2010年11月10日

中国の台頭に対するベトナムの反応

 多少、放心状態でツイッターを眺めていたら、TLに日本シリーズの話が出ていたので、こんな時期にやっているのかと。日曜日に中盤以降しか見ていないのですが、中日が点をとって、あとは守備と継投で「1点でも多ければ勝ち」という落合監督の野球を千葉ロッテの西村監督が全否定した感じでした。「下剋上」というのがピンとこないのですが、日本シリーズで勝負以前に相手チームの野球、あるいは発想を全否定するというのは珍しく、すごいなあという感じです。シーズンで3位のチームだから下剋上といえばそうなのでしょうが、強いチームが順当に勝ったという感じ。中継時間も試合終了からわずかで終わり、名古屋ドームだったので、中継ではロッテへの祝賀ムードがなかったのですが、試合時間が最長を更新したりと、これはすごいシリーズだったんだなあという感じです。あれこれ細かいことはよいので、千葉ロッテマリーンズ優勝おめでとう!

 NHKスペシャルを見ていないので、番組そのものの評価はいたしませんが、現行の社会保障制度を前提とする限り、財源も積立金は不足しているので、消費税率の引上げが、タイミングが一番、問題ですが、不可避なのは当たり前でしょという感じ。やはり、メディアよりも劣るネット言論かなという程度。経済がわかると自称する人に限って、実質金利(インフレ率の定義が適当なのは御愛嬌なのか単なるバカなのか)をもちだしたりとかご苦労なことですが、結論だけを簡潔に述べれば、ただ飯は食えぬ、桃源郷はないというだけのことでしょう(しかし、番組を見ずに、感想だけで観なくてよかったって、「はてなワールド」は2ちゃんよりすごいですなあ)。財務省に苦情を言うとしたら、民主党のバカ予算を事業仕分けという茶番で誤魔化して、財政赤字を膨らませて、民主党が増税を言い出すのもよし、政権が交代するのを待って現野党が言うのもよしと手筈がよろしすぎますなあとなります(「ただ飯は食えない」、「タダより高いものはない」という感覚が年配の方を中心に薄れているのは嘆かわしいです)。

 こちらは、ちょっと踏み込みがよすぎるのではと(元の記事は、Wall Street Journalが2010年10月17日付で配信した Michael R. Wessel and Larry M. Wortzel, "The Huawei Security Threat"という記事)。華為の問題には華為側から同じくWSJに反論が掲載されました。オーストラリアやインドは事実関係がわからないのですが、イギリスが遠ざけたというのはちょっと事実認識が異なるのではと。事実の問題としてボーダフォンが華為との取引をやめたという話を聞いたことがないので、ネットワーク・ルータなどは各国で利用されているのではと思いますが。もちろん、Wessel and Wortzelが指摘するように、インターネットバックボーンや無線通信の基幹網(アメリカの事業者がフルIP化をどこまで進めているのかはわからないので固定網への影響が評価しづらいのですが)にしかけをされると、セキュリティ上の脅威となりうるリスクがありますが、同時に、安全保障を口実にした通商摩擦となる可能性もありうるので、微妙な感じです。華為側の反論に対する健全な事実認識にもとづいた再反論がないと、かなり問題のある記事だと思います。経済的相互依存による利益は外交・安全保障における利害対立を代替できませんが、戦争という極端な事態に至らなければ、経済的相互依存と政治的対立は併存することは珍しくなく、単純な中国「封じ込め」は難しいでしょう。

 この問題以前に、日本の情報セキュリティの問題は別途、議論をした方がよいと思います。過疎地とはいえ、ブログでは書けないことがはるかに多いのですが、3年前の話としては、一般論として日本の官公庁は情報セキュリティに関する意識が弱かったというのは複数の筋で確認したことがあります(3年前に某省ではセキュリティ対策改善のためにデル製のパソコンにウィルスバスターコーポレート版を導入したそうで。このあたりが限界ですね)。かなり改善しているはずではありますが、私自身が技術の進歩についていけてないので、なんともいえないという歯切れの悪い話になりますね。

 ちょうど早朝にリーダーが読み込んだのですが、WSJが2010年11月9日付で配信した"China's Rise in Telecom Gear a U.S. Risk, Report Says"という記事では、ナンシー・ペロシに指名されたMichael Wesselの議会のU.S.-China Economic and Security Review Commissionにおける発言が紹介されています(購読者限定の記事なのでリンクは一切、貼りません)。上記の『世界の論調批評』の論評に対する上記の疑義はすべて撤回ですね。委員会が作成している報告書には華為からの調達による通信インフラストラクチャーの脆弱性に関する詳細な分析が行われており、私自身もあまりに認識が甘かったです。『世界の論調批評』の分析が本線だと思います(上記の記述を削除しようとも考えましたが、筋が悪い痕跡を残しておくにはよかろうとそのままにしました)。

 地味に重い話がまたまた積み重なりつつあるので(匙加減を間違えると、勤務先で総スカンを食らいそうで怖いのですが。なんとか無難に落ち着かせても感謝されることはない仕事がほとんどですなあ(遠い目))、車輪の下に押しつぶされてくたばる前に、生きているうちにメモです。例によって、Washington Postが2010年10月30日に配信したJohn Pomfretの"China's rise prompts Vietnam to strengthen ties to other nations"という記事からメモしておきます。

 ちょっと気になったのは、クリントン米国務長官のアジア歴訪の日程でした。国務省のサイトでは次のような日程が記されています(参考)。

2010年10月27日 ホノルル。日米外相会談。前原誠司外務大臣と日米同盟がアジア・太平洋地域におけるアメリカの関与の礎石であることを再確認。

2010年10月28日 ホノルル。"America's Engagement in the Asia-Pacific"(参考)演説(あとあとのリンク切れ対策のため、グーグル検索結果はこちら)。

2010年10月29日 ハノイ。4か月以内に2度目のベトナム訪問。東アジアサミットへアメリカを代表して参加。ついで、Lower Mekong Initiative(カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、アメリカ)へ参加。海南島訪問。

2010年10月30日 カンボジア訪問。

2010年11月 1日 マレーシア訪問。

2010年11月 3日 パプア・ニューギニア訪問。
        ニュージーランド訪問(日付不明)

2010年11月 6日 オーストラリア訪問。ゲーツ国防長官とともに2+2会合。

 外交日程を追っていたら、外交のトップが長生きしないことが多い理由がわかるような、目もくらむ日程です。北京をスルーして海南島で国務委員と会談するあたりは芸が細かいですなあ。日程を追うだけでも、今回のクリントンのアジア歴訪は、事実上の海をめぐる中国との勢力圏争いの始まりという印象をもちます。Pomfretの記事は、ベトナムがアメリカとの絆を深める共通の利害を事実の描写を通して描いています。長くなりましたので、お暇な方は、「続き」をどうぞ。


HANOI - Three weeks ago, an exhibition opened at the Vietnam Military History Museum. On one side of a long hall, the mementos of Vietnam's 25 years of war against the United States and France - letters of surrender, quotations from Ho Chi Minh, hand grenades and AK-47 rifles - lined the walls. Nothing new there.

But on the other side, the History Museum was actually making history. Along those walls hung daggers, paintings and quotations from Vietnam's struggle with another rival: imperial China. Battles dating to 1077, 1258 and the 14th and 18th centuries were featured in intricate detail.

 ハノイ 3週間前にベトナム軍事史博物館で展示が公開された。長いホールの片側には、米仏に対するベトナムの25年間の戦争の記念品(降伏文書、ホー・チ・ミンからの引用、手榴弾、AK-47ライフル、)が壁に並べられていた。新しいものはなにもない。

 しかし、もう一方の側には、軍事史博物館が実際に後世に名を残していた。壁に沿って、短剣、絵画、ベトナムの別のライバル、すなわち中華帝国からの引用が掛けられていた。1077年と1258年に始まる戦闘や14世紀と18世紀は錯綜した、詳細な記述によって特徴づけられた。


 原文の方が簡潔で淡々としていながら、雄弁ですね。ベトナムの9千万弱の人口ならば、ヨーロッパでは大国でしょう。近代以前は中華帝国に翻弄され、冷戦期にはフランス、ついでアメリカと戦って独立を勝ちとった、ベトナムの歴史が凝縮して表現されています。やや気になるのは、1979年の中越戦争の展示はないのだろうかという点ですが。

 この描写に続いて、かつての「西洋の侵略国」と同等の立場に中国が回るにつれて、北京との関係がこじれていった過程が描かれています。Pomfretは、まず、かつての共産国としての友愛は薄れてきたと指摘しています(最後に、依然としてベトナムが中国の影響下にもあることを指摘するあたりがPomfretの記事をメモする理由でもあります)。中国の台頭は、かつてベトナム北部を圧迫した中華帝国の再来というところでしょう。中国の台頭に対するリスクヘッジとしてベトナムはアメリカとの接近を選択しました。Nguyen Chi Vinh国防副大臣は「新しい友人をもつことはいつもよいことだ」とインタビューで述べました。

The budding U.S.-Vietnamese friendship was on display Friday when Secretary of State Hillary Rodham Clinton arrived here for her second visit in four months. Just two weeks ago, Secretary of Defense Robert M. Gates was here. In August, the Defense Department held its first security dialogue with its counterpart in Hanoi. Three U.S. naval vessels have visited Vietnam in the past year. More than 30 Vietnamese officers are studying at U.S. military academies.


 先の外交日程でも記しておきましたが、クリントンのベトナム訪問は4か月で2回目という異例の頻度です。加えて、今回のベトナム訪問の2週間前にはゲーツが訪問しました。8月には、ハノイで安全保障対話が行われました。昨年は、米海軍の軍艦がベトナムを訪れ、30人以上のベトナムの将校がアメリカの陸軍士官学校で研究しています。

Vietnam and the United States are hammering out an agreement that would give Vietnam access to American nuclear energy technology. That, Vietnamese officials say, could help Hanoi end its dependence on China for electricity. Meanwhile, Vietnamese defense officials say they are eager to buy U.S. military technology, including sonar equipment to track Chinese submarines. Hanoi is also involved in talks to obtain spare parts for its arsenal of U.S.-made UH-1 Iroquois helicopters, an icon of the Vietnam War. And defying Chinese pressure, three American oil companies are carrying out offshore exploration in Vietnam's waters.


 驚くべきことに、ベトナムとアメリカの間で、アメリカの原子力技術へのベトナムのアクセスを認める協定がつくられようとしているとのことです。これ自体が、私が迂闊なのか、初めて知りましたが、さらに驚くのは、ベトナムが現状では中国に電力を依存しているという指摘です。ベトナムで原子力発電が本格的に稼働すれば、中国への電力依存を解消できるというのはもっともな指摘ではありますが、天然ガスなどの火力発電ではないあたりが驚きです。原子力技術だけではなく、軍事技術でもベトナムはアメリカからの技術供与を熱望しているとのことです。中国の潜水艦を追跡するためのソナーに加えて、ベトナム戦争の偶像であるUH-1イロコイの部品を入手しようとするなど、貪欲な印象すらもちます。さらに、中国の圧力をはねのけて、アメリカの石油会社が沖合の油田を開発するなど、ベトナムがアメリカとの絆を深めようとしている姿が描写されています。

One common cause the two countries have found is ensuring that China does not dominate the South China Sea. Beijing claims the whole 1 million-square-mile waterway including vast swaths of empty ocean 1,000 miles from China's southernmost tip, and has has dispatched the world's largest maritime security vessel to the region to harass Vietnamese fishermen and oil exploration teams. In July, after consultation with Vietnam, Clinton broached the issue at a meeting of Southeast Asian nations in Hanoi, rejecting China's claims to the ownership of open ocean and calling for multilateral talks. Eleven other countries followed the United States' lead. China's foreign minister, Yang Jiechi, left the meeting in apparent shock, returning only to remind the other countries there that they are small and China is big.

Another common cause will be highlighted Saturday when Clinton leads a meeting of the U.S.-inspired Lower Mekong Initiative, which seeks, in part, to push Beijing to limit the number of dams it builds as the Mekong River flows south through China. Last week, the Mekong was at its lowest level in recorded history and analysts in Vietnam blamed China's dams, irrigation and hydroelectric projects for the drop.


 Pomfretは、アメリカとベトナムの関係強化の理由を2点ほど挙げています。第1は、南シナ海における中国の支配確立を阻止することです。中国は、最南端から1,000マイルも離れた100万平方マイルの海を支配しようと、ベトナム漁船や石油開発に嫌がらせを行いました。7月にはクリントンはベトナムと協議してから、中国の外洋に対する支配を拒絶して、多国間協議を主張してハノイにおける東南アジア諸国の会合でこの問題に取り組み始めました。アメリカに11か国が追随し、楊外務部長は、他の国は小国であり中国は大国であると恫喝したものの、明らかにショックを受けた様子で会合を去りました。

 もう一つの理由は、"Lower Mekong Initiative"です。上流でダムを建設して水資源を抑えて、下流の諸国を「水攻め」にしようとする中国をけん制するねらいです。

 また、ベトナムが関係強化を図っているのはアメリカだけではありません。古い後ろ盾であったロシアとはキロ級の潜水艦を購入する契約を昨年に結びました。また、中国のライバルであるインドとはMig-21戦闘機全機のアップグレードを手助けするよう、対話をしています。5年前には、日本と韓国のビザを廃止しました。

Indeed, China's influence in Vietnam remains powerful. Vietnam's economic reforms - known as doi moi - were inspired by China, and its security services have learned a lot from their Chinese counterparts about how to maintain one-party rule. As such, Hanoi is careful not to disturb Beijing, or not too much. At the Military Museum, for example, one war gets no treatment at all - the bloody border conflict Vietnam fought with China in 1979.

Vietnam's censors also routinely ban anti-Chinese news reports. On Thursday, the Foreign Affairs Ministry ordered a leading online newspaper, Vietnamnet, to pull an article predicting that Southeast Asian nations would take a tough stance against China over maritime disputes and other issues. Other stories, however, do get through, such as reports this week of a petition campaign led by Nguyen Thi Binh, Vietnam's former vice president and the Viet Cong's representative at the Paris peace talks, against a massive Chinese-invested bauxite mine in Vietnam's central highlands.

"We have been next to China for 4,000 years. We cannot just up and move," said Pham Chi Lan, a senior economist involved in the petition, which has drawn 3,000 signatures. "In order to survive, however, we need friends."


 それでは、ベトナムは中国離れを進めて、アメリカとともに敵対するのか。ことはそれほど容易ではありません。Pomfretは、ベトナムに対する中国の影響力は強いと指摘しています。ドイモイ政策は中国の改革開放に触発されました。諜報機関は、中国で一党支配を維持する方法を中国のカウンターパートから多くを学んできました。最初にも触れた中越戦争の展示がないのは、中国に対する配慮を示していると指摘しています。また、ベトナムの検閲は、定期的に反中的なニュースリポートを禁じています。ベトナムは、海と陸とで自国の独立を維持するために、アメリカを中心に中国と対抗するとともに、国内では対中宥和をはかっているのが現状でしょう。

"We have been next to China for 4,000 years. We cannot just up and move," said Pham Chi Lan, a senior economist involved in the petition, which has drawn 3,000 signatures. "In order to survive, however, we need friends."

 「私たちは、4000年にわたって中国の最も近い関係を保ってきた。私たちは、直ちに思い切って動くことはできない」と3000人の署名を集めた請願に関与したエコノミストのPham Chi Lanは述べた。「しかし、わたしたちは生き残るためには友人が必要なのだ」。
この記事へのコメント
 面白い記事ありがとうございます。
 ただ、記事を拝読して、少々わからないことがございました。確か、ベトナムとタイはあまり仲が良くなかったですよね。ライバル意識があるというか。
 軍事的には、今まで、タイとアメリカは緊密な協力関係にあるように見えました。アメリカがベトナムとの関係を強化する際、タイとベトナムとの心理的関係を踏まえたうえで、どのように両国と接しようとアメリカは考えているのでしょうか。
Posted by Alice at 2010年11月10日 11:19
>Alice様

コメントを頂き、ありがとうございます。ベトナムとタイの関係をはじめ、ASEAN諸国間の関係に疎いので、率直なところ、わからないです。とくに、タイは政情の問題もあり、手が回っていない状態です。せっかくのお尋ねに正面からお答えできず、申し訳ないです。

私のように断片的にしか観察していないものが、オバマ政権の対東南アジア政策は、サントリーホールにおける演説から一貫していると思います。図式的ではありますが、二国間関係を多国間協議で補完していくアプローチです。クリントンに続く、オバマのアジア歴訪は実質的には中国との勢力圏争いですが、用心深くオブラートに包んでいる状態だと思います。

オバマ大統領のサントリーホール演説は歓迎

http://the-end-of-time.sblo.jp/article/33659853.html

タイとベトナムの関係をちゃんと観察していないので印象論の域を出ないのですが、メコン川下流域イニシアチブにはタイとベトナムも参加しており、両国が中国への警戒心が両国間の利害対立によって消されてしまうほどの状態ではないのではと推測します。座って作業するのが、苦痛な状態ですので、いつになるのかはわかりませんが、むしろ、ベトナムの国内体制の特異さが長期的なアメリカのコミットメントを困難にする可能性があると考えております。ソースが同じポンフレットなので、自分でも偏りすぎているという問題があるのですが。

しかし、最大の問題はアメリカの世論でしょう。アメリカの景気回復が弱い場合、内向き指向が強くなる可能性もあるのでしょう。オバマ政権の国内における説得力が低下している現在、日本がアメリカ外交を補完するのが望ましいのですが、考えるだけ空しいという感覚に苛まれます。
Posted by Hache at 2010年11月11日 00:03
御説明ありがとうございます。
 そうでした、タイとベトナムの中国に対する警戒感が、この両国のライバル意識をちゃらにして結びつけるという可能性を過小評価しておりました。
 ミャンマー、カンボジア、タイ、ベトナムは歴史的な感情論ではいろいろあるようです。しかし、現実的な対応は、東南アジア諸国のほうが、日本よりも上に見えます。
 北朝鮮や海がバッファになっている日本や韓国と異なり、実際に陸地でつながっている国の中国に対する、期待と警戒は日本や韓国よりも強いでしょう。

 ただ、個人的に、どうも今までアメリカの東アジア、東南アジア、西アジアの国の接し方をヨーロッパの国への接し方と比較してみると、単線的というか、その地域での歴史的文化的背景を伴う国民感情に対する理解が疎いように感じられるのです。それに対して、私は少々懸念を感じております。
 だからベトナムへの接近と聞くと、タイとベトナムの間の感情を理解したうえで計画たてているのだろうか、と少し疑問に感じたのです。
 同様のことは、日本と韓国に対するアメリカの態度にも表れていて、もちろん、知識としてはアメリカも知っているようですけど、なんというか、表層的というか、知識にとどまっているというか・・・。

 もちろん、アメリカが本気でアジア太平洋地域に戻ろうとしていることは歓迎しているのですが、下手につっこんで火傷してしまうと、ただでさえ内向き志向の世論は一気に「アジア太平洋から手をひけ」となるでしょう。元来、中南米やヨーロッパほど身近な地域ではないのですから。
 それが、ちょっと怖いのですね。
Posted by Alice at 2010年11月11日 13:55
>Alice様

まだアメリカも東南アジアへの接近を始めたところです。もちろん、地域研究がクリントン政権の財政健全化によって犠牲になった憾みはありますが、他の諸国と比較して、はるかに情報が集まる国でもあります。現時点で過度に悲観する必要はないと思います。相手国の感情を無視する傾向についても、中国がアメリカとは比較ならないほど強いことは、日本人自身が経験していると思いますが。

内向き指向に関しては、大雑把な感覚ですが、口実となりうるのはアフガニスタンとパキスタンあたりでしょうか。表現が悪いかもしれませんが、テロがあったとはいえ、世界で最も外敵から安全なのはアメリカですから、抽象的な可能性としては常に内向きになるリスクはあるのでしょう。ただ、現時点ではアメリカが東南アジアで耐えがたいダメージを被って世界から手を引くという具体的なイメージを抱くことは困難であり、それほど懸念すべき問題ではないと思います。

露骨にいえば、中国が覇権を求めてくれば、リーダーがオバマであろうが、他の人物であろうが、アメリカに簡単に撤退するという選択肢はないでしょう。他方、中国がチャネルを閉じない限りは、アメリカは中国との決定的な対立関係に入ることに関してもリスクもヘッジしようとするでしょう。オバマ政権は、アジアで中国の言い分を一方的に通すことはないという姿勢を明確にしたわけですから、中国の対応しだいというのが現状だと思います。

その意味で、ベトナムは中国の影響力も色濃く残っている点で興味深いと思います。他の東南アジア諸国に関しては華僑の動向なども見ておく必要があるのでしょう。中国がアジアからアメリカの影響力を排除しようとすれば、互いに選択肢は狭くなります。現時点では、中国側に手番があり、アメリカを明確に敵に回すのか、妥協の余地を残すのかが問われているのだろうと見ております。
Posted by Hache at 2010年11月12日 00:15
御教示ありがとうございます。確かに、先走りすぎた懸念だったかもしれません。
 東南アジアは、中国やインドと敵対せず、かつ相手を驕らせずに、世界の政治経済システムに順応させるためには重要な地域ですよね。同時に、西アジア、南アジア、東アジアの結節点としての役割を果たす地域でもあり、中国やインドのことを除いても、アメリカやヨーロッパ主要国にはそれなりに影響力を保持してもらいたいと個人的に願っています。もちろん、日本にプラスとなる範囲内でですが。

 イギリス、フランス、ドイツは東アジア通貨危機以降、リーマン・ブラザーズショックまでは東南アジア回帰をしていたようですが、今はそれどころではないでしょう。
 アメリカ経済も大変ですが、確固たる信頼関係をアセアン諸国と築いていただきたいものです。
Posted by Alice at 2010年11月18日 01:02
>Alice様

この「寝言」の2日前のポンフレットが書いた"As Clinton visit nears, Vietnam arrests bloggers, sentences activists"という記事があります。問題となっている事件自体の重みはわからないのですが、ベトナム共産党内も対中警戒論で統一されているわけではなく、人権という点でもアメリカ的価値観とは相いれない部分も色濃く残っているでしょう。アメリカの対アジア関与は、困難な点も多いと思います。

この問題に限らないのですが、金融危機後、経済だけではなく、先進国の政治システムに負荷がかかるとともに、評論の世界では楽観論と悲観論が入り混じっているようです。また、外交に関する英米圏の評論ですら、地域への観察が不十分なまま、一般的な議論に終始していることも見受けられます。私自身も、その影響を受けているのでしょう。他人はそうであっても、私自身は、できうる限り、そのような傾向から自由でありたいというのが、私自身の私に対する願いです。実際にうまくやっているとはとても思えないのですが。
Posted by Hache at 2010年11月19日 12:34
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