2009年09月08日

オバマはアフガンに沈む

 「時の最果て」なので本題から離れた話が続きますが、G-20の声明やコミュニケを読みながら(参照)、複雑な心境になりましたが、日本語でロイターだったかな、出口戦略を模索みたいな記事があってびっくり(原文を読んだのですが、そのような記述が見当たらないので、よほど私の読解力が足りないのかと読み直しました)。コミュニケを読むと、金融機関の従業員の報酬の抑制や自己資本規制などが金融規制の中心のようですが、機能する感じがしないです。さらに、財政拡張で政策協調というより政策カルテルというのは限界がどこかでくるのでしょう。おそらく、そのような国際協調、あるいはカルテルとは無関係に無責任に借金を増やしている島国があったような記憶がありましたが、忘れてしまいましたあ。

 それにしても、Obama-sanはカネのかかる政策がお好きなようですなあ。医療保険制度改革がメインになっていますが、「グリーン・ニューディール」に教育制度の改革も加わって、私みたいな外人の目にはアフガニスタンで軍事作戦なんてできるのだろうかと。中東の現状はどこぞの島国の政権交代(それにしても自民党さんも「政治空白をつくらない」が口癖だったと思いますが、ずいぶん変わりはりましたなあ)の混乱も所詮はままごとだと実感させてくれますねえ。まず、New York Timesの"Nuclear Agency Said to Be in ‘Stalemate’ With Iran"という記事でObama-sanの対話路線はイランに核開発の猶予を与えているだけだなあと。もちろん、難しい問題ですから、批判というよりも、民主主義国のリーダーとして普通の対応をしていたら、相手はそうではなく御しやすい相手と見ていたのでしょう。もう既にイランが核武装をした場合の対応策を考えておいた方がよいのかもしれません。パキスタン情勢は適当にチェックしておいた記事を読むと、破綻国家寸前といった状況で、アメリカにどのような選択肢があるのかさえ整理できない状態です。

 とどめは、例によって『世界の論調批評』の「アフガン戦争は選択による戦争」という記事です(参照)。紹介されているRichard N. Haassの"In Afghanistan, the Choice Is Ours"とあわせて読むと(参照)、あまりにも的確な指摘が多く、付け加えることがあまりありませんが、ちょっとだけ「寝言」をつぶやいてみましょう。Haassが「選択の余地がない戦争」("wars of necessity")と条件として挙げているのは、明快です。第1に国益にとって致命的であること、第2に軍事力の行使によってしか国益を守ることができないことの2点だけです。

  Wars of necessity must meet two tests. They involve, first, vital national interests and, second, a lack of viable alternatives to the use of military force to protect those interests. World War II was a war of necessity, as were the Korean War and the Persian Gulf war.


 この点で、Haassも9/11の直後のアフガニスタン戦争は「選択の余地のない戦争」として認めています。批判の対象となっているのは、オバマ政権が実施しようとしているアフガニスタンでの軍事行動です。"however, with a friendly government in Kabul, is our military presence still a necessity?"と述べた上で、オバマの2009年8月17日の演説における"This is not a war of choice. This is a war of necessity."という表現を批判しています。まず、カブールを中心としたアフガニスタン政府の安定化に成功しても、テロ勢力は別のところに居場所を見出すだけであろう。また、テロ勢力を掃討しなくても、アフガニスタン政府の警察と軍を訓練することでもある程度、代替できるだろう。さらに過激な発想をすれば、アフガニスタンから全面撤退した上で米本土防衛を徹底すれば国益を守ることができよう。(「選択の余地のない戦争」というのは私自身、よい訳とは思えないのですが、"wars of choice"との対比で述べられているので「必要な戦争」というのも微妙ですし「必然性のある戦争」というのもミスリードになりそうです。このあたりはHaassの原著を読んでおりませんので理解が浅いと私自身感じていることをお断りします。)

 Haassの批判を読みながら鋭いなあと思ったのは、次の引用部分です。「選択の余地のない戦争」と「選択の余地がある戦争」の区別は一見、抽象的で神学論争のようにも見えますが、オバマ政権のアフガニスタン政策がなぜ泥沼になりかねないのかをよく示していると思います。

  Afghanistan is thus a war of choice — Mr. Obama’s war of choice. In this way, Afghanistan is analogous to Vietnam, Bosnia, Kosovo and today’s Iraq. Wars of choice are not inherently good or bad. It depends on whether military involvement would probably accomplish more than it would cost and whether employing force is more promising than the alternatives.(強調は引用者による)


 「選択の余地がある戦争」はそれ自体、善悪の問題ではないという指摘が肝要でしょう。イラク戦争は大量破壊兵器の問題からイラクの「民主化」という大義名分(私みたいないかれた「外道」(単なるド外道という気もしますが)など所詮、口実であったり言い訳にすぎないとすら思います。ある戦争の本質などそもそも"tangible"なものかどうか疑問がありますが、イラク戦争の本質の、欠かせない側面はイラクという中東の要衝に米軍が存在することでした。中東というアメリカから見て最もコントロールが難しい地域の要衝を米軍が実質的に支配することで当該地域における紛争への抑止につながるものでした。したがって、イラク戦争がアメリカの自衛の範囲を超えるという批判はそれ自体として間違っているとは思いませんが、あまり意味がないと思います。中東に秩序を築くための代替的な方策がない限りにおいてですが。

 公平を期せば、オバマはイラク戦争が悪であり、アフガニスタンにおける軍事行動が善であるというナイーブな発想をしているわけではありません。ただし、アフガニスタンにおける軍事行動を正当化するレトリックには「テロとの戦い」への価値判断が暗黙の前提にあり、Haassが指摘するように軍事力の行使以外の代替案が検討されておらず、下品な表現をすれば、軍事力の行使の費用便益分析が欠如していることに問題点がつきるのでしょう。

 しかし、批判ばかりでは公正さに欠くでしょう。オバマの言い分も検討の余地があるのかもしれません。既に長くなりましたので、次回はこの点を考えてみます(いつになるのかは本人も知りませんが(無責任))。

【追記】

 国内情勢に関する「寝言」から切り離しました。それに伴い、部分的に下線で示した個所を加筆・修正を致しました(2009年9月8日)。
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