2008年02月08日

「極悪」師匠賛歌

 私としたことがうっかりしておりました。「エム・エー・ケー・イー・アイ・エヌ・ユー(MAKEINU)負け犬さん」となるのが怖いと書くべきところをくだらない会議の生産性などにこだわっていたために忘れておりました。過疎地にお越しいただいる奇特な方の中でもごく少数であろう『らんんま1/2』ファンの方への配慮が足りず、まことに申し訳ないです(単なる私の悪趣味という気もいたしますが)。「究極のネガティブ・インディケーター」としては、今回のアメリカ大統領選挙につきましては、わが国の総理がいてもいなくてもたいして変わらない状態ということもありますが(経済はまったく期待しておりませんが、ギョーザに関してでさえ、「火事」で大怪我をしている人がでているときに消費者庁消防署を増やしましょと言われているみたいで、「フフン」一時「脱力」のち「激萎え」)、あまりに恐ろしいので、くどいですが「エンドースメント」は一切いたしません。

 それにしても、まずいです。『ニュースの深層』(2008年2月6日放映分)が面白すぎて、3回も再生してしまいました。お仕事そっちのけ。宮崎哲弥さんから一流の「アメリカ・ウォッチャー」として紹介されたかんべえさんですが、「いえいえ」と遠慮されているのを見ながら、「アメリカ・ヲタク」として紹介されていたら、どのように反応したんだろうと。スーパーチューズデーの結果解釈についてはまず共和党陣営の分析からでしたが、こちらは無難で、ハッカビーがロムニーをいじめるという構図になっているという指摘、さらに、ハッカビーは高く自分の「票」を売ろうとしているのではないかという推測がおもしろかったです。しかし、「殺人毒ギョーザ」の話が最初に来たせいか、オタク視線は極力抑制され、あくまで初心者にもわかる丁寧な解説(でもやっぱり「極悪」ですな)に徹しているのが好印象というより、意外でした。

 しかるに民主党陣営の分析となると、かんべえさんのオタク、いやヲタク魂に火がついて宮崎さんと堤さんも引き込まれ、邪推かもしれませんが、最初はオタクの「ヲ」の字まで口に出た後に慌てて「細かい話になって恐縮ですが」と断られてミズーリ州の結果を解説しているうちにとうとうご本に自身が「ヲタクとしては」ともう誰も止められないモード(『らんま』だと喩えが難しいのですが(本気になった乱馬はちと微妙ですし)、『エヴァンゲリオン』だとわかりやすくてゼルエルを食っちゃってS2機関を自ら内部に取り込んだ状態の初号機ですな)に入ったことを告白しておられて、こうなると三原御大が口を挟もうとしてもダメ。『サンプロ』や『WBS』では味わえない、CSならではのかんべえ節に思わずはまってしまいました。ミズーリ州が日本に喩えると静岡県に近い存在というのは「へぇ」でありまして、あらためて地図や人口データを見ると、なるほど、そうかもしれないと思いました。ミズーリを民主党はオバマが、共和党はマケインが制したというのは、まず思い浮かばない線でして、民主党はまだわからないのですが、意外なところに「天王山」があるものだと感心してしまいました。

 オバマの著書の紹介でいよいよ佳境に入って、もうヲタク視線全開。あるかんべえさんファンによると、あの視線がねちっこく情熱的で素晴らしいそうで。あの視線を直に浴びた宮崎さんや堤さんは大丈夫なんでしょうか。私は既に毒されている、あるいは汚されているので、しょうがないなあという感じ。ただ、原著(The Audacity of Hope:邦訳『合衆国再生』)を読んでいないので番組での吉もといかんべえさんの説明だとちと微妙かなと。書き出しの紹介の時点で「オチ」が見えます。よくできた「作文」という印象が拭えず、それ以上の懐の深さがないとすると、本選挙以前にやはり予備選でヒラリーに勝つのは難しいのではないかという感覚をもちます。やはり「未知数の魅力」という感覚もあり、このあたりはアメリカの主として民主党支持者の「気分しだい」なのでしょう。

 番組の終わりの方ではアメリカ大統領選挙の「光と影」という話がでてまいりました。「影」はもちろん過剰なまでのメディアの活用で、堤さんはオバマの台頭を「郵政選挙」になぞらえてスローガンで国民が動くという警戒心を表現されていましたが、それはまったくそう。ただ、かんべえさんが指摘していた「光」の部分、すなわち、有権者がカネを払い、参加し、勝者を国の代表として、少なくとも最初の一年は支えるというアメリカのデモクラシーの伝統はやはり侮れないだろうと。かんべえさんは議会制民主主義の限界について、「毒ギョーザ」のこともあり抑制気味ではありましたが(ヲタクモード全開でもちゃんと「空気」を読むあたりはさすがに名将黒田官兵衛の名を拝借されるだけのことはありますな。フフン、もとい福田総理の批判をやりすぎると、あんたのグループはなにをしていたのと鬱陶しい「ブーメラン」を食らう可能性があるので、嫌味ではなく、さすがです)、これはしょうがないですね。世界で最も重要な選挙に日本人は当然ではありますが、参加することはできず、眺めているだけです。しかし、世界最古の近代デモクラシーは、進化しつつも、依然として機能していることを感じさせられます。これを楽しむか無視するかは個人の自由に属しますが、私はやはり眺めているだけでも楽しいという立場です。

 それにしても、「マラソン」を覚悟しましたが、気がついたら、あっという間にゴールでして、その分、ストレスを溜め込んでしまい、歩いても、本を読んでもストレスがとれませんでした。『ニュースの深層』を見たら、ストレスが一気にとれたしだいです。あらためて、対象への愛が大切だなあと感じました。密かにかんべえさんのことを「偉大なアマチュア」と呼んでおります。「オタク」とはプロではない。失礼ではありますが、所属を離れて「アメリカ・ウォッチャー」や「エコノミスト」として食えるタイプではないということです。「アマチュア」という表現にネガティブなニュアンスはなく、「好きだからやる」というプロの原点を決して外さない方は、素晴らしい。そして、分析は、オバマの微妙な点を除くと(安達正興さんとはちょっと異なる感覚ですが、理念はよいが担い手としてふさわしいかどうかは疑問という感覚でしょうか。あとはヒラリーがライバルだからこそオバマがキャラとして立っている印象もあります。これは素人の浅知恵ですが)、「極悪」そのもので、すっかりこちらまで元気になりました。珍しい「寝言」ですが、かんべえさんへの「賛歌」で終わりです。


 番組ではオバマの「予測可能性(predictability)」の低さが話題になっていましたが、ちょっとどうかなと。日本外交との関係ではもちろん大切な視点だと思いますが、日米同盟重視を明確にしているマケインが仮に当選したとしても、日本側が頼りなければ、意味がないでしょう。アメリカ大統領選挙は、アメリカ国内だけでなく、世界政治の最大のリセットボタンと見てしまえば、濃淡はあれども、誰がなっても、予測可能性は限られてしまいます。また、アメリカは卓越しているとはいえ、全能ではない以上、中国のウェートを低くする(もっと露骨に言えば台湾にどこまでコミットできるのか)は誰がなってもあまり変わらない可能性もあります。アメリカは全世界を相手にしているのであって、もちろん東アジアは無視できないどころか、ウェートが高まる傾向にありますが、日本人から見てどの候補が望ましいかと言う視点を抑制した方が、日本外交への影響を考える際にもよいだろうと思います。もっといえば、アメリカと戦略を共有するには地球的規模で情勢を見極めないと無理だと思います。

 今回の予備選挙で注目しているのは、やはり第1に、イラク問題が合意争点化されるのか否か、合意争点化されるとしてどの程度までなのかという点です。あまり事実の裏づけをとっていない、私の素人的な感覚にすぎませんが、イラクからの全面撤退となると、最悪の場合、イランに武力介入をせざるをえなくなるのかもしれないと感じております。オバマのパキスタン北部爆撃発言は失笑をかったようですが、イラクからの全面撤退となると、これすら全く無視はできないオプションでしょう(もちろん、オバマはあまりにパキスタン情勢について無知だとは思いますが)。やはり国際情勢で問題が最も集中しており、かつアメリカの動かせる変数が少ないのが中東でしょう。イラクから撤退した場合、かえってより強い介入が必要になるのではないかと危惧しております。

 第2は、経済問題ですが、これは難しい。ぐっちさんのように、財市場と金融市場の変調がリンケージしていると見るのがまともだろうと。所得と資産の格差が消費の格差、そして規模にも影響する国ではごく真っ当な見方だと思います。ただ、自身はないのですが、財市場と資産市場、あるいは資本市場は互いに独立している側面もあって、両方の「変調」がある程度まで相互に作用し、ある程度からは独立している可能性があって、簡単に言えば、財市場の落ち込みを和らげる政策と信用収縮を和らげる政策はごちゃごちゃに議論されている印象がありますが、いったん区別して調整した方がよいのではないかということです。これはアバウトな勘の話でして、例えば利下げだけでは財市場と金融市場であまりに濃淡がでてしまうという感じです。もう一つは、アメリカとEUの協調体制を再構築できるのかが難しい点です。これも事実関係を確認しておりませんが、FRBよりもECBが間違える可能性が高いように感じます。

 番組では日本がダボス会議で"forgotten power"として扱われていることを嘆いていましたが、遺憾ながら、現在のリーダーに期待するのはムダですから、国際協調の足を引っ張らなければ十分でしょう。それすらあやういのが遺憾ではありますが。
posted by Hache at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 幸せな?寝言
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