2009年11月24日

経済政策への期待値を下げる デフレーションは期待値低下の象徴?

 なんだか変な気象に耐えかねて、風邪をひいてしまったようです。だるくてなにもやる気が起きないのですが、仕事は減らないという最悪の状況です。連休なんてどこの国の話よと思いますが、電車で移動していると、確かに平日と雰囲気が異なるので、世間は連休なんだなあと思いました。米紙を読んでいると、医療保険制度改革がいよいよ山場を迎えてきたなあという感じで、アフガニスタン増派とあわせてアメリカの政局の方に目がいってしまいます。日本語の記事で読んで印象に残ったのが、中西寛先生の「『国策』の重みへの感受性に疑問」(参照)ぐらいでしょうか。論旨はほぼ共感しますが、「小さな政府」と「大きな政府」という問題の立て方は、若干、難しくなっているように思います。規模の問題というよりも、郵政にせよ、日本航空にせよ、効率、あるいは機能する政府というのが肝心だという主張ですから、このあたりをどう整理するのだろうかという気がします。

 ただ、経済の話は難しいなと。動学的最適契約理論を導入して、誘因両立性や債務不履行の可能性などからマイルドなインフレ環境が望ましいというのはなるほどです。その点で誘因両立性と債務履行制約が事実上、無視できる公的信用が私的信用を補完するというあたりもわかりやすい。財政政策の効果は極めて限定的で、金融政策の役割が大きいというのも納得するのですが、さてどのようにデフレから脱却する、あるいはデフレ環境を和らげるのかとなると、まあ難しい。

 白塚重典「わが国の量的緩和政策の経験:中央銀行のバランスシートの規模と構成を巡る再検証」(参照)を読んでおりますと、。「翁・白塚[2003]は、時間軸効果と呼ばれるイールドカーブの変化に観察された政策コミットメントの市場の期待形成への影響を実証的に検証した。その結果からは、時間軸効果は、短期金利の将来経路に関する市場の期待形成を安定化させるうえで極めて有効であり、より期間の長い金利を低下させ、イールドカーブを平坦化させたことが示されている。しかしながら、金融政策のみでは低成長下でのデフレを解消することができず、時間軸効果は、金融市場におけるデフレ期待を反転させるには至らなかったと指摘している」というのが実情ではないかと。公的信用が私的信用を補完しても、金融システムの安定がやっとであって、インフレ期待が生じる実際的な手段がない状態では、非伝統的金融政策が誘因両立性と債務履行制約のトレードオフを少しでも緩和するのがやっとなんだろうなあというのが頭の悪い人の感想です。

 問題はむしろ、白塚さんが指摘しているように、「これまで検討してきたとおり、量的緩和政策は、わが国経済を下支えするうえで、特に、金融システムの安定化を通じて、一定の役割を果たしてきた。しかしながら、そうした緩和効果は、金融システムの外へは及ばず、金融部門と非金融部門をつなぐ波及経路が機能していなかったことが示唆される。このため、翁・白塚 [2003]が指摘するように、量的緩和政策は、デフレが持続するとの市場の期待を反転させるには至らなかった」という点なのでしょう。公的信用が私的信用を補完しても、金融システムの安定には影響するけれども、実物経済にはまったく影響がないわけではないのでしょうが、限定的だという点です。結局のところ、中央銀行が社債などをバランスシートに加えても、部分的に私的信用を補完するのがやっとで代替することはできない。そして、公的信用を供与しても私的信用を直接コントロールすることはできない以上、マイルドなデフレーションが進む中では、私的信用の目詰まりを丁寧に取り除いてゆくしかないのでしょう。ガイトナー米財務長官が金融機関にリスクをとってくれとお願いしても、なかなかそうは問屋が卸さず、現実にはつるべ落としの状態にならないように、なんとか"muddle through"を図るしかないのが現状だと思います。

 現実政治はといえば、「デフレ宣言」はババ抜きの始まりでしょうと。現実問題として、自民党中心の政権であろうが、民主党中心の政権であろうが、この経済環境を凌ぐのがやっとでしょう。さらに景気後退が生じるリスクも高い。というわけで、財政政策にせよ金融政策にせよこれというほどの有効な手段がないので、政治サイドとしては「失政」という批判を浴びるのを避けるために、日銀に押し付けちゃえというのが本当のところじゃないかな。現政権の目的関数は政権を維持すること自体と考えてまず間違いがないでしょうから、やれ官僚が悪い、日銀が悪いと責任転嫁を繰り返して、ツケは国民にまわるのでしょう。「事業仕分け」なるものが報道では受けているようですが、まあ、あんなものは人気取りのためのセレモニーみたいなもので、論評にすら値しない。あれを小泉政権と同じだと3K『産経』が書いていて、中西先生の「正論」だけ載せておけばよいのにと思いましたね(民主党政権が小泉政権以上の構造改革路線だというところまでくると、もうリアルで寝言を言われているようで読まされるほうが眠たくなりますな)。それにしても、無能な与党と低能な野党しかないのだから、政党交付金は事業仕分けの対象にならないのかしらという「寝言」が浮かびますが。


 不覚にも鳩山首相の発言に「それで需給ギャップが埋まるとお思いで?」というツッコミに朝から爆笑しました。エコカー、エコポイントは麻生政権の政策ですし、住宅リフォームは太陽パネルの装備を理由とした詐欺が増えそうで(以下略)。政権交代したら、低能から無能になったというだけで、このまま「ハネムーン」から「フルムーン」まで進みそうでしたら、海外で生活水準が高いところに移住したいものだなあと。結局、言語の問題がつらいので、本気で移住するなら10年以上前から考えておかないと無理ですが。事業仕分けの感想は財務省というのは短期ではとても怜悧だが長期ではとてつもなくバカだということでしょうか。こんなおままごとの後で、どの面下げて消費税率引き上げをお願いするのやら。その頃には鳩山氏が顔じゃないって算段でしょうが、こんなバカなことが年中行事になった日には国民も財政に関して家計のへそくりを探す程度の金銭感覚が身についてしまうでしょうから、説得できる政治家なんていませんよ。

 それにしても、経済評論家の言っていることが最近はまったく理解ができなくて、経済というのは難しいんだなあと。不況の原因は所得の落ち込みだったり、物価の下落だったり、なんだか現象の話ばかりのような気がしますが、そりゃあ所得が増えたらいいねとか、2%ぐらいインフレになればそれなりにご利益があるでしょうねという感じでしょうか。主要企業の海外売上比率を見ておりますと、短期はともかく長期では生産拠点、さらに法人税率との関係で本社機能も海外に移ってゆくのかも。長期的には需給ギャップは需要がよくて所与のまま、供給が調整されて生活水準が下がるという形で調整されるんじゃないかなと思ったりします。まあ、無能な政権がよけいなことをすると、生活水準の低下がさらに加速しそうで、日本人ってしみじみマ○ヒストが多いんだなあと他人事のように見てしまいます。
posted by Hache at 01:04| Comment(0) | TrackBack(1) | 気分しだいの寝言
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