2007年01月24日

鳥インフルエンザと「不適切な表示」

 少しだけ全体のレイアウトをいじってみました。感想、あるいはご批判を頂ければ、幸いです。単に文字のサイズをちょっと大きめにしただけなのですが。

 われながら変な趣味ですが、官庁のHPを意味もなく眺めるのが仕事中の隠れた趣味だったりします(間違っても「現実世界」では、「趣味は?」と尋ねられて「首相官邸HPの『官公庁』のリンクを見るのが趣味だ」などと口走ったりすることはないのですが)。もちろん、通常の企業のHPもなんですが。ふと目にとまったのが、農林水産省のこのプレスリリースです。プレスリリースではスーパーその他の小売店舗で「発生場所と離れた場所で生産しているのでご安心してご購入下さい」や「宮崎県清武町からの仕入れは一切ございませんので、ご安心してお求め下さい」などの表示があったようです。ちなみにこのプレスリリースでは「鶏卵、鶏肉を食べることにより、鳥インフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていません」とあります。鳥インフルエンザの問題自体が深刻ではあるのですが、なんでこんな表示を小売店がしてしまうのか、まことにどうでもよいところで考え込んでしまいました。まあ、舞台裏を書くと、私の巡回先では「納豆党」が多数派のようなので、鄙びたブログらしく、他の方が書かないことをボーっと考えていただけですが。

 まず、医学的に「鶏卵、鶏肉を食べることにより、鳥インフルエンザウイルスが人に感染することはない」ということは証明されてはいないけれども、いまのところ例外が見つかっていないというあたりが、小売業者や消費者の不安の原因かもしれません。農林水産省を困らせたいわけではないのですが、「絶対ありえないんですね?」と問い詰められれば、前例はないというしかないでしょう。このあたりは梶井厚志『故事成語でわかる経済学のキーワード』(中央公論新社 2006年)の第13章「杞憂――リスクに備える」が絡んできそうです。

 もっとも、不適切な表示があった小売店舗は全国平均で調査対象数の約4.0%であり、最も調査対象数の多い九州(調査対象数1,193)でも約5.6%(不適切な表示を行った店舗数67)に留まっているということは注意が必要です。このあたりは、むしろ、不適切な表示をしてしまった店舗(失礼ながら、農林水産省のHPでは「不適切店舗数」となっていて店舗自体が「不適切」とも読めるのはちょっとどうかなとドン引きしますが。文脈でわかるだろうといえばそうなんですけどね)の管理者が、現時点での主要な鳥インフルエンザの感染経路を的確に理解していたのかどうかという問題なのかもしれません。ということは、少なくとも鳥インフルエンザに関する限り、「不適切な表示」を行ったかどうかは、その店舗の管理者が鶏卵・鶏肉の基本を理解していない可能性があるということになり、別の意味での「シグナリング」(前掲書 第12章)の問題としても捉えることが可能でしょう(ありゃま、「寝言」じゃなくって「皮肉」になってしまいましたが。「皮肉って分かってる?」)。

 さらに、「へ」のつく理屈(誤解のないように申し上げておきますが、梶井先生の本の「誤用」の一例を書き綴っているのであって、正しく活用すれば、大変、有益でしょうと)をこねると、こんな表示をする店舗はさすがにないと思いますが、「宮崎県○○町から○○km離れた産地です」という旨の表示を行うと、鳥インフルエンザに罹患した鶏卵・鶏肉が混ざっているリスクが高まります。既に同県内の別の地点で鳥インフルエンザに感染した鶏が存在したことが報告されています。現時点で鶏卵・鶏肉を食することでヒトが罹患した事例がないことを知らない消費者からすれば、むしろ、この店の鶏卵・鶏肉は危ないかもしれないという負のシグナルとなる可能性があります。もっとも、前述のことを知らない消費者の場合、「距離が離れているから安全だ」という「誤解」をするタイプと「距離が離れていても不安だ」というタイプに分かれるかもしれません。この場合、「不適切な表示」を行った小売店舗は、このような消費者のタイプを考慮せずに表示を行ったわけでありまして、鳥インフルエンザに関する知識そのものが誤っていたにしても、それを前提に合理的な意思決定を行っていたのかどうか怪しいということになります。すなわち、(表現は悪いのですが)無知の上に無知を重ねていたということです(ま、ぶっちゃっけた話、恥の上塗りですな)。あくまで仮想の話でしかないのですが。

 さて、農林水産省のデータを信頼すると、全国で約95%、九州でも約93%の小売店舗では「不適切な表示」がなかったということになります。まず、そもそも宮崎県産の鶏卵・鶏肉を扱っていない小売店舗の割合がわからないので、微妙な部分はありますが、全体で見れば、比較的、冷静に対応していることが窺えます。また、農林水産省がデータを開示することで二次的な情報の波及(好ましい意味ではありませんが)がかなりの程度、抑えられるでしょう。もちろん、宮崎県の「努力」も大切ですが、「不適切な表示」によって消費者が鳥インフルエンザに罹患した鶏卵・鶏肉を食すという行為によって感染する事例があったかのように誤解が広がらないためには、全国的に情報を提供する能力のある行政主体に依存せざるをえません。それにしても「不適切」というのは便利な言葉だとあらためて感心しました(まあ、常套句ではありますが)。役所のHPは、この種の知恵が詰まっているので、意外と便利だったりします(あくまで「寝言」ですよ、「寝言」)。

 ようやく今日の「寝言」ですが、役所の信頼が低下するというのは、適切な情報が行政から発信されても、信用されないというリスクが生じるという意味で「公共性」を大きく損ないかねないということでしょうか。本当は、東国原英夫宮崎県知事に安藤忠恕前知事を起用して「官製談合お目付け役」(手口を熟知しているわけですから、全部、示していただこうってな感じ)とするという「寝言」を書く予定でしたが、周囲で思いのほか不評だったので宮崎県つながりで鳥インフルエンザの話題となりました(再チャレンジに成功した新知事が前知事に再チャレンジの機会を与えるすばらしい事例だと言ったら、「品格」を疑われてしまいました)。宮崎県の方々に悪いイメージはまったくなく、ただの思い付きですので、ご容赦を。

(追記)下線部を修正いたしました(2007年1月25日)。
posted by Hache at 21:25| Comment(0) | TrackBack(3) | 気分しだいの寝言
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