2009年03月09日

英国が最後の輝きを失うとき

 うーむ。「寝言」をメモ帳に記していたのですが、IE7をいじったら、突然、再起動。嫌になります。もちろん、データをセーブしていなかった私が悪いのですが。どうも、IE7になってからこの種のことが多いのですが、それなりに長くなったのでちょっとショックです。ブログの管理画面でコピーしてリンクを貼ろうとしたら、まさかのフリーズ。そして、再起動。一応、再現してみますが、最初よりもやる気が失せています。それにしても、VISTAのあまりのひどさにXPもSP3以降、わざとマイクロソフトが乗換えを促すように不安定になりやすくしているのではという「陰謀論」に染まりつつあります。

 先週、毎月一回の検診を終えました。昨年の11月から前回の検査(今年の2月)までDダイマーの値が安定しているとのことでした。コレステロールの値が高いので、毎日クレストール錠(5mg)を服用することになりました。どうも、血栓といい、コレステロールといい、食事よりも体質の可能性があるようで、食事はふだん通りで薬を服用して様子を見たいとのことでした。最初に血栓性静脈炎を罹患したときにはワーファリンの効果が阻害されるとのことで、納豆やクロレラ、青汁は控えるように指示を受けました。納豆以外はもともと食べないのであまり影響がなかったと思います。ちなみに、緑黄色野菜も過度に摂取しないように言われたのですが、「過度に」の意味がわからず、尋ねたところ、ピーマンを一日に10個も食べるとかそういうことはやめてほしいとのことでしたので、普通にしていればいいんだなと理解しました。一応これでも病人なのですが、薬は毎日、欠かさず飲まないとまずいので、気を遣うといえば、それぐらいでしょうか。

 もともと日本の新聞やテレビを読んだり見たりしない方ですが、新聞は家に届くので、一面を見るたびに、契約を打ち切りたいなという気分ですが、Wall Street Journalが3月5日に配信したのAlistair Macdonald, "In U.K., Slump Poses Challenge to Support for an Open Economy"(参照)は興味深く読みました。GrimsbyとImminghamというイングランド北東部の港町の現状とイギリス経済の全体像を重ね合わせてゆくという地味な記事です。「イギリスの没落」を論じている記事はいくらでもありますが、観察に徹した、決して読みやすい記事ではありませんでしたが、印象に残りました。

 GrimsbyandとImminghamは、1990年代以降、貿易と資本自由化の進展で外資系の投資が盛んになり、外国人労働者を数多く受け入れました。1995年から2007年の期間でこの二つの港はトン数ベースで52%も物資の出入りが増加しました。現在ではイタリア系移民が締め出される事態になっており、国際的な貿易の縮小がイギリスの地方都市を襲っている現状を冒頭と後半で点描ですが、描いています。話が脱線しますが、イギリスに留学したある官庁の人が「イギリスは階級社会だ」と言っていましたが、私の印象では民族格差社会という感じです。率直に言えば、オバマ大統領を生み出した国とは対照的に、民間企業や官公庁、アカデミズムなどでそれなりの地位の方はほとんど白人でした。極論ですが、安いスーパーでレジを担当しているのはアフリカ系と思しき移民がほとんどで、白人の姿は稀でした。日本でも外国人労働者の問題が既に顕在化していますが、アメリカのように融合してゆくのではなく、イギリスのように分離した状態で棲み分けが進んでゆくのかもしれません。

 グローバル化は冷戦の終わりとともに始まったわけではありませんが(幕末開港期から維新期はまさにグローバル化そのものではないかと思うのですが)、単に市場経済が規模という点で拡大しただけではなく、ある種のアウタルキーを築こうとした試みが破綻した結果として、国際的にヒト・モノ・カネの移動がさらに自由になったことは事実でしょう。英米の「新自由主義」は、なにかイデオロギーから世界を変えるというよりも、1970年代に経験した国際通貨体制の動揺から生じた危機で最も苦しんだ国々が真っ先に改革を必要としたという平板な見方をしております。1990年代後半から2000年代の英米の繁栄はそのような危機の克服が漸く果実として実感できる状態になったということなのでしょう。今回の金融危機は、再び、英米、とりわけイギリスを苦境に立たせました。RBSに続いてLloydsグループも実質的に国有化されるという金融面での危機だけでなく、生産と交易の急激な減少による雇用の喪失は、単に経済の問題だけではなく、イギリス社会の複雑さを考えると、社会統合という面でイギリスを長期的に苦しめる可能性があります。

  On Wednesday U.K. Prime Minister Gordon Brown addressed the U.S. Congress, striking an antiprotectionist note. But with the U.K. in a deepening recession, the British appear to be undergoing a mood swing when it comes to globalization. The small band of Italians became the focus of wildcat strikes last month by an estimated 2,000 workers at power plants and refineries across the U.K. Their message: British jobs for British workers.

 "British jobs for British workers."という場合の"British"とは誰を指すのか。イギリス人といっても、私の印象では自明ではないと感じます。民族差別というよりも、階層が民族で分断されている社会で「イギリス人」という名詞はかならずしも単一性を保障されているわけではないのでしょう。ただ、漠然とグローバル化への反動として国境が強く意識される時代に、一時的な現象で終わる可能性も決して無視できませんが、入りつつあるような印象をもちます。

  Any protectionist campaign here -- such as a "Buy British" effort -- would face another problem: There isn't as much left to protect in a country where manufacturing accounts for 14.3% of the economy, compared with 21.6% in 1995. There are, for instance, few British makers of toys or consumer electronics, and no significant British-owned car makers left.
  In Germany, Europe's largest economy, manufacturing accounts for almost 24% of output. In the U.S., it accounts for even less than in the U.K., at 11.7%.


 以前、こちらの「寝言」で"Buy American"による雇用創出は効果が薄いという指摘をみましたが、事態はイギリスでも同様なのかもしれません。ちなみに、日本の場合、製造業の付加価値がGDPに占める割合は2007年(暦年)で約23.2%でドイツとほぼ同じ水準です。かつて「世界の工場」と呼ばれたイギリスの製造業はここまで縮小したのかと率直に驚きます。経験則にすぎませんが、ペティ=クラークの法則の最先端をゆく英米は、今回の金融危機で最も苦しむことになるのかもしれません。保護主義といっても、既に「誰を(なにを)、誰から(なにから)守るのか」ということがはっきりしない状態です。第2次世界大戦前の時期には、この二つの自由主義のチャンピオンの足元がふらついてもろくも自由貿易は崩れました。今回は、そのような引き金をひくことになるのでしょうか。

 イギリスは、ユーロに参加していないものの、EU加盟国であり、記事のグラフが示すように貿易がGDPに占める割合も、対内直接投資が占める割合も日米と比較して高い状態です。第2次世界大戦後、冷戦という重石を除いて考えても、英仏はまず植民地の処理に苦慮しました。西側陣営の経済復興は目覚しいものがありましたが、相対的に植民地が少なかったドイツ、戦勝国が処理してくれた日本は英仏と比較して、復興というよりも勃興しました。また、ECからEUへと発展してゆくプロセスでは域外への対抗という側面も無視はできないのでしょうが、域内での相互依存ははるかに深化してゆきました。イギリスが大陸とは異なる経済政策をとっていたというのは否定できませんが、イギリス経済はむしろ世界大戦の前よりもはるかに大陸との相互依存を強めていったことは否定できないでしょう。ユーロスターの開通は象徴でしかないのかもしれませんが、イギリスはもはやかつての島国ではありえないことを象徴しているのでしょう。開通直前までイギリスでは感情的な抵抗も強かったようですが、やはり実際に運行が開始されれば、島国という意識も変わってきます。

 また、EUは域内での相互依存を強めたものの、単独では域内の民族紛争を解決する能力をもたないことを露呈しました。さらに、旧植民地であるアフリカや中近東での影響力は地に落ちているといってよいでしょう。軍事、経済のいずれにおいても、イギリスや大陸諸国は国際的なプレイヤーとして行動できないという戦後の力関係を反映しているのでしょう。イギリスの影響力は、むしろ域内で強力であり、欧州委員会の競争政策へかなりの部分が反映されています。他方、域内ですら民族の問題は解決しておらず、今後、経済危機がさらに進行すれば、社会的不安の源となるでしょう。

 1980年代の英米における、いわゆる「新自由主義」や「新保守主義」はあまりにイデオロギーとして理解されがちな印象があります。1970年代の国際通貨体制の危機は米ドルとポンドが中心であり、最も深刻な危機に見舞われた両国が試行錯誤の末、たどり着いたのが資本移動の自由への対応だったという側面が強いと思います。民営化や規制緩和はその一側面にすぎず、根底にあるのは10年以上続いた通貨の問題への対応が1980年代の改革(実際には試行錯誤の時期だったと思いますが)へと進んでいったと思います。その成果がようやく1990年代後半から2000年代にかけて果実として実感できる状態になりましたが、金融市場の自壊によって再び、危機に直面するとともに、果実を味わった時期があまりに短期間であったために、危機を克服したというのは本当だったのだろうかという疑問も生じてくるのかもしれません。1980年代にイギリスに長期留学した方によると、サッチャー政権の下でも、民間部門の硬直化はひどく、平日の夜や日曜には開いている店を探すのが本当に難しく、規制緩和に慎重な方でもあれでは勤労意欲を回復する改革は不可避だったと漏らしておりました。

 元の記事から話がそれましたが、英米で保護主義的な傾向が強まったとしても、象徴的な意味しかもたないのかもしれません。とりわけ、イギリスの場合、国際経済への実質的な影響はほとんど無視できるでしょう。自由主義のリーダーであったイギリスが最後の輝きを失い、西洋文明のルーツが一つ過去形になるという挿話になるのかもしれません。


 なんだかお笑い芸人が今のギャグが聞こえなかったから、もう一度言ってと言われたらこんな感じかなと。なんとなく筋そのものは頭に残っていましたが、もともととりとめがないので、話がかわってしまっていますね。

 それにしても、最近は一面を見ると萎えますね。もう契約自体を打ち切ろうかと。西松建設の問題ですが、海外でも裏金を使っていたという話はどこかにいって、党争ばかり。まあ、財務・金融担当大臣がボロボロになろうが、次期政権の可能性も今でも無視できない野党代表があの体たらくでも経済が滅茶苦茶にならないのですから、この国の民間部門は、以前ほどの成果がでないとはいえ、間違いなく世界でも優秀なのではないかと実感します。平成19年度国民経済計算確報(参照)から経済活動別国内総生産(実質暦年 連鎖方式)のデータを見ると、興味深いです。

 先にも見たように、2007年の製造業の付加価値はGDPの約23.2%ですが、鉱業・製造業・建設業という日本独特の第2次産業の分類で見ると、約28.9%です。製造業だけで見ると、1996年にはGDPの約22.2%ですから、他の産業の割合が低下したことになります。落ち込みが激しいのは建設業であり、1996年には付加価値で41兆3,575億円(約8.4%)だったのが、2007年には31兆3,930億円(約5.6%)にまで減少しています。

 この国の場合、農林水産業や鉱業など衰退産業の構造調整にとことん時間をかける傾向が強く、おそらく建設業もそのような状態になってゆくのでしょう。もちろん、衰退産業といっても、その産業で事業を営んでいるすべての主体がダメだというわけではないのですが、需要が継続的に縮小している部門から他の部門へとヒト・モノ・カネが移動するのは、とりわけヒトの面で難しく、「構造調整」の下で新たな利権も生まれやすいでしょう。今、問題になっているのは、ちょうど過渡期の話であり、今後、よほど注意深く建設業の問題を取り扱わないと、公的部門が救済という名の下に無理やり需要をつくろうとするインセンティブをもつでしょう。この種の政策は、単に非効率を招くだけではなく、所得再分配の側面もあり、現在、顕在化しつつある保護主義とは異なった、国内における競争的な部門の効率をムダにしかねない危険があります。

 まあ、それにしても、これだけ国際経済が荒れているのに、政治が機能麻痺でも餓死者がでないというのは幸せな社会だなあと。結果的に、製造業も長期では衰退してゆくのかもしれませんが、「脳死」のおかげで他国からバッシングを受ける可能性はほとんど皆無といってよいのでしょう。周囲では政治の話題をすること自体、場が白ける状態になっていて、どうせ政治への期待値などマイナスなのですからせめて所得税率を引き下げろと冗談で話すと、大笑いになって終わりという状態ですね。
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