2009年09月18日

イラクよりも「出口」が見えないアフガニスタン(続き)

 ブログの管理画面で直接、入力していたら、別のタブを閉じるつもりが間違えておりました。ほぼ、完成した状態だったので、「寝言」とはいえ、忌々しく、放置して寝てしまいました。仕事でも、「寝言」でも同じことを2度も書くのは苦痛ですが、淡々と話を進めてゆきます。操作ミスの元ですし、面倒なので、以下、元記事に直接リンクします。

 米紙の流れを見ていると、9月11日直後はアフガニスタンでの軍事行動を支持する記事が多いのですが、日が経つにつれて、懐疑的な論評や邦字紙ではあまり報道されない悲惨な現状の報告が増えてゆきます。今回、とり上げる中では最も新しいもので、New York Timesが9月15日に配信した"Obama Rejects Afghanistan-Vietnam Comparison"ではオバマがリンドン・ジョンソンになるのではという質問にオバマが答えています(参照)。まあ、この類の質問にはアフガニスタンとベトナムは異なるとしか答えようがないのでしょうが、それに続けてオバマが加えた言葉ががっくりきます。

  But, he added, “The dangers of overreach and not having clear goals and not having strong support from the American people, those are all issues that I think about all the time.”


 いやあ、(1)やりすぎる危険、(2)明確な目標がないこと、(3)アメリカ人の強い支持がないことを他人事のように挙げるとは……。なにをやりたいのかははっきりしているけれど、どうすればよいのかはまるでわからないと率直に言われたような気分で、正直なところ、沈みこみました。この状態はかなり厳しいでしょう。問題点なら概ね大統領が理解していることは伝わるのですが、私でもすぐに列挙できそうな点ばかりで、なおかつあなたが最高司令官ではないですかと言いたくなります。具体的な話がつまる前にこのような発言が出ること自体がちょっと信じがたいです。

 Washington Postは9月14日に"The 'Forgotten War'"という社説を配信しました。イラクの選挙をとりあげている以外は、昨年にイラクから全面撤退しアフガニスタンへ増派するという方針が表明されて以来、繰り返し出てきている懸念ですが、イラクとアフガニスタンに全てのエネルギーを集中しても、遺憾ながら両方とも思い通りにはならないだろうと。いくら経済的に裕福で軍事力があっても、力の使い方を知らない国は軽侮の対象になります。新しいアフガニスタン戦争が失敗に帰せば、テロ以来の軍事行動はすべて無に帰すでしょう。ひどい話ですが、アフマディネジャドあたりは笑いを噛み殺しながらオバマは御しやすいと見ているのではないかと。核を開発してイスラエルを睨みながら、イラクへ浸透するのも容易です。パキスタンは破綻国家になって核の流出が生じるリスクが高いでしょう。アメリカの権威が落ちたときに、インドは今よりもはるかに機会主義的に振舞うでしょう。元々、アメリカの影響力が及びにくい中東・南アジアといった地域が元に戻るだけだとも捉えられないこともないのでしょうが、それに留まれば、まだマシでしょう。


 さて、アフガニスタン情勢に戻ります。Washington Postが9月14日にRajiv Chandrasekaranの"In Kandahar, a Taliban on the Rise"というレポートを配信しました(参照)。選挙や自爆テロなどカブール中心の記事が多い中でカンダハールという要衝の地に関するレポートなので、ひときわ目立ちました。ただし、時折、激しい表現もあり、冷静な観察かどうかは留保しておきたい部分もあります。

 まず、このレポートでは国連の開発計画に従事していたNisar Ahmadの父親へ脅迫の手紙が送られてきたところから描写が始まります。次の記述が象徴的です。

This is the last warning. Keep your son away from this work. . . .

We know your son is working for infidels. If something happens to him, do not complain.

  Two hours later, after he and his father discussed their options and concluded that they had no faith in the local police to protect them, Ahmad called the United Nations and resigned.


 地元の警察がここまで信用されていないのかと嘆息する事態です。国連が現地人を登用しても、この状態では脅迫を受けてあっさり職を辞するしかないのでしょう。カンダハールでは政府が非効率で警察は機能麻痺の状態にあり、失業率は"rampant"(計算できないがとにかく高いというところでしょうか)で、行政サービスは提供されていない。これだけで頭痛のする問題です。

 アメリカもNATOも問題には気が付いているようです。カンダハールを失えば、危険だと。ただ、兵力が足りない。現在、MacChrystalがアフガンでの軍事行動を再検討している(あるいは結果が出ている頃でしょうか)はずですが、カンダハールに力点をおくのかどうか。あるいはそれは実現可能なのかどうか。

  But it is also unique. It is bigger and more complicated than any other place in southern Afghanistan -- and there is a growing belief among military commanders that it is more important to the overall counterinsurgency campaign than any other part of the country.

  "Kandahar means Afghanistan," said the governor, Tooryalai Wesa. "The history of Afghanistan, the politics of Afghanistan, was always determined from Kandahar, and once again, it will be determined from Kandahar."


 次のセクションはほとんど辛辣といってよいほど言葉こそ穏やかですが、シビアな描写です。数年にわたってNATOは腐敗した無能な地方警察に自治体の治安を任せてきたが、現在ではもはや無意味だとNATOの幹部は気がついている。これは次のセクションにある記述ですが、カンダハール州の安全保障はカナダに委任されていました。カナダの兵力は2,500にすぎず、この過去3年間、タリバンの浸透が進むにつれて兵力不足を実感するようになったと指摘しています。話を戻すと、次の記述は、不謹慎ですが、テロリストも進化するものだと感じます。

  Residents say the level of Taliban activity in Kandahar can be deceiving to outsiders because the fighters' tactics are different here. Roadside bombs and suicide attacks are not the most commonly used weapons, largely because of the relative lack of foreign troops. Instead, it is paper and ink -- and the assassin's bullet when the recipient of a warning letter does not comply.


 もはや、カンダハールでは路上テロや自爆テロを行う必要もない。インクと紙、そして暗殺者の弾丸で十分だというわけでして、「絶望のカンダハール」といった風情でしょうか。レポートの巧みな筆致に乗せられている気もしますが、とどめを刺してくれるのが、次の描写です。

  It is the corruption of the police -- and that alleged of senior government officials -- that many Kandaharis say has been the principal reason for the Taliban's resurgence. Just as they did in the 1990s, residents say the Taliban is appealing not to a popular desire for religious fanaticism but to a demand for good governance. Part of the problem is that the police are ill-trained and ill-paid, driving them to graft. Another contributor: local leaders who have created a culture of impunity.

Chief among them, several Afghans contend, is the chairman of the Kandahar province council, Ahmed Wali Karzai, the president's younger brother. He is alleged to have links to the opium trade -- a charge he has denied -- and is accused of other misdeeds, including engaging in ballot-box fraud in support of his brother in the Aug. 20 presidential election.


 イラクでも現地政府の腐敗などはありましたが、程度の差とは割り切れないぐらいアフガニスタンでは無残な状態のようです。カンダハールでは、タリバンはもはや宗教的熱狂に訴える必要すらなく、まともな統治が行われていないことから生じる住民の「需要」に応えればよい。脅迫も行われていますから、微妙な部分がありますが、無能な警察よりはタリバンの方がはるかにマシというところなのでしょうか。ついで、カルザイの弟であるAhmed Wali Karzaiがカンダハールの州知事であり、アヘンの取引に関与してくれるは(本人は否定)、投票箱のインチキに手を染めてくれるはで、「ダメだこりゃ」という感じです。それにしても、カンダハール限定とはいえ、タリバンが宗教的な熱狂から自由になりつつあるというのはおそるべき事態でしょう。イスラム過激派がなぜ失敗するかといえば、無暗に殺生をするからだと非常に平坦な見方をしておりますが、宗教的な熱狂というのはそういう平坦な感覚を失わせてしまう。自分たちが優位にあるという感覚が抑制を覚えさせたのか、それとも「テロとの戦い」を遂行しようというオバマに対抗するには自重が妙手だと気がついたのか、いずれにしても、あまりに危険な兆候だと思います。

 カナダ軍も多くの失敗を犯したようです。雇用創出に力を入れたものの、カルザイ弟が"nepotism"の道具として利用したために、裏目に出てしまったようです。このあたりはアフガニスタンの部族が絡むので、私の読解力では読み切れない部分がありますが、カナダ側にも言い分があるようですが、ちょっと文脈がわからないです。部族間対立の解決にはNATOが機能していないようですが、これは米軍の増派でも難しいのではと思います。どこぞの島国では「ガソリンスタンドは嫌だから民生支援に切り替えるわ」とのどかなことをおっしゃっているようですが、実態は地獄でしょう。まあ、どこぞの島国など「時の最果て」ですら論じる気力が起きません。

 それにしても、カンダハールの状況が最悪であっても、カナダを責めるのは酷という気もします。表現は悪いですが、NATO軍といえば聞こえはよいのですが、1万人近く出兵したイギリスは別格として、イギリスより人口が多いドイツでもイギリスの半分以下、その他の国々は推して知るべしというところでしょうか。要は、弱小勢力の寄り合い所帯です。その状況下で、カナダが2,500人もの派兵を行っているのは称賛に値するでしょう。もはや問題は兵力の規模というよりも、カルザイ政権のどうしようもない統治能力のなさと、民心が離れる最もわかりやすい腐敗なのですから。正直なところ、米軍を増派しても、カルザイ政権の延命を作戦期間中はできるのがやっとではとすら感じます。

 「自国の国益の伸長が国際公共財の創出につながるリベラルな海洋国家」というのは教科書的なしおらしい表現すが(2回もやられないと気がつかない国にはあまり感心しませんが)、実態は、英米の覇権にフリーライドする国が絶えないのが実態でしょう。どこぞの島国などはその筆頭格でしょう。アメリカが内向きになったときに、どのような運命が待っているかについては少しは想像力をはたらかした方がよいと思います。
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