2006年06月10日

大義の功罪

 平間洋一『日露戦争が変えた世界史』は、世界史外伝ともいうべき本です。平間先生の本意に反するのでしょうが、イギリスや大陸諸国による他地域の植民地支配を覆すという20世紀の別の見方ができておもしろいと思いました。変革勢力は、大別して3つあったといえるでしょう。第1に、日本は、日露戦争で有色人種が白人に戦争で勝てるということを示したことによって、植民地解放勢力を勇気づけました。日本は、自国の安全のために戦争をやったのであって植民地解放勢力を鼓舞するために戦争をやったわけではない。しかし、結果としてこれらの勢力を鼓舞する結果になったと評価できます。



 第2に、アメリカです。人種差別という点から見れば、アメリカも万全ではありませんが、ヴェルサイユ体制、ワシントン体制などをつくっては壊し、冷戦のプロセスで、とくにスエズ動乱で英仏を見殺しにすることで植民地支配を滅茶苦茶にしたといってよいでしょう。ひどい評価の仕方かもしれませんが、アメリカの意図、手段、結果の対応関係は、非常に理解しがたい点があります。露骨にいえば、他の国が同じことをやっていれば、滅んでもしかたがないことをやっている。他方で、他国ならばけっしてできない自己犠牲も払っている。とにかく次にどう出るか、読みにくい国ではあります。



 第3に、ソ連を中心に組織された共産主義勢力が挙げられます。一時期は、理念国家アメリカと匹敵するイデオロギー的な影響力をもつとともに、ソ連の国益という一点から行動が説明できてしまうという点で非常にわかりやすい勢力です。「反共」を掲げながら、コミンテルンの策略にはまってしまう帝国を見ると、現代もあまり変わらないような。現在の中国となると、もっとわかりやすい。余計ですが、捕鯨で中国の「善意」を期待するというのは、わが国の外務省は大丈夫なのでせうか。



 アクセス数を減らすために書いているわけではないのですが、植民地解放とか人種平等とか誰も文句がつけようのない、ごもっともな大義名分に惑わされることなく、イギリスとともに変化のスピードを落としながら、冷徹な外交を行っていたら、私たちはもっと安全で生活水準が高い生活を送っていたかもしれないと思いました。外交に善意を持ち込むことほど危険なことはない。大義は人を狂わせる。大義をバカにする者は、大義の魔力を知らない愚か者である。



 例によってとりとめがなくなりましたが、リアリストが致命的なミスをするとすれば、自分も相手もリアリストだと過信してしまったときである。イデアリストが致命的なミスをするとすれば、自分も相手もイデアリストだと過信したときである。凡人がミスをするとしたら、自分も相手も常識を共有していると過信したときである。ふと、そんなことを思いました。

posted by Hache at 23:39| Comment(3) | TrackBack(0) | ふまじめな寝言
この記事へのコメント
現代の「大義」とは何でしょうか。
ただ、民族などの集団が大義を掲げるように
組織が「大義」を掲げても滑稽ですが、
合衆国は組織でありながら、大義を基盤にした組織なのでしょうな。
ただ、アルカイダ等は、組織でありながら、
個人の集まりでなく組織の集まりとしての
集団になり、この手の集まりとしては合衆国
を模倣しているのかと考えてしまいます。
Posted by ジャファリー at 2006年06月11日 12:54
>ジャファリー様
「現代の大義」といえるかどうかはわかりませんが、人の数だけ大義がある、あるいは自由と民主主義というのが今日の支配的なイデオロギーなんでしょうねえ。私もこのイデオロギーの徒なんですが、それはイデオロギーの一つにすぎないという側面を忘れると、碌なことがないということも感じます。

細かいですが、合衆国政府という場合には組織といってもよいかもしれませんが、合衆国の場合、組織といえるのかどうか。国家論を議論したいわけではないので深入りはいたしませんが、ちょっと微妙な感じです。

テロに関しては、アルカイダのようにある程度、まとまっていてくれた方がありがたいという感じでしょうか。どんな政治体制や国際秩序もすべての人・構成要素を満足させることができない以上、政体・秩序には「盗人にも三分の理」という側面があります。もちろん、テロという手段に訴えるのは論外ですが。テロよりもわが国の脅威、そして現状を変えようとしているのは中国であることを自明のこととせずにちゃんと世界にプリゼントしていくだけの努力を政府にちゃんとやって頂きたいと思います。

ジャファリー様のコメントから話がそれて恐縮ですが、テロ組織の厄介な点は、それがアメリカと似ているというよりも、移民や宗教、貧富の格差問題など、古今東西、対処療法でしかどうにもならないところと結びついている点にあるのだろうと思います。テロをなくすために、これらの問題に深入りをしても、なにも解決しないでしょう。表現が悪いのですが、地震と同じように、ある種の自然現象のようにおつきあいするしかないのだろうと。もちろん、「抑止」できればそれに越したことはないですし、起きてしまってからの「初動」が大切ではありますが。

テロは、治安のコストを高めますが、現状ではそれ以上のものではないと思います。もちろん、無視はできませんが。この記事を現在にあてはめるのなら、問題は中国の台頭だと思います。
Posted by Hache at 2006年06月12日 00:06
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Posted by pvhufmk hlsc at 2007年01月20日 23:59
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