの2倍に相当する。


 ここに書いてあることが事実であり、ドイツ政府がそれを正確に認識しているとすれば、ユーロ圏の崩壊を防ぐ強いインセンティブが生じるでしょう。もはや、ドイツのユーロ離脱はないということになります。逆に言えば、ドイツのコミットを強めよと言うまでもないとも思いますが。他方、ユーロ崩壊でドイツ経済が10%程度落ち込むということは、ざっくりとした数字ですが、3000億ドルから3500億ドル程度、付加価値が減少することを意味するのでしょう。ドイツがユーロ救済のために3000億ドルの資金を焦げ付かせた場合、国内総生産の減少よりも、犠牲が大きいとドイツの有権者が判断する可能性は十分にあるのでしょう。極論すれば、3000億ドルの救済資金にドイツ政府が保証を与え、一部が焦げ付いて返済不能になれば、ドイツ人の間に残りの3000億ドルに関しても疑念が広がる余地があります。

 これはWashington Postが2012年6月27日付で配信したAnthony Faiola and Michael Birnbaumの"Germany offers vision of federalism for the European Union"という記事ではヨーロッパの政治統合を進めて、アメリカの州のように各国の主権を制限することや汎ヨーロッパ軍の創設など意味不明の主張をメルケルがしているとあったので、思わずのけ反りました。他方、ドイツとしては、他の国々がとても飲めない話を持ち出してコミットの度合いを弱めようとしているのだろうかと。

 回り道が長くなりましたが、いろいろすっきりしないことがある中で、最初で取り上げたCaluculated Riskの記事で取り上げられている、Behavioral Macroというブログの2012年6月11日の"The takeaway: Germany is pot committed"という記事を読んでなるほどと。ポーカーのルールを忘れてしまいましたが、ドイツの掛け金が実質的にポットの中にある状態では、ドイツを困らせる目的ではなく、少しでも救われる可能性にかけてどの国も降りない、すなわち危機が続いてしまい、体力の弱い国から債務不履行になるという事態が続くわけです。つまり、日本のメディアが大好きな「ユーロ共同債」などなくても、溶けるまでドイツの資金をあてにして危機が続いてしまうわけで、楽観論の本質はまだドイツがユーロ圏の救済に十分にコミットしていないという現状認識にあることになります。Eduardo Porterのコラムが典型ですが、ドイツからユーロ離脱という選択肢が事実上ない状態で、なぜコミットをさらに要求するのかといえば、ドイツのコミットが足りないことが危機を深刻化させているという現状認識が根本にあるからでしょう。これは、私のような「弱気派」のドイツが掛け金の大半をポットに収めている状態だという現状認識の差なのでしょう。WaPoの記事は飛ばしの可能性もありますが、ドイツ政府の無力感とせめて取引をしたいというドイツの苦しい立場を示した政治統合の提案なのかもしれません。

 ただし、危機の持続が安定的な解ではないのは自明ですし、Eduardo Porterが示しているドイツ経済の10%減を超える苦痛をドイツ人が救済から感じるようになれば、このポーカーは終わりを迎えます。時間稼ぎにも限界があり、現実には"muddle through"が続く一方で、事態が悪化する確率が高まったと思います。


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