2008年12月25日

トヨタ自動車の「危機」と地方財政(2)

 祝日だった23日に不敬のきわみですが、民放の番組を録画で流しているブログで見ていて、まじめに政府通貨が「経済学的に」有効だとおっしゃる方がいて、しみじみ地上波の番組って悲惨だなあと思ったりします。そういえば、ある経済評論家がお昼のワイドショーで私は死刑廃止論者だから、裁判員に選ばれることはないとしゃべったのを母上が真に受けていて、テレビって怖いなと。幸いなことに、一家全員、「徴員」を免れましたが、刑法の専門家にチラッと聞いたら、「テレビでは公共の電波でそんなことを平気で流しているんですか」とあきれていました。ちなみに、私が窃盗をしたら手首を切り落とせ、人殺しは即死刑と「持論」(素面でも酔っ払いみたいなことが言える神経が自分でも信じられない部分がありますが)を述べたら、「そういう人が裁判員に一番、選ばれないんですよ」と苦笑いしつつ、人格的に欠陥がないかとそっと探りをいれられてしまいました。ま、元次官を殺害しちゃった人とあまり変わらない目で見られてしまうわけでして、「素人」さんにはお奨めできない「荒業」ですが。

 さて、本来の主題は地方財政の「危機」なのですが、これが樹海をさまよっているような気分になるぐらい、本当に難しい。わからないなりに23日に「寝言」にしてみたのですが、なにせ、管理画面で記事投稿で貼り付けて、リンクをはっている最中によもやのフリーズ。IE7でタブを開きまくった状態だったのでやむをないのかもしれませんが、私の頭もフリーズ。バカバカしくなって、シャットダウンして寝てしまいました。

 このシリーズ(?)を書き始めたきっかけは『産経』の12月21日を読んでいて、平成21年度予算の財務省原案を批判している記事を読みながら、『朝日』などと同じく一家の家計にたとえて「アソウさん一家」のドタバタ劇を書いているのですが、オチが妻のユウコさんにタロウさんが反論するというあたりで激萎え。どうせ、ぶっ飛んだ政権批判をやるのなら、「大阿呆峠」ぐらいナンセンスさがないと、単なる悪口になってしまいます(説得力ゼロの後付)。まあ、言い訳をすると、「教えてあげる 人間には二種類しかいないの 支配される愚民共と… 君臨する覇王よ!!!!」(出典は……。わかる人がわかればいいです)と開き直って、徹底的にバラマキをするとでもおっしゃればいいのにと思うのですが。麻生首相の生まれがよいことぐらい知らない人の方が少ないので、徹底的に「上から目線」に徹した方が、スムーズにメッセージが伝わるような。変に庶民感覚なんてもっていただく必要もなく、もっていなくて当然なので、正直、ホテルのバー(言いにくいのですが毎日は無理にしても、あの程度であれば年に数回程度ですけれども、私でもちょっと安い店ぐらいには出入りしますからね)の話にはまるでついてゆけず、あの話を質問した記者はレベルが低すぎるから記者クラブから排除されるのかと思ったら、そうでもない様子で、しみじみ変な世界と縁がなくてよかったと思ったりします。

 そんなわけで私の心が折れたのは、首相が消費税を含めた税制改革に触れたあたりでして、いくら3年後とはいえ、足元で消費が冷え込んでいるところに、「近い将来、増税するかもよ」ではもともと痛み止め程度の効果しか見込めない財政政策が、いよいよただの金食い虫になりかねないということです。定額給付金も筋がよいとは思えないのですが、高所得者に返却という「矜持」を求めるのも、ため息が。「矜持」を求めるのなら、高所得者にはこれの2倍、3倍、カネを使おうぜというメッセージが適切なのであって、正直、短期市場なんて失礼ながら閉鎖的な世界の住人ではない普通の人にとっては白川総裁がプレゼン下手なんてどうでもいいのよ。公共事業ではなくても、失業対策に医療費や年金、介護など社会保障での支出増を抑制するのはもはや不可能に近く、国と地方の支出は増えるでしょう。さらに、直接税の落ち込みが厳しく、財政のやりくりは大変でありまして、麻生首相が発するメッセージで財政支出の効果が変わるというわけではありませんが、萎えるメッセージは出さないでほしいというところです。

 話が変わって、もう嫌気がさすのですが、この「寝言」を書きながら、他の作業をしていたら、途中で突然、OSが勝手に再起動して、すべての作業が中断。前回のMicrosoft Update以来、異常に調子が悪いです。SP3になってからやたらと重いことが増えているし、Vistaへ乗り換えさせようというマイクロソフトの陰謀?)。ひょとしたら、ウィルスバスター2009で余計な対策をしているのかもしれませんが。また、上書き保存をしないでいたら、再起動。ちょっと、いらつきながらなので文章もイライラ気味になっているかもしれません。お越しいただく方は減る一方ですが、「不機嫌な寝言」カテゴリーでもつくろうかなあ。本題は自分用のメモなので、読んでいただく前提で書いておりませんので、お仕事口調です。読まなくて結構。長いので、暇で暇でしょうがないという幸せな方(クリスマス・イブを不幸せに過ごした方もどうぞ、どうぞ)は、「続き」でもどうぞ。


 上記では(「トヨタ自動車の『危機』と地方財政(1)」)、根拠となるデータが粗い割りに価値判断が多く、非常に不健全な意見になってしまった。報道では、トヨタ自動車の2009年度決算の見込みで営業損失が1500億円ほど見込まれていることが強調されているが、現実には、税金等調整前当期純利益で約500億円の損失が予想されているものの、税制上の措置の結果、純利益では500億円ほどの利益が計上される見込みである。他方で、トヨタ自動車は派遣社員や期間工などを事実上、大量に解雇し、マスメディアなどで批判的な意見が多い。純利益を500億円程度とはいえ、見込みどおり計上した場合、「派遣切り」を行っている企業に事実上、補助金を与える形となり、それ自体、税制上の手続きに従ったものとはいえ、社会的に批判が強まるかもしれない。

 なお、トヨタ自動車に関して海外売上高で北米市場に過度に依存しているという指摘も少なくない。本題へ入る前の寄り道が過ぎている感もあるが、トヨタの業績見込みが株式市場にショックを与えたように、大量の人員削減を発表して株式市場にもショックを与えたソニーの海外売上高を見てみよう。表3は両者の平成19年度有価証券報告書から地域別セグメント情報から作成した表である。この表を見ると、トヨタの北米市場における比率が約36.5%とソニーに比べ高く、売上高も高い一方、北米・欧州という先進国市場における売上高の比率は両者とも連結売上高の概ね50%を占めることがわかる。トヨタの有価証券報告書では「その他」は中南米、オセアニア、アフリカ、中近東などの地域を指すことが明記されているのに対し、ソニーの有価証券報告書ではその他の内訳は明示されていない。やや乱暴な比較になるが、両者とも、新興国市場における売上高が連結売上高に占める割合は、約25%でほぼ同様である。

 なお、平成18年度と平成19年度の両年でトヨタ自動車はすべての地域で営業利益を計上しているのに対し、ソニーは北米市場と欧州市場では営業損失を計上しており、その他のみ営業利益を計上していることにも留意する必要がある。トヨタの場合、平成20年度決算においてはすべての地域で営業損失を記録する可能性が高いが、日本以外の地域の景気が回復した場合、いっそう海外生産を増加させる可能性が高い。他方で、ソニーはそのような誘因が作用するのは疑問である。

 現時点ではいつ好転するのかさえ見当がつかないとはいえ、仮に、日本以外の地域の景気が回復し、トヨタやソニーなど大企業が現地生産を拡大した場合、日本国内の雇用は国内の景気動向に関係なく、製造業では回復しないだろう。他方で、大企業の場合、法人税の納付によって他の経済主体にも利益を還元する程度が大きい。この場合、法人税の実効税率が他の先進諸国と比較して高いことが大企業側に不満を招く可能性が高い。他方、皮肉なことに海外での生産を進めない場合、国内の消費が伸びない限り、大企業の所得は低い水準に留まり、雇用は低下した水準のままが精一杯とはいえ、維持されるものの、法人からの税収は低い水準に留まるだろう。いずれにせよ、法人税率の見直しが問題となってくるのは、世界的な景気回復後であり、それまでは現行税制によって大企業は恩恵を受ける状態が続く可能性が高い。他方、公的部門は、税収減による影響と雇用をはじめ、医療・年金・介護など社会保障関連の財政需要の増加という両面から積極財政に転じなくても、財政が悪化するリスクが高い。

 既に、1970年代以降、貿易摩擦などによって日本の製造業における大企業は、半ば強制的に海外生産を増やさざるをえなくなり、1980年代以降、この動きが加速して現在に至っている。高度成長期のように、大企業の設備投資が国内需要を増やし、生産性を高め、所得を増加させるという連鎖は生じにくく、1990年代以降、大企業の資本蓄積と日本経済の成長がかならずしも一致しない状態にある。大企業が国内において雇用創出という点で積極的な役割を果たす効果は薄れており、税を通した形で利益を還元しているのが現状であろう。


表3 平成19年度決算におけるトヨタ自動車とソニーの海外売上高

                       (単位:百万円)
トヨタ自動車 ソニー

北米 9,606,481 36.5% 2,056,374 23.2%

欧州 3,746,362 14.3% 2,328,233 26.2%

アジア 2,968,460 11.3%
その他 3,831,739 14.6% 2,264,945 25.5%

海外売上高合計  20,153,042  76.7%  6,649,552  75.0%

連結売上高    26,289,240        8,871,414

(出所)各社有価証券報告書。

 その意味で、「トヨタ・ショック」は、株式市場に与える影響よりも、国内における雇用以上に本社所在地などを中心とした地方自治体の財政に直接的な影響を与えるだろう。もちろん、国の財政への影響も大きいが、小泉政権下における「三位一体改革」によって、自治体の地方税収入が歳入に占める割合は増加しており、「緩衝材」を失った地方自治体が景気変動によって税収の変動も大きくなるだろう。トヨタ自動車の本社が所在する豊田市の財政について簡単に見てみよう。

 愛知県豊田市の人口は2008年12月1日現在で423,379人である。豊田市は、地方都市の中でも中核市に指定されている。愛知県内では他に岡崎市(376,919人)と豊橋市(385,526人)が中核市に指定されている。中核市は人口30万人以上の年が都道府県議会の議決・同意を経て政令により指定され、政令指定都市に準じる権限を都道府県から委譲される。豊田市の「予算のあらまし2008」(参照)では、施政方針で「子育ちを支える」ことや交通事故の減少、災害対策、中山間部での医療の充実、合併後の豊田市の融合などの施策が挙げられており、2008年度予算作成時には今日のような雇用対策には言及されていない。2008年、とりわけ9月以降の金融危機とトヨタ自動車の急速な業績悪化は、豊田市にとって青天の霹靂であっただろう。私の理解不足で中核市の権限と責任の関係が理解できていないが、豊田市は、今後、トヨタの業績悪化による法人市民税の急激な減少と失業対策による財政需要の増加という、少なからぬ中核市が直面するであろう危機を最も厳しい形で経験する可能性が高い。

 ややテーマからそれるが、「とよた 市勢ガイド2008」(参照)は、挙母町時代からの豊田自動織機製作所との関係や今日の自動車産業が豊田市に占める位置づけを簡潔にまとめており、興味深い。大規模な国産自動車の生産を目論む野心的な豊田自動織機製作所自動車部は、名古屋市を中心とする中京工業地帯が西方約20kmに位置する挙母町論地ヶ原に工場立地を選んだ。また、挙母町は世界恐慌後、養蚕業・製糸業が衰退し、新しい産業の誘致に積極的であった。1934年(昭和9年)には、挙母町は工場誘致委員会を結成し、豊田自動織機製作所と「土地買収に関する申合書」を取り交わすなど順調に工場立地が進むかに見えた。現実には、買収の対象となる土地の地主との交渉は難航し、一時期は破談寸前の状態まで事態が悪化した。今も昔も変わらぬ、土地買収の難しさを感じさせるエピソードだ。

 それでも1935年(昭和10年)には土地買収が完了し、1937年(昭和12年)にはトヨタ自動車工業が誕生して、翌年には挙母工場が創業を始めた。当時の工場の規模は、敷坪15万坪超、建坪約6万坪、従業員5千人、総工費は4,500万円(当時)であったという。「クルマのまち」豊田市の始まりは約70年以上前に遡る。2006年(平成18年)現在では、自動車関連工場数が446であり、従業員数は8万8,374人に達している。やや意外なのは、豊田市全体の工場数は1,406であり自動車関連工場は31.7%を占めるにすぎず、対照的に市全体の工場従業員者数は10万5,996人のうち自動車関連が83.9%を占めるというデータである。驚くべきことに、製造品出荷額では、豊田市全体で12兆6,008億円にのぼり、そのうち95.3%にあたる12兆68億円が自動車関連である。この数字は、日本全体の粗生産の1%、国内総生産の2%を超える。さらに、工場だけでなくトヨタのPR施設や病院・スポーツ施設などの福利厚生施設なども豊田市に多く立地しており、地域における産業集積の「企業城下町」という類型の典型となっている。1959年(昭和34年)には挙母市は豊田市に名称を変更し、2005年(平成17年)には藤岡町・小原村(西加茂郡)、足助町・下山村・旭町・稲武町(東加茂郡)と合併して現在に至っている。

 やや寄り道がすぎたが、豊田市の財政に話を戻す。以下の記述は豊田市「予算のあらまし(平成20年度版)」による。平成20年度の豊田市の当初予算は総額で2,577億7,044万円(前年比3.1%減)である。一般会計予算は約1,712億円(前年比2.4%増)、特別会計が710億3,826万円(14.2%)であり、予算規模の縮小は医療制度改革により老人保健に関する支出が減少したために特別会計が大幅に縮小したことによる。豊田市の予算で特徴的なのは、

(1)一般会計における市税が1,234億9,435万円(一般歳入の72.2%)と巨額であること
(2)市税の中でも法人市民税が442億500万円(25.8%)と最大の項目になっていること
(3)歳出では土木費413億87万円(24.2%)が民生費342億9,950万円(20.1%)を上回り、一般会計の歳出で最大の費目になっていること

などである。やや意外感があるのは、豊田市のように法人市民税が巨額であるにもかかわらず地方交付税不交付団体ではなく、金額自体は44億5,000万円(2.6%)とわずかではあるが交付を受けていることや、市債の発行額が30億円(1.8%)と非常に低い水準にあることだ。財政力指数や経常収支比率(参照)が全国平均(豊田市のデータは平成20年度まで公表されているが全国平均は平成18年度までしか公表されていない)よりも良好な水準にあることが示すように、豊田市は全国でも財政的な面から平成20年度当初予算までは「健全な」地方自治体といってよいだろう。また、平成19年度から平成20年度で長期借入金が1,747億8,200万円から1,646億646万円へ金額で101億7,554万円、前年比で5.8%ほど減少している。

 平成19年度予算のデータでは市税の細目が示されていないために、2007年4月から2008年3月までのトヨタ自動車の好業績が豊田市の財政を潤した部分がどの程度であるのかはわからないが、中核市としては例外的といってよいほどの法人市民税が豊田市の財政の健全さを支えているのだろう。他方、企業城下町では当然ではあるが、トヨタの通期での税金等調整前当期純利益が約500億円の損失を記録したことによって、豊田市の市税だけでなく、歳入項目で最大の法人市民税が大幅に減少するだろう。ネットの信頼性の低いメディアでは約400億円ほどの減収となるという予想が示されているが、根拠が明白ではない。ただし、法人住民税の9割程度がトヨタおよび関連企業からの税収であるとすると、400億円程度の減収というのは荒唐無稽ともいえないのかもしれない。これだけの税収が減少したときに、豊田市が失業対策などで支出を増やした場合、1年程度ならばまだしも、2−3年程度、トヨタの業績が回復しなかった場合、急激に財政が悪化する虞がある。

 豊田市の財政、とくに税収面を他の自治体と比較してみたいのだが、製造業中心で法人税収が大きい地方都市がなかなかわからない。土地勘がある程度、はたらくこともあって中核市と政令指定都市を比較するのはあまりに乱暴だが、浜松市と比較してみよう。浜松市の人口は2008年12月現在826,241人である(参照)。他方、2005年(平成17年)の製造品出荷額は2兆5,739億6,353万円であり、驚くべきことに2006年の豊田市の5分の1である。なお、1980年代まで地方交付税不交付団体である可美村が現在の浜松市南区に存在した。可美村はスズキの本社が存在していたために、当時の浜松市よりも財政的に恵まれていた。1991年に可美村は浜松市に編入され消滅された。浜松市は、豊田市とは対照的に、トヨタ自動車1社による企業城下町ではなく、ホンダ(本社は東京都に移転)やヤマハ、河合楽器製作所、ローランド、浜松ホトニクスなど輸送用機器だけでなく楽器や精密機器など多様な製造業が集積しており、中京圏では唯一、テクノポリスに指定されている。工業に従事する者の数は、9万979人で豊田市よりも大きいが、統計上、工場従業員数以外の人員も含むので単純な比較はできない。ただし、豊田市の方が工場従業員などを含めた工業従事者の生産性は高いのかもしれない。

 浜松市の平成20年度当初予算(参照)は一般会計と特別会計の合計で4,541億1,157万5千万円であり、豊田市の約1.8倍の規模である。内訳は、一般会計が約2,668億円であり、特別会計が約1,873億円である。豊田市の一般会計が約66.9%であるのに対し、浜松市は58.8%と相当に低い。税収で見ると、浜松市の市税は1,372億円(一般会計歳入の51.4%)と豊田市よりも100億円ほど多いものの、歳入に占める割合ははるかに低い。浜松市の法人市民税は約180億円であり、豊田市の40.7%にすぎない。個人住民税では、浜松市が499億7,900万円(一般会計の歳入の18.7%)に対し、豊田市は328億200万円(19.2%)であり、浜松市の人口が豊田市の約2倍であるのに対し、個人住民税では1.5倍程度であり人口ほどの差がない。浜松市の固定資産税収入はは529億8,300万円(19.9%)であり、豊田市の328億200万円(19.4%)であり、これも浜松市が豊田市の1.6倍程度である。他方、浜松市は地方交付税を149億円(5.6%)ほど受け取っており、市債発行額は228億8,040万円(8.6%)であり、市税以外の収入、それも、国からの地方交付金と市債に豊田市と比較すると依存している。もっとも、豊田市の財政における市税の割合は全国的に見ても非常に高く、浜松市のそれは全国平均をやや下回る程度である。なお、浜松市の市債のムーディズ社による格付けは2007年10月11日にAa2からAa1に引き上げられた。

 上記の2つの都市を比較すると、あらためて豊田市の財政の健全さが浮かび上がると同時に、景気の変動の波を受けやすいことが明瞭になる。もし、トヨタ自動車の税金等調整前当期純利益が損失に転じると、最悪の場合として法人市民税がゼロになってしまうと、豊田市の市税が一般会計に占める割合は、46.4%となり、政令指定都市である浜松市よりも低下するだけでなく、全国的に見ても非常に低い割合に低下するリスクが存在する。また、浜松市では豊田市ほど歳出の細目を示していないために比較ができないが、法人市民税が落ち込んだ場合、土木費を賄うことが困難になる水準に低下するだろう。

 両親の話では豊田市だけではなく、周辺の自治体でもトヨタの研修所や福利厚生施設が建設されているが、トヨタの業績の低下による固定資産形成の減少を、豊田市をはじめ周辺自治体の土木費の増加で補うのは難しいだろう。さらに、今後、非正規雇用の受け皿を提供するとなると、税収減にもかかわらず、財政規模を縮小するのが困難になるのかもしれない。一見、健全に見える豊田市の財政ですら、景気悪化に伴って、急速に悪化するリスクが高いのが現状であろう。

 豊田市の場合、トヨタ自動車の企業城下町としてまちづくりが行われてきたため、企業業績の悪化が財政危機を招く顕著な例になるのかもしれない。ただし、豊田市以上に、財政が慢性的に改善していない自治体にとっては、今回の経済危機ははるかに致命的なダメージを与えるリスクがある。次に見るように、地方財政の健全化はこの2,3年で緒に就いたばかりであり、今後、失業対策などで国が積極的な施策を行った場合、国が自治体に資金を提供しても、おそらく3分の2程度は地方自治体が負担しなければならないだろう。1990年代の景気刺激策は国の長期債務を増やしただけでなく、地方の長期債務を劇的に増加させた。

 小泉政権は不況下の下で歳出削減を行ったため、地方を疲弊させたと今日では批判されているが、国による景気刺激策が地方財政の悪化というすぐには顕在化しない「痛み」を招く危険を忘れるべきではないだろう。公共事業による景気刺激策は限定的であり、私自身は今回の経済危機の下でも単なる雇用創出ではなく、厳密な便益評価(バカな経済学者は公共事業で費用便益分析が行われていないかのように主張しているが、問題は費用評価の甘さもさることながら便益評価に雇用創出による乗数効果をいれるという出鱈目な計算が行われていることである)にもとづいて行うことには反対ではない。問題は、1990年代に行われた公共事業による景気刺激策に代わって雇用対策に国がイニシアチブを発揮する場合にも、実際の受け皿は自治体が提供するほかなく、そのことが自治体の財政を悪化させ、かえって地方を財政的な制約に直面させ、再生の可能性を失わせてしまうことにある。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/24735000
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック