2008年09月18日

金融における"Doomsday Machine"

 病院から電話があったのが火曜日の朝で、ワーファリンの服用を5mgにせよとの指示。「今日、こちらにこられますか?」とのことで、なんだろうと思ったら、肺梗塞の可能性があるとのこと。言われても、ピンとこない。普通に息しているし、でも生気がない。というわけで入院の可能性があるかもとお金の処理だけ済ませて午後ぎりぎりで駆け込むと、やはり息が苦しくないのかねとあきれた感じで尋ねられて、動くと息があがりやすいですがと的外れなことばかり言ってしまう。肺が壊死して呼吸困難という重篤な症状ではないので、別の病院で肺シンチ等の検査を受けることになり、帰宅すると、今度は寒い。エアコンを切っているのに変だなと思ったものの、ひょっとするとくたばるかもしれないしと思って「寝言」を書いて寝てしまったら、ぐっしょり汗まみれ。意識が少し遠い。まさかと思って体温計で測ったら、37.8℃という微妙な数値で、この程度の微熱が意外とつらい。これが生気のない原因かと思ったものの、なんで発熱しているのかがわからず、つべこべ考えるのもやめて、寝ようとするも、意識が遠のくと死が近いような気がして微妙に不安。眠りが浅いのか、久々に夢の記憶が残るも、「天地再生」の夢ばかり見て、なぜか滅びゆく中国の運命を私が握っているという設定で、体の不調からいよいよ悪い頭もいかれはじめてるのかしらんと不安になる。天地創世(「白一色」(Beginning of the Cosmos)ではない)の夢なら、20歳頃に散々見たのだけれど。

 水曜日は何をしていたのかも覚えておらず、とりあえず(私には不健康だけれど)早朝6時前に目が覚めて、ワーファリンを飲むためにカロリーメイトを食べたぐらいしか覚えていない。木曜日になって目を覚ますと、ちょっとだけ生気が戻ってきて体温を測ると36.5℃と平熱ど真ん中。活字を読む気力が復活してとりあえず新聞を読むと、吐き気が。ネットで『産経』以外の社説を読むも、どれを読んでも吐き気がする。『産経』と『朝日』が最低だろう。なんでリーマン破綻後のアメリカの金融危機が山一證券破綻直後の日本と同じと断言できるのか。公的資金を注入したら、危機が収まるとなぜ断言できるのか。ざっと目を通した印象では、このような論説には次のような心理があるようにしか思えない。

(1)ジャパンバッシングの後に襲った金融危機に欧米、とりわけアメリカが非協力的で、いまでも恨みが残っている。
(2)21世紀に入っても、不良債権問題でガミガミ言われて不愉快だった。
(3)今回、起きているのはウォール街の問題で日本は大丈夫だ。90年代の逆だから、恨みを晴らしたい。

 要は、アメリカも偉そうなことをいってきたくせに日本と同じじゃないか、ざまを見ろという性根だろう。島国根性という点では右も左もありゃしない。これだけ経済レベルの相互依存が深化しているのに、日本だけが他人事というわけにゆくわけがない。ネットで見ていると、もう少し上等な方は、リーマンがアウトでAIGがセーフの背景を探していてご苦労な話。この状態では行動の前に理論があるわけではなく、理屈は後付けになる。それが望ましいかどうかは別ではあるけれど。

 日本語の世界では埒が明きそうにないので、Wall Street Journalをネットで見ると、"Worst Crisis Since '30s, With No End Yet in Sight"という記事がトップにあったので読み始めると、"Fed and Treasury officials have identified the disease. It's called deleveraging, or the unwinding of debt."(強調は引用者による)とあって、これだけをとれば、(この記事では完全に無視されている)日本の金融危機でもあまり変わらない。このロジックでメリルがバンカメに買収されるにいたったケースが解説してあって、ここまでは説明としてはきれいだけれど、意外感がない感じ。ただし、日本語では読めない冷徹な描写が多く、最も冷静に見ることができそうな島国がまるでダメで、冷静さを失いそうな「火事」の現場が冷静なのが不思議だ。要は、いつも感じるのだけれど、アメリカと日本の差は、物質的な能力の差ではなくて、より知的な能力の差だということが報道のレベルで危機の時期に顕著に出るのだろう。それにしても、危機の本質が"deleveraging"にあると指摘した上での"Swaps Game"へのもってゆき方は、その論旨が適切かどうかは別として、この国の経済に関する知的水準では無理だろうと思う。知識の有無ではなくて、まして単なる知力の問題ではなく、まず事実を描写するという姿勢が欠如しているからだろう。

  Merrill Lynch & Co.'s emergency sale to Bank of America Corp. last weekend was an example of the perniciousness and unpredictability of deleveraging. In the past year, Merrill has hired a new chief executive, written off $41.4 billion in assets and raised $21 billion in equity capital.

  But Merrill couldn't keep up. The more it raised, the more it was forced to write off. When Merrill CEO John Thain attended a meeting with the New York Fed and other Wall Street executives last week, he saw that Merrill was the next most vulnerable brokerage firm. "We watched Bear and Lehman. We knew we could be next," said one Merrill executive. Fearful that its lenders would shut the firm off, he sold to Bank of America.

  This crisis is complicated by innovative financial instruments that Wall Street created and distributed. They're making it harder for officials and Wall Street executives to know where the next set of risks is hiding and also contributing to the crisis's spreading impact.


 こんな感じで読んでいたら、生気が戻ってきて、血管がボロボロでも生きているんだなあと感心したところで、血が凍りそうになる。"There are now credit-default swaps on more than $62 trillion in debt, up from about $144 billion a decade ago".一瞬、読み間違えたのかと思った。10年前と比較してCDSが減ったのかと首をひねったら、trillion!!62兆ドル(620億ドルでもなければ、62兆円でもない)ものCDSが積みあがっている?この数字の根拠はどこと首をひねる。ちょっと想像ができない。googleで"derivatives statistics"でデータはないのかと探したら、2件目でBISの統計がヒット。2007年12月で"Credit default swaps"が約57兆8,940億ドル(想定元本)とあってWSJの記事の数字はでてこないものの、2006年12月末(ストック値なので期末と推測)から2007年12月末まで14−15兆ドルずつ半年ごとに膨れ上がっていて異常な状態だったことがようやくわかった。この記事では、CDSは金融危機の原因ではないが火に油を注ぐ要因として扱われている。たぶん、この区別がつかなくなる前に手を打たないと、国際的な信用秩序が崩壊するリスクが高い。よって、火曜日の「寝言」は撤回。まるで事態の認識が甘かった。今でも、頭が正常に機能していない可能性が高いけれど、ここまで深刻だとは理解していなかった。ここまでの分析を踏まえてAIGがFRBの事実上の公的管理化に入ったプロセスが描写されている。

  One of the big new players in the swaps game was AIG, the world's largest insurer and a major seller of credit-default swaps to financial institutions and companies. When the credit markets were booming, many firms bought these instruments from AIG, believing the insurance giant's strong credit ratings and large balance sheet could provide a shield against bond and loan defaults. AIG believed the risk of default was low on many securities it insured.

  As of June 30, an AIG unit had written credit-default swaps on more than $446 billion in credit assets, including mortgage securities, corporate loans and complex structured products. Last year, when rising subprime-mortgage delinquencies damaged the value of many securities AIG had insured, the firm was forced to book large write-downs on its derivative positions. That spooked investors, who reacted by dumping its shares, making it harder for AIG to raise the capital it increasingly needed.

 簡潔ではあるが、"subprime-mortgage"の返済が滞ったことがなぜここまでの大事になるかが明瞭に示されている。当たり前すぎて金融が専門のジャーナリストが書かないのかもしれないが、ちょっと不思議な感じだ。せめて新聞ぐらいこの程度の解説を載せれば、この国が経験した金融危機とは異なる深刻さが明瞭になるのに。"centralized clearing"、あるいは一元的に管理されている市場を通さずに相対で取引されているCDSのポジションを変えるという話が漏れると、市場で資金を調達するのが難しくなる。CDS自体は、狭い意味での市場での取引ではないのにもかかわらず、そのポジションを変えるという情報がでるだけで市場での資金調達に影響が出る。大げさにいえば、62兆ドルまで積みあがったCDSは市場自体が萎縮してくると、市場を安定化するのではなく、逆に不安定化する"Doomsday Machine"になる。ど素人には、この状況下でCDSのプライシングがそもそも可能なのかどうかに興味が移るけれど。金融工学は「万歳!」なので、無理はしない。

 全体の印象として気になるのは、1929年の世界恐慌を意識しているのだろうけれど、記者自身が経験していないせいか、S&L以来、金融危機らしい危機がなかったせいか、タイトルと内容が微妙に一致しないことだ。ただし、世界恐慌後の対応と今回の危機における政府や連邦準備委員会の姿勢が異なるということが記事の主張なので、邦字紙によくある羊頭狗肉ではない。"Pleasant Mystery"はちょっと違和感がある。資本市場、あるいは資産市場の調整速度に比べて財市場の調整が遅いことは別に珍しいわけではなく、統計のタイムラグも無視できない。いずれにせよ、金融機関がこれだけ危機に陥っているのが示されれば、自動車や半導体の需要が伸びると予測する人は少ないだろう。財市場と貨幣市場の関係は今でも神学論争の的になりがちだが、ABCの"This Week"におけるグリーンスパンの感覚が普通なのだろう。私のリスニング能力では英語で再現できないけれど、番組の終わりで、「世紀に一回の金融危機がグローバルな実体経済に影響を与えないとは私には思えない」という趣旨の発言があった。この記事でも、最後は"no end yet in sight"の部分が強調されていた。

 あてにならない度素人の感覚では、CDSのプライシングが事実上、不可能な状態までゆけば、CDSが"Doomsday Machine"として信用の連鎖をずたずたにしてしまうのだろう。他方で、皮肉ではなく、愛国的なこの記事(連邦政府やFRBの対応を擁護しているという意味)ではあまり触れられていないが、公的関与は、邦字紙の報道とは逆に危機の始まりにすぎないという感覚をもたずにはいられない。公的資金の注入、融資などはアイスクリームが溶けてしまうスピードを緩めるだけの話であって、CDSをどのように扱うのかという問題のソリューションにはならないだろう。「寝言」らしく書けば、公的関与(強制)の下ですべての金融機関・企業がおててつないで仲良くCDSをチャラにする、あるいはなかったことにするという解は、空理空論としてはありうるけれど。そのような強力な権限をもっている実体は連邦政府を含めて存在しない。

 CDSをおこらせないように金融再編を行うのは"narrow path"だろう。規模だけではなく、質的にも日本の不良債権問題とは異なること、相互依存の深化した世界では「震源地」よりもはるかに離れたところではるかに大きいダメージが、誰かの意図によることなく、生じうることを覚悟しておいたほうがよい。最初は他人事のように振舞って、あまつさえお説教を言い、いざ事が起きたときに被害者面をして繰言を述べるのは、無能の極みだろう。


 病院からの電話はちょっとびっくりでした。ワーファリンの増量が必要だったら、連絡しますからねとは言われていましたが、まさか。普通に息をしているのに「肺梗塞?」というのがピンときませんでした。心臓内科の先生のご説明を拝聴しながら、血栓ができた部位が悪いなあとは思いましたが、肺にまで入るとは。今回の方がまずいはずですが、入院もせず、安く済んでいます。くたばるかもしれねえなあという感覚で、ない頭をひねって「情勢分析」もどきのことを火曜日にやって、大変だろうがもたねえってことはないだろうというのが火曜日の「寝言」です。

 あまり神秘現象には興味がないのですが、時々、予知夢みたいなものを見て、ハッとすることがあります。2004年に血栓性静脈炎を患ったときには、半年近く入院する夢にうなされていました。その夢を見なくなった2週間後ぐらいでしょうか、病院のベッドの上になっていたのは。今回は一切そのようなシグナルがなく、病気になってからも、威勢のよい夢ばかりで、くたばる前はこんなかんじなのかしらんとか、でも、くたばりそうにないなあとか今ひとつ感覚がついてゆけないです。とりあえずは、生きておりますが。

 木曜になって活字を見たら、AIGが公的管理化に入ってありゃまという感じ。火曜日にはまさか潰したらまずいでしょと思いましたが、うちの保険がAIGとは別グループだしという非常に不純な動機で水曜はひたすら寝ていました。発熱がひどかったせいですが。久しぶりに38度を超える時間もあって、若いときはこの程度で生気がなくなるというのはなかったのですが、年相応に老いてきたのでしょう。失礼ながら、リーマンがアウトでAIGがセーフの理由を伊藤洋一さんとかんべえさんのところで読んで、あまり考えなくてもよい話だなと思って、適当にWall Street Journalのトップページから読み始めたといういい加減さです。

 普通の状態だったら、このネタはとりあげなかったでしょう。まず、CDS自体、理解できたとは思えないですし、プロと思しき方たちのブログでは金融工学そのものが叩かれているのですが、そういう問題なのかな、でもわからないしなあという程度ですから。確率微分方式を教科書抜きで解くレベルじゃないと、どの前提がどう狂うとわけがわからなくなるのか、書いても無駄だという感覚もあります。私自身は、デリバティブというものが一度、生まれてきてここまで大きい存在になってしまうと、どうやって「共存」してゆくかに知恵を絞る方がよいのではと思うのですが。数理がからむと崇めたり、バカにしたりと極端になってしまうのが理解できないです。

 元々、金融危機そのものというよりも、どの程度の「マグニチュード」かということぐらいにしか関心がなかったので、ウェブに乗せても価値がない、まさに「寝言」なのですが、今日、読んだ記事は若干きれいすぎる(あるいは図式的)印象もありますが、なるほどと思いました。「平時の金融危機」と書いたものの、やはり(1)金融危機の規模と危機の拡大のリスクと速度、(2)アメリカ以外の地域への波及の程度、(3)実体経済との関係が気になるところですが、まずは今回の金融危機で公的資金の投入で収まるんですかねというあたりを考えてみました。というのは、昨年のSWFによる資本注入で論点がわからないですねえと思いながら眺めている感覚でしたが、この程度で済むんだったら、危機ではないんじゃないのという感じです。そしたら、結局、問題がぶり返した。当局の対応を責めるというよりも、「なぜ?」という問いが浮かんで、それでは問いにならないので「どのようにして?」という問いを考えていたというところです。私自身は以前より少しは視界がマシになった感覚ですが、間違っても情報発信とか高い志はまるでないので、お読みいただいた方に利益がありますやら。

 ただ、気になるのはどうも危機の始まりであって終わりではないのではないのかという感覚です。ちょっと「とんでも」っぽいことを書くと、公的資金の投入+合併による救済というのは日本も経験しましたが、今回はこれが適切なソリューションになるのか疑問です。今回、読んだ記事ではCDS自体が問題の原因ではないが危機を悪化させる要因になっているという前提があります。この前提が正しいとして、合併によって売り手サイドが破綻する確率が低下すればCDSのプライシングが批判の的になっているとはいえ、金融工学の範囲で計算可能になるのでしょう。他方で、発行主体が少なくなってくると、再び元になる債券なり金銭貸借なりの回収確率が実体経済の悪化を通して低下してしまうと、どんどん逃げ場がなくなってしまう可能性があるのではとまあ、素人的な判断ですが、適切な対応策なのかどうか。もちろん、現在進行してる救済策に変わる妙案があるわけではないので「寝言」ですが、金融危機に続いて本格的な実体経済の悪化が生じてくると、通常の不良債権問題とは異なる局面もありうるのかもしれないと思ったりします。たぶん的外れなのでしょう。

 漠然とした印象にすぎませんが、現在、財務省とFRBがとっている政策は市場の機能不全を補完するものであって代替するものではないという感覚です。そんなのは当たり前じゃないかと言われればホッとしますし、代替するに決まっていると言われれば、そうかもしれないとも思います。詭弁を弄しているわけではなく、私自身がすっきりしないまま、どうも公的管理というのが解そのものではなく、もちろん、単なる一時しのぎでもなく、価格という市場における最も重要な情報が資源配分の効率性を実現するための情報として機能不全に陥っている状態の下で、価格が機能する条件が整うまでの過渡的な措置だという、抽象的ではありますが、そんな感覚です。政府が市場に代わって適切な価格を設定することは不可能でしょうし、仮にそのようなことを望めば、金融危機はさらに増幅しかねないでしょう。他方で、公的管理下にあるとはいえ、価格そのものというよりも、価格が、あえてあいまいな表現をしますが、おおむね妥当な範囲に収まるようなメカニズムが生まれるまでには時間がかかるでしょう。ここでもCDSの存在が難しいところで、政府がプライシングにまで手を伸ばすと、通常の債権−債務の関係とミラーイメージのようで完全には一致しない証券化商品ですから、処理を謝るリスクが高いような気もします。これも、「寝言」ですが。

 あれこれ書いておりますが、公的管理は危機の出発点であって、目標地点ではないと見ております。このプロセスが長引けば公的資金がいくらあっても足りないでしょうし、短期で請求に進めれば、価格の機能が回復しない状態が続くリスクがあると思います。アイスクリームがとけてしまう速度を落とすこと自体は他に手段がないという点で適切だと思いますが、道は険しい。危機の時代には政府にすがりたくなるのが当然だと思いますが、価格が機能するような状態まで回復するのは想像以上に困難で、おそらくは長期化して試行錯誤が続くと見ております。

 それにしても、血栓が肺に入るほど運が悪く、すぐにはくたばらない程度にはツキのある程度の人間ですから、ぐだぐだとよく書けるねえという程度で読み流していただければ、幸いです。
この記事へのコメント
金融経済記事はやはり英語メディアの方に一日の長があるといえましょう。
実は、米当局がリーマンを見捨てAIGを救った理由は、金融知識が乏しいマスリテールを相手にした商売と、プロ相手の商売との差だと考えておりました。しかし、今日のエントリーを読むうち、従来はシステミックリスクとは無縁と考えられていた証券会社といえど、近年のデリバティブ市場発達によってもはや銀行と違いがなくなり、どの業態であっても金融機関の破綻が連鎖的に広がる可能性が出てきたのではないかと思い直すようになりました。もしかしたら、リーマンは破綻させるべきではなかったのではないかと。
また、CDS市場はその誕生以来「荒れた環境」を経験してこなかったことから、十分その機能を果たせるのか、不安材料には事欠きません。
それにしても、製造業と異なり信用だけが拠り所である金融業界とは、如何にもろい基盤の上に立った存在であるか、改めて痛感しております。先日までわが世の春を謳歌していた会社が次々に消えていく、この流れに日本も無縁でいられないことはご指摘のとおりと思います。
Posted by M at 2008年09月18日 23:55
肺の検査結果はメールで知らせてもらえるのですか。通院して帰りにヒックら返ったらこわいですよ。もし仮に肺梗塞の可能性ありとしたら、発作のかたちでおこるのですか。くれぐれもご自愛のほど。天の加護を祈ります。
それにしても体調すぐれない折から、難しく込み入ったことを考える持久力に感嘆しております。わたしはトシのわりには体力があり、頭は爽快か眠いかのふたつしかない単純な構造のせいで、並立できるようなコメントが書けません。些かの感想です:
WSが編み出したCDSによるリスク分散は蔓延すると実体が複雑怪奇、実体がわからなくなり実際に危機がおこると次にどこへ波及するかか見えにくい・・という記事。>CDS自体が問題の原因ではないが危機を悪化させる要因になっているという前提があります。<
こういう特殊なデリバティブは規制が必要と漠然と思っていましたが、
>完全には一致しない証券化商品ですから、処理を謝るとリスクが高いような気もする。< 
という意見にたじろぎました。政府が規制しても実効は難しいということですか。今回のAIG救済が単なる延命措置なのか追加資金を投入するかは別にして、ドル暴落に至らなかったことにホっとしました。
Posted by 安達正興 at 2008年09月19日 01:49
>M様

どさんぴん、もといど素人の「寝言」にお付き合いいただき、恐縮です。AIGとリーマンの差に関しては「金融知識が乏しいマスリテールを相手にした商売と、プロ相手の商売との差」というのがやはり第一だろうと思います。あとは平凡に各国、とくに協調体制を崩しかねない規模でリテールを展開している金融機関とそこまでの影響が見込めない機関との差、さらに憶測を重ねると、公的保証をしたときに、明るみに出るであろう過去の悪行の程度の差などもあるのかなと思っておりました。ご指摘の「従来はシステミックリスクとは無縁と考えられていた証券会社といえど、近年のデリバティブ市場の発達によってもはや銀行と違いがなくなり、どの業態であっても金融機関の破綻が連鎖的に広がる可能性が出てきた」というのは私が考えていたよりも視野が広くて勉強になります。そう考えると、アメリカの政府・中銀の対応はかなり素早く、ブラックボックスの部分が多い中で"narrow path"を必死に歩んでいるようにも見えます。システミックリスク防止の観点からは例外なき救済が望ましいと思うのですが、なんらかの形で税がリーマンに入ると、不正などが明るみに出た場合(他の金融機関も無縁ではなく程度問題でしょうが)、破綻スキーム自体が麻痺しかねないリスクもあるので、政治的な判断なのだろうと考えております。それにしても、投資銀行優位のウォール街の風景が一変する事態はすさまじいです。

CDSに関しても不安材料が大きいのですが、伊藤洋一さんのところで指摘されていた、Resolution Trust Corp(RTC)がうまく機能してくると、かなり不安を緩和すると思います。素人なので的外れかもしれませんが、"reference obligation"を塩漬けにして傷むのを緩和できれば、CDSの相互不信はかなり抑制できるのではと愚考します。元記事はこちらのようです。

http://wsj.com/article/SB122177442732653979.html

日米ともにこれだけ再編が続くと、金融業界の方々も本当にお疲れだと思います。ただ、金融市場というのは、もちろん水平的に資金を供給するところから需要のあるところへ仲介するという役割もありますが、ミクロ的な視点からは現在の資源配分と将来の資源配分を結ぶ大切な役割を担っていると思います。金融というのは「虚業」であるという批判、利潤動機がけしからんという批判が危機の際には大きくなりますが、私はそういった方とは別でありたいと思います。
Posted by Hache at 2008年09月19日 09:34
>安達正興様

温かいお言葉を賜り、ありがとうございます。幸い、急性期で重い症状が皆無ですので、血栓をおこらせないようにワーファリンを服用しながら、消えてゆくのを待つという形になると思います。RIで血栓の有無や部位などが明確になるので、それまでは様子見です。既に慢性期に入っているとのことなので、慌てず、じっくり「死神」が立ち去るのを待つという感覚です。自覚症状がまるでないので、医者があきれている状態です。たぶんですが、血栓があったとしてもマラソンレースに持ち込めば大丈夫だと思います。ワーファリンの服用は8月30日からですので、血栓が肺に存在しても、拡散するリスクはかなりコントロールされているとのことでした。

デリバティブの規制はわからないのですが、日本のグーグルで"derivatives statistics"をキーワードに検索するとトップに来るのが日銀の統計なので、各国の中央銀行が、おそらくヒアリング等でデータを収集してBISで集計をとっているようです。金額からしても、ある程度のモニタリングは可能でしょうが、規制は難しいと思います。CDSの場合、2006年12月から2007年12月の積み上がり方が異常で、憶測にすぎませんが、普通に考えると、投機目的で膨れ上がったのでしょう。上の記事ででてくる62兆ドルという金額がどの時点なのかはわかりませんが、憶測に憶測を重ねると、仮に2008年6月時点だとすると、それまで半年ごとに14−15兆ドルと増加してきたスピードが相当鈍化したことになると思います。

CDSの仕組みそのものはよくわかっていないのですが、ある確率でデフォルトする社債や住宅ローンなどを保有している金融機関に対して別の金融機関がデフォルトが生じたときに生じる損失を支払う義務を負うのと引き換えに一定金額を定期的に受け取るよう契約を結ぶ。CDS自体は、買い手がデフォルトのリスクをヘッジするための手段でしょう。問題はプライシングで、この算定の方法をネットで見てみましたが、あまり厳密なものがありませんでした。大雑把な感じでは、買い手の保有している社債や住宅ローンがデフォルトする確率を他の代表的な指標から算定するようです。問題は、CDSが投機的な目的で結ばれた場合で、サブプライムローンなどはデフォルトの確率が非常に高いわけですから、単体では取引が成立しないでしょうから、他の社債やローンと組み合わせてリスクを分散して組成して取引が成立すると、売り手はハイリスク・ハイリターンを実現できる。問題は、第1に、組み合わせた社債やローンのデフォルトする確率が相互に独立していること、第2に、売り手が破綻するリスクを無視できるという前提があることのようです。サブプライムローンが主たる問題のときには第1の前提がくずれてしまったと理解しております。現段階では、第2の前提が崩れて、実際には金融機関が売り手であると同時に買い手である状態でしょうから、ポジションをちょっと動かそうとすると、それが取引関係からその動きがCDSに関わっていない投資家に伝わってCDS以外の資本市場における資金調達を困難にしたと理解しております。

書き出したらずいぶん長くなってしまいましたが、CDSそのものを規制するのは規模からしても困難ですし、組成自体が複雑になっていると、下手な規制をかけると、かえってデフォルトする確率が低い企業が道連れになる形でデフォルトしてしまう可能性もあります。打つ手はないのかと言えば、先ほども書きましたように、RTCにCDSの「タネ」である債権やローンなどを譲渡して、表現は悪いのですが、塩漬けにして短期ではデフォルトリスクが相互に増幅するプロセスを和らげて、長期では回収が困難な部分を補填する形であれば、間接的な形ではありますが、CDSが"deleveraging"を加速するプロセスをかなりの程度、抑制できるのではと思います。直接、CDSそのものを規制する手段は私にはちょっとわからないので、憶測ばかりで恐縮ですが、上記のように考えております。

末尾で恐縮ですが、「航空保険はAIG」でしみじみアメリカ発の金融危機が世界全体の実体経済に影響を既に及ぼしていることを実感いたします。起きてしまった以上、アメリカの財務省・中銀が適切な対処で早期に危機を収めることを願います。
Posted by Hache at 2008年09月19日 09:51
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/19609537
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック