2010年04月22日

"The Toxic VAT" 付加価値税は「どくいり きけん たべたら しぬで」?

 お金の話はデータが出ている割に適当な話が多いので疲れますなあ。データを無視してでたらめな主張をするのは簡単ですが、読まされる方はうんざりします。ルーピー鳩山の党首討論の答弁なみ。1995年から2008年の期間は、名目成長率が低下していますし、マイナスを記録した年も少なくないのですが、平成20年度国民経済計算確報(参照)をみれば、1995年の名目国内総生産は495兆1,655億円、2008年の名目国内総生産は505兆1,119億円で名目値で成長していないわけではありません。ちなみに2007年の名目国内総生産は515兆5,204億円です。下記に、1995年から2008年の名目成長率を載せておきます。なお、小泉政権の構造改革の是非は別として、2003年度から2007年度、2004年から2007年は名目でも連続してプラス成長です。こんな基礎的なことも知らない人がいるとはびっくりします。景気が回復したのは否定できないので、ルーピー党が格差社会論にのっかったようなもの。まあ、こんなざまだからルーピー政権ができちゃうんでしょうけどね。

 あ、ネタにマジレスしちゃったw

  年 度            暦 年 
1995/4-3. 1.7 1995/1-12. 1.4
1996/4-3. 2.3 1996/1-12. 2
1997/4-3. 0.9 1997/1-12. 2.1
1998/4-3. -2 1998/1-12. -2.1
1999/4-3. -0.8 1999/1-12. -1.4
2000/4-3. 0.9 2000/1-12. 1.1
2001/4-3. -2.1 2001/1-12. -1
2002/4-3. -0.8 2002/1-12. -1.3
2003/4-3. 0.8 2003/1-12. -0.2
2004/4-3. 1 2004/1-12. 1.6
2005/4-3. 0.9 2005/1-12. 0.7
2006/4-3. 1.5 2006/1-12. 1.1
2007/4-3. 0.9 2007/1-12. 1.6
2008/4-3. -4.2 2008/1-12. -2
2009/1-12. -6.1


(出所)内閣府HP
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe094-2/gdemenu_ja.html

 ちなみに、暦年では2009年までです。年度では2008年度まで。2009年の1-3の確報がまだですので。あ、こんな程度の資料をつくるのに12分59秒もかかっちゃったわ(恥)。この程度の作業を4分30秒以内にこなせなければ、紐緒さんにどんな罵倒を浴びせられるかと思うと、胸がときめきますな(謎)。以上。

 世の中にカリカリしすぎて頭がルーピーになりそうなお方は、将棋名人戦の棋譜を見て幸せになる人は少数でしょうから、下の動画でも見てなごんでくだせえ。エンディング字幕の「彼女は、いまだに怪しい研究をしているけれど」というあたりがポイントですね。



 で、本題ですが、Wall Street Journalが2010年4月20日付けで配信した"The Toxic VAT"という記事を読んで、アメリカ人の付加価値税(Value Added Tax: VAT)、あるいは消費税へのアレルギーは強烈だなあと。金融危機の頃には"toxic asset"という表現が米紙ではよく用いられていましたが、これを見ながら、ふと「どくいり きけん たべたら しぬで」という昔話が思い浮かびました。1980年代の消費税導入時の反発とも異なる、アメリカ特有のVATアレルギーは興味深いです。記事ではマケインが音頭をとった付加価値税導入を批判する決議が米上院で85対13の大差で成立したと紹介しています。

 短い記事ですので、ヨーロッパでは付加価値税の税率が20%近くに上っていること、このため"Tax Foundation"は連邦予算を均衡させようとすると、税率が高くなることを警告していること、マケインは「景気が悪いのだから減税すべきだろう?」と主張していることが紹介されています。

 民主党サイドは、オバマ政権の下でCBOの推計では2011年から2020年までの間に財政赤字が累積で9.7兆ドル!(円ではありません)に上ることから、連邦レベルでVATを導入する誘惑に駆られているとやや批判的に描かれています。ラスムセンの調査ではVATへの賛成は22%、反対は60%だとのことです。今やオバマ大統領の経済に関する懐刀となったボルカーたんは「以前ほど、付加価値税は政治的には『毒』ではなくなったかもよ」と述べたそうですが、WSJの記事はラスムセンの調査結果は逆のことを示していると手厳しいです。

 本来は、やはりWSJが2010年4月15日に配信した"Eurpope's VAT Lessons"という記事をメインにするつもりでしたが、ちょっと面倒なので楽な方を簡単にメモしておきました。この記事はざっくりまとめると、下記の通り。

(1)ホワイトハウスは、所得税の最高税率を35%から39.5%へ、配当課税を15%から39.6%へ、キャピタルゲイン課税を15%から20%へ(2013年には23.8%)へ引き上げる提案をしている。しかし、これらの増税ではオバマ政権における追加的な財政支出(景気刺激やヘルスケア改革にともなう支出増)の増加を賄うのには十分ではない。そこでオバマ政権は、VATの導入に注目している。

(2)ヨーロッパでは1960年代から導入が進んだ。当初の税率は決して高くはなかったが、直近では20%前後にまで上昇している。無党派の"Tax Foundation"は均衡財政を実現するためには18%程度にまで税率を引き上げる必要があると推計している。

(3)VAT推進派は、VATの導入で政府借り入れが減少するだろうと主張している。だが、ヨーロッパではこれは真ではない。1980年から2005年の期間でOECDのデータによると、ヨーロッパの債務の対GDP比は50%であったが、アメリカは40%であった。

(4)景気後退と景気刺激によって、アメリカの連邦債務は対GDP比で63%に上り、さらに上昇する。しかし、OECDは30国の最も富裕な諸国の債務について「2011年にはGDP比で100%を超える」と予測している。フランスやドイツ、スペイン、イタリアの債務水準は2008年から2011年の期間でGDP比で30%上昇すると予測されている。ギリシャの付加価値税の税率は21%であるが、政府債務はGDPの113%に達している。

(5)VATが非常に効率的であるということは、支出拡大に熱心な政治家に大量の税収を与えることを意味する。ヨーロッパではVATの導入前の1960年代後半には政府支出はGDPの30.2%程度であった。今日では政府支出は50%以上、増加し、平均でGDPの47.1%程度である。対照的に、アメリカは同じ期間に政府支出は28.3%から35.3%に増加した。

(6)この税収を生み出す能力によってVATはリベラル派(財政拡張派?)の知識人と政治家にとって魅力的なのだ。リベラル派でさえ、所得税率がある水準に達すると、富裕層が行動を変えるか、税の抜け道を探し、税収が増えなくなることを理解している。薄く広く課税するVATのような消費税は政治的痛みが少ない唯一の道である。

(7)ヨーロッパでは、VATの政治的痛みの少なさから政府支出が増加した結果、所得の増加と職の創出が抑制された。1982年から2007年の期間で、アメリカでは4500万もの新しい仕事が生まれたが、ヨーロッパでは1,000万よりも少なかった。アメリカの経済成長はヨーロッパよりも3分の1ほど高かった。

 この記事の"The VAT Experience"ではわがJapanの導入当初3%、直近の税率5%、所得税の最高税率50%という数字があがっているのですが、本文ではガン無視...orz まあ、致し方ないのでしょうね。

 しかし、景気刺激にオバマケアと支出を拡大して財源の話をまとめられないと、これは大変ですな。個人的には、VATは政治的費用が少ないという指摘が意外でした。やはり、政治的リーダーシップの彼我の差が大きいのでしょうか。もっとも、自民党(低能)であろうが、民主党(無能、あるいはルーピー)であろうが、税というものを他人のカネだと思ってバカな使い方ばかりするのを見ると、増税だけは勘弁してほしいですね。まあ、消費税率引上げは、基礎年金の国庫負担分に関してはやむをないという立場ですが、子ども手当てから増税で医療・福祉分野へ重点的に支出して経済成長とか、お花畑の政権では、やはり消費税は"toxic tax"だなあと実感します。

 それにしても財務省におかれましては焼き畑農業焦土作戦はお許しを。麻生政権以降、なんでもありになっちゃって歯止めがかからないのも理解できなくはないのですが、事業仕分けで数兆円単位の歳出削減ができるはずもなく、子ども手当てだけで基礎年金の国庫負担分に近い財源が必要になるわけでして、使ったんだから、お代はあとから皆様からというのはいかがなものかと。まあ、消費税を小さく産んだものの(生まれたときからリクルートとかかわいそうではありましたが)、大きく育てることには失敗したわけでして、アメリカの民主党系コラムニストが日本を事例に挙げたら、笑えるのですが。冷静に考えたら、笑えないですな。しかし、脱税ルーピー鳩山に増税のお願いをさせようというのは想像を絶する光景です。日の本の国にはTea Partyはないから、ええじゃないかになるのかな。ひょっとしたら、お伊勢参りとか旅行が増えて、内需が喚起される?
この記事へのコメント
おっ私のコメントを記事で言及していただくとは光栄ですね。
ところで、確かにウィキの「国内総生産」をみると95〜08にかけて微妙に減ったり、増えたりしているので
「むしろ日本一国が95〜08のあいだ名目成長していない。」
は表現として不十分です。
ところが「世界の名目GDP」をみると
http://www.iti.or.jp/stat/4-001.pdf
世界経済は95〜08にかけて名目GDPが1.89倍になった。また私がコメントで例を挙げたカナダは2.54倍、トルコが4.31倍に。他の先進国、中進国が軒並み成長しているのに日本は「微妙にしか」名目成長していない。

という事で、指摘に応じて「微妙にしか」を付け加えます。
なお、この記事はコメント全体の反論にはなっていませんので、コメント欄の方で反論頂ければ幸いです。
Posted by まぐ at 2010年04月22日 09:14
リンク先のデータはドル建てです。1995年は1ドル80円を切る水準まで円高が進行した時期ですので、ドル建ての日本のGDPが高い水準になるのはパッと見た段階で、年齢にもよりけりかもしれませんが、普通は気がつくと思いますが。基礎的な事実すら確認できないようなので、以後、リプライはないものとご理解ください。
Posted by Hache at 2010年04月22日 11:42
為替の変化により、日本が微妙にしか成長してないように見えたり、先・中進国各国が購買力平価で見れば、実態は日本と変らないと言いくるめるには無理があります。ちなみに現在のレートは90円内外です。
まあ、枝葉に執拗に拘るのも戦術の一つでしょうが、枝葉に拘る寝言というのもすごいですね。

なお、興味が湧きましたので購買力平価(PPP)による各国のGDPの経年変化の資料がないかIMFに聞いています。
勿論、リブライは結構です。
Posted by まぐ at 2010年04月23日 06:54
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