2010年02月12日

なんだかややこしいユーロ圏

 ふわあ。すっかり気分は年度末です。カネがらみの処理が多くて、正直なところ、自分のカネには無頓着な私にとっては苦痛でしかないです。秘書でもいてくれたらなあなんていう「寝言」で終わらせたいのですが、カネがらみの話も規模が大きくなると、大変ですねえ。"PIIGS"なんていうかわいいもんじゃありませんこと。よほど「Pちゃん」の方がかわいらしいですわ。「シャルロット」なんていうと上品すぎてついてゆけないですけれども。本当は『らんま1/2』でも見ていた方がはるかに精神衛生によさそうですが。

 てなわけで、イランの核濃縮とか物騒な話がてんこもりではありますが、ユーロ圏、あるいはEUが国際政治の主要なプレイヤーとして生き残れるのか、興味津々です。そうじゃなくなることを願っているわけではないのですが、このぐだぐだ感が気になります。FTは2008年夏まで読んでいましたが、秋頃から無視するようになりました。なぜかはよくわからないのですが、あそこを読むと、だいたい見通しを誤るような印象です。同じイギリス圏でも、ロイターやエコノミストは事実の叙述と意見や願望が区別されている印象です。あるいは日本で手に入りやすいことを意識して思惑が入りやすいのでしょうか。ちなみに、"PIIGS"というのは2009年12月10日付のWall Street Journalの"Hedge Funds Target Euro Zone's Weak"という記事で知りました。ユーロ圏が「弱い環」をターゲットにイギリスをはじめとするヘッジファンドのカモにされているわけで、FTはこういう話はあまり書いてくれない印象があります。それにしても、しげしげと記事の中のグラフを見ると、ドイツですら長期金利が3%を超えているというのは驚きです。こうしてみると、日本で財政再建が進まないのもむべなるかなと。バカみたいに借金を増やす麻生政権にうんざりしたら、さらに途方もない大バカ政権ができて萎えるのですが、当座はなんとかなってしまうのがなんとも微妙なところでしょうか。

 それはさておき、素人目にもG7でドイツの財務相でしたか、ユーロのことはユーロ圏で処理すると胸を張っておられたのを見て、本当にできますかという感じでした。Reutersが配信した2010年2月11日付で配信した"EU seals deal to rescue Greece, details still murky"という記事では、メルケル独首相がギリシャがEUの一員であり、推測ですがIMFの手には委ねない趣旨の発言をするとともに、ルールは守ってもらうという発言をしています。記事によると、ギリシャの財政赤字はGDPの12.7%にのぼり、EUの基準の4倍を超えているとのこと。なんだか有害物質扱いのような気もしますが、EUはギリシャの財政赤字にメスを入れずにきたために、なかなか難しい様子です。交渉のアクターは、ファンロンパイEU大統領、バローゾ欧州委員会委員長、サルコジ仏大統領、メルケル独首相、トリシェECB総裁、パパンドレウ・ギリシャ首相と多いですなあ。EUをバカにするわけではないのですが、交渉に関わるアクターが増えるだけで厄介な気もしますが。この記事はギリシャは2010年には530億ユーロ(750億ドル)を新しく借り入れる必要があり、債務全体で2,900億ユーロに上ると指摘しています。この債務額はギリシャのGDPの120%近いとのことですから、どこぞの島国よりは、はるかにスケールが小さい話ではあります。それでも、アテネは財政赤字を(GDP比の数字だと思いますが)4%削減しなければならず、日本国内でもNHKが報じているように社会不安を招いています。緊縮財政というのは民主主義国では政治的コストがやはり高いのでしょう。まあ、しかし、ラトビアだったか、バルト三国に比べれば、はるかに手厚い対応ですな。IMFに売り渡した委譲したのに比べれば、まだマシな方でしょう。旧東欧・ソ連圏はEUに失望して、元の鞘に戻るのでしょうか。

 同じくReutersが配信した"EU leaders hurt confidence with vague Greek pledge"という記事も興味深いです。ギリシャを支援するとなれば、ギリシャ国内だけではなく、サポートする国の内部でも政治的な合意が必要となりますが、大変だなあと。

  EU sources indicated a range of possible steps to aid Greece had been discussed among officials, from loan guarantees extended by rich EU states to having a German state-owned development bank buy Greek government bonds.

  But in the end, no specific action was announced -- which may have been due not only to lack of agreement between EU member states, but also to indecision and disagreements between politicians and ruling parties within states such as Germany.


 経済的に余力のあるEU諸国がギリシャの政府債務に保証をつけることや、ドイツ国有の開発銀行がギリシャ国債を購入することなどが検討されたようです。しかし、具体的な行動は一切、声明として出されませんでした。EU諸国の間で合意がえられなかっただけではなく、たとえばドイツなら連立与党内で合意ができないという事情があると指摘しています。なんとも、いかにもぐだぐだ感があり、いい感じですな。バカにしているわけではなく、どこぞの島国もあまり笑ってられないよなあという感覚でしょうか。まさか、与党議員(笑)に「再編実施のための日米のロードマップ」(参照)を知らずに、普天間飛行場問題を議論しているほどのバカがいるとは知らなかったので、なんちゃって与党というのは大変どすなあという感じでしょうか(閣僚だけかと思いましたが、中堅・若手も絶望的ですな)。

 で、最後はやはり"moral hazard"ですか。インセンティブといえば難しいのですが、要はアメとムチというわけでして、努力したら報酬を与え、サボったら罰を与えるというわけです。これがなかなか口で言うほど簡単ではなく、非対称情報ではなくても、政治が絡むと、誘因両立性を満たすのは難しいのでしょうね。当座、金曜日は口先介入で凌げそうですが、ユーロの地位が大きく揺らいだという意味で象徴的な出来事になりそうです。結局、IMFの専門家も入れる可能性があるようで、残念ながらユーロのことはユーロ圏でというのは難しいのでしょう。

 第1に、先に述べたように、EU、あるいはユーロ圏で守られる国と疎外される国が徐々に明確になってきたということです。疎外された国がロシアとすぐにくっつくわけではないのでしょうが、「時の最果て」らしく「寝言」を書けば、ベルリンの壁崩壊後、新しい「ユーロの壁」ができつつあり、その壁自体が想像以上に脆いということでしょう。

 第2に、これは私の勝手な思い込みでしたが、ユーロがドルを補完する通貨となるのではと思っていましたが、完全に見通しが誤っていたということです。金利だけ見れば、ドイツ国債はアメリカ国債と同等かそれ以上に安全ですが、実質的に"PIIGS"と一体化するとみなされれば、ユーロの価値は不安定でしょう。これでは、アメリカの財政悪化にもかわわらず、ユーロがドルを補完する可能性はほとんどないでしょう。さらに、支援する側の独仏の経済状況も非常に悪いです(参照)。ドイツは輸出が伸びているものの、民間消費や投資の落ち込みをカバーするほどではなく、GDP成長率はマイナス。フランスは個人消費が伸びているようですが、安定成長には程遠い。それにしても、ドイツは想像以上に厳しいです。ユーロ安で輸出が伸びても、波及効果は限定的なのかもしれません。仮に、ギリシャへの支援を決めても、具体策を詰める段階で国内的な説得に苦労するでしょう。

 第3に、単なる感想ですが、民主主義国どうしでさえ、国際協調は容易ではないということです。経済に限らないのでしょうが、拡大期には互恵的な関係が強く出ますが、縮小期ないし停滞期にはプレイヤーの利害対立の側面が強くなります。暇人のたわごとですが、危機の時代には、どの政体も程度の差こそあれ同じでしょうが、民主政は意思決定にかかるコストが大きいという点で、他の政体よりも不利な側面があることにも注意が必要だと思います。


 上で民主主義国では意思決定にかかる費用が大きいと書きましたが、基本的に、リーダーが利益で誘導し理念で説得するプロセスには時間がかかります。なおかつ、リーダーが明確な理念を有していない場合には単に混乱するだけです。どこぞの島国のことを指しているわけではありませんが、どこぞの島国の経験は、「民主主義の失敗」として記録しておくのもよいのかもしれません。あるいは「集団自殺の事例研究」という感覚でしょうか。

 なんとなく、いつも以上に斜に構えたような口調になってしまいますが、民主主義というのはそんなにありがたいのですかねえと思う反面、まあ、これよりマシな政治体制・政治制度がないからなあと嘆息しているからなのですが。ユーロ圏を小馬鹿にするつもりはなく、民主主義国どうしの連合というのは、なかなか利害調整が大変だということを実感するばかりです。

 G7がらみの米紙の報道でも大衆迎合のムードが先進国で高まっていることを懸念するものが目に付きましたが、第2次世界大戦では危機の時代に民主主義国はリーダーシップを発揮しましたが、今回のような明確な敵が定義できない危機の場合、リーダーシップ自体のあり方がなかなか難しいのでしょう。オバマやメルケルを笑うのは簡単ですがね。

鳩? 糞害の処理は何十年もかかりそうでため息が出ますなあ。放射性物質より始末が悪いかも。

(追記)リーダーで読み込んだ中に「国民を守らぬ政府がどこにある?」というタイトルの記事があり、非礼ではありますが、噴いてしまいました。だって日本列島に住んでいる人々がまさにそれを経験しているでしょうに。って釣られたのかな?
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