2008年12月18日

FRBの投機的な「膨張」

 ふう。あれこれ書きたいものの、インプットが精一杯で、アウトプットにする処理が追いつきませぬ。来週まで地獄の2週間でして、今年も年賀状が出せるのだろうかと不安になります。ブッシュ大統領がイラクでの記者会見で靴を投げられたシーンを見ると、さすがに修羅場を潜り抜けたお方は違うなあと。顔色ひとつ変えずに、2回の「攻撃」をかわしていて、ちとびっくり。国内の報道では反米感情の根強さを強調しているようですが、この程度にまで落ち着いてきたのねと相変わらずの鈍感さ。ブッシュ大統領はやはりいかれた「外道」にとっては最も大統領らしい感じがします。その後を継ぐオバマ次期大統領の財政政策のpackageが膨らんで、Wall Street Journal紙あたりが皮肉っていますが、もう少し落ち着いたところで見たいところです。

 FOMCといえば、こちらをまず見てしまいます。というより、下手な報道より速いというのはちとびっくり。声明の内容そのものに関しては、こちらの分析で十分かなと。あとは『本石町日記』さんのところでテクニカルな説明を拝見してわかったような気分になりした。実は、FOMCの解説は伊藤洋一さん頼みで過ごしてきたので、全文をじっくりと自力で読んだことがありません。ふと、気がついたのですが、いわゆる「ゼロ金利」、「量的緩和」という表現そのものこそ出てこないものの、新聞の見出しとそれほど手段は変わらない。「へえ」と思ったのが、物価へのコミットメントがないこと。

 だから不満というわけではなく、ゼロ金利、量的緩和といっても、民間金融機関がリスクをとることが困難な状態でマネタリーベースを積み上げてもねえというところです。デフレ脱却のために物価水準にコミットせざるをえなくなった日本銀行よりも巧みだなと。FOMCの声明では"The Federal Reserve will continue to consider ways of using its balance sheet to further support credit markets and economic activity."と手段の細かさの割りに目標を曖昧にしていて、よくできた声明だなあと感心しました。支えるけれど、主役じゃないですよというわけでして、やっていることは事実上、金融市場の、部分的ではありますが、代替ですが、補完役だということに徹して、裁量の余地を維持しているのはさすが。

 長期債務の買い入れも検討しているようですが、アメリカの長期金利が既に歴史的な水準にまで低下しているわけでして、象徴的な意味しかないのかもしれません。露骨に言えば、国債も買うぞという姿勢も見せて、実際に買うのかどうかは別として、とにかくB/Sを膨らませるぞというシグナルなのかもしれません。現段階で確実な効果は主要通貨に対してドルが低下していることでありまして、財政赤字が次期政権ではさらに膨張する事態に縮小傾向にある経常収支赤字が縮小する効果はありそうです。決済が安定するのにはまだ時間がかかりそうですし、金融仲介機能となると、当面、どうしたら回復するのかさえ見通しが立っていないのでしょう。そんなことは百も承知で、物価へコミットすることはなく、日本でやらせようとしていたバーナンキ議長はとってもステキ。

 FOMCの声明を読むと、「ルール」を無視して、「裁量」の極大化を図っているようにも見えます。金融システム不安が続いている非常事態では適切なルールの設定は困難であり、やむをない感もありますが、バーナンキの経済観がリアルワールドとどの程度、適合しているのにかに金融政策の成否がかかってくる事態といってよいでしょう。バーナンキの経済に関する全体像をつかむのは私には無理ですが、彼の経済観が比較的、現実経済と整合していれば、アメリカにとってだけではなく、世界経済にとっても朗報です。そうではない場合、国際通貨体制そのものが掘り崩されるリスクも出てくる、ちょっとおっかない丁半博打といったところでしょうか。


 『産経』の契約もそろそろ切れるし、つまらない記事ばかりなので解約しようかなと思っていたら、「正論」で岡崎久彦「中国が対台湾で静観する理由」(参照)を読むと、悩ましいところです。まあ、ウェブで読めてしまうので、5年契約の「更改」を拒否するのは変わらないのかもしれませんが。活字が大きくなったせいで各紙とも内容が薄くてかなわないのですが、この論説は少ない字数でよくここまで台湾情勢を論じることができるなあと感心しました。以前、こんな「寝言」を書きましたが、『世界の論調批評』のおかげでありまして、自力では無理です。もちろん、中台関係を楽観しすぎるのは危険ですが、チベット情勢に関する短評も醒めていて、失礼ながら、「正論」欄ではちょっと浮いている感じさえします。これこそ「安心を与える」言論ですね。事実関係をきちんと洗って常識的な判断を加えているようにも見えますが、まともなことをまともに実行することが難しいことを実感させる論説です。
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