2008年12月24日

トヨタ自動車の「危機」と地方財政(1)

 昨日、豊田市の財政状況を見ていて、この比較的、健全な地方自治体が法人市民税の収入がほぼゼロになってしまった場合、どんな事態になるのだろうと、「寝言」を書いておりました。実は、12月22日から23日でPCの電源を落とすのを忘れていたために、23日も休止状態から使い始めたせいか、XPのSP3では徐々に増えてきているのですが、フリーズ。しかも、ノートパッドを保存していなかったので、「時の最果て」に「記事投稿」する際という最悪のタイミングの事故でして、データやリンクがすべて消えてしまいました。

 当初は、トヨタ自動車の2009年度3月末決算における損失発生の話そのものよりも、法人からの税収減と今後の雇用対策で地方財政が耐え切れないのではないかという「寝言」でした。しかるに、データはすべて消えてしまい、何を書きたかったかは覚えているのですが、再現するとなるとバカバカしくもあり、年の瀬で想定以上につらい状態なので、流そうかと思いました。他方で、リーダーで読み込む記事の多くは、トヨタの決算見通しに関するものが多く、刺激を受ける反面、現状がわからず、有価証券報告書などでは速報性にかけるので、トヨタ自動車本体のサイトを見ていたら、これはむごいなという状況でした。父上との会話では為替リスクっておっかないなあ、でも、あれぐらい予測できないのかとのたまうので、一言、「無理」で却下。為替レートの変動についても触れてはおりますが、まるで自信のない分野なので他の部分もそうですが、「寝言」として読み流していただければ幸いです。


  パッと見たところでは『朝日』の報道が最も早かった。「『派遣切り』豊田市が救済へ 臨時職員100人採用検討」という記事だが、豊田市が年度中途での「受け皿」をつくるものの、実際にどのような仕事を割り振るのには苦悩している。同記事では大分キヤノンの非正規社員で職を失った人の受け皿を大分市が臨時職員としてつくることにも触れている。ざっと、検索をかけてみると、トヨタ関連以外でも、茨城県や中国地方、九州地方で地方自治体が失職者の受け皿として臨時職員での採用を増やそうという動きが広がっており、当然とはいえ、国の「緊急経済対策」よりも実際に失職者が生じる地方での動きがはるかに素早い。他方で、こうした失職者対策の費用は地方の負担が大きく、地方財政を再び危機に直面させる可能性が高い。

 今回のテーマと離れるが、トヨタ自動車に関するネットでの記事を読むと、現状を分析せずに、10年後のことばかりを論じているようだ。ざっとトヨタ自動車のサイトから投資家向け情報から2009年3月末連結決算見通し(2008年12月22日)を見ると(参照)、下記の通り(単位億円)。

表1 2009年3月末連結決算見通し(2008年12月22日発表分)


                      (単位:億円)
       今回見通し 2Q決算時点   増減  前期実績
              見通し 

売上高    215,000   230,000  △15,000 262,892

営業利益   △1,500    6,000   △7,500 22,703

税金等調整前
当期純利益   △500    6,400 △6,900 24,372

当期純利益    500    5,500 △5,000 17,178

為替レート
   ドル   100円    103円  3円の円高    114円
  ユーロ   143円    146円 3円の円高 162円

後半期の前提為替レート:ドル=93円 ユーロ=123円
2008年12月以降の前提為替レート:ドル=90円 ユーロ=120円


 2008年11月6日発表の2009年3月末決算見通しから12月22日発表の見通しでは、約3兆3千億円の売上減少と見込んでいたのがさらに1兆5千億円の売上減となっている。なお、当期純利益がわずか500億円とはいえ、プラスであるのは税制によるもので、今後、社会的批判(笑)の対象となる可能性が高い。「派遣切り」をやっている会社になぜ税による実質的な補助金を与えるのかなどといった批判が想定される。

 今回の見通しで大きく変化したのは、連結販売台数で見ると、北米で250万台、欧州で170万台の販売台数の減少を見込んでいるのに加えて、2Q決算時点見通しでは販売増を見込んでいたアジア、その他(中南米、オセアニア、アフリカ、中近東など)もそれぞれ110万台、100万台で計210万台の販売減という見通しに変化していたことも大きい。ちなみに国内は70万台の減少で、無視はできないが、この経済環境の急速な悪化にもかかわらず、他地域と比べて11月時点での見通しがはるかに正確であるのはちょっと驚く。

 2006年の時点で既にトヨタは「オーバーエクステンション」ではないかと話もあり(あまり参考にならない「寝言」)、中国、ブラジル、ロシアなどで工場や販売網を立ち上げてはいるものの、現地法人を管理する人材が不足しているという指摘があった。それでも、11月の時点では日本、北米、欧州など以外の地域、あるいは新興国では販売増を見込んでおり、トヨタもさすがにこれらの地域では販売台数の増減数そのものよりも、増減すら予測できなかったことはトヨタが新興国での「立ち遅れ」が単なる市場の開拓の遅れではなく、生産と販売が一体となった「トヨタ生産方式」を確立できていない状態であることが大きいのだろう。低価格車との競争という要因は無視できないのだろうが、新興国ではトヨタのお家芸を確立できていないのだろう。低価格車の市場と高価格帯の市場は代替的ではあろうが、ただちに前者が後者の市場を代替するとは考えにくく、現状では全世界で所得が減少している効果の方が大きいだろう。ただし、新興国の道路整備状況などから、トヨタの車は新興国では受け入れられないリスクがある。なお、トヨタ自動車ですら「デカップリング論」というばかげた議論に汚染されていたとしたら、投資対象としては不適格といってよい。

 さらに営業利益の増減要因の見通しを見ると、販売減の影響が最大ではあるものの、為替レート変動や金利スワップなどの影響が非常に大きい。2009年3月末決算(通期)では明示されていないが、金利スワップ評価損を11月6日発表から12月22日発表ではさらに1,100億円積み増している。営業利益の増減要因の見通しは表2の通り。

表2 2009年3月末連結決算営業利益見通し(2008年12月22日発表分)

          (単位:億円)

            営業利益

    前期実績     22,703

 原価改善の努力       200

 為替変動の影響    △8,900

 販売面での影響    △11,800

諸経費の増加ほか    △3,703

      合計    △24,203

   今回見通し     △1,500


 減益要因のうち、販売面での影響はその2分の1程度を説明できる程度であり、為替変動の影響が大きいことが見通しの段階とはいえ、金利スワップの評価損とあわせると、販売台数の減少と匹敵することは注目に値する。現行の為替水準が定着した場合、トヨタの「カイゼン」をもってしても、国内で生産した自動車を輸出して利益をあげるのは困難であろう。トヨタ自動車が企業として生き残りを図るのなら、長期では海外での現地生産へシフトせざるをないだろう。このことは、国内での雇用を減少させる。より長期では、先進国市場で売れる車ではなく、新興国における道路整備状況や所得水準にあった低価格車を開発する必要がでてくるのだろうが、トヨタのブランドイメージからそのような戦略は無理だろう。なお、新興国の自動車メーカーとの競争にトヨタよりも早く直面するのが軽自動車メーカーになるのかもしれない。差別化ができない場合、自動車市場のセグメントの大半が独占的競争市場に近似される状態となり、価格における競争が主流になる可能性もある。他方、市場環境への適応が遅れるほど、短期では雇用を維持できるだろうが、長期ではすべてを失うリスクが高い。

 また、来年以降の為替レートの変動を予測するのも困難だ。既に、合衆国、ヨーロッパともに金融緩和に加えて積極財政に転じており、日本も漸く同じ方向へ政策転換が図られているが、金融政策はまだしも、財政政策は財政制約に加えて、政治的意思決定の空白が大きく、およそ方向性がこの数年で固まるかどうかさえ、不確実な状況だ。率直なところ、これだけ他の先進諸国と比較して公的部門の長期債務が大きい国の通貨を信用できるのかという気がするのだが。トヨタ自動車をはじめ、他のグローバル企業が日本国内からの輸出で弾き出している貿易収支黒字を帳消しにするように為替レートが変動しているようにも見える。原材料の価格上昇が急激な下落に転じても、直ちにこの傾向が変化する状況ではないのかもしれない。内需、外需とも回復しないまま、日本経済はゆっくりと縮小し、公的部門の長期債務の返済能力に疑義が生じる事態に至れば、増税などによっても、長期金利が上昇し、経済規模が縮小を続けるという事態になるのだろう。
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