2010年09月17日

米議会の通貨政策における対中強硬への傾斜と国内世論の分裂

 めまいの原因というと、やはり高血圧なんですねと岩本先生の記事を拝読しながら、妙なところで納得してしまいました。困ったことに、10年ぐらい前に回転性のめまいを経験したときには血圧が上が90下が60、加齢で最近は110なんていう値を見るとびっくりします。頸動脈のエコーを検診を定期的に受けていますが、幸い、動脈硬化の兆候は皆無のようです。いつも担当して頂いている看護士さんいわくは、若くても動脈硬化がはっきり確認できることもあるそうで、もう若くはない、しかし、高齢化が進んでいる社会では若造扱いされる私からすると、怖い検査の一つです。動脈硬化の原因は食生活がやはり大きいようなので私などは危ないのではと不安ではありますが、大丈夫ですよ、とてもきれいですと言われてホッとします。他方、体重はまあ、そのおというところでして、「細すぎず、お太りでもないですから」と微妙につくった笑顔で言われると、かえって傷つきますなあ。「デブとかメタボとかでも全然平気ですよ」と返すと、苦笑いして逃げられてしまいました。

 相変わらず、体調が今一つではありますが、ドラめもんさんのところを読みながら、介入のタイミングを読んでいましたという「自己申告」。読んだ覚えがあるのですが、日銀文学よりも高度な文章なので、気がつかなかったです。失礼ながら、それ以上に噴いてしまったのが、官房長官の記者会見は禁止すべしというあたりで、恥ずかしながら、仙谷官房長官が82円が防衛ラインというのを示したというのを知りました。『日経』ではさらっとしか書いてなかったので読み落としておりました。ネットでは「異例」とあって、扱いに困ったんでしょうね。菅首相も代表選の最中に欧米の通貨当局に根回しをしていると漏らしてしまったそうで。まあ、それでも85円台まで押し戻すわけですから、官房長官のオウンゴールの割には現時点ではごく目先にすぎませんが、効果があるのがむしろ驚きでしょうか。官房長官の発言は痛くもなんともないよという感じで介入を行う財務省の中の人、政府のサポート役に徹する日銀の中の人と頭が下がります。

 米紙の報道で目につくのは、やはり元の問題でしょうか。Wall Street Journalが2010年9月16日付で配信したAndrew Batsonの"China's Yuan Gesture Could Backfire"という記事では、中国が米議会の元の切上げ要求に対する宥和的な態度がかえって米議会の反発を招いていると指摘しています。中国政府は米議会の勢いに押される形で元高を容認して、元高が進みました。しかるに、米議会の要求は元の20%の切上げであって、元が通貨バスケットを参照する形に移行してから最高の元高では米議会のみならず、ユーロ圏のかえって反発を招いている状況を描いています。

China's central bank faces a difficult balancing act: On a daily basis, it has to set a number for the exchange rate that not only is appropriate for the domestic economy, but also sends the right signals to global investors in the currency markets and keeps contentious trade politics in the U.S. and Europe under control.


 上記の指摘は平凡ですが、現在の中国の通貨政策が"narrow path"であることを端的に示していると思います。中国は通貨バスケットを採用することで個々の通貨との為替レートを適切に設定しなければならないわけです。その際、一方で国内経済に配慮するとともに、通貨市場における投資家へ正しいシグナルを送ると同時に、アメリカやヨーロッパに対して議論の種になる貿易政策を保たなくてはなりません。固定レートにこだわる限り、この3つの要請を満たすレートを中国の中央銀行が設定するのは非常に困難だと思います。

 やはりWall Street Journalが9月16日に配信したMichael Crittendenの"Geithner Calls China's Move on Yuan 'Too Slow'"という記事では、ガイトナー米財務長官が議会証言で、中国の人民元の切上げの速度が遅く、知的財産権など経済政策にも批判を加えた上で、中国を為替操作国として指定することには慎重であることが指摘されています。また、木曜日の公聴会では日本の為替介入には言及せずに、中国が元の過小評価を維持しようとしている点に焦点をあてました。日本の為替介入は、非常にデリケートなタイミングで行われましたが、日米間の政治的な関係もさることながら、やはり焦点は中国の為替レートなのでしょう。

 私自身、この問題に妥当と自分でも納得のゆく解があるわけではありませんが、中国が他の先進諸国と同じく、フロート制への移行を考慮しなければ、常に欧米との摩擦を招くのでしょう。現状では、中国の通貨切上げが焦点の状態が続くのでしょうが、国際経済へ中国を本格的に構成員とするためには、フロート制への移行が避けられないと思います。これは中国国内経済にとっては重荷でしょうが、中国自身が国際経済における先進国を目指すのかという点が問われるでしょう。変動為替相場制が各国にとってベストの通貨体制なのかは断言できませんが、1970年代以前のブレトンウッズ体制に戻ることは困難であり、変動為替相場制へ中国が適応できなければ、単に政治的な摩擦だけではなく、欧米の経済成長率の鈍化が長期化する事態に対応できないのでしょう。また、政治的摩擦は、国際経済における協調体制は暗中模索が続くとはいえ、中国の政治的発言権を極めて限定的なものにするという点でも、中国の経済成長になんらかの制約となる可能性があると思います。経済の本質が競争という一見、相反するプロセスをともなう互恵的な関係であることを理解しない国が長期的な経済成長を遂げることは難しいと感じるからです。


 経済における米議会の対中強硬は比較的、連続的な変化です。ガイトナー自身が政権発足当時、中国は為替操作国であるという本当のことを漏らして、中国が猛反発しました。それ以来、ガイトナーはこの種の発言を封印してきました。

 より、「離散的な変化」は、アメリカ国内で生じています。11月の中間選挙で米民主党が困難な状況にあることは日本国内でも報道されています。Washington Postが2010年9月16日付で配信したE.J. Dionne Jr.の"Mike Castle's defeat -- and the end of moderate Republicanism"というコラムは、デラウェア州の共和党の上院議員候補に穏健派の現職Mike Castleが"Tea Party"のChristine O'Donnellに敗れた意味について論評しています。2008年の大統領選挙の後、2009年4月ぐらいに、WSJが配信した記事で"Tea Party"の存在を知りました。当初は、サラ・ペイリンを崇めるやや変わった運動という程度の認識でしたが、今年の7月か8月ぐらいにNYTがティー・パーティの参加者が高学歴で平均年収もやや高いという報道をして、ショックを受けていたのを思い出します。Dionne Jr.は、この報道に対して冷淡なコラムを書きました。ここでもティー・パーティの運動に対して、なんともいえない、高慢とも感じられる態度が見られますが、9期も上院議員を務めた共和党のMike Castleが共和党の指名選挙で敗れたことに動揺している様子もうかがえます。最近、ティー・パーティに関する記事を追っていなかったので、現在の主張はわからないのですが、オバマ大統領に対する極端な偏見をもっている一面で、オバマが進めた医療保険制度改革を中心に公的関与を極力、抑えようとする草の根保守という側面も強いと思います。また、キリスト教右派も絡んでいるようです。

 Dionne Jr.は、ティー・パーティが共和党内で影響を強めることで、穏健な共和党員が独立系に、独立系の候補が民主党へ流れていると指摘しています。この動きが中間選挙にどのような影響を与えるのか。Dionne Jr.は、デラウェアに関しては、民主党候補を有利にすると考えています。私自身、ティー・パーティの影響が共和党内で強まった場合、どのような傾向がでるのかはわかりません。ただ、この運動は、レーガン政権以来の草の根保守の流れをくむという点では連続性があるものの、オバマ政権誕生とともに、急速に影響力を拡大しました。アメリカ国内の世論は、もともと多様ではありますが、ティーパーティの影響力が強まった場合、オバマ政権下でますます世論の分断が広がる可能性もあります。いわゆる「ネオコン」とは異なって、ティーパーティには孤立主義的な心情が強いという指摘もあります。中間選挙後のオバマ政権は、1929年の大不況後と酷似した世論に直面する可能性もあります。
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