2011年02月22日

悩ましい地方政治

 アラブ諸国の動向から目が離せない状態が続いているのですが、国内も少なくとも斜め読みぐらいはしなくてはと思うのですが、民主党中心の連立政権のゴタゴタは読むだけで萎えますね。これには「寝言」も浮かばない惨状なので、おそらくは民主党亡き後、国政レベルでは再び自民党中心の政権が生まれるのかもしれませんが、今年に行われる統一地方選挙は国政にも影響をおよぼすのかもしれません。

 他方、名古屋市の市長選挙と市議会のリコールの問題には今一つ興味がわかないのが率直な実感ではあります。名古屋市の公式サイトが公表している「平成22年度予算のあらまし」(参照)を見ると、PDFファイルの全ページ版の7頁では「厳しい市の財政状況」とあって、次のページをめくると、「収支不足への対応」として市民税減税161億円の財源として行財政改革によって185億円を捻出すると読める表があり、どこぞのいい加減な政党がムダの排除で財源をと主張していたのを思い出させる光景です。「通常の収支不足額」321億円に義務的経費の増と並んで市税の減収が挙げられており、悪い冗談なのかと。所得割の部分や法人事業税、固定資産税が減収になれば、実質的には減税と同じ効果なわけでして、加えて市民税の減税を行うのは何の効果をねらっているのかさっぱりわかりません。しかも、「臨時財政対策債」はまだしも、「行政改革推進債」というのは「時の最果て」でも思いつきそうにない「寝言」、あるいは悪い冗談のようなネーミングでありました、行政改革を進めて市民税減税を進めるという一方で、行政改革を推進するために、借金を増やしますというのは、いくら私の本籍地とはいえ、あまりの話です。「減税日本」の公式サイトを見ても、あまりのアバウトさにやはり帰るべき故郷は静岡県だなあという気分になります。

 実は、名古屋市長選挙の後で、この表を見て、民主党亡き後の政界も大変だなあと。民主党がいうなれば自民党の劣化コピーならば、その後にくるのかもしれない地方政党は、民主党の劣化コピーとなるわけで今後10年ぐらいは日本の政治システムは麻痺状態が続くというのが2月の中頃までの見通しでした。ため息が出ます。アメリカ外交は、日本外交と異なって、今回のアラブ諸国の反乱にさほど選択肢があるわけではないとはいえ、様々な影響力を行使せざるをえないでしょう。アジアでは中国の台頭に日本が中心にアメリカ外交を補完してくれれば、多少は負担が軽くなるのでしょう。しかし、地方政治の動向が国政に影響力を与える情勢になれば、中国に対して日本の利益から防波堤になるというのは極めて困難な情勢になるのでしょう。

 もう一つの「策源地」である大阪も名古屋と同様、ダメだろうと。昨年の11月頃に、「大阪維新の会」の公式HPを見ましたが、なんじゃこりゃと思いました。本を読んで勉強しろと大阪府民にお説教をしていて、ある意味では開き直っていますが、「大阪都」構想でなにがかわるのかが不明確で、名古屋市と愛知県の動きを見ながら、混乱した時代を迎えそうだなあと鬱になっておりました。

 しかし、先週、見ると、「大阪維新の会マニフェスト」がいつの間にかアップロードされていて、「マニフェスト」という言葉を見ると、できもしないことを書いてあるのですねという先入観がありますし、いかがわしい「成長戦略」という表現もでてくるのですが、名古屋市の派手な減税と比べて、具体的な成長戦略が地道な話でしたので、意外感がありました。インフラストラクチャー整備に偏っている印象もありますし、インフラを整備して人材が大阪市・大阪府に集まるのかは疑問もあるのですが、とりあえず減税というわが本籍地に比べると、はるかに政策的な方向性は戦略性があるように思いました。端的に言えば、金融危機を経験するまで不交付団体だった愛知県と名古屋市とそうではなかった大阪府と大阪市の違いもあるのでしょうが、それが的確かどうかは別としてまだしも大阪維新の会は長期的なビジョンを打ち出しており、成長戦略の遂行と「ONE大阪構想」との関連はかならずしも自明ではないと思いますが、少なくとも政策立案そのものは練られているという印象をもちます。

 「大阪維新の会」のマニフェストの資料編は興味深く、ここでも「大阪都構想」は成長戦略を実現する手段として首尾一貫して位置付けられています。ほほおと思ったのは、大阪市が「最貧地帯」という一昔前のWBSが好んで描いていた大阪市の現状を率直に認めているあたりでしょうか。実現可能性は別として、大阪市・大阪府の持続的な経済成長を促し、成長の果実を再分配して貧困を克服するというのは、それができるかどうかを別にすれば、筋が通っていると思います。18頁のグラフと表を見ると、大変どすなあと思いましたが、年収200万以下の世帯が総世帯の約4分の1を占めるというのは、さすがに尋常ではありません。個人的には、この資料の出所が意外でして、こんなデータをどうやってとるのだろうかと思ったら、総務省の「平成20年住宅・土地統計調査」(参照)から作成とのことで、これは恥ずかしながら、知りませんでした。マニフェスト本体では横浜と比べて、貧困層が多く、富裕層が少ないということを強調しており、それ自体はそうなんだろうなと。他方、「平成20年住宅・土地統計調査」を見ると、意外な傾向もでてきます。「続き」はごく簡略に大阪市と横浜市の意外な共通点と相違を見てみます。



表 大阪府・大阪市と神奈川県・横浜市の人口構成と貧困層

       大阪府  神奈川県   大阪市   横浜市 全国
普通総世帯数 3,699,800 3,632,800 1,264,200 1,497,400 49,804,400
55−64歳 721,600   675,600 228,700 276,700 5,289,800
65歳以上 1,018,200 892,600 350,400 370,300 13,596,600
55歳以上の割合   47.0%   43.2%   45.8%   43.2% 47.8%

年収100万未満 254,200  124,400 105,700   42,300  3,044,400
55−64歳 44,200 7,400  18,000 3,800 500,100
65歳以上 112,900   41,900   52,200 14,900 1,407,000
55歳以上の割合   61.8%    49.3%   66.4% 52.7% 62.6%



 大阪府の年収100万円以下の世帯数の比率が約6.9%であるに対し、神奈川県の同世帯数の比率が約1.2%という数字(大阪の100万円未満の世帯数は神奈川県の実に2.4倍)は、「大阪維新の会」のマニフェストを裏付ける数字といってよいのでしょう。他方、55歳以上の世帯数が大阪府が格段に高いものの、大阪府・神奈川県ともに都市部を多く抱えているのにもかかわらず、高齢化が進んでいるということも読みとれます。大阪府で55歳以上の人口が47%、神奈川県でさえ43,2%という数字は、率直に言って社会保障制度改革を民主主義的な手続きで行うことは非常に難しいだろうという気分にさせます。このうちの有権者数や投票率を考えると、世代によって利害が異なる場合、数が多い方が有利になるのは自明だと思います。

 もう一つは、「大阪維新の会」のマニフェストにあるように大阪市と横浜市を比べると、事実、年収が低い層が大阪市に多いのですが、少し異なる側面も見えてきます。大阪市の場合、年収100万円未満の世帯数のうち105,700、65歳以上だけで52,200世帯と半分近くになります。55歳以上の世帯では全体の66.4%を占めます。大阪市における年収100万円未満の65歳以上の世帯数が、横浜市全体の年収100万未満の世帯数を上回るのが現状です。今の高齢者が昔と比べて元気と言っても、やはり65歳を超えていくと、就業の機会は少ないでしょう。したがって、年収100万円の世帯へなんらかの底上げを行っても、将来になんらかのリターンが生じるという状況そのものが考えにくいです。さらに、年収が1000万円を超える65歳以上の世帯が、1万9,000世帯に上るのに対し、大阪市は2,400世帯しかなく、仮に、自治体内部で世代内で所得再分配を行おうとしても原資がない状態です。大阪府全体で見ても年収が1000万円を超える世帯は65歳以上の世帯で8,100にすぎず、神奈川県の1万3,100世帯と比べてはるかに少ない状態です。それが好ましいかどうかは別として、世代間扶助をなくすことは、地域によっては極めて悲惨な状況をもたらすのでしょう。あるいは世代間扶助を前提とした現行制度でさえ、気が遠くなるような状況が、地域によっては存在します。大阪の人たちには失礼かもしれませんが。

 さらに全国の状況と比較すると、神奈川県や横浜市が大都市部として全国的な状況よりも55歳以上の世帯の比率が若干ですが、低く、大阪府はほぼ全国の縮図となっています。年収で見ると、大都市圏としてはむしろ大阪市が全国よりも55歳以上の世帯で年収が100万円に満たない割合が全国よりもやや高い程度であって、全国的なトレンドと大阪府・大阪市が一致しているといえるのでしょう。端的に言えば、大阪府・大阪市は既に衰退期に入っており、神奈川県や横浜市は衰退期の入口にある、あるいは衰退を迎えたとしてもそのスピードが緩慢であるというところでしょうか。なお、年齢階級は、原資料の段階で全国と都道府県別で異なることをお断りしておきます。全国では25歳未満と75歳以上を別として、10歳区切りでデータが存在しますが、都道府県別では異なります。

 ごく簡略に済ませようと始めたのですが、想定した話よりも大きくなってしまいました。当初は、減税日本も大阪維新の会も論外という話で終わる予定でしたが、大阪維新の会のマニフェストは日曜日に目を通したところ、「資料編」が意外とまともでしたので、いろいろ確かめてみました。データもだいたい日曜日で揃う範囲でした。この程度のデータでなにかを述べるのは非常に危険なのですが、旧来の政令指定都市でさえ高齢化が進んでいることや都市間の所得格差、所得格差と年齢構成など大阪市が別格すぎるのかもしれませんが、バラツキが大きいのだろうという印象をもちました。

 WSJでたまに日本の記事が配信されていても、小沢がどうしたとかどうでもいい記事ばかりです。民主党のゴタゴタを論じている暇があったら、民主党亡き後の日本政治でも考えてしまうのが、「時の最果て」の流儀です。次の解散がいつになるのかはまったくわかりませんが、2013年までには起きるのでしょう。前回の総選挙の結果を見ながら、高齢者が増えているのにもかかわらず、急激な変化を避ける安定化作用は働きませんでした。結果、この有様です。おそらく、次は自民党にある程度、戻るのかもしれませんが、民主党以外の政党に期待する層がさらに増えるのでしょう。高齢化社会というのは、別の側面で安定した社会になるかもしれないと考えておりましたが、この国では期待できないというのが率直なところです。

 他方、地域政党はある程度までは成功するのかもしれません。単に、議席を増やすというだけではなく、地方分権の受け皿となるしくみをつくるという点で。また、政権公約についても、大阪維新の会のマニフェストが、民主党のマニフェストのように目的が曖昧なまま、バラマキを行う金額のみを明確にするといった稚拙さがないのは意外でした。手段としての「大阪都構想」といのはぶっ飛んでいる印象がありますが、手段に数値目標を入れてどの程度、達成できたかという稚拙としか言いようがない公約になっていないのは地域政党もバカにできないという印象をもちます。大阪府は、三大都市圏の一つを抱えている地域であるのもかかわらず、年齢階級や年収などでほぼ全国の縮図と言ってよい状態であり、この地域での改革の成否は、今後の他地域での改革の成否を占うことになるのかもしれません。決して大阪府の方々をバカにしているわけではないのですが、たぶん失敗に終わるだろうと思いますが。

 世代間扶助を完全になくすことができないと割り切ってしまえば、税制と社会保障の一体改革といっても、当面は「冷酷軽税党」が敗北し、「親切重税党」の勝利に終わるのでしょう。そして、細かい再分配で揉め、財政赤字はよくて横ばいでしょう。そして、10年ぐらい揉めて解が見えなければ、いよいよ財政破綻のリスクが高まり、そこで国政で政治的リーダーシップが発揮できる人物が存在するか否かにかかってくるのでしょう。内政面から見ると、今後は解が見当たらないまま、混乱だけが続くというのが、最近の「寝言」でしょうか。
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