2009年01月26日

恐慌下のリーダーシップ

 書き終えてから気がつきましたが、この「寝言」が800回目になります。「寝言」が一つ、二つ、三つ……八百と考えると、眠くなる前にバカだなあという感じ。誤解の内容に申し上げておきますが、決して暇ではなく、今週は社外にでることばかりなので、「寝言」も浮かぶ暇がないかもしれません。とりあえず、自宅のPC環境も復旧したので、今週はお仕事命でゆきたいものです。

 一番なくても困らない動画編集以外のソフトをほぼ導入して、一応、自作機はほぼトラブル前の状態に戻りました。問題はC521のUSB関連のトラブルですが、当面、ソリューションを思いつかない状態です。GeForce6150が扱いにくいので、マザーボードを交換してしまおうと思いましたが、やはりデルの仕様で、マザーボードの大きさがあわず、あきらめ気味です。

 間抜けなことに、液晶モニターの保護フィルターの貼り方を間違えていたので、ため息が出ます。I・OデータのDA-PFG221を買ったのですが、なんとか安いところで5,000円をようやく切るという信じられない価格で、なんと液晶モニター本体の5分の1弱ぐらいしました。一応、貼り直しができるのですが、一度、接着面についてしまったほこりがとれなくて、迂闊にやると、さらに事態が悪化しそうです。空気清浄機をガンガンかけた禁煙の部屋で作業したのに、手順を間違えて焦っているうちに、いつの間にか、ほこりが2箇所も入ってとるのに一苦労です。空気が入ってかえって画面が見づらいのですが、それでも作業領域の広さは助かりますね。


 さて、自宅ではPCを用いた作業がほとんどできないせいで、職場で当たり障りのない英文の記事を読んでおりました。オバマ政権に移行する前にブッシュ政権を米紙がどのように評価するのだろうかという点に興味があって、オバマ政権発足前にまとめようと思っておりましたが、それどころではなくなってしまいました。私の読解力では単なる見落としでしょうが、Washington PostやNew York Timesではこれというほどのものはなく、Wall Street Journalの社説が目を引きました。といっても、例えば、"The Bush Economy"(2009年1月17日 (参照))は率直なところ退屈な社説で、ブッシュ政権の無責任な減税とグリーンスパンの野放図な低金利政策がバブルの「主犯」というのは読み飽きた感じです。テイラー・ルールは有力な仮説ですが、このルールからの乖離で議論するのはちと無理があるような。経済の世界では、仮説と理論、法則と実証が不十分なルールの区別ができないものだなあと。むしろ、イラク戦争の評価などの方でまあおもしろいなという論説がありましたが、話が広がりすぎるので焦点は経済です。

 「時の最果て」らしく、本題からそれてしまいますが、PCの復旧作業中もネットで新聞やブログの類を拾い読み程度はしていました。なぜか雇用問題の話をしているところが多く、もちろん、優先順位が高い問題ではありますが、率直なところ、いろんな立場の方々の記事を拝読しながら、これって感情論だなあという感じです。しかも、メディアの記事の多くは、首都圏の問題がほとんどで、全国紙ではなく、ローカル紙ではないかとすら思います。国内的な雇用問題を報道するのなら、産業や地域など全国的な目配りが必要ですし、もちろん、そのような記事も決して少なくはないのですが、首都圏で話題になる話の比重が高く、率直なところ、首都圏でもどうでもよいような問題が大きく扱われているのに違和感を覚えます。

 それはさておき、話を戻すと、ブッシュ政権そのものの評価よりも、ブッシュ政権からオバマ政権への移行を論じた"Leadership and Panics"(2009年1月15日 (参照))の方がまだしも、論説としての視点が定まっている印象です。もっとも、私がオバマ政権の財政政策よりも、金融システムの安定化にはるかに高いプライオリティを置いているからかもしれませんが。乱暴に要約してしまえば、以下のような内容です。

 ブッシュ政権末期にTARPは無原則に活用されてしまった。この傾向は、オバマ政権での"TARP II"で是正されなければ、次から次へと金融以外への産業にも公的資金を投入せざるをえなくなるだろう。民主党が多数の議会ではこのようなバイアスを強くする傾向があり、要注意だ。また、バーナンキも問題の所在を十分に理解しておらず、金融政策が十分に機能していない。オバマは、TARPの原点に戻って、2008年9月17日に本紙でボルカーたちが表明した1990年代のRTCと類似した機能に絞るべくリーダーシップを発揮すべきだ。

 金融システムの安定化が経済政策で最もプライオリティが高く、その目標を実現するためには中央銀行だけではなく、財政的な支援が不可欠だというのは概ね理解できます。素人なので、勘違いをしているのかもしれませんが、FRBの資産が毀損した場合、税で補填しなければならず、この社説が皮肉っているように、"There's more mayhem to come, but don't worry, the Fed can keep printing money and buying private assets."というわけにはゆかないでしょう。ただし、この社説では、FRBが置かれている状況を十分に描いていないようにも思います。現状では、TARPが機能不全に陥り、金融システムの安定化という点で、過度に中央銀行に負担がかかっている状態でしょう。FRBの資産が膨張しているのは、流動性供給という点からではないと思います。少なくとも、副次的に起きれば好ましいでしょうが、それが主たる意図ではないでしょう。次の指摘は、やや的外れな印象もあります。

The problem is that too few people want to use the liquidity the Fed is creating. They don't want to lend money, or take risks, in part because they never know what Mr. Bernanke and the government might do next.

 FRBの対応で問題があるとすれば、買い入れ資産の条件を緩和したものの、金融システムの同様が収まるという決定的なメッセージにはなっていない点でしょう。また、これはバーナンキの方針にまったく問題がないとは思いませんが、政府の財政的な裏づけがない限り、限界があるのもやむをえない部分もあると思います。ただし、FRBが単にバランスシートを膨張させているだけではなく、様々な保証をしているものの、その対応が、この状況下ではやむをえないとは思うのですが、あまりに場当たり的な印象があります。対応策の継ぎ目から次の問題が発生するという状態にあることは、金融システムの危機の深さと同時に、安定化のための方向性が未だに定まっていないことを示していると思います。私はバーナンキの元の発言を原文で読んだことがないので、ためらいがありますが、「ケチャップ」を買ったところで、証券化商品のみならず、通常の金融取引も安定化するとは思えないです。

 この状況下で、現時点でオバマ政権が実施しようとしている財政政策は痛み止め以上の効果をもたないでしょう。また、「鎮痛剤」の対価は将来、増税で賄うとなると、あまりにも高くつく可能性もあります。「グリーン・ニューディール」というのは聞こえがよいのですが、ブッシュ政権が示したように、代替エネルギーの開発に政府が直接、投資するのは、経済的な意味だけではなく環境という視点でも、市場における試行錯誤をへないがゆえに、効率的な技術が選択されないリスクが高く、疑問が多いです。短期における雇用創出を長期での効率的な投資と合致させるというのは、一見、筋がよさそうに見えますが、両者は多くの場合、トレードオフの関係にあります。不況下の財政政策には懐疑的ですが、今回の場合、まず、短期で発生する失業への対応(失業給付や職業再訓練等)など所得再分配に力点を置いた上で、保護の期間を短くするために、労働市場が機能するよう、中期的な対策を打ってゆく必要があるでしょう。モノやカネと異なって、ヒトの部門間の移動は、短期間で実現することは困難だと思います。

 ただし、以前はオバマの財政政策に批判的でしたが、やはり痛み止めがなければ、経済的な問題というよりも、社会的な不安定が生じるでしょう。もちろん、安達正興さんが指摘されているアイスランドの問題やそれ以外の旧東欧諸国、新しい独立国などとは比較にならないでしょうが、雇用問題は日々の生活に直結するだけに、政府が最終的にコミットせざるをえないのでしょう。問題は、痛み止めを効果的に行いながら、金融システムを安定化させることです。ここが不安定な状態が続けば、金融市場の動揺が企業や個人の状態を悪化させ、再び金融市場が不安定化してしまいます。素人目には現時点でも決済の部分での問題が大きいと思いますが、決済システムが不安定では信用創造など期待する方がどうかしているとさえ思います。ここで厄介な問題は、FRBが『本石町日記』さんの表現を拝借いたしますと、「質的緩和」にもかかわらず、決済システムが安定化したとはいえない状態だという点でしょうか。現状を見ていると、公的部門が市場を補完するだけでは安定化は難しいと思うのですが、代替しても安定化しないというのは悩ましいです。もちろん、効果が明確に出るまでタイムラグがあるのかもしれませんが、現状ではその場しのぎをなんとかやり繰りしているように、素人目には映ります。

 あえて乱暴なことを言えば、オバマ政権が「グリーン・ニューディール」で実体経済面での希望を見せながら、証券化商品を中心に金融取引を保護するための財政的な裏づけが必要だと思います。ブッシュ政権の失敗は、包括的な金融再生を目指しながら、市場の変化によって個別金融機関の救済が相次いだことでした。個々の事例はやむをえない部分が大きいのは否定しませんが、金融取引をいったん保護した上で、市場に代わって証券化商品を清算し、元になるローンや債券などを市場取引に任せる必要があるのでしょう。個々の金融機関の救済ではなく、金融市場を機能させるために、財政・金融が一体となって当面、市場を代替するしかないのではと思います。ブレがあったものの、リーマン破綻後は大筋としてそのような方向であったと思います。現状では、Hart and Zingalesのアイディアをメインに活用するのは難しいのでしょう。ただし、市場を代替するだけでは緊急避難にすぎず、補完するシステムづくりは金融市場が機能するために不可欠だとも感じます。

 いつも通り、まとまりのない「寝言」ですが、現状では私自身、明確な"principle"にもとづく解決策は見えておりません。RTCに戻れというWall Street Journalの主張に納得する部分も少なくありませんが、S&Lの危機とは単にアメリカ国内の規模だけでなく、国際金融に与える影響も大きく、適切なソリューションであるのかは、判断できません。国際的な通貨の混乱、あるいは価格体系の混乱は、もはや単に交易条件の不安定さを増大させるだけでなく、金融市場への影響の方が大きく、金融市場の混乱が各国の実体経済へ以前よりもはるかに直接的に影響をおよぼすように思います。日英米の通貨統合というのは、悪い冗談以外の何者でもありませんが、政策協調が比較的、容易な当局どうしが国際通貨体制の安定を図る基礎となるのではと感じます。

 問題は、そのような構想力をもったリーダーシップでしょう。もちろん、私の「寝言」ですから、現実にはそのような構想は全く的外れでしょうが。ただ、いかなる政策を実現するにしても、今日の経済的混乱は政治的リーダーシップによって補完される必要があります。オバマ大統領は、未知数の部分が大きいですが、ある程度は期待できるでしょう。頭が痛いのは、どっかの島国の……(以下略)。
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