2008年11月27日

TARP7,000億ドル+6,000億ドル+TALF2,000億ドル

 メンテナンスに乗じて更新をサボろうという魂胆でした。といっても、私の都合で気分しだいに更新しているだけなので、あまり意味がありませんが。メンテナンスは無事終了しました。こちらにさくらインターネット社からのお知らせがあります。なんだか風邪を引きなおしたようで、体調は最悪、寝不足でボロボロです。





 さて、面倒な話ばかりでなんだか気が進まないことばかりだなあと思っていたら、夜、自宅でプライベートのメールを確認していたら(基本的に@niftyのメールはインターネットメールで送受信を行っていて、PCのメーラーには落とさないようにしておりますが)、New York Timesが配信してきたメールのタイトルを見て、さすがにこれは。"U.S. Plans $800 Billion in Lending to Ease Crisis"(参照)とあって、なんじゃこりゃという感じ。シティグループの"bail out"に踏み込んで一安心したものの、株式市場は今ひとつさえない感じで、まだまだ前途多難と感じておりましたが、8000億ドルをなにに、どう突っ込むんだと思って読んでおりました。今ひとつ、すっきりしない記事でWall Street Journal紙を見ていたら、"Mortgage Rates Fall as U.S. Expands Rescue"(参照)という記事があり、8000億ドルの内訳が大雑把ですが、整理されていました。

(1)FRBは、ファニーメイ、フレディマック、ジニーメイ、連邦住宅貸付銀行など政府との関連が強いモーゲージビジネスから負債を買い取る。これに6,000億ドルを準備する。

(2)財務省の支援(200億ドル)の下でFRBは、奨学金ローンや自動車ローン、クレジットカード、中小企業ローンなどに関連する証券を投資家から買い取る。これに、2,000億ドルを準備する。こちらは、金融機関救済を目的としたTARPとは区別してTALF(Term Asset-Backed Securities Loan Facility)と呼ぶ。

 TALPに関しては、FRBのプレスリリース(参照)に詳細があります。TALFが提供するローンは、(1)貸出期間は1年間、(2)借り手に対するノンリコースローン、(3)適格な資産担保証券(ABS)によって完全に保証されるという内容です。間接的とはいえ、金融機関の救済から家計や事業会社が関連する信用秩序にも公的信用が大規模に関与する新しい局面なのでしょう。

 Wall Street Journal紙は、TARPだけでなく、ベア・スターンズの救済をはじめ、AIGやシティグループの救済など個別の救済措置を含めると、資本注入から債務保証で政府が金融市場に関与している金額は4兆ドルにのぼると指摘しています。New York Times紙は、この状況を経済学者が"quantitative easing"と描写していると指摘していますが、現実には物価水準にコミットしているわけではないので、量的緩和というよりも、信用秩序維持というところでしょう。

 シティグループの救済の翌日にモーゲージビジネスとTALFを実施したということは、財務省、FRBが強い危機感をもっていたことの現れでしょう。金融機関のバランスシーの毀損部分をFRBのバランスシートに移して当座の危機をしのごうというところだと思います(WSJの記事ではオバマ次期大統領の拡張的な財政政策を考慮しても、FRBは直近でのインフレーションの懸念をしていないと指摘しています)。合計8,000億ドルの新しい金融安定化策の評価は手に余りますが、2008年11月25日現在、Markit社のCDX Indicesのスプレッドは243ポイントと若干下がったものの、まだ高水準ですが、CMBX IndicesはトリプルA格で498.29ポイントと大幅に低下しています。

 Wall Street Journal紙の記事では、今回の措置の効果が薄弱だった場合、さらなる資金が必要になるという経済上のリスクを指摘した上で、議会にポールソン財務長官の裁量の余地を抑制しようという動きがあるという政治的背景を指摘しています。ポールソンとバーナンキFRB議長が「独走」している感もあり、その割りに金融システムが安定する状態には至っておらず、裁量を制限するルールを求める雰囲気が議会で強まっているのは自然なのでしょう。他方で、TARPの内容の是非はおいても、立法府のコントロールはあまりに時間がかかるがゆえに、金融安定化に要するスピードを損なうリスクも大きいと思います。WSJの記事では、財務省は金融機関救済の基準を示したとのことですが、システミックリスクが収束してはいないという現状認識と裁量を確保したいという欲求がないまぜになっていて、現状ではルール化を行うことは困難でしょう。

Separately, Treasury disclosed on Tuesday the criteria it is using when determining whether to bail out financial firms. Among the factors Treasury said it considers: the effect on creditors and counterparties if an institution is allowed to fail; whether the failure of the institution would lead to follow-on failures at similar institutions; and whether there's a high probability the failure of the firm would cause "major disruptions to credit markets."

 非常事態での政権交代まであと2ヶ月を切りました。この危険な時期に空白期間をつくらないように、金融システム不安の火種を必死にポールソンとバーナンキが抑制しようとありとあらゆる試みにチャレンジしているようにも見えます。二人は2008年に壮大な実験を行いました。オバマ政権は、現時点では雇用対策に重点を置いているように見えます。オバマ政権が壮大な実験を継承するのか、大転換を行うのかはわかりませんが、金融システムの安定化と実体経済の回復の双方を追わざるをえないでしょう。古典的な「流動性のわな」とは異なる金融システム不安による経済危機という認識をオバマ次期大統領がもっていることを願わずにはいられません。
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