2008年10月20日

より開かれた「商人的な国際政治観」へ

 自分でも整理できていない「寝言」の極みの前に軽いネタ。軽いといってはなんですが、なにかと暗い世情では上海馬券王先生の文章が光ります。

 こちらを拝読しながら、懐かしさに浸ってしまいました。大学時代に北陸出身の方が、裏日本という言葉を使っていて、まるでピンとこないので、「表日本はどこなの?」とうっかり尋ねてしまった「KY」ぶりを発揮してしまい、あとで意味がようやくわかって、ひどく恥ずかしい思いをした記憶が蘇りました。それにしても、2006年のリーグ優勝、2007年の日本一でこれだけ日本と世界が滅茶苦茶になるのを見ると、「落合様、今年は許して!」となりそうです。中日の日本一にネットで喜びを表しても石つぶてを当てられるだけですし、翌年はもっと碌なことがなく、深部静脈血栓症にかかる始末。あれで落合監督が山井を交代させずに日本シリーズ初の完全試合など達成していたら、きっと私も日本も世界も心臓を直撃されていたであろうと確信しております。やはり、ギリギリのところで落合は世界と日本と私を救ったのだ!!

……。われながらつまらない「釣り針」ですな。

 所詮は元ファンですから、今年は阪神が叩きのめしてくれることを祈っております(嗚呼、全国のドラゴンズファンよ、裏切り者にふさわしい報いを)。『ウィキペディア』で見ていると、シャレにならんのですよ。1954年のリーグ優勝&日本一という「美しい」優勝時には翌年、保守合同と政変ではありますが、安定期の始まりだったのが、1972年の優勝時には田中内閣発足まではまだいいとして、翌年は変動相場制への移行ですから……。2006年のリーグ優勝(日本一ならず)、2007年のCS制覇&日本一のそれぞれの翌年には安倍、福田両政権が崩壊、麻生政権も不穏な感じ。国際金融は言うまでもなく、ここは秋華賞を思い切り外した上海馬券王先生のお力にすがるしかないのです(阪神が1勝1敗に戻してくれてホッとしました)。杞憂だと思うのですが、CS制覇&日本一なんて連続したら、世界の終わりではないかと。しかし、競馬で1000万円の配当って、わかっていないせいでしょうが、なんだか「根拠なき熱狂」のような。なにか「世も末」という終末思想にとりつかれそうです。

 それにしても、『ウォール街』というのは名作とは思えないのですが、身に沁みるセリフも多く、オリバー・ストーンのメッセージと思しきバドの父親カールの"Stop goin' for the easy buck and produce something with your life. Creat instead of living off the buying and selling of others."よりも印象に残るセリフがありましたね。バドの恋人役のダリアン(Darien)がゲッコーと決別するバドを見捨てて別れ際に吐くセリフ。

 You may find out one day that when you've had money and lost it, it's much worse than never having had it at all.

 手に入れたカネを失うことは、もともとまったくなかったときよりも惨めだって、いつかは気がつくわ。


 失うものがない身にはあまり縁がなさそうですが、そうではない人にとってはつらい時代になるのかもしれません。『ウィキペディア』で検索してみていたら、ダリアンを演じたダリル・ハンナはゴールデンラズベリー賞なる「裏アカデミー賞」の最低助演女優賞を受賞する栄誉に輝いたようで。正直なところ、最初に見たときから、このセリフをそうだよなとすんなり受け入れしまった私は救いようがないのかも。大学の恩師が都銀に就職する先輩や同級生に向かって、「人のカネを右から左に動かすだけの仕事をやりたがるとは……」と嘆いていて、他の事では尊敬しておりますが、そういうあなたは金融も含めて他人のあがりで食っているじゃありませんかと言ってはならない一言を言いそうになって、飲み込んだ覚えがあります。

 それにしても、北朝鮮では『読売』の怪しい情報もあって嫌な感じですね。地政学的リスクが極東に集中している現状を思い起こさせてくれます。こういうときにはラヂオ・プレスが確実な情報を提供してくれるのでしょう。それにしても、アメリカが事実上、戦時下の政権交代のリスクが高い状態で日本まで総選挙という博打をしようというのは理解しがたいのですが。


 日本は国際社会においていかに生きるかに悩んで来たし、今なお悩みつづけている。そして、その悩みの一つの焦点が憲法第九条をめぐる対立にあること、軍備の必要という国家のあり方の基本問題をめぐる対立にあることは事実である。この国論の分裂は日本の将来のつまずきの石となるかも知れない。そのとき、再軍備について日本国民の主体的判断を求めなかったことが、吉田茂の最大の失敗とみなされるかも知れない。しかし、講和後に憲法改正を強行していたとしても、それは日本の生き方についての悩みをなんら根本的に解決しなかったこともまた否定しえない事実なのである。第二次世界大戦後の国際政治においては、軍事力に関する限り、米ソの優越は圧倒的であり、その他の国々は軍事力を保有していても、それはまったく限られた意味しか持ちえないものであり、それを背景に外交を行うことは不可能なのである(高坂正堯『宰相 吉田茂』中央公論新社 2008年 73−74頁)。


 吉田茂の「商人的な国際政治観」の限界に関する高坂先生の批判と擁護が錯綜しているものの、問題をすっきりとはしていませんが、指摘されている部分です。率直なところ、吉田茂が今後は通商で国を富ませることが基本だと抑えた上で、憲法前文の精神を尊重した上で、しかるに理想を達成するまでの間、自衛のための最小限度の軍備は必要だと整理してくれていたらと思うことが少なくありません。ダレスによる再軍備の要求は、確かに当時の経済状況では厳しかったのかもしれませんが、戦勝国が敗戦国に再軍備を要求するという稀な状況というのは非常に珍しく、「限られた意味しか持ちえない」再軍備ですら、やはり論理を整理しておいてくれていたら、10月17日の衆議院テロ防止・イラク支援特別委員会における長島昭久議員の海賊対策の提案も、もっとすっきりした話になっていたでしょう。提案の内容は多くの点で護衛する商船の範囲や他国の海軍との連携などは9条の問題ではなく、日本にとっての利益を他国の利益といかに合致させるのかという現実的な問題でしかなくなっていたでしょう。

 「宰相 吉田茂論」や「吉田茂以後」が執筆された時期を考えれば、吉田茂が再軍備に関して「再軍備について日本国民の主体的判断を求めなかったことが、吉田茂の最大の失敗」と断ずるのは、あまりにも結果論に傾いた見方だと思います。吉田茂が総理だった時期には経済の復興が再軍備よりも優先度が高かったでしょうし、また、経済復興に関しても、現在のような生活水準にはほど遠く、要は日本人をいかに食べてゆける状態にもってゆくのかということが現実的な問題だったのでしょう。したがって、吉田の「商人的な国際政治観」は時代の要請にこたえるものであり、「バターか大砲か」という古典的な問題にまずはバターだという現実の要請への処方箋であったということに注意しなければならないでしょう。他国と互恵的な関係を築くという古典的な意味での「商人的な外交感覚」を築くのには、当時の日本の状況ではあまりにもその基盤が脆弱でした。

 また、吉田政権の時代には、あまりに再軍備の問題がイデオロギーの問題として争点になっており、現時点でそのような事情を無視して評価するのは歴史への冒涜でしょう。また、米ソが軍事的優位が明白だった時代には、「限られた意味しか持ちえない」軍備に力を注ぐことは、あまり賢明ではなかったのでしょう。ただし、ここでも、「限られた意味しか持ちえない」軍備も日本の安全にとっては不可欠であり、吉田自身が言葉では否定しながら、現実には再軍備を進めていった理由がここにあることは明白でしょう。経済にせよ、再軍備にせよ自国のことで精一杯だったというのが実情なのでしょう。吉田の「商人的な国際政治観」は、他国との互恵関係を重視するというよりも、基本的に日本一国を富ませるための発想であったと思います。経済復興は、他国との互恵的な関係なしでは達成することができず、また大戦以前のように植民地から富を収奪するのではなく、互恵的な取引で富をえてゆくことが基本になる以上、開放的な国際政治観につながってゆく、必然性ほど強くありませんが、傾向があったと思います。その意味では、吉田の「商人的な国際政治観」は現代でも意味をもっているのでしょう。

 問題は、再軍備における吉田の論理の乱れです。以前、こちらの「寝言」では岸政権の負の側面を強調しましたが、アメリカ側は岸信介が総理になる前に、ナショナリストという評価をしながらも、岸がリーダーとなることは日米関係を維持する「唯一の賭け」と評価していました。岸政権の下で世論のイデオロギー的な分断は悪化しましたが、安保条約改定によって日米安保体制における双務性は高まりました。「限られた意味しか持ちえない」軍備であっても、互恵的な関係を維持するためには不可欠であるという意味を吉田は十分に理解し得なかったのかもしれません。また、岸もどの程度、そのような認識をもっていたのかはわかりませんが、ナショナリズムという意図に導かれたとはいえ、軍事においては国を自ら守る能力がなければ、日米安保を維持することは不可能だったでしょう。

 乱暴ですが、吉田の「商人的な国際政治観」、岸の国内体制や再軍備に関する「ナショナリズム」のいずれも経済と安全保障においては実際には限定的な自国の利益から出発しているという点では共通するところがあると思います。当時としてはそれが限界だったのでしょう。左翼陣営は、いきなり全世界での互恵的な関係を目指したために、現実にはそのような関係を築くための積極的な役割を果たすことはありませんでした。もし、左派がより開放的な視点から経済や再軍備をそのときどきの情勢にあわせてより互恵的な関係を広げてゆく政策を構想していれば、今日、事実上、政治的影響力を失う事態になっていなかったでしょう。

 今日では、アメリカでさえも、軍備は「限られた意味しか持ちえない」時代です。それは、大国間戦争を抑止するという点で国際秩序を担保する最終の手段であるという意味です。それなら十分ではないかと思われるかもしれませんが、イラク戦争後の占領統治は、アメリカといえども、小国を自らの理想に合わせて改造することはできないという現実を示したと思います。また、北朝鮮のようにアメリカによって軍事行動を抑止されているだけでなく、通常兵器によってアメリカの軍事行動を抑止する能力をもつ国はアメリカ中心の地域的な秩序の構築を制限することさえできることを示しているのでしょう。もっと露骨に言えば、軍事力による強制を欠いた状態では、アメリカの外交も制約が大きく、自らの意図のままに秩序をつくりだすことは難しいということでしょう。

 1990年代後半以降の日本の国際的な地位の低下は惨めなものがあります。それは、戦後政治を形成した敗戦の物理的・精神的な傷から回復することが第一だった時代から脱し、経済的に繁栄し安全が保障されている環境の下で経済においても、安全保障においても自国の利益の追求を他国の利益の追求と意識的に一致させるより開放的な国際政治観への転換という、決して容易な道ではありませんが、そのようなコンセンサス形成に決して無関心だったとは思いませんが、やはり十分にできなかった結果なのでしょう。もう4、5年、同じ状況が続いてしまえば、「限られた意味しか持ちえない」軍備は機能しなくなるのかもしれません。外交における互恵的な関係の維持にも支障がでてくるでしょう。

 麻生総理は、長島議員の船主協会の要望に関し、海賊対策には賛成だが、補給活動の継続を希望するという項目がありますよと釘を刺されました。それ自体は、現状においては当然かもしれませんが、長島議員が「背後から匕首」を刺されるリスクを冒して提起した問題に十分に答えていない印象をもちました。自国の、インド洋沖での補給活動よりもより具体的な利益を守るために他国と協調するという点で、武器使用基準が限定されている状態で抑止力を縛られている状態ではありますし、海賊対策は決して英雄的な行為ではありませんが、戦後政治の形成期にはやむをなかった限界を乗り越えてゆくためには、地道とはいえ、大切な行動だと思います。解散・総選挙によって中断を余儀なくされるかもしれませんが、このような国のあり方にかかわってくる議論が、以前のようなイデオロギー的な議論ではなく、現実的な文脈で継続して行われ、実行されることを望みます。もちろん、インド洋での補給活動と海賊対策は両方とも実施されることが望ましいのでしょう。今回は論じ切れませんでしたが、憲法前文の精神は、単に国連という枠で行動することを定めたものではなく、より具体的な活動によって実現されるべき理念として理解する必要があるのでしょう。
この記事へのコメント
ですから、寝言さんが応援しないとダメなんですってば(泣)
もう世界大恐慌でも何でも起こしちゃって下さい……orz。
Posted by 匿名 at 2008年10月20日 20:58
>匿名様

あ、ありえないものを見てしまいました。
珍しく途中からですがCS第3戦を見ちゃいました。明らかに阪神よりの解説にムカッときましてね、「燃えよドラゴンズ!」状態になったんですよ。で、8回表まで岩田と吉見が投げていた記憶があるんです。

寝不足だったので、途中でうたた寝してしまって、ハッと目が覚めたら、ああ藤川登板かと思ってまだまだ投手戦だなあと思ったら、目を疑ったんです。恐怖の「2」がビジターの方についていて。

ウッズを見張らなかったのが失策だったとは……。まさに、「寝言」なんですが、ちょっと寝ただけでウッズの一発が出るなんて、怖くてダメですね。もう、忌々しいのですが、巨人にすべての望みを託すしかないのかもしれません……。
Posted by Hache at 2008年10月20日 22:06
8回までは応援していただいていたんですね(笑)
巨人戦中継もきっと巨人贔屓ですので、
ぜひとも「燃えよドラゴンズ!」状態でお願いします。

まあここに至っては
巨人勝利<<世界恐慌かかって来いや!<<中日勝利
なので好きにしちゃって下さい(謎)
Posted by 匿名 at 2008年10月21日 11:25
>匿名様

なにげにむごいことをおっしゃっているような気もいたしますが(苦笑)、気合MAXで応援した母校の地方選は全勝で甲子園にゆきましたので、あまり期待しないでください(笑)。

マジレスすると、うっかり寝てしまったので、『純正野球ファン』さんのところで0−3からウッズを歩かせなかったというのは知らなくて、岡田監督が惜しまれながら去るというのが理解できました。単に強いチームを率いただけではなくて、ファンが見ていてワクワクする野球を見せてくれていたのだなあと。どこぞの名古屋のチームは勝利が第一ですからね。それにしても、ペナントにまるでからめなかったチームが日本シリーズ進出というのはどうかと思うので、「燃えよドラゴンズ!」状態でゆきますか?
Posted by Hache at 2008年10月22日 05:50
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